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たてひざ
ふりがな文庫
“
立膝
(
たてひざ
)” の例文
彼はかの女の傍に
立膝
(
たてひざ
)
して
坐
(
すわ
)
ると、いくらか手入れを手伝ひながら、かの女の気配を計つた。かの女の丸い顔をいぢらしさうに見た。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
お
品
(
しな
)
の
硬着
(
かうちやく
)
した
身體
(
からだ
)
は
曲
(
ま
)
げて
立膝
(
たてひざ
)
にして
棺桶
(
くわんをけ
)
へ
入
(
い
)
れられた。
首
(
くび
)
が
葢
(
ふた
)
に
觸
(
さは
)
るので
骨
(
ほね
)
の
挫
(
くぢ
)
けるまで
抑
(
おさ
)
へつけられてすくみが
掛
(
か
)
けられた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
少
(
すこ
)
し
時間
(
じかん
)
が
遲
(
おく
)
れたので、
寄席
(
よせ
)
は
一杯
(
いつぱい
)
であつた。
二人
(
ふたり
)
は
坐蒲團
(
ざぶとん
)
を
敷
(
し
)
く
餘地
(
よち
)
もない
一番
(
いちばん
)
後
(
うしろ
)
の
方
(
はう
)
に、
立膝
(
たてひざ
)
をする
樣
(
やう
)
に
割
(
わ
)
り
込
(
こ
)
まして
貰
(
もら
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
胴がくびれているだけ腰の下から
立膝
(
たてひざ
)
した
腿
(
もも
)
のあたりの肉付が一層目に立って
年増盛
(
としまざか
)
りの女の重くるしい誘惑を感じさせる。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
隅
(
すみ
)
の方で、
立膝
(
たてひざ
)
をして、
拇指
(
おやゆび
)
の
爪
(
つめ
)
をかみながら、上眼をつかって、皆の云うのを聞いていた男が、その時、うん、うんと頭をふって、うなずいた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
▼ もっと見る
食わず飲まずで、座って
立膝
(
たてひざ
)
をしたままに、何かぶつぶつ
呟
(
つぶや
)
きながらお金を数える
真似
(
まね
)
をしていたということであった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
と、
白粉
(
おしろい
)
べたべたの洋装婦人の
立膝
(
たてひざ
)
がもろくもぶっつぶれて、「あ痛っ、こん畜生。」となる。大笑いだ。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
頸
(
ゑり
)
もと
計
(
ばかり
)
の
白粉
(
おしろい
)
も
榮
(
は
)
えなく
見
(
み
)
ゆる
天然
(
てんねん
)
の
色白
(
いろじろ
)
をこれみよがしに
乳
(
ち
)
のあたりまで
胸
(
むね
)
くつろげて、
烟草
(
たばこ
)
すぱ/\
長烟管
(
ながぎせる
)
に
立膝
(
たてひざ
)
の
無作法
(
ぶさはう
)
さも
咎
(
とが
)
める
人
(
ひい
)
のなきこそよけれ
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
そして
立膝
(
たてひざ
)
にした両足を広く踏み開き、小指にちょんぴりとつけた黒い
脂
(
あぶら
)
で、前歯に軽く
触
(
さわ
)
ると、時江はその一点の
斑
(
まだら
)
にさえ、自分の裸身を見るような驚異を感じた。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「六代目はああいふ
気儘
(
きまゝ
)
つ
児
(
こ
)
だから……」梅幸は
蓮葉
(
はすは
)
らしく
立膝
(
たてひざ
)
の上で
長煙管
(
ながきせる
)
をくるくる廻した。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
藤木さん夫婦は妹娘を
真
(
しん
)
にして柳橋でパリパリの××家のおとっさんおっかさんになってしまった。
手拭
(
てぬぐい
)
ゆかたの
立膝
(
たてひざ
)
で昔話をして、小山内さんや猿之助を煙にまいていた。
旧聞日本橋:13 お墓のすげかえ
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
棒縞お召の
袷
(
あわせ
)
に
黒繻子
(
くろじゅす
)
の帯、
衿
(
えり
)
のついた
袢纒
(
はんてん
)
をひっかけた伝法な姿、
水浅黄
(
みずあさぎ
)
の
蹴出
(
けだ
)
しの覗くのも構わず
淫
(
みだ
)
らがましく
立膝
(
たてひざ
)
をしている女の側に、辰次郎が寒そうな顔で笑っていた。
お美津簪
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
一体行儀の好い男で、あぐらを
掻
(
か
)
くッてな事は殆んどなかった。いよいよ坐り
草臥
(
くた
)
びれると
能
(
よ
)
く
立膝
(
たてひざ
)
をした。あぐらをかくのは田舎者である、通人的でないと思っていたのだろう。
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
