もし)” の例文
ソコで其の片股かたももだけ買う事に決めて、相当のあたいを払い、もしも暇ならば遊びに来いと云うと、田舎漢いなかものの正直、其の夜再び出直して来た。
から、もし其頃誰かが面と向って私に然うと注意したら、私は屹度きっと、失敬な、惚なんぞするものか、と真紅まッかになっておこったに違いない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
『だから——』と準教員は言葉に力を入れて、『僕だつても事実だと言つた訳では無いサ。もし事実だと仮定すれば、と言つたんサ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
今一つ、度々やられるのは、パイチューファ三元牌さんげんパイとか荘風チョワンフォン門風メンフォン連風レンフォンの牌とかの二枚、もしくは四枚位を自分の持牌もちパイ中に加えることである。
麻雀インチキ物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
第八 冬日地中ヨリ発スル蒸気ヲ遏抑あつよくシ冬天以テ暗晦ヲ致サズ もし冬日ノ地気ヲシテほしいままくうニ満タシムレバ冬日更ニ昏暗ヲ致スベキナリ
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
もしくわいたる者も同志之者も御差別なく厳刑に相成候へ、天下正義之者たちまち朝廷を憤怨ふんゑんし、人心瓦解し、収拾すべからざる御場合と奉存候。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
此御歌イカナル御懽有テヨマセ給フトハシラネド、垂水ノ上トシモヨマセ給ヘルハ、もし帝ヨリ此処ヲ封戸ふごニ加へ賜ハリテ悦バセ給ヘル
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
(2) 勅令ちょくれいつぎノ会期ニおいテ帝国議会ニ提出スヘシもし議会ニおいテ承諾セサルトキハ政府ハ将来ニむかっノ効力ヲうしなフコトヲ公布スヘシ
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
我々は今迄議論以外もしくは以上の事として取扱はれてゐた「趣味」といふものに対して、もつと厳粛な態度をたねばならぬ。
弓町より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
しかし、若い青年の心に、この不用意な、もしくは極めて巧みに巧まれた、この言葉が、こうひびくのがどうしておかしかろう。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
又はこの病院に居りました患者の製作品、もしくは身の上に関係した物品書類なぞで、中には世界の学界に誇るに足るものがすくなくありませぬ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
食欲色欲ばかりで生きている人間は、まだ犬猫なみの人間で、それらに満足し、もしくはそれらを超越すれば、是非とも人間は骨董好きになる。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
療醫の見込も膏氣あぶらけ増長いたし血路けつろを塞循環じゆんくわん致候故、痛所も出來、もし脉路を塞ぎ脈路やぶれ候節は、即ち中風と申ものに候由。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
もしやと聞着けし車の音はやうやちかづきて、ますますとどろきて、つひ我門わがかどとどまりぬ。宮は疑無うたがひなしと思ひて起たんとする時、客はいとひたる声して物言へり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それにしても好いたのれたのというようなもしくはそれに似た柔くあたたかな感情を起し得るものとは、夢にも思って居なかった。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
きつて來りつゝ居合はせし善六に向ひたづぬる樣に昨日年頃としのころ十八九の女の黒縮緬くろちりめんに八丈の小袖を襲着かさねぎせしがもし此道筋このみちすぢを通りしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
或は考えように依っては、千七百五十米の峰かもしくは千八百五十二米の峰が旭ヶ岳であって、山塊の最高点は大烏帽子山ではないかとも取れる。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
人の霊魂は不覊ふき独立どくりつなもの、肉体一世の結合は彼もしくば彼女の永久の存在を拘束することは出来ないのですから、先生の生前、先生は先生の道
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
もし江戸にいださば朱門しゆもん解語かいごの花をさかせ、あるひは又青楼せいろう揺泉樹えうせんじゆさかえをなし、此隣国りんごく出羽にうまれたる小野の小町が如く美人びじんの名をもなすべきに
新「ヘエ、私もねえ先刻さっきからお見掛け申したような方と思ったが、もしも間違ってはいけねえと思って言葉を掛けませんでしたが、慥かお賤さんで」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ただ熱湯の恐るべきことを感じて湯の清澄なことを感じなかったのか、もしくはその時分は湯は多少濁っておったのか。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
だから丸善で売れる一日に百本の万年筆の九十九本迄は、尋常の人間の必要にせまられて机上きじょうもしくはポッケット内に備え付ける実用品と見て差支さしつかえあるまい。
余と万年筆 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
殺人罪さつじんざいかならずしも或見ゆべき原因によりて成立つものにあらざるなり、かならずしも酬報しゆうほう理論りろんもしくは勸善懲惡くわんぜんてふあく算法さんほうより割出わりだるものにあらざるなり
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
