とも)” の例文
して、その五百人あまりの門弟衆のうちで、素破と云ふとき先生と生死をともにすると云ふやうな者が、およそ幾人ぐらゐござるかな。
正雪の二代目 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
すると父が、憤然として『あの松尾屋と禍福をともにする』ということは意外であるといって、この時ばかりは十分不平の色を見せた。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
古く山行をともにした私の友人がついに山が好きになれなかったのは、たしかに山に登る労力がくだらぬものに思われた為に相違ありますまい。
登山談義 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
ここおいせいぐんものをして、(五三)萬弩ばんどみちはさんでふくせしめ、(五四)していはく、『くれがるをともはつせよ』
国芳も国貞もともに故人豊国翁の高弟だが、二人はまるで気性がちがい国芳は喧嘩けんかの好きな勇みな男いかさまその位の事はしかねまいて。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かの女が、アミクラーテとともにありて、かの全世界を恐れしめたる者の聲にも驚かざりきといふ風聞うはささへこれに益なく 六七—六九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
以前と違っておかやは母親を大切に致しますから、喜代之助は喜び、夫婦中睦なかむつましく、ともに文治郎の宅へ出入りをするようになりました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けだし聞く、大禹たいうかなえて、神姦鬼秘しんかんきひ、その形を逃るるを得るなく、温嶠おんきょうさいを燃して、水府竜宮、ともにその状を現わすを得たりと。
牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
わが祖先の諸霊よ! われらの上に来りてともに戦い、共にまもり給え。われら一家七名の者に、無限不尽の力を与え給わんことを!
海野十三敗戦日記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いかに頑愚ぐわんぐの手にありしとはいひながら、稀世きせいの宝玉鄙人ひじん一槌いつつゐをうけてほろびたるは、玉も人もともに不幸といふべしとかたられき。
後に白井は杉山を連れて、河内国かはちのくに渋川郡しぶかはごほり大蓮寺村たいれんじむらの伯父の家に往き、はさみを借りて杉山とともに髪をり、伏見へ出ようとする途中で捕はれた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
吉岡家といい、手前といい、武蔵はともに天を戴かざるの仇敵、その吉岡一門の方に、縄を解いて貰ったのも、何かの御縁かもわかりませぬ。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きゝかどの戸を明ればお松お花の兩人は藤三郎とともに雪まぶれに成しを打拂うちはらひて内に入お松は藤三郎をよりおろしければお時は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それから主人公たちは近所の人々を呼び集めて、この奇蹟的な死からよみがえった彼を見せて、もう一度それらの人々とその喜びをともにした。
同意の上にて悪事をともにしながら、己れが不利な時には、直ちに相手方を訴えて損失を免れようとする如き不徳を人民に教うるものであって
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
それぢや祝盃の主意を変へて、仮初かりそめにもああ云ふ美人と一所いつしよに居て寝食をともにすると云ふのが既に可羨うらやましい。そこを祝すのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
国の臣等とともに深い哀愁をいだき、諸共に発願して、三宝に祈念し、一の釈迦如来の像——太子と等身なるを作り、その功徳くどくを以て、御病平癒へいゆ
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
その夜またともに夢む。この度や蒋侯神、白銀の甲冑し、雪のごとき白馬にまたがり、白羽の矢を負いて親しくみずから枕にくだる。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それただここにおいてか、鬼と物とこれ相謀り、あればすなわちともにあるなり。鬼か影か、それ自運の力あることなし。もって養うをまつあるのみ
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
先生此逆境に立ちて、隻手羅曼ロマン主義の頽瀾たいらんを支へ、孤節こせつ紅葉こうえふ山人の衣鉢を守る。轗軻かんか不遇の情、独往大歩の意、ともに相見するにへたりと言ふ可し。
「鏡花全集」目録開口 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
第七十二条 国家の歳出歳入ノ決算ハ会計検査院これヲ検査確定シ政府ハノ検査報告トともこれヲ帝国議会ニ提出スヘシ
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
キシニョーフへ出て来て背嚢はいのうやら何やらを背負せおわされて、数千の戦友とともに出征したが、その中でおれのように志願で行くものは四五人とあるかなし
よつて母ととも遠江とほたふみ国井伊谷に至り、しうとの菅沼治郎右衛門忠久の家に寓す。後徳川家康の今川義元のもとに在るや、其の側に侍す。ついで義元の子氏真に仕ふ。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
□三月上巳の節句とて往来し、艾糕くさもちを作ておくる、石竹・薔薇ろうさばら罌粟けしともに花咲く、紫蘇生じ、麦みのにじ始て見ゆ。
「これを見ろ、わしのつくった殺人ガス放射器じゃ。よいか、これがおそろしかったら、わしと行動をともにしろ」
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
ともに天をいただくを恥じとするとか極端の言葉を用い、あるいは某が某女性と関係したる始末しまつ細々こまごまと記してある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
老齢のため何かと修繕代のかさむ自動車を一寸怨めしそうに見たが、もとよりそれは心からの恨みでは毛頭なくむしろ長い間、自分と苦難をともにして来たために
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
しかも景隆のの小なる、能の功を成すを喜ばず、大軍の至るをちてともに進めと令し、機に乗じて突至せず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それこそアントニオなれと告ぐるものあり。姫は直ちに我を引きて「ピアノ」の前に往き、ともに歌へと勸む。
なかだちは過し雪の日ぞかし」ともあれば「かくまでに師は恋しかりしかど、ゆめさらこの人を夫と呼びて、ともに他郷の地をふまんとは、かけても思ひよらざりしを ...