奥方の古着を自分の
行李
(
こうり
)
につめ込んで、ぎょろりとあたりを見廻し、きせるを取り出して
煙草
(
たばこ
)
を吸い、
立膝
(
たてひざ
)
になってぶっと鼻から強く二本の煙を噴出させ、
懐手
(
ふところで
)
して裏口から出て
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
居間へ
這入
(
はい
)
ッて手探りで
洋燈
(
ランプ
)
を
点
(
とぼ
)
し、
立膝
(
たてひざ
)
の上に両手を重ねて、何をともなく
目守
(
みつめ
)
たまま
暫
(
しば
)
らくは唯
茫然
(
ぼんやり
)
……不図手近かに在ッた
薬鑵
(
やかん
)
の
白湯
(
さゆ
)
を
茶碗
(
ちゃわん
)
に
汲取
(
くみと
)
りて、一息にグッと飲乾し
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
立膝
(
たてひざ
)
で
煙管
(
きせる
)
を
喞
(
くわ
)
えながら盛り方が無作法だとか、三杯目にはもういい加減にしておきなさいとか、
慳貪
(
けんどん
)
に
辱
(
はずか
)
しめるのもいやだったが、病気した時の
苛酷
(
かこく
)
な扱い方はことに非人間的であり
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
つい
堪
(
たま
)
らなくなったから、横になろうと思っても、直ぐ
背後
(
うしろ
)
に居るんだもの、
立膝
(
たてひざ
)
も出来ないから、台所へ行って板の間にでもと思ったが、あすこにゃ
蚊
(
か
)
が
酷
(
ひど
)
いし、仕方がないから
戸外
(
おもて
)
へ出て
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お
延
(
えん
)
は
立膝
(
たてひざ
)
の前へ、鏡台を引き寄せた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
文庫
(
ぶんこ
)
の
中
(
なか
)
から、二三
通
(
つう
)
の
手紙
(
てがみ
)
を
出
(
だ
)
して
御米
(
およね
)
に
見
(
み
)
せた。それには
皆
(
みんな
)
坂井
(
さかゐ
)
の
名宛
(
なあて
)
が
書
(
か
)
いてあつた。
御米
(
およね
)
は
吃驚
(
びつくり
)
して
立膝
(
たてひざ
)
の
儘
(
まゝ
)
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「じゃアのん気だね。」わたくしはすすめられるがまま長火鉢の
側
(
そば
)
に坐り、
立膝
(
たてひざ
)
して茶を入れる女の様子を見やった。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
頸
(
ゑり
)
もとばかりの白粉も
栄
(
は
)
えなく見ゆる天然の色白をこれみよがしに
乳
(
ち
)
のあたりまで胸くつろげて、
烟草
(
たばこ
)
すぱすぱ
長烟管
(
ながぎせる
)
に
立膝
(
たてひざ
)
の
無沙法
(
ぶさはう
)
さも
咎
(
とが
)
める人のなきこそよけれ
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
曙山さんは
懐紙
(
ふところがみ
)
で顔をあおぎながら
立膝
(
たてひざ
)
をして、お膳の前の大ざぶとんの上に座り直した。
旧聞日本橋:19 明治座今昔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
立膝
(
たてひざ
)
をして、
蒼白
(
あおじろ
)
く不健康に痩せた顔をひきつらせ、ぎらぎらするような眼であたりを
睨
(
にら
)
みまわし、そうして
劈
(
つんざ
)
くような声で喚きたてる、——他の客たちはみな離れて、膝を抱えてうなだれたり
雨あがる
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
……
勿論
(
もちろん
)
寐
(
ね
)
もせず、
枕元
(
まくらもと
)
へ
例
(
れい
)
の
紫縞
(
むらさきじま
)
のを
摺
(
ず
)
らして、
落着
(
おちつ
)
かない
立膝
(
たてひざ
)
で
何
(
なに
)
を
聞
(
き
)
くとも
無
(
な
)
く
耳
(
みゝ
)
を
澄
(
す
)
ますと、
谿河
(
たにがは
)
の
流
(
ながれ
)
がざつと
響
(
ひゞ
)
くのが、
落
(
お
)
ちた、
流
(
なが
)
れた、
打当
(
ぶちあ
)
てた、
岩
(
いは
)
に
砕
(
くだ
)
けた、
死
(
しん
)
だ——と
聞
(
き
)
こえる。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
百右衛門すこしもひるまず左手で抜き合わすを鞠は踏み込んで両足を払えば百右衛門
立膝
(
たてひざ
)
になってもさらに弱るところなく、八重をめがけて
烈
(
はげ
)
しく切りつけ、武蔵ひやりとして左の肩に切り込めば
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
色の浅黒い
眉毛
(
まみえ
)
の濃い
大柄
(
おおがら
)
な女で、髪を
銀杏返
(
いちょうがえ
)
しに
結
(
ゆ
)
って、
黒繻子
(
くろじゅす
)
の
半襟
(
はんえり
)
のかかった
素袷
(
すあわせ
)
