興奮こうふん)” の例文
はじめにかれがなにを言ったか、人びとがかれになにをたずねたか、わたしはひじょうに興奮こうふんしきっていたのでよくわからなかった。
強氣の長五郎は言ふ迄もなく、弱氣で柔和な榮右衞門もすつかり興奮こうふんしてしまつて、何をやり出すかわからない樣子だつたのです。
日本にほんいま藝術上げいじゆつじやう革命期かくめいきさいして、思想界しさうかい非常ひぜう興奮こうふんしてる。古今東西ここんとうざい思想しさう綜合そうがふして何物なにものあたらしいものつくらうとしてる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
しよめしなぞべると、かれはいつでもこゝろ空虚くうきようつたへるやうな調子てうしでありながら、さうつてさびしいかほ興奮こうふんいろうかべてゐた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
矢野は興奮こうふんした口調くちょうにいうのであった。わかりきったことでも、まじめに大木の口から聞かせられると、矢野はいつでも感奮かんぷんするのである。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
彼等かれら平生へいぜいでもさうであるのにさけため幾分いくぶんでも興奮こうふんしてるので、各自かくじくちからさらくにへぬ雜言ざふごんされた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
昨日きのふ興奮こうふんためにか、かれつかれて脱然ぐつたりして、不好不好いやいやながらつてゐる。かれゆびふるへてゐる。其顏そのかほてもあたまひどいたんでゐるとふのがわかる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
研究室けんきゅうしつにいるのはぼくひとりで、ひっそりとしずまりかえっていた。ぼくはじぶんのこの発見にすっかり興奮こうふんしてしまい、じっとしていられなくなった。
そのときは私たちも何んだか興奮こうふんして、墓と墓の間をまるで栗鼠りすのように逃げ廻りながら、口々に叫んでいた。
三つの挿話 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そのあいだの一夜、おおかみの群れがすごいいたずらを演じて、カランポーの谷にすむ人たちを興奮こうふんさせた。一人ひとりのわかい羊飼ひつじかいがその模様もようわたしに物語った。
いや、そのうちどちらにしろ、のこつたをとこにつれひたい、——さうもあへあへふのです。わたしはそのとき猛然まうぜんと、をとこころしたいになりました。(陰鬱いんうつなる興奮こうふん
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
憤激ふんげき! 興奮こうふん! 平素阪井の傲慢ごうまんや乱暴をにがにがしく思っていたかれらはこの際徹底的てっていてき懲罰ちょうばつしようと思った。二時の放課になっても生徒はひとりも去らなかった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
兄さんはまた、父は非常に興奮こうふんして、終夜よすがら酒を飲み明かし、母や私に出て行けと申しますと云った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
刹那せつなに、二人の口元にはなんとない微笑びせうながれあつた。さつきまでの氕持きもち興奮こうふんはいつとなくさめかかつてゐたが、それは心のどこかにまだほのかな明るさをげてゐた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そして、ふたたび、あかるくなったときに、かれは、血走ちばしって、興奮こうふんしきっていました。
幽霊船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして全くその通り稲光りがまたあたらしく落ちて来たときその気のどくないちばん丈の高い花が、あまりの白い興奮こうふんに、とうとう自分をきずつけて、きらきらふるうしのぶぐさの上に
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
X号はがくがくとからだをふるわせて、興奮こうふんしきっていたのである。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たゞ公務こうむ餘暇よかある一團いちだん士官しくわん水兵等すいへいら吾等われらある船室せんしつみちびき、れたる衣服きものがせ、あたらしき衣服ゐふくあたへ、なかにも機轉きてんよき一士官しくわん興奮こうふんためにと、いそぎ「ブランデー」の一ぱいをさへめぐんでれた。
その声は、先生の興奮こうふんした耳にもたしかに這入ったらしかった。
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
長く長く抱擁はうえうしたるあとの黄色きいろなる興奮こうふんに似て
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
竹童は、その興奮こうふんで立ちあがった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、或朝あるあさはや非常ひじやう興奮こうふんした樣子やうすで、眞赤まつかかほをし、かみ茫々ばう/\として宿やどかへつてた。さうしてなに獨語ひとりごとしながら、室内しつないすみからすみへといそいであるく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そのばんそれからつづいてその夜中の大部分、アルキシーとわたしは話し明かした。アルキシーがわたしに話したいちいちがきみょうにわたしを興奮こうふんさせた。
をんな研桶とぎをけうたとの二つのこゑ錯綜さくそうしつゝあるあひだにも木陰こかげたゝずをとこのけはひをさとほどみゝ神經しんけい興奮こうふんしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