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
しかもそのあとには、生れて初めて異性と歓こびをともにするという、夢のようなすばらしい時間がある。彼は酔った、どうして酔わずにいることができるだろう。
七日七夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そうかと申して、親のかたきともに天を戴かずと申します、これを見のがして、私の孝道が立ちましょうか。
禁断の死針 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
話によれば、アブラハムとロトとは家畜を非常に豊富に有っていたので、土地は二人をともに居らしめることは出来なかった。そこで彼らの牧者の間に争いが生じた。
彼らの妾を敬慕すること、かのいわゆる娑婆しゃばにおける学校教師と子弟との情は物かは、ともにこの小天地に落ちぬるちょう同情同感の力もて、く相一致せる真情は
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
この事は邵弧しょうこの話と同じくとも明末みんまつの事であるが、いずれが前、いずれが後ということは解らない。
五通 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
放ち、諸の聖衆とともに来つて、引接し擁護したまふなり。惑障相隔てて見たてまつることあたはずといへども、大悲の願疑ふべからず。決定して此の室に来入したまふなり。
美の日本的源泉 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
が人の口はうるさいし、どっちも商売ともに栄えよかしである。わが国パン食将来の隆盛のためにここに三軒、軒をならべ店を向い合っておのがじしはげむがよろしい。
新古細句銀座通 (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
かへしなをかふれどそでなみだれんともせずもすればわれともにと決死けつし素振そぶり油斷ゆだんならずなにはしかれいのちありてのものだねなりむすめこゝろ落附おちつかすにくはなしとしては婚儀こんぎ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その、来いッ! が終った秒間びょうかん、フッ! 喬之助の吹く息とともに、落ちた——漆黒しっこく闇黒やみが室内に。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼は初め、「焼炭カルボナリー」の革命社に投ぜり、しこうしてその社のともに天下の大事を謀るに足らざるを以て、同三十二年、仏国マルセーユにおいて、「少年伊太利ヨング・イタリー」を組織せり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ひげへても友達ともだち同士どうしあひだ無邪氣むじやきなもので、いろ/\のはなしあひだには、むかしとも山野さんや獵暮かりくらして、あやまつ農家ひやくしやうや家鴨あひる射殺ゐころして、から出逢であつたはなしや、春季はる大運動會だいうんどうくわい
日常の坐臥進退にも、その本尊は常にかれとともにあつた。かれと倶に笑つた。かれと供に語つた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
故に之を名づけて目利真角嘉和良めりまつのかわらと謂ふ。年十四歳の時、祖母天仁屋及び母真嘉那志に相随あいしたがひて、ともに白雲に乗りて天にのぼる。後年屡〻しばしば目利真山に出現して、霊験を示す。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
我が愛するものよ、愛すると信ぜずには余りに辛い者よ、貴方は私を死ぬまで愛しては居てくれても、私の此の深い孤独から湧く寂寥と祈とをともにすることは出来ないのだ。
越年をともにせんことを言いでたる者なきにあらずといえども、これらは平素単に強壮と称するのみにして、衛生上何の心懸こころがけもなく、終日原野にでて労働に慣れし身を以て
大学生とはともに天をいたゞかず、というほどの意味がこもっていたのかも知れなかった。
現代忍術伝 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
当家こちらのお弟子さんが危篤ゆえしらせるといわれ、妻女はさてはそれゆえ姿をあらわしたかと一層いっそう不便ふびんに思い、その使つかいともに病院へ車をとばしたがう間にあわず、彼は死んで横倒よこたわっていたのである
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
「すなわち腰本治右衛門、まったお紋の方様、ともに天を戴きかねる佞人にござります」
それとともに歩く貞之進は、親く女と連立ったは初てなりその女は小歌なりで、嬉いような恥しいような、それで何だか落着ぬようで、往来ゆききの人に顔を隠したくあり見られたくあり
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
彼女については、今までの通りに帰ってくれることを望んでいたが、彼女の運命は鏡のうちに含まれていて、鏡と運命をともにしているのである。彼はそれについて更に焦燥を感じた。