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矢張
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やは
ふりがな文庫
“
矢張
(
やは
)” の例文
「ぢやア
僕
(
ぼく
)
は帰るよ。もう………。」と
云
(
い
)
ふばかりで
長吉
(
ちやうきち
)
は
矢張
(
やは
)
り
立止
(
たちどま
)
つてゐる。その
袖
(
そで
)
をお
糸
(
いと
)
は軽く
捕
(
つかま
)
へて
忽
(
たちま
)
ち
媚
(
こび
)
るやうに
寄添
(
よりそ
)
ひ
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
御米
(
およね
)
の
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いて、
始
(
はじ
)
めて
一窓庵
(
いつさうあん
)
の
空氣
(
くうき
)
を
風
(
かぜ
)
で
拂
(
はら
)
つた
樣
(
やう
)
な
心持
(
こゝろもち
)
がした。
一
(
ひと
)
たび
山
(
やま
)
を
出
(
で
)
て
家
(
うち
)
へ
歸
(
かへ
)
れば
矢張
(
やは
)
り
元
(
もと
)
の
宗助
(
そうすけ
)
であつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
一と所脚の下に川を
瞰
(
み
)
る場所があって
矢張
(
やは
)
り木曾川と思っていたら、それは王滝川で、いつの間にか右へ廻り込んでいたのでした。
木曾御岳の話
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
海中に墜落しているのじゃないかと紫外線写真器でありとあらゆる洋上で撮影をやってみたのだが、
矢張
(
やは
)
り駄目だったというのでしたね
空中墳墓
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それは
矢張
(
やは
)
り身体に釣り合わない、女みたような声であった。しかし私は、その声を聞くと同時に何かしら安心した気持になった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
この
豐玉姫様
(
とよたまひめさま
)
と
言
(
い
)
われる
御方
(
おかた
)
は、
第
(
だい
)
一の
乙姫様
(
おとひめさま
)
として
竜宮界
(
りゅうぐうかい
)
を
代表
(
だいひょう
)
遊
(
あそ
)
ばされる、
尊
(
とうと
)
い
御方
(
おかた
)
だけに、
矢張
(
やは
)
りどことなく
貫禄
(
おもみ
)
がございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
恋は
矢張
(
やは
)
り
何時
(
いつ
)
までもプラトニックではあり得ず、観音様に寄せる思慕が、
何時
(
いつ
)
かは人間への恋に変るのに
何
(
な
)
んの不思議があるでしょう。
奇談クラブ〔戦後版〕:07 観音様の頬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
一種微妙な人間性を、直截簡潔の筆で描き、醒気を紙面へ
漲
(
みなぎ
)
らせたのは、小酒井さんとしては常套手段、それでいて
矢張
(
やは
)
り結構であります。
二つの作品
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
其処
(
そこ
)
へこう陣取りまして、五六
間
(
けん
)
離れた
処
(
ところ
)
に、その女郎屋の主人が居る。
矢張
(
やは
)
り同じように
釣棹
(
つりざお
)
を沢山やって、
角行燈
(
かくあんどう
)
をつけてたそうです。
夜釣の怪
(新字新仮名)
/
池田輝方
(著)
此
(
この
)
間も横浜まで見送りに来たとき、今度は那須君と一緒で本当にいいねと皮肉を云われて苦笑したが、こうして見ると
矢張
(
やは
)
り何となく寂しい。
続スウィス日記(千九百二十三年稿)
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
その他の船には
矢張
(
やは
)
り太鼓を打っている男が一人いて、その他の男は皆船を左右に動かしていた。
舷
(
ふなばた
)
に
殆
(
ほとん
)
ど水がはいる
位
(
くらい
)
に左右に動かしていた。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
夫れから同じ長州の藩士で
東条礼蔵
(
とうじょうれいぞう
)
と云う人も
矢張
(
やは
)
