はげ)” の例文
旧字:
小林少年は明智先生にはげまされて、章太郎君とは別に、恩田家へいそぎ、章太郎君は道で竹内君と別れて、自分のうちへ帰りました。
おれは二十面相だ (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
お蘭に取って、この言葉は一時凌いちじしのぎの気休めであり、また四郎へのはげましに使ったものに過ぎないけれども、四郎は永く忘れなかった。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「ぜひもない」と、尊氏はだまって、祐筆ゆうひつに両者へ与える軍忠状を書かせ、今川範国のりくに袖判そではんさせて「さらにはげめ」と、ふたりへさずけた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……れば御身おみは、わかいものゝ尻圧しりおししていしるまでもはたらけ、とはげますのぢや。で、そゝのかすとはおもふまい。徒労力むだぼねをさせるとはるまい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
えなき最期さいご、弱る心をはげまして、私は小供対手あいてにやはり紙屑拾いをばその日のわざとなしたりしに、天道てんどうさまも聞えませぬ、貧乏こそすれ
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「わたくしも、それでなんだか、いっそう商売にもはげみがつき、自分の将来も安定したような気持が致します。では奥様、行って参ります」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
めいめい一枚でも二まいでも札のあがるのを何よりのはげみに日常の稽古を怠らないのだが、今、この腕順の名ふだの下に立った剣師軍之助。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
『その様子ようすならそちちかうち乙姫様おとひめさまのお目通めどおりができそうじゃ……。』指導役しどうやくのおじいさんもそんなことをってわたくしはげましてくださいました。
それでともかくもガリレオは喜んで学業にはげみましたが、一五八九年になって、る侯爵の推薦でこのピザの大学の数学教授に任命されました。
ガリレオ・ガリレイ (新字新仮名) / 石原純(著)
顔丸の丸彦は、さすがに、刀と鉄のむちとを手からはなさず、水夫たちをよび集め、がたがたふるえてるのをはげましました。
長彦と丸彦 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「これで第二号礼式を終った」と首領は恐ろしい礼式の終了を報じたが、このとき何を思ったものか、一座をキッと睨んで声をはげまして叫んだ。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
第四読本は少し力にあまるのだけれども、書いてあることが第三読本よりはるかに身があるので、読むにははげみがあった。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
これを聞いていた松陰しょういん先生は、平生は女子のごとくやさしくしてめったに大声だも発せぬ人であったにかかわらず、この時にかぎり声をはげまして
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わしらの間にはもう平和へいわは失われた。いっしょに暮らすことは互いの重荷おもにになった。もはや何のなぐさめもはげましも互いに期待することはできないのか。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
お梅(かの女の名にして今は予が敬愛の妻なり)の苦心、折々たわまんとする予が心を勤めはげまして今日あるにいたらせたる功績をも叙せざるべからず。
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)
これはげまされて強ひて牛乳を口にする。マドレエヌが退くと部下の女優の一人ブリイが訪ねて来て病気見舞を言ふ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「二郎何とか云わないか」とはげしい言葉を自分の鼓膜こまくに射込んだ。自分はその声でまたはっと平生の自分に返った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
副院長は声をはげましてこう云いながら、ポケットに手を突っ込んだ。そうして薄黒い懐中かみいれみたようなものを取り出すと、てのひらの中で軽々と投げ上げ初めた。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もうもう彼女かれのことは思い切っているのにとみずから心をはげますけれど、熱い涙が知らずにぽたぽたと落ちる。物の哀れはこれよりぞ知るとよく言ったものだ。
最後の五百メエトルに日本選手は渾身こんしんの勇をふるって、ピッチを四十に上げ、見る見る中に伊太利へ追い着くと見え伊太利の舵手だしゅガゼッチも大喝だいかつ一声、漕手をはげまし
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
老人と入代りに紀昌がその石をんだ時、石はかすかにグラリとらいだ。いて気をはげまして矢をつがえようとすると、ちょうどがけはしから小石が一つ転がり落ちた。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ことに学問の道にはげむものにはああ云うものは何の益もない代物しろものだ。「芸術」と云うものか何と云うものかわしにはよく分らんが、お父さんに云わせればあんなものは不潔だ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
しかもわがかたへ少しく振り向きたる時、われはその顔色のはげしきに甚だしくおびやかされたり。かくてわれは、容易ならざる仕事がわれらの目前に横たわれることをさとりぬ。
この一首は、剣太刀つるぎたちをばいよいよますますはげげ、既に神の御代から、さやかに武勲の名望を背負い立って来たその家柄であるぞ、というので、「さやけく」は清く明かにの意である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
