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椀
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わん
ふりがな文庫
“
椀
(
わん
)” の例文
しかしあの
逞
(
たくま
)
しいムツソリニも一
椀
(
わん
)
の「しるこ」を
啜
(
すゝ
)
りながら、
天下
(
てんか
)
の
大勢
(
たいせい
)
を
考
(
かんが
)
へてゐるのは
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
想像
(
さうぞう
)
するだけでも
愉快
(
ゆくわい
)
であらう。
しるこ
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あやしげな
鯛
(
たい
)
、
長芋
(
ながいも
)
のお
椀
(
わん
)
、こぶ巻、ご
馳走
(
ちそう
)
といっても、そんな程度だが、倹約家の土肥半蔵にしては、大散財のつもりなのである。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
間斷
(
かんだん
)
なく
消耗
(
せうまう
)
して
行
(
ゆ
)
く
肉體
(
にくたい
)
の
缺損
(
けつそん
)
を
補給
(
ほきふ
)
するために
攝取
(
せつしゆ
)
する
食料
(
しよくれう
)
は一
椀
(
わん
)
と
雖
(
いへど
)
も
悉
(
こと/″\
)
く
自己
(
じこ
)
の
慘憺
(
さんたん
)
たる
勞力
(
らうりよく
)
の一
部
(
ぶ
)
を
割
(
さ
)
いて
居
(
ゐ
)
るのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
新郎の母者人が「ドウカお
吸物
(
すいもの
)
を」との
挨拶
(
あいさつ
)
が無い前に、勝手に
吸物
(
すいもの
)
椀
(
わん
)
の蓋をとって、
鱚
(
きす
)
のムスビは残して
松蕈
(
まつだけ
)
とミツバばかり食った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
ガラクタといっても大家で、
膳
(
ぜん
)
椀
(
わん
)
も布団も立派に使えるものばかり。土蔵へ行くのが面倒で、日用の雑器をここへ入れて置くのでしょう。
銭形平次捕物控:150 槍の折れ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
で、朝はわざと
茶碗
(
ちゃわん
)
の洗い方や
椀
(
わん
)
の拭き方にひまをかけて、ひとり遅れて行くようにしたり、裏口からこっそりと一人で出かけたりした。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
二人ともまだ衣裳をつけていた——一人はトルコ
頭巾
(
ずきん
)
を巻き、いま一人はだちょうの羽根飾りのついたお
椀
(
わん
)
帽子をかぶったまま。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
へゝゝ
不断
(
ふだん
)
やりつけてるもんですから……(一
口
(
くち
)
飲
(
の
)
んで
猪口
(
ちよこ
)
を下に置き)
有難
(
ありがた
)
う
存
(
ぞん
)
じます、どうも……。小「
冷
(
さめ
)
ない
中
(
うち
)
にお
吸
(
す
)
ひよ、お
椀
(
わん
)
を。 ...