り私と同僚
飜訳方
(
ほんやくがた
)
で、小石川の
素
(
も
)
と
蜀山人
(
しょくさんじん
)
の
住居
(
すまい
)
と
云
(
い
)
う家に
住
(
すん
)
で居た。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
見ると、年若い助手の久吉も、
矢張
(
やは
)
り気が
顛倒
(
てんとう
)
したものか、
歪
(
ゆが
)
んだ顔に、血走った眼を光らせながら、夢中になって、カマに石炭を
抛込
(
なげこ
)
んでいる。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
矢張
(
やは
)
り
僕
(
ぼく
)
の
友人
(
いうじん
)
だが、——
今度
(
こんど
)
は
男
(
をとこ
)
だが——
或奴
(
あるやつ
)
から
少
(
すこ
)
し
取
(
と
)
るべき
金
(
かね
)
があるのに、どうしてもよこさない。いろ/\
掛合
(
かけあ
)
つて
見
(
み
)
たが
埓
(
らち
)
があかない。
ハガキ運動
(旧字旧仮名)
/
堺利彦
(著)
よう
似
(
に
)
た、お
前樣
(
まへさま
)
と
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
で、
然
(
さ
)
る
婦
(
をんな
)
にあひゞきに
參
(
まゐ
)
るので、
此處
(
こゝ
)
を、
此
(
こ
)
の
坂
(
さか
)
を、
矢張
(
やは
)
り、
向
(
むか
)
つて
下
(
した
)
から、うか/\と
上
(
あが
)
りかけたのでありました。
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
それから浦里時次郎も、——僕はあらゆる東京人のやうに芝居には悪縁の深いものである。従つて
矢張
(
やは
)
り小学時代から浦里時次郎を尊敬してゐた。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それが
矢張
(
やは
)
り、考え様によっては、その筋でも、おれの家のものを疑っていて、様子を探りに来るのかも知れないのだ
疑惑
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
我
(
わ
)
れも
矢張
(
やは
)
り
其中間
(
そのなかま
)
の一
枚板
(
まいヽた
)
にて
使
(
つか
)
ひ
道
(
みち
)
が
不向
(
ふむ
)
きなれども
流石
(
さすが
)
に
年
(
とし
)
の
功
(
こう
)
といふものか
少
(
すこ
)
しはお
前
(
まへ
)
さまより
人
(
ひと
)
が
惡
(
わ
)
るし
経つくゑ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
矢張
(
やは
)
り我々は同じに見えるかも知れないと思ったからさ、緑色のドレスは今年の
流行
(
はやり
)
で、大抵の若い女は着るからね。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
日本人
(
にほんじん
)
が
歐文
(
おうぶん
)
を
飜譯
(
ほんやく
)
するとき、
年紀
(
ねんき
)
や
所在地
(
しよざいち
)
の
書
(
か
)
き
方
(
かた
)
は、これを
日本流
(
にほんりう
)
に
大
(
だい
)
より
小
(
せう
)
への
筆法
(
ひつぱふ
)
に
直
(
なほ
)
すが、
固有名
(
こゆうめい
)
は
矢張
(
やは
)
り
尊重
(
そんちよう
)
して
彼
(
かれ
)
の
筆法
(
ひつぱふ
)
に
從
(
したが
)
ふのである。
誤まれる姓名の逆列
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
一人だから、社会にはなつてはゐないが、社会をつくるといふ心持は
矢張
(
やは
)
り一人でもあると思ふ。だから、何うしても根本は自己、個人といふことになる。
社会劇と印象派
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
それでは
矢張
(
やは
)
り、実家の破産という憂愁が、あのひとをあんなにひどく変化させてしまっていたのに違いない。
水仙
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
秋の半ばになってもまだ四辺を深く木立が囲んで居るので、油断のならない程、大粒な縞蚊などが絶えないので夏のまま、
矢張
(
やは
)
り
青蚊帳
(
あおがや
)
を釣るのであった。
かやの生立
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「其処ですよ、理想よりか実際の
