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蒼黒
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あおぐろ
ふりがな文庫
“
蒼黒
(
あおぐろ
)” の例文
三輛目の三等客車の窓から、思い切り首をさしのべて五、六人の見送りの人たちへおろおろ会釈している
蒼黒
(
あおぐろ
)
い顔がひとつ見えた。
列車
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
蒼黒
(
あおぐろ
)
くむくんだ、
溺死者
(
できししゃ
)
のような相貌になり、手足は極端にまで痩せ、
瞼
(
まぶた
)
や
指趾
(
しし
)
は絶えず
顫戦
(
せんせん
)
し、唇からはよだれが垂れた。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
この子が何か答えるときは学者のアラムハラドはどこか
非常
(
ひじょう
)
に遠くの方の
凍
(
こお
)
ったように
寂
(
しず
)
かな
蒼黒
(
あおぐろ
)
い空を
感
(
かん
)
ずるのでした。
学者アラムハラドの見た着物
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
背景に船と
檣
(
ほばしら
)
と帆を大きく
描
(
か
)
いて、その余った所に、
際立
(
きわだ
)
って花やかな空の雲と、
蒼黒
(
あおぐろ
)
い水の色をあらわした前に、裸体の労働者が四五人いた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
頤骨
(
あごぼね
)
が
尖
(
とが
)
り、頬がこけ、
無性髯
(
ぶしょうひげ
)
がざらざらと
疎
(
あら
)
く黄味を帯び、その
蒼黒
(
あおぐろ
)
い
面色
(
かおいろ
)
の、
鈎鼻
(
かぎばな
)
が尖って、ツンと
隆
(
たか
)
く、小鼻ばかり
光沢
(
つや
)
があって
蝋色
(
ろういろ
)
に白い。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
もともとこちらの
世界
(
せかい
)
のことであるから、さまで
変
(
かわ
)
った
事件
(
こと
)
も
起
(
おこ
)
らぬ。
最初
(
さいしょ
)
ここへ
参
(
まい
)
った
時
(
とき
)
に
蒼黒
(
あおぐろ
)
かった
俺
(
わし
)
の
躯
(
からだ
)
がいつの
間
(
ま
)
にか
白
(
しろ
)
く
変
(
かわ
)
った
位
(
くらい
)
のものじゃ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
ただ、小倉や
門司
(
もじ
)
を隔てて、一衣帯水の海門の潮流が、
鯖
(
さば
)
の背のように、
蒼黒
(
あおぐろ
)
く、暮れかけているだけだった。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
セコチャンは、自分をのみ殺した湖の、
蒼黒
(
あおぐろ
)
い湖面を見下ろす墓地に、
永劫
(
えいごう
)
に眠った。白い旗が、ヒラヒラと、彼の生前を思わせる応援旗のようにはためいた。
死屍を食う男
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
さる旗本の古屋敷で、往来から見ても塀の上に
蒼黒
(
あおぐろ
)
い樹木の茂りが家を隠していた。かなり広い庭も、大木が造る影にすっかり
苔蒸
(
こけむ
)
して日中も夜のようだった。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
そして売場の前を通ってバルコニイへ出て、
濠端
(
ほりばた
)
の夜景を見ていた。五月のころでもあったろうか、街路樹の葉はすでに
蒼黒
(
あおぐろ
)
く
繁
(
しげ
)
っていて、軽い雨がふっていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私は
蒼黒
(
あおぐろ
)
い
頬
(
ほお
)
のすぼんだ小男の染之助の代りに、美しい維盛卿と逢ったのだから、先方が神妙に控えている
中
(
うち
)
は好かったけれど、その維盛卿が私の前で手を突いて
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
森君は犬の脚を高く上げて、爪の間に
西瓜
(
すいか
)
の種ほどの大きさに
脹
(
ふく
)
れている
蒼黒
(
あおぐろ
)
い蝨をつまんで、力一杯引張って
漸
(
ようや
)
くの事で引離して、地面に投げつけると踏み潰した。
贋紙幣事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
全身、
蒼黒
(
あおぐろ
)
くなりその上、
痩
(
やせ
)
さらばう骨の
窪
(
くぼ
)
みの皮膚にはうす紫の
隈
(
くま
)
まで、漂い出した中年過ぎの男は