心眼
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
裁きのことをなにかきくかと思ったが、もちろんそんなことは口にせず、やまどりが手に入ったから、
焙
(
あぶ
)
り焼きとお
椀
(
わん
)
にしましたと云った。
改訂御定法
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
どうかすると、一度すましたお
椀
(
わん
)
だの
箸
(
はし
)
だのを洗場へ持って行ったかと思うと、またのこのこそれを持って台所へひき返す。
石ころ路
(新字新仮名)
/
田畑修一郎
(著)
鶫うどん、鶫
蕎麦
(
そば
)
と蕎麦屋までが
貼紙
(
びら
)
を張る。ただし
安価
(
やす
)
くない。何の
椀
(
わん
)
、どの
鉢
(
はち
)
に使っても、おん
羮
(
あつもの
)
、おん
小蓋
(
こぶた
)
の見識で。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二本の徳利がついてゐたが、それも仲々すゝまない。大きい
椀
(
わん
)
は冷えた雑煮だつたが、これにもあまり手が出ないでゐる。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
「さあ、どうぞ、ここにお
椀
(
わん
)
がありますから、なんなら、いいお茶もあるだから、お茶をいっぱいいれて上げましょうか」
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
例
(
たと
)
へば
坏
(
つき
)
といふ
平
(
ひら
)
たいお
椀
(
わん
)
のようなもの、それに
蓋
(
ふた
)
のついたもの、またその
坏
(
つき
)
に
高
(
たか
)
い
臺
(
だい
)
のついた
高坏
(
たかつき
)
といふようなものなどたくさんありますが
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
しばらく待つと、黄筋入黒塗の
椀
(
わん
)
が運ばれてきた。なかは信州味噌を
漉
(
こ
)
した味噌汁である。
不躾
(
ぶしつけ
)
ながら、箸のさきで椀のなかを
掻
(
か
)
きまはしてみた。
たぬき汁
(新字旧仮名)
/
佐藤垢石
(著)
源叔父は
袂
(
たもと
)
をさぐりて竹の皮包取りだし握飯一つ
撮
(
つま
)
みて紀州の前に突きだせば、乞食は
懐
(
ふところ
)
より
椀
(
わん
)
をだしてこれを受けぬ。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
豊
(
とよ
)
は碁石の
清拭
(
きよぶ
)
きせよ。
利介
(
りすけ
)
はそれそれ
手水鉢
(
ちょうずばち
)
、糸目の
椀
(
わん
)
は
土蔵
(
くら
)
にある。
南京
(
なんきん
)
染付け
蛤皿
(
はまぐりざら
)
、それもよしかこれもよしか、光代、光代はどこにいる。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
一、詩歌の小集あらん時吟詠ならざるものは、
金谷
(
きんこく
)
の罰を用ゆる時は
酗䤄
(
くめん
)
厭
(
いと
)
ふべし、
姑
(
しばら
)
く月川七
椀
(
わん
)
の倍数を茶に換ふべし
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
庸三は
鮎
(
あゆ
)
の
魚田
(
ぎょでん
)
に、お
椀
(
わん
)
や
胡麻酢
(
ごます
)
のようなものを三四品取って、食事をしてから、間もなくタキシイを
傭
(
やと
)
ってもらった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
最初の起こりは
膳
(
ぜん
)
椀
(
わん
)
のような、きまった食器がケであって、それで食べる食事だけを、朝け夕けといったらしいことは
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
灸は
顎
(
あご
)
をひっ込めて少しふくれたが、直ぐまた黙って箸を持った。彼の
椀
(
わん
)
の中では青い野菜が
凋
(
しお
)
れたまま泣いていた。
赤い着物
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
お舟のやうなお皿には、じやがいもと、
莢
(
さや
)
ゑんどうと、
人蔘
(
にんじん
)
との煮付が盛られ、赤い
椀
(
わん
)
には、三ツ葉と
鶏卵
(
たまご
)
のお
汁
(
つゆ
)
が、いい
匂
(
にほ
)
ひを立ててゐるのです。
母の日
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
一日の寒気に凍え切った肉体はすぐ熱を吹き出して、顔などはのぼせ上がるほどぽかぽかして来る。ふだん着の軽い暖かさ、一
椀
(
わん
)