可
(
い
)
いほうが可いというのは。覚悟はしていたものの
矢張
(
やは
)
り余り感服しませんでしたねエ。第一、それじゃア
痩
(
や
)
せますもの」
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
森君が考え事をしている時に、うっかり話しかけると怒るので、僕も
矢張
(
やは
)
り黙って肩を並べて歩いて行った。
贋紙幣事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
天然痘といった風なものが
流行
(
はや
)
らなかったかなどということを、どうも
矢張
(
やは
)
りただの好奇心とは思われないような身の入れ方で根掘り葉掘り質問したものだ。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
鏡花氏は熱い
磐若湯
(
はんにゃとう
)
を飲んで、少し昂奮しておられたが、
矢張
(
やは
)
り熱心な怪談の聴者の一人であった。
友人一家の死
(新字新仮名)
/
松崎天民
(著)
玄竹
(
げんちく
)
は
本殿
(
ほんでん
)
に
昇
(
のぼ
)
つて、
開帳中
(
かいちやうちう
)
の
滿仲公
(
みつなかこう
)
の
馬上姿
(
ばじやうすがた
)
の
武裝
(
ぶさう
)
した
木像
(
もくざう
)
を
拜
(
はい
)
し、これから
別當所
(
べつたうしよ
)
へ
行
(
い
)
つて、
英堂和尚
(
えいだうをしやう
)
の
老體
(
らうたい
)
を
診察
(
しんさつ
)
した。
病氣
(
びやうき
)
は
矢張
(
やは
)
り
疝癪
(
せんしやく
)
の
重
(
おも
)
つたのであつた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
矢張
(
やは
)
り野蛮人にも及ばぬ猫のことなれば、
其
(
その
)
好む所の色は燃ゆるが如き赤色であるらしい、併し是れは
確乎
(
かくこ
)
としたことは言えないが、数回の調査は殆ど一致して居るから
猫と色の嗜好
(新字新仮名)
/
石田孫太郎
(著)
一心に沖を見ていた為吉は、ふと心づいてあたりを
見廻
(
みまわ
)
しました。浜には
矢張
(
やは
)
り誰もいませんでした。何の物音もなく、村全体は、深い昼寝の夢にふけっているようでした。
少年と海
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
手紙を読む度にほつと胸を安めながら
矢張
(
やは
)
り忘れることの出来ないのは子供の
上
(
うへ
)
である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
それで我々を
此処
(
ここ
)
から立退かせるために、こんな怪談を仕組んだのです。——現場を押えて改心を勧めようと思ったのですが、
矢張
(
やは
)
り博士としては生きていられなかったのでしょう
廃灯台の怪鳥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
講談師の話によると、其角が
煤竹売
(
すゝだけうり
)
の大高源吾に出会つたのも
矢張
(
やは
)
り両国橋の上だつたといふ事だから、其角といふ男は、
閑
(
ひま
)
さへあれば両国橋の上をうろ/\してゐたものと見える。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
其
(
その
)
場合には
矢張
(
やは
)
り一般の
盗賊
(
ぬすびと
)
の如くに、
成
(
なる
)
べく
白昼
(
ひる
)
を避けて夜陰に忍び込み、鶏や米や魚や手当り次第に
攫
(
さら
)
って行く。
其
(
そ
)
の
素捷
(
すばや
)
いことは
所謂
(
いわゆる
)
猿
(
ましら
)
の如くで、容易に
其
(
その
)
影を捕捉することは
能
(
でき
)
ぬ。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その場所は
和泉橋
(
いずみばし
)
を入ったところの
仲徒士町
(
なかおかちまち
)
とだけ言っておこう。今も住んでいるのが、つまり
明々白地
(
あからさま
)
に言うのを
憚
(
はばか
)
る
所以
(
ゆえん
)
でもあるのだが、その年代の調査は前同様
矢張
(
やは
)
り新しい部に属する。
白い光と上野の鐘
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
老人はクスンと鼻を一つこすっただけで、
矢張
(
やは
)
り何とも云わなかった。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