脹
(
は
)
れ
嵩張
(
かさば
)
ったうしろ
頸
(
くび
)
の
瘤
(
こぶ
)
に背を
跼
(
くぐ
)
められ
侏儒
(
しゅじゅ
)
にして餓鬼のようである。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「ああ、ここでしんぼうをするんだ。」と、
下男
(
げなん
)
は
思
(
おも
)
いました。そして、
雪
(
ゆき
)
を
分
(
わ
)
け、
氷
(
こおり
)
を
破
(
やぶ
)
って、そのすきまから、
糸
(
いと
)
を
垂
(
た
)
れました。
氷
(
こおり
)
の
下
(
した
)
には
蒼黒
(
あおぐろ
)
い
水
(
みず
)
が
顔
(
かお
)
を
見
(
み
)
せていました。
北の国のはなし
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
引戸の前の
埃
(
ほこり
)
ッぽい土の上に
膝
(
ひざ
)
をついて、出て来るものを待ち受けていたのだ。ま上にはひろびろとしたあかるい空があり、地の上は
蒼黒
(
あおぐろ
)
く、窪み窪みからは夜がひろがっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
蒼黒
(
あおぐろ
)
い掌だけの指が、シッカリと軸を掴んでいるのだ、手首のところからすっぽりともげて、掌だけが、手袋のような恰好で……、手首の切れ目から、白い骨と
腱
(
けん
)
がむき出され、まだ
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
今日現存する肖像画によれば、豊麗な美人と言ってよい方であるが、実際は決して美しくはなく、背が低く色が
蒼黒
(
あおぐろ
)
く、不
恰好
(
かっこう
)
な鼻と、粗野な口とを持っていたとさえ伝えられている。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
それは山田稔とした
壮
(
わか
)
い俳優の自筆であった。広栄の顔は
蒼黒
(
あおぐろ
)
くなっていた。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
青根で甲斐と会ったとき、彼は肥えているようにみえたが、いまはひどく痩せているし、皮膚の色も
蒼黒
(
あおぐろ
)
く、
艶
(
つや
)
がなかった。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
坂を下り尽すとまた坂があって、小高い行手に杉の
木立
(
こだち
)
が
蒼黒
(
あおぐろ
)
く見えた。丁度その坂と坂の間の、谷になった
窪地
(
くぼち
)
の左側に、また一軒の
萱葺
(
かやぶき
)
があった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
まるっきりの、根っからの
戯作者
(
げさくしゃ
)
だ。
蒼黒
(
あおぐろ
)
くでらでらした大きい油顔で、鼻が、——君レニエの小説で僕はあんな鼻を読んだことがあるぞ。危険きわまる鼻。
ダス・ゲマイネ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
と見ると
鯱
(
しゃち
)
に似て、彼が城の天守に金銀を
鎧
(
よろ
)
った諸侯なるに対して、これは
赤合羽
(
あかがっぱ
)
を
絡
(
まと
)
った下郎が、
蒼黒
(
あおぐろ
)
い魚身を、血に底光りしつつ、ずしずしと揺られていた。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そなたも
知
(
し
)
る
通
(
とお
)
り、
多
(
おお
)
く
見受
(
みう
)
ける
竜神
(
りゅうじん
)
は
大
(
たい
)
てい
蒼黒
(
あおぐろ
)
い
色
(
いろ
)
をして
居
(
お
)
るであろうが……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
彼の頭には村はずれを流れている大川の早瀬が想い浮び、杉の
杜
(
もり
)
の裏にある沼の
淀
(
よど
)
んだ
蒼黒
(
あおぐろ
)
い水が見えるように思った。
日本婦道記:二十三年
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
館の前を
掩
(
おお
)
うように
聳
(
そび
)
えている
蒼黒
(
あおぐろ
)
い一本の松の木を右に見て、
綺麗
(
きれい
)
な
小路
(
こみち
)
をのそのそ歩いた。それでも
肝心
(
かんじん
)
の用事について、父は
一言
(
ひとこと
)
も云わなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
短い角刈にした小さい頭と、うすい眉と、
一重瞼
(
ひとえまぶた
)
の
三白眼
(
さんぱくがん
)
と、
蒼黒
(
あおぐろ
)
い皮膚であった。身丈は私より確かに五寸はひくかった。私は、あくまで茶化してしまおうと思った。