こう烈しくいわれて、矢野はすこぶる興奮こうふんしてきた。胸が躍り手先がふるえる。目を視張みはってきた。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
と、感情的かんじやうてき高岡軍曹たかをかぐんそう躍氣やつきとなつて中根なかね賞讃しやうさんした。そして、興奮こうふんしたなみだめてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
じょうさんは、音楽おんがくきでしたから、こんなときに、バイオリンか、こといてみたいとおもいましたが、医者いしゃは、かえって、神経しんけい興奮こうふんさせてよくないだろうといって、ゆるさなかったのです。
楽器の生命 (新字新仮名) / 小川未明(著)
チビ公の興奮こうふんした目はるりのごとくすみわたってひとみ敢為かんいの勇気に燃えた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
小町 (興奮こうふんしながら)では誰でもつれて行って下さい。わたしの召使めしつかいの女の中にも、同じ年の女は二三人います。阿漕あこぎでも小松こまつでもかまいません。あなたの気に入ったのをつれて行って下さい。
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこへカビ博士が興奮こうふんの色で、オンドリのところへやって来た。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
八五郎は、何うやら、興奮こうふんしきつて居る樣子です。
昨日きのう興奮こうふんためにか、かれつかれて脱然ぐったりして、いやいやながらっている。かれゆびふるえている。そのかおてもあたまひどいたんでいるとうのがわかる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わたしは興奮こうふんしながら、かれに向かって、わたしにうちのあること、両親がわたしをさがしていることを話した。
女は一方ひとかたならぬ胸騒むなさわぎが、つつみきれないようすで、顔は耳まであかくなってるのが、自分にはいじらしくしてたまらなかった。自分もらちもなく興奮こうふんして、じょうだん口一つきけない。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
一同はすっかり興奮こうふんして目に涙をたたえ、まっかな顔をして聞いていた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
もなく小隊せうたい隊形たいけいふくしてうごした。が、兵士達へいしたち姿すがたにはもうつかれのいろねむたさもなかつた。彼等かれら偶然ぐうぜん出來事できごとへんてこに興奮こうふんして、わらつたり呶鳴どなつたり、あがつたりしてはしやいでゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
男女学生たちの表情には、あきらかに興奮こうふんの色が現われた。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、或朝あるあさはや非常ひじょう興奮こうふんした様子ようすで、真赤まっかかおをし、かみ茫々ぼうぼうとして宿やどかえってた。そうしてなに独語ひとりごとしながら、室内しつないすみからすみへといそいであるく。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わたしはどんなにこの見物を興奮こうふんさせ、かれらを有頂天うちょうてんにさせようとねがっていたことだろう……けれども見物席けんぶつせきはがらがらだったし、その少ない見物すら
いやおさっし申しあげます、いかにもそりゃ……まことにおのどくな、しかし糟谷さんあまり無分別むふんべつなことをやってしまってはりかえしがつきませんよ、奥さんはよほど興奮こうふんしていらっしゃるから
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
かれも、じぶんのたてた推理に興奮こうふんしてきたのであろう。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
青木さんは興奮こうふんしたこゑでさうあひづちつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
その朝になると、犬たちはなにかわったことでも起こると思ったか、ひどくはしゃいでいた。ジョリクールだけは知らん顔をしていた。わたしはひじょうに興奮こうふんしていた。
かれ其後そのご病院びやうゐんに二イワン、デミトリチをたづねたのでるがイワン、デミトリチは二ながら非常ひじやう興奮こうふんして、激昂げきかうしてゐた樣子やうすで、饒舌しやべことはもうきたとつてかれ拒絶きよぜつする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
オンドリの声は、前よりもずっと興奮こうふんしている。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かれはその病院びょういんに二イワン、デミトリチをたずねたのであるがイワン、デミトリチは二ながら非常ひじょう興奮こうふんして、激昂げきこうしていた様子ようすで、饒舌しゃべることはもうきたとってかれ拒絶きょぜつする。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
つるはしの音と、救助きゅうじょのためにはたらいている人たちのび声がかすかに、しかしひじょうにはっきりと聞こえて来た。このゆかいな興奮こうふんぎると、わたしはこごえていることを感じた。
Qの興奮こうふん
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)