)” の例文
上窄うへすぼまりになつた桶の井筒ゐづゝ、鉄の車は少し欠けてよく綱がはずれ、釣瓶つるべは一方しか無いので、釣瓶縄の一端を屋根の柱にはへてある。
水汲み (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
五十年ぜんの日本人は「神」といふ言葉を聞いた時、大抵たいてい髪をみづらにひ、首のまはりに勾玉まがたまをかけた男女の姿を感じたものである。
文章と言葉と (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其後そのあとから十七八とも思われる娘が、髪は文金ぶんきん高髷たかまげい、着物は秋草色染あきくさいろぞめ振袖ふりそでに、緋縮緬ひぢりめん長襦袢ながじゅばん繻子しゅすの帯をしどけなく結び
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それはいつも行き馴れたいけはたの待合で、ふいと或る日の夕方、私は人の妻かと見えて丸髷につてゐる若い女に出會つた事である。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
右手には机に近く茶器を並べた水屋みずやと水棚があって、壁から出ている水道の口の下に菜種なたね蓮華草れんげそうの束が白糸でわえて置いてある。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
上窄うえすぼまりになったおけ井筒いづつ、鉄のくるまは少しけてよく綱がはずれ、釣瓶つるべは一方しか無いので、釣瓶縄つるべなわの一端を屋根の柱にわえてある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
と、城士が通路を指さし、大勢の足は自然に、いまわされた青竹垣に誘われて、御台所の側へ流れ、お厩口うまやぐちへあふれ出して行った。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
髪がえたのか、しばらくすると箪笥たんすの引出しがガタガタと鳴った。そして襖の向うからシュウシュウと、帯のれる音が聞えてきた。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
女房はそれから、お菊の髪をいはじめた。女も今は少し気が落ちついたらしく、おだやかな調子ちょうしで女房と話したり笑ったりした。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
清水にはさくってあってね、昼間だったから、けちゃなかったが、床几しょうぎの上に、何とか書いた行燈あんどんの出ていたのを覚えている。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこで僕も自衛上余儀なく、新宿のガード下に出かけ、チョンマゲをった変な爺さんから、竹製の孫の手を三本買い求めて来ました。
ボロ家の春秋 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
斯う言ひながら、また梨をき初めたお光の右の中指の先きが、白紙はくしはへてあるのを、小池は初めて氣がついたふうで見てゐた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
まげは短くめてつてゐる。月題さかやきは薄い。一度喀血かくけつしたことがあつて、口の悪い男には青瓢箪あをべうたんと云はれたと云ふが、にもとうなづかれる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ではそのふさ/\してゐるのはどういふ譯ですか? 髮は飾りけなくつゝましく固くひなさいと、あれ程繰返し/\云つてあるのだ。
彼は娘の死体を抱き起して、大トランクにもたせかけ、手際よく髪をい始めた。髪の道具もちゃんとトランクの中に用意してあったのだ。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
種物屋たねものやの娘は廂髪ひさしがみなどにってツンとすまして歩いて行く。薬種屋やくしゅや隠居いんきょは相変わらず禿はげ頭をふりたててせがれや小僧を叱っている。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
つややかな丸髷まるまげってうす色の珊瑚の玉をさしていた。桃色の鶴や、浅葱あさぎのふくら雀や、出来たのをひとつひとつ見せてはつづけてゆく。
折紙 (新字新仮名) / 中勘助(著)
家の内部はいめぐらした竹垣にさえぎられて見えない。高い屋根ばかりが、初夏の濃緑な南国の空をかぎっている。左手に海が光って見える。
屋上の狂人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
とづけ/\嫌味いやみを浴びせかけるので、気の弱い夫人達は、蝸牛まひ/\つぶりのやうにたての丸髷を襟のなかに引つ込めてしまひたくなる。
襟のかかった渋いしまめしに腹合わせ帯をしめて、銀杏返いちょうがえしにって居る風情ふぜいの、昨夜と恐ろしく趣が変っているのに、私はず驚かされた。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
真子まなごなす御神の子等は、木綿ゆうあさね髪らし、胸乳むなぢをしあらはし出だし、裳緒もひもをばほとに押し垂れ、歌ひ舞ひ仕へまつらふ、今日の尊さ
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
正月まげに島田かなにかにってる女中が、座敷へ案内して、注文を受けて引取ったあと、二人の間にちょっと手持無沙汰の時が過ぎました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「ええ、お前は髪をうのが上手だから、先生の髪を結ってお上げなさいと、お内儀かみさんにいいつけられたものですから……」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
昔のことですから、美容院などというものはなく、髪は髪結いさんにってもらいますが、お化粧は身内の者がいたします。
図56は女髪結にまげって貰いつつあった一婦人のスケッチである。木製の櫛と髪結の手とは練油でベットリしていた。
天道花てんとうばなまたは高花たかはななどと称して、竹竿ざおの頂に色とりどりの花をわえて立てるなども、もちろん仏者は我が信仰によって理由を説こうとするが