自分の軽い足音が、わたしを当惑とうわくさせもすれば、はげましてもくれた。わたしは時々立ち止って、何ものかを待ち受けながら、自分の心臓が早鐘はやがねのように高鳴るのに耳をすました。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
春琴これより舞技を断念してもっぱら琴三絃さんげん稽古けいこはげみ、糸竹の道を志すに至りぬ
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
はじめにアンドレイ、エヒミチは熱心ねっしんにそのしょくはげみ、毎日まいにちあさからばんまで、診察しんさつをしたり、手術しゅじゅつをしたり、ときには産婆さんばをもしたのである、婦人等ふじんらみなかれ非常ひじょうめて名医めいいである、こと小児科しょうにか
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
小西君一かつ衆をはげまして曰く、彼は一杯をかたむきたりて酔狂すいきやうせるものなりと。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
自然と焔硝えんしょうの煙になれては白粉おしろいかおり思いいださず喇叭らっぱの響に夢を破れば吾妹子わぎもこが寝くたれ髪の婀娜あだめくも眼前めさきにちらつくいとまなく、恋も命も共に忘れて敗軍の無念にははげみ、凱歌かちどきの鋭気には乗じ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
母親はわが子をはげますつもりで寒さうな寝衣姿ねまきすがたのまゝながら、いつも長吉ちやうきちよりは早く起きてあたゝか朝飯あさめしをばちやんと用意して置く。長吉ちやうきちの親切をすまないと感じながら何分なにぶんにも眠くてならぬ。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
貴重きちよう尊用そんようはさら也、極品ごくひん誂物あつらへものは其しなよくじゆくしたる上手をえらび、何方いづく誰々たれ/\ゆびにをらるゝゆゑ、そのかずに入らばやとて各々おの/\わざはげむ事也。かゝる辛苦しんくわづかあたひため他人たにんにする辛苦しんく也。
八幡太郎はちまんたろうれいまもっていてくれるとおもって、いくさはげんだものでした。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
人、怒れば其声はげし、其声励しければ即ち句々断続す。
詩人論 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
「働いて、ひねりだす。一層、はげみが出るじゃないか」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
蝶子は、「そら、よろしおまんな」そうはげました。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
度外に置きてわが勤めをはげむべし。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そなたにこがれてはげ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
自分を叱り、自分をはげましながら、彼女は、涙を拭いて立った。奥のほうで大三郎が眼をさましたとみえ、乳房ちちを求めて泣きぬいている。——
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくも、修行しゅぎょう次第しだいでわがわしてもらえることがわかりましたので、それからのわたくしは、不束ふつつかおよかぎりは、一しょう懸命けんめい修行しゅぎょうはげみました。
なお典獄は威儀おごそかに、御身おんみの罪は大赦令によりて全く消除せられたれば、今日より自由の身たるべし。今後は益〻国家のためにはげまれよとの訓言あり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
北辰ほくしん一刀流の道場があって、この仕合を目あてに猛烈な稽古をはげんでいるかと思うと、下妻には、真庭念流まにわねんりゅうの先生がいて、これも筑波の奉納仕合を目前に
平馬と鶯 (新字新仮名) / 林不忘(著)
三吉は自分で自分をはげますように叫んで、その窓の中へ入っていった。内部には誰がこしらえたのか階段があった。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
(康頼の顔を見る)どうしてあなたがたのかほどの強いはげましが、わしの不安を払いのけてくれぬのだろう。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
左右とこうして、婦人おんなが、はげますように、すかすようにして勧めると、白痴ばかは首を曲げてかのへそもてあそびながら唄った。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かあさんは、みんなの気持きもちをはげますつもりで、いいましたが、また、すぐになみだぐんでしまいました。
青い草 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そう云ってやったら当人もはげみになって勉強する事でしょう。よろしゅうございます」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
元来がんらい家事にむかない私が自分の研究のひまをさいて、とにかくそれにはげむようになったのも仕向けられるばかりでは済まないこれによって仕向けて上げようと云う意力いりょくから始まったことです。
女の言葉はいよいよ出でて、いよいよはげしくなって行った。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ああ、みづかはげむ者は
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そして、約二ヵ月程、京都の竹林院の道場で稽古けいこはげみ、そして悠々、静養の上で、四月下旬の三十三間堂のきそに立つという予定なのである。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)