けれど、答えるときになると、いつも
矢張
(
やは
)
りしどろになった。室殿はそれをまた、
世馴
(
よな
)
れない、奉公馴れない、彼女の良さとでも見ているように、ときにはわざと、からかったりするのであった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ふしぎに思いながら
矢張
(
やは
)
り黙って眺めながら歩いていました。
ゆめの話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
人心はそこまで調べた奉行所へは、
矢張
(
やは
)
り信頼をもちまする。
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
……その時に正木博士は、やはり、今日と同じように離魂病の説明を聴かしてくれたのであるが、その説明は
矢張
(
やは
)
り真実であったのだ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
従来の戦術から順を追って牛歩
乃至
(
ないし
)
一歩を進めた戦術であり、
矢張
(
やは
)
り伝統を経て
僅
(
わずか
)
にそれを改良した兵器に過ぎないのである。
ヒトラーの健全性
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「お豊、つまらねえ事を言うな、相手は御老中やお奉行、こちとらは側へも寄れるこっちゃ無い、
矢張
(
やは
)
り諦めて、一緒に死んでくれないか」
礫心中
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
『まあよかった……。』その
時
(
とき
)
私
(
わたくし
)
はそう
思
(
おも
)
いました。いよいよとなると、
矢張
(
やは
)
りまだ
気
(
き
)
おくれがして、
少
(
すこ
)
しでも
時刻
(
じこく
)
を
延
(
の
)
ばしたいのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
氷嚢
(
こほりぶくろ
)
が
生憎
(
あいにく
)
無
(
な
)
かつたので、
清
(
きよ
)
は
朝
(
あさ
)
の
通
(
とほ
)
り
金盥
(
かなだらひ
)
に
手拭
(
てぬぐひ
)
を
浸
(
つ
)
けて
持
(
も
)
つて
來
(
き
)
た。
清
(
きよ
)
が
頭
(
あたま
)
を
冷
(
ひ
)
やしてゐるうち、
宗助
(
そうすけ
)
は
矢張
(
やは
)
り
精一杯
(
せいいつぱい
)
肩
(
かた
)
を
抑
(
おさ
)
えてゐた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
特に見たいと思ったのは、
矢張
(
やは
)
りビール瓶を自動的に箱につめこむ工場だった。まったくそれは実に大仕掛けの機械だった。
地獄街道
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
五日を経て再び中村君と途中で一所になって、共に塔へ登った時、不思議にも小倉君が来て、此山が
矢張
(
やは
)
り天文台からも見えることを話された。
望岳都東京
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
しかし彼女は
側目
(
わきめ
)
も振らずに(しかも僕に見られてゐることをはつきり承知してゐながら)
矢張
(
やは
)
り
毬
(
まり
)
をつき続けてゐた。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ソンナ事を議論したり理窟を述べたりする学者も、
矢張
(
やは
)
り同じことで、世間
並
(
なみ
)
に俗な
馬鹿毛
(
ばかげ
)
た野心があるから
可笑
(
おか
)
しい。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
そんなことを、ゆっくりゆっくり
喋
(
しゃべ
)
りながら、目は
矢張
(
やは
)
り天井を見つめたまま、彼の指先だけが、奇妙な昆虫の触角の様に、何物かを求めて動いた。
五階の窓:01 合作の一(発端)
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
矢張
(
やは
)
り背ろむきになったまま、雪の絶壁と、にらめっこをしたままの数珠つなぎで、一息ついたが、今考えてもあまりいい恰好ではなかったようだ。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
矢
常用漢字
小2
部首:⽮
5画
張
常用漢字
小5
部首:⼸
11画
“矢張”で始まる語句
矢張大根卸