の熱湯の味のよさ。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
さて、この村から
一
(
ひ
)
と
条
(
すじ
)
に
浄法寺
(
じょうほうじ
)
へとぬける街道がある。今でもそうだが、多くの者が
椀
(
わん
)
だとか
片口
(
かたくち
)
だとか木皿だとかを
担
(
にな
)
って
市日
(
いちび
)
へと出かけてゆく。
陸中雑記
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
大きな、底の浅い
鍋
(
なべ
)
の御飯を、椰子の実のお
椀
(
わん
)
にとりわけ、右手を上手に使って、手づかみで食べているのだった。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
日本料理の御馳走はお膳の番をしているのだ。熱い
吸物
(
すいもの
)
を長く置いても冷めないように木の
椀
(
わん
)
へ盛ってある。あれをいきなり飲んだら舌を
焦爛
(
やけど
)
するぜ。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
朝起きた時は
蒼
(
あお
)
い顔を
為
(
し
)
ていた。朝飯をも一
椀
(
わん
)
で止した。なるたけ時雄の顔に逢うのを避けている様子であった。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
猪口
(
ちょく
)
の
白
(
しら
)
あえ、
椀
(
わん
)
の豆腐のあんかけ、
皿
(
さら
)
の玉子焼き、いずれも吉左衛門の時代から家に残った
器
(
うつわ
)
に盛られたのが、勝手の方から順にそこへ運ばれて来た。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
姥
(
うば
)
の幾が浪子について来しすら「
大家
(
たいけ
)
はどうしても違うもんじゃ、武男が五器
椀
(
わん
)
下げるようにならにゃよいが」
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
春慶塗
(
しゅんけいぬり
)
の
膳
(
ぜん
)
の上に来る
蛾
(
が
)
を追いながらお久があおいでいてくれる
団扇
(
うちわ
)
の風を浴衣に受けて、要は吸い物
椀
(
わん
)
の中に浮いているほのかな
早松茸
(
さまつだけ
)
の匂いを嗅いだ。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それを取出しその蓋を明けてこれを取出して喰うです。それを喰うには竹で拵えた
椀
(
わん
)
のようなもので喰うです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
それに
徳利
(
とくり
)
や
椀
(
わん
)
などを入れた
魚籃
(
びく
)
を掛け、一人は
莚包
(
むしろづつみ
)
を右の
小脇
(
こわき
)
に抱え、左の小脇に
焼明
(
たいまつ
)
の束を抱えていた。
赤い土の壺
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
つぎにお
菜箸
(
さいばし
)
で食器の中に残っているものをのこらず一つの器にとり、
椀
(
わん
)
、
茶碗
(
ちゃわん
)
、皿、小皿というように、それぞれに重ねて盆にのせ、流しのそばにはこび
女中訓
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
そうでもしないと、たとえばこの食卓のうえに味噌汁のはいった
椀
(
わん
)
がおいてあったとして、お椀をこういう
工合
(
ぐあい
)
に、手にとって口のところへ持ってくるんだ。
大宇宙遠征隊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
いくら放任教育でも
有繋
(
さすが
)
にお客の
肴
(
さかな
)
を
掠奪
(
りゃくだつ
)
するを
打棄
(
うっちゃ
)
って置けないから、そういう時は自分の膝元へ引寄せてお
椀
(
わん
)
の
蓋
(
ふた
)
なり
小皿
(
こざら
)
なりに肴を取分けて陪食させた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
不思議の因縁でおれの養女分にして嫁
入
(
いら
)
すればおれも一トつの
善
(
よ
)
い功徳をする事ぞとホク/\喜び、
忽
(
たちま
)
ち下女下男に、ソレ
膳
(
ぜん
)
を出せ
椀
(
わん
)
を出せ、アノ
銚子
(
ちょうし
)
を出せ
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「見ず知らずの人は一
椀
(
わん
)
の麥飯も喰はしては呉れない。只では汽車にも汽船にも乘せて呉れはしない。」
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
この男の下郎にひどく煙草の
脂
(
やに
)
が好きなのがあつて、
閑
(
ひま