逆行
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
森なす
大芭蕉
(
おおばしょう
)
の葉の、沼の上へ
擢
(
ぬき
)
んでたのが、峰から
伸出
(
のしだ
)
いて
覗
(
のぞ
)
くかと、
頭
(
かしら
)
に高う、さながら馬の
鬣
(
たてがみ
)
のごとく、
譬
(
たと
)
えば長髪を乱した
体
(
てい
)
の、ばさとある
附元
(
つけもと
)
は、どうやら
痩
(
やせ
)
こけた
蒼黒
(
あおぐろ
)
い
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蒼黒
(
あおぐろ
)
く乾いた
皺
(
しわ
)
だらけの皮膚の下に、あらゆる骨が突き出ているようにみえ、腹部だけが不自然に大きく張っていた。
赤ひげ診療譚:02 駈込み訴え
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それから
天井
(
てんじょう
)
の真中から
蒼黒
(
あおぐろ
)
い色をした
鋳物
(
いもの
)
の
電灯笠
(
でんとうがさ
)
が下がっていた。今までついぞここに足を踏み込んだ
例
(
ためし
)
のない彼はわざとそこを通り越して横手へ廻った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そのお方がおひとりでぼんやりお宅の門の
傍
(
そば
)
に立っていらして、お母さまが自動車の窓からちょっと師匠さんにお会釈なさったら、その師匠さんの気むずかしそうな
蒼黒
(
あおぐろ
)
いお顔が
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
蛞蝓
(
なめくじ
)
の舌を出しそうな様子ですが、ふるえるほど寒くはありませんから、まず
可
(
い
)
いとして、その隅っ子の柱に
凭掛
(
よりかか
)
って、
遣手
(
やりて
)
という
三途河
(
さんずがわ
)
の婆さんが、
蒼黒
(
あおぐろ
)
い、
痩
(
や
)
せた脚を突出してましてね。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まるで酔いつぶれていた者が、そのまま起きて来たように、着物も
袴
(
はかま
)
も
皺
(
しわ
)
だらけで、乱れた髪毛が、血のけのない、
蒼黒
(
あおぐろ
)
く憔悴した顔にふりかかっていた。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
蒼黒
(
あおぐろ
)
い
地
(
じ
)
の中に茶の
唐草
(
からくさ
)
模様を浮かした重そうな窓掛、
三隅
(
みすみ
)
に
金箔
(
きんぱく
)
を置いた装飾用のアルバム、——こういうものの強い
刺戟
(
しげき
)
が、すでに明るい電灯の
下
(
もと
)
を去って
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「そいつあ、よかった。」記者は
蒼黒
(
あおぐろ
)
い
頬
(
ほお
)
に薄笑いを浮かべて、「それじゃ、あなたは、たしかにこの人を知っている
筈
(
はず
)
だ。」と
呆
(
あき
)
れるくらいに強く、きめつけるような口調で言い
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そこには高さ二尺幅一尺ほどの木の
枠
(
わく
)
の中に、
銅鑼
(
どら
)
のような形をした、銅鑼よりも、ずっと重くて厚そうなものがかかっていた。色は
蒼黒
(
あおぐろ
)
く貧しい
灯
(
ひ
)
に照らされていた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
顔色は
蒼黒
(
あおぐろ
)
く、骨のように
痩
(
や
)
せて、おちくぼんだ眼だけが大きく、生きている証拠のように、
慥
(
たし
)
かな光りと動きをもっていた。——掃部介信高は一昨年の冬、卒中で倒れた。
月の松山
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
蒼黒
(
あおぐろ
)
い両頬が桃の実のようにむっつりふくれた。彼はそれを酒ぶとりであると言って、こうからだが太って来ると、いよいよ危いのだ、と小声で附け加えた。私は日ましに彼と仲良くなった。
ダス・ゲマイネ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そこには
小
(
ち
)
さい岩が多少の
凸凹
(
とつおう
)
を描いて一面に
連
(
つら
)
なる間に、
蒼黒
(
あおぐろ
)
い
藻草
(
もくさ
)
が限りなく
蔓延
(
はびこ
)
っていた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
枯木のように
痩
(
や
)
せ、
蒼黒
(
あおぐろ
)
い顔をして、綿のはみ出た薄い蒲団にくるまって、はっはと苦しそうに
喘
(