あだかも人のうなるような……いやうなるのだ。誰か同じくあしを負って、もしくは腹に弾丸たまって、置去おきざり憂目うきめを見ている奴が其処らにるのではあるまいか。
もしや昨夜の出来事は皆彼の幻覚に過ぎなかったのではないか。そんなことがしきりに考えられた。もう一度昼の光の下でたしかめて見ないでは安心が出来なかった。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
親子おやこもしくは夫婦ふうふ僅少わづか手内職てないしよくむせぶもつらき細々ほそ/\けむりを立てゝ世が世であらばのたんはつそろ旧時きうじの作者が一場いつぢやうのヤマとする所にそろひしも今時こんじは小説演劇を
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
もしも「エヽリツトル」とでもはうものならんなむづかしい質問しつもんはじまらないともかぎらないからであつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
彼等ガ牧師ノ一人タルろばとぶらおんノ勧メニ従ヒ、英国教会ヲ離レテソノ同志者トナリケレバ、人呼ンデ、彼等ヲ『分離派』もしクハ『ぶらおん派』トナセリ。
一枚は為替券もしくは小包に貼附ける物、あとに郵便局に残る小さな一枚が正本の大帳簿に相当する物である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
もし凪がずば、枕をこのかや屋根の下に安くして、波の音を聞くこと、昔子もり歌を聞きしが如くせんといふ。
もし左に武道具持たる時不如意ふにょいに候えば片手にて取なり、太刀を取候事とりそうろうこと初め重く覚ゆれども後は自由に成候なりそうろう
巌流島 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
人間は何でも覚えるといふ訳にはかないから、もしかするとケイの言つた事では無かつたかも知れぬが
考えれば考える程起る不審を、青年にただす勇気も持合せなかった。彼の正しい感じにれば、この恩人はあまりに疲れていた。もしくは虐げられていたようであった。
自殺を買う話 (新字新仮名) / 橋本五郎(著)
「五月ばかりにもずまろ、もろ/\の小鳥もしくは蛙などを捕りて、木の枝などに貫ぬき置くことあり。これもず速贄はやにえとは云ふなり。時鳥に借りしをわきまふると也」
もしまた醫學いがく目的もくてきくすりもつて、苦痛くつううすらげるものとすなれば、自然しぜんこゝに一つの疑問ぎもんしやうじてる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
以外の物質は、みなすべて、よくこれを摂取せっしゅして、脂肪しぼうもしくは蛋白質たんぱくしつとなし、その体内に蓄積ちくせきす。
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
見付輩、双方之家財を可下、もし又於路次見付者、たばこ並売主を其在所に押置可言上、則付たる馬荷物以下、改出すものに可下事。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
もしくは波浪にくだかれてしまったが、それでも現存している島、大なるは二、三町歩ちょうぶにわたり
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
また大佐たいさ電光艇でんくわうていとも世界せかい各港かくかうめぐり、一度ひとたび北亞米利加きたアメリカ沿岸えんがんいたつたならば、晩香坡ヴワンクーバー南街公園サウサルンストレートパークおいて、もしくば黄金門ゴルデンゲートひかりかゞや桑港サンフランシスコ廣野ひろばおいて——何處いづくにてもよし
都合次第に出来たものなら都合次第に破壊してもさしつかへのないものだと思ひます。人間の本性を殺すやうなもしくは無視するやうな道徳はどし/\壊してもいゝと思ひます。
S先生に (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
演壇または青天井の下で山犬のように吠立ほえたって憲政擁護を叫ぶ熱弁、もしくは建板たていたに水を流すようにあるいは油紙に火をけたようにペラペラしゃべり立てる達弁ではなかったが
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
彼は只、観客をわつと笑はす為にのみ、もしくは浮き立たす為にのみ、配合的に用ゐられるばかりだつた。これでは手品師の介添に出る、戯奴ジヨーカーに変らぬことを彼自身も知つてゐた。
(新字旧仮名) / 久米正雄(著)
随分困難して居たと云いますからもし夫等それらの話から自然の老人の事にでも移り——倉
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
其議論のはげしきつひに小西技師をして、国境論者こくけうろんしやは別隊をひきゐてべつ探検たんけんすべしとの語をはつせしむるにいたりたる程なりき、もし糧食れうしよくそなへ充分にして廿日以上の日子をつひやすの覚悟なりせば
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
劉孔当は閩の通事に就いてこの音釈を施しもしくは訂したというように見られまいか。
然るに其処そこに誤訳といふものがあればもしくは拙訳といふものがあれば、それは全くその目的を達し得ないのみならず、それが有害なものになる。さういふものは、むしろ無い方が良い。
翻訳製造株式会社 (新字旧仮名) / 戸川秋骨(著)
もし、この時分に、天下のゆるされも不足に、めいぼうも思ふほどなくは、如何いかなる上手なりとも、いまだまことの花を極めぬして(仕手)と知るべし。もし極めずは、四十より能はさがるべし。
もし、形式論をつきつめて行くとすれば、「あなにやし えをとこ」「やすみしゝ 大君」などの古い例さへ、「あなにや えをとこ」「やすみし 大君」から更に、領格的用語例の意識を
藩浪人もしくは非藩民となつたとき日本人が誕生したのであつて、現在は日本人であり他国に対する対立感情をもつてゐるが、要するに対立感情は文化の低さに由来し、部落の対立、藩の対立
咢堂小論 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
もし之れを事実とせば、一派論者の要求は当を得たりと言ふを得べきか。
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)