)
さへあると、
色々
(
いろん
)
な人から
煙管
(
きせる
)
の
脂
(
やに
)
を貰ひ集めて、それを
椀
(
わん
)
に盛つて
覆盆子
(
いちご
)
でも味はふやうに食べてゐた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
と、晩飯の食堂で室長に私は
叱
(
しか
)
られて、お
椀
(
わん
)
と
杓子
(
しやくし
)
とを持つたまゝ、
耳朶
(
みゝたぶ
)
まで
赧
(
あか
)
くなつた顔を伏せた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
椀
(
わん
)
にくんだ水で食後の口を洗った戸田老人は、ごま塩の長い眉毛をつきだして大野順平に話しかけた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
一人のお酒に酔った若い者がほほの木の葉でこしらへたお
椀
(
わん
)
のやうなものに顔をつっ込んで何か喰べてゐます。紺三郎が白い
袴
(
はかま
)
をはいて向ふで見てゐるけしきです。
雪渡り
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
彼女は
小
(
ち
)
さい朱塗の
椀
(
わん
)
と小皿に盛った魚肉とを盆の上に
載
(
の
)
せて、横手にある六畳へ宵子を連れ込んだ。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この辺で俗伝に安珍清姫宅に宿り、飯を食えば
絶
(
はなは
)
だ
美
(
うま
)
し。
窃
(
ひそ
)
かに
覗
(
のぞ
)
くと清姫飯を盛る前必ず
椀
(
わん
)
を
舐
(
な
)
むる、その影
行燈
(
あんどん
)
に映るが蛇の相なり。怪しみ
惧
(
おそ
)
れて逃げ出したと。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
やがて男共は料理して
盛
(
さかん
)
にやったらしかった。なかなかうまいです少々
如何
(
いかが
)
ですかと
云
(
い
)
って。一
椀
(
わん
)
を予の所へ持て来たけれども。予は
遂
(
つい
)
に一口を試むるの勇気もなかった
牛舎の日記
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そのほかは青く剃りあげていたのへ、小さいお
椀
(
わん
)
を伏せて
恰好
(
かっこう
)
のよい三日月形を剃り残したのだ。
旧聞日本橋:02 町の構成
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「あの、三郎や、
牛乳
(
ちち
)
の残りがあるから、古いお
椀
(
わん
)
へ入れて持つておいでよ。」と云ひました。
身代り
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
片隅
(
かたすみ
)
の
焜炉
(
こんろ
)
で火を
焙
(
おこ
)
して、お
椀
(
わん
)
の
汁
(
しる
)
を適度に温め、すぐ
箸
(
はし
)
が
執
(
と
)
れるよう膳を
並
(
なら
)
べて帰って行く。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
はじめて野嵐の冷え渡るを覚えて目をさまし、それより千辛万苦して、わずかばかり離れたる横道の茶店にたどりつき、
蕎麦
(
そば
)
数
椀
(
わん
)
食したれば、身心はじめてわれにかえり
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
一
椀
(
わん
)
喉吻
(
こうふん
)
潤い、二椀
孤悶
(
こもん
)
を破る。三椀枯腸をさぐる。
惟
(
おも
)
う文字五千巻有り。四椀軽汗を発す。平生不平の事ことごとく毛孔に向かって散ず。五椀
肌骨
(
きこつ
)
清し。六椀
仙霊
(
せんれい
)
に通ず。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
正勝は大きな
椀
(
わん
)
に酒を
注
(
つ
)
いで紀久子のほうへぐっと差し出した。紀久子はすると、無表情のままでひと息に飲んだ。正勝も怪訝そうな顔表情を含んで、じっと紀久子を見た。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
“椀”の意味
《名詞》
飯や汁物などを盛るための食器。
(出典:Wiktionary)
“椀”の解説
椀(わん)とは、飯や汁物などを盛るための食器。土製、金属製、木製、石製のものがある。
木製のものを木偏の椀、陶磁器製のものは石偏の碗、金属製のものには金偏の鋺の字を用いる(また金椀:かなまり・かなわんとも呼ぶ)。
(出典:Wikipedia)
椀
漢検準1級
部首:⽊
12画
“椀”を含む語句
茶椀
吸物椀
木椀
一椀
飯椀
椀久
平椀
金椀
椀子
椀形
膳椀
汁椀
銀椀
椀盛
親椀
椀殻
南部椀
秀衡椀
塗椀
飯茶椀
...