あえ
)
いでいた。彼は又四郎を見ると黄色い歯をみせ、ひどくしゃがれた声でこう云った。
百足ちがい
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
直治は、十日ほど前に、南方の島から
蒼黒
(
あおぐろ
)
い顔になって
還
(
かえ
)
って来たのだ。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
一丈余りの
蒼黒
(
あおぐろ
)
い岩が、
真直
(
まっすぐ
)
に池の底から突き出して、
濃
(
こ
)
き水の折れ曲る
角
(
かど
)
に、
嵯々
(
ささ
)
と構える右側には、例の
熊笹
(
くまざさ
)
が
断崖
(
だんがい
)
の上から
水際
(
みずぎわ
)
まで、
一寸
(
いっすん
)
の
隙間
(
すきま
)
なく
叢生
(
そうせい
)
している。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は五尺あるかなしかの小男で、焦茶色にもなり
蒼黒
(
あおぐろ
)
くもなる顔色の、骨ばかりのように
痩
(
や
)
せた、そして鼻の下にちょび
髭
(
ひげ
)
を立てたという
風態
(
ふうてい
)
なんだ。少しばかりは出っ歯だったかもしれない。
陽気な客
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
十七、八の弟子がひとりいて、これは
蒼黒
(
あおぐろ
)
く痩せこけていた。散髪所と、うすいカアテンをへだて、洋風の応接間があり、二三人の人の話声が聞えて、私はその人たちをお客と見誤ったのである。
美少女
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
何時緑をとったか分らないような一本の松が、息苦しそうに
蒼黒
(
あおぐろ
)
い葉を垣根の
傍
(
そば
)
に茂らしている
外
(
ほか
)
に、木らしい木は
殆
(
ほとん
)
どなかった。
箒
(
ほうき
)
に
馴染
(
なず
)
まない地面は小石
交
(
まじ
)
りに
凸凹
(
でこぼこ
)
していた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
焦茶色のようでもあり
蒼黒
(
あおぐろ
)
いようでもある
痩
(
や
)
せた顔や思わせぶりなちょび髭も、ちっぽけなちょこまかした
躯
(
からだ
)
つきも、なにもかも急にいやらしく狡猾にみえ、おれは馘になった落胆もあろうが
陽気な客
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
蒼黒
(
あおぐろ
)
く
土気
(
つちけ
)
づいた色を、一心不乱に少女の頭の上に
乗
(
の
)
しかけるように
翳
(
かざ
)
して、
腸
(
はらわた
)
を
絞
(
しぼ
)
るほど恐ろしい声を出す。少女はまた
瞬
(
またた
)
きもせず、この男の方を見つめて、細い
咽喉
(
のど
)
を合している。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
吃驚
(
びっくり
)
したような眼と、伸ばした月代と、
蒼黒
(
あおぐろ
)
いような骨ばった顔を。
しじみ河岸
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
杉か
檜
(
ひのき
)
か分からないが
根元
(
ねもと
)
から
頂
(
いただ
)
きまでことごとく
蒼黒
(
あおぐろ
)
い中に、山桜が薄赤くだんだらに
棚引
(
たなび
)
いて、
続
(
つ
)
ぎ
目
(
め
)
が
確
(
しか
)
と見えぬくらい
靄
(
もや
)
が濃い。少し手前に
禿山
(
はげやま
)
が一つ、
群
(
ぐん
)
をぬきんでて
眉
(
まゆ
)
に
逼
(
せま
)
る。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ぶすっとそんなことを云って、
濁酒
(
どぶろく
)
に
焼酎
(
しょうちゅう
)
を入れたのを取って、それをすぐには飲もうともせず、
蒼黒
(
あおぐろ
)
いような疲れた顔を
俯向
(
うつむ
)
けて、なにかぶつぶつ独りで
呟
(
つぶや
)
いたり、なんども深い
太息
(
といき
)
をしたりする。
嘘アつかねえ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
仰向
(
あおむ
)
いて見たが、
日向
(
ひなた
)
はどこにも見えない。ただ日の落ちた方角がぽうっと明るくなって、その明かるい空を
背負
(
しょ
)
ってる山だけが目立って
蒼黒
(
あおぐろ
)
くなって来た。時は五月だけれども寒いもんだ。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
蒼
漢検準1級
部首:⾋
13画
黒
常用漢字
小2
部首:⿊
11画
“蒼”で始まる語句
蒼
蒼白
蒼空
蒼蠅
蒼褪
蒼然
蒼々
蒼穹
蒼味
蒼茫