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紫縞
而して
誰も
居ない
八畳の
真中に、
其の
双六巌に
似たと
言ふ
紫縞の
座蒲団が
二枚、
対坐に
据えて
有つたのを
一目見ると、
天窓から
水を
浴びたやうに
慄然とした。
……
勿論寐もせず、
枕元へ
例の
紫縞のを
摺らして、
落着かない
立膝で
何を
聞くとも
無く
耳を
澄ますと、
谿河の
流がざつと
響くのが、
落ちた、
流れた、
打当てた、
岩に
砕けた、
死だ——と
聞こえる。