で、
立膝
(
たてひざ
)
のまま、
札
(
さつ
)
の
勘定
(
かんじょう
)
をしている。札は十円札らしい。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
女は
立膝
(
たてひざ
)
して何事をか訴へ
引留
(
ひきと
)
むるが如く
寄添
(
よりそ
)
へば、男は決然と立つて
袴
(
はかま
)
の
紐
(
ひも
)
を結び直しつつも心引かるる
風情
(
ふぜい
)
にて打仰ぐ女の顔をば上より
斜
(
ななめ
)
に見下ろしたり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
駕籠
(
かご
)
で飛ばして行くと、吉原で
花魁
(
おいらん
)
がたてひいたんだと、紳士になってからも、湯上りにはすっかり形式をかなぐりすてて、裸になって、手拭を肩へかけ、
立膝
(
たてひざ
)
でお酒をのんで、土用のうちでも
旧聞日本橋:23 鉄くそぶとり(続旧聞日本橋・その二)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
白
(
しろ
)
い
乳
(
ちゝ
)
を
出
(
だ
)
して
居
(
ゐ
)
るのは
胸
(
むね
)
の
處
(
ところ
)
ばかり、
背向
(
うしろむき
)
のは
帶
(
おび
)
の
結目許
(
ゆひめばか
)
り、
疊
(
たゝみ
)
に
手
(
て
)
をついて
居
(
ゐ
)
るのもあつたし、
立膝
(
たてひざ
)
をして
居
(
ゐ
)
るのもあつたと
思
(
おも
)
ふのと
見
(
み
)
るのと
瞬
(
またゝ
)
くうち、ずらりと
居並
(
ゐなら
)
んだのが
一齊
(
いつせい
)
に
私
(
わたし
)
を
見
(
み
)
た
怪談女の輪
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
細帯もしめず洗いざらしの
浴衣
(
ゆかた
)
の前も引きはだけたまま、鏡台の前に
立膝
(
たてひざ
)
して寝乱れた髪を
束
(
たば
)
ねている。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
立膝
(
たてひざ
)
をしたまま、左の手で
座蒲団
(
ざぶとん
)
を
捲
(
めく
)
って、右を差し込んで見ると、思った所に、ちゃんとあった。あれば安心だから、蒲団をもとのごとく
直
(
なお
)
して、その上にどっかり
坐
(
すわ
)
った。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
細帯しどけなき
寝衣姿
(
ねまきすがた
)
の女が、
懐紙
(
かいし
)
を口に
銜
(
くわえ
)
て、例の
艶
(
なまめ
)
かしい
立膝
(
たてひざ
)
ながらに手水鉢の柄杓から水を汲んで手先を洗っていると、その
傍
(
そば
)
に置いた
寝屋
(
ねや
)
の
雪洞
(
ぼんぼり
)
の光は
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
二人は
座蒲団
(
ざぶとん
)
を敷く余地もない一番
後
(
うしろ
)
の方に、
立膝
(
たてひざ
)
をするように割り込まして貰った。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この周囲と一致して日本の女の最も刺㦸的に見える瞬間もやはり夏の夕、
伊達巻
(
だてまき
)
の細帯にあらい
浴衣
(
ゆかた
)
の
立膝
(
たてひざ
)
して湯上りの薄化粧する夏の
夕
(
ゆうべ
)
を除いて
他
(
た
)
にはあるまい。
夏の町
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「
主
(
ぬし
)
ァ、まだ起きていなんしたのかい。おや何を書いていなます。
何処
(
どこ
)
ぞのお馴染へ上げる
文
(
ふみ
)
でありんしょう。見せておくんなんし。」と
立膝
(
たてひざ
)
の
長煙管
(
ながぎせる
)
に種員が大事の創作を
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
刎返
(
はねかえ
)
した重い夜具へ背をよせかけるように、そして
立膝
(
たてひざ
)
した
長襦袢
(
ながじゅばん
)
の膝の上か、あるいはまた
船底枕
(
ふなぞこまくら
)
の横腹に懐中鏡を立掛けて、かかる場合に用意する
黄楊
(
つげ
)
の
小櫛
(
おぐし
)
を取って先ず二、三度
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
煙草すぱすぱ
長煙管
(
ながギセル
)
に
立膝
(
たてひざ
)
の
無作法
(
ぶさほう
)
さも
咎
(
とが
)
める人のなきこそよけれ。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
“立膝(
蹲踞
)”の解説
蹲踞(そんきょ、そんこ)とは、体を丸くしてしゃがむ、または膝を折り立てて腰を落とした立膝をつく座法。相撲や剣道などの武道において終始の礼として実施され、神道においても儀式作法となっている日本の伝統的姿勢である。なお、柔道では大正時代以降に立礼が採用されるようになり、競技化・国際化とともに立礼が一般化した。
(出典:Wikipedia)
立
常用漢字
小1
部首:⽴
5画
膝
常用漢字
中学
部首:⾁
15画
“立”で始まる語句
立
立派
立退
立停
立場
立上
立出
立竦
立籠
立塞