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
おに七と呼ばれてはいるが、名前なまえとはまったくちがった、すっきりとした男前おとこまえの、いたてのまげ川風かわかぜかせた格好かっこうは、如何いかにも颯爽さっそうとしていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
銀杏返いちやうがへしにつた小さなませた子守が、ひそかに言つて眉をひそめた。するとそこに目のくるりとした小さな子が、不意に聲高く叫んだのである。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
二十センチほどの鋼鉄の円筒が四本、針金でぎっしりとわえられてあった。手に受けると、ずしりとした重みがくる。
お守り (新字新仮名) / 山川方夫(著)
近ごろ長屋と母屋おもやとの間に大竹の矢来をい廻して、たとい長屋の方へ打入られても、母屋へは寄りつかれないようにしてあるといううわさも聞くが
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
其百合そのゆりをいきなり洋卓テーブルうへげる様にいて、其よこにある椅子いすこしおろした。さうして、つたばかりの銀杏がへしを、かまはず、椅子いすけて
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ちいちゃんは、ごはんをいただいてから、おつくえまえでまごまごしていました。おかあさんにかみってもらって、時計とけいると、じき八になります。
鳥鳴く朝のちい子ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
皮膚ひふは少女のように清純で、ひっつめにった髪の色も黒くて、何よりも、その眼の美しさには、わたしはおもわず
今では髪というと女の世界に限られるようだけれども、結髪の昔は男といえども祭の髪をえたものに相違ない。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
若し反抗を試みるならば、首の周りに鉄の柵をひ廻してからにするがいゝ。又は、われ等及その家族の胃の腑と腸とを切開除去した後にするがいい。
工場の窓より (新字旧仮名) / 葉山嘉樹(著)
男はシャツのわきの裂けたるも知らで胴衣ちよつきばかりになれるあり、羽織を脱ぎて帯の解けたる尻を突出すもあり、十の指をばよつまで紙にてひたるもあり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
俊亮の自転車にわえつけられて、人目に立たぬように何処かに持ち出されるのを、彼はよく知っていたのである。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
友染いうぜんの着物に白茶錦しらちやにしきの帯をむすびにして、まだ小い頃から蝶々髷てふ/\まげやら桃割もゝわれつて、銀のすゝきかんざしなどを挿して
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
中々繁昌の様子で、其処そこに色々ながくが上げてある。あるいは男女の拝んでる処がえがいてある、何か封書が順に貼付はりつけてある、又はもとどりきっい付けてある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
竹のまだ青々した建仁寺垣のめぐらされた庭の隅には、松や杜松ひばまじって、ぶち入りの八重の椿つばきが落ちていて、山土のような地面に蒼苔あおごけが生えていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
い立ての島田が、行燈の灯に艶々しく光り、くくり頤の愛くるしい顔には、幸福そうな微笑さえ浮かんでいた。
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そこで、かみひあげるときにして、かうがいを惜しまずやつたのであらうが、二三十年も前のことで、今日の錢湯風景を知らないから、なんともいへない。
(旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
かみはひっつめにって、くろかたマントをしていらっしゃる、もうそれだけで、先生せんせいうやま気持きもちがおこると一しょに、先生せんせいがどことなくきになるのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
そしてそうした大きな鯉の場合は、家から出てきた髪をハイカラにった若い細君の手で、すくい網のまま天秤てんびんにかけられて、すぐまた池の中へ放される。
遁走 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
入口いりくち彼方あちらなが縁側えんがはで三にん小女こむすめすわつてその一人ひとり此方こちらいましも十七八の姉樣ねえさんかみつてもら最中さいちゆう
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それに火をつけて、煙が立ち始めると、皆は大きな紙袋かんぶくろの口を広げて、その中へ、煙をみんなあおぎ込んでしまい、そのあとをしっかとひもわえました。
お山の爺さん (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
主人夫婦の外には二十二、三の息子らしい弱そうな脊の高い男と、それからいつも銀杏返いちょうがえしにうた十八、九の娘と、外には真黒な猫が居るようであった。
やもり物語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
前と違って髪を夜会巻きかなんかにって、夏羽織なぞ着てましたがね……いや最初私は、その、ちょっと「築地明石町」みたいな別嬪を見た時に、おや
あやつり裁判 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
親分の勘兵衞は五十二で、鰐口わにぐち丁髷ちよんまげはせたやうな醜男ぶをとこだが、妾のお關は二十一、き立ての餅のやうに柔かくて色白で、たまらねえ愛嬌のある女だ。
「お嬢様! 来て見さっせ。イスカーキが湯殿のうしろに丈夫な柵をっといたで、もうこの柵を乗り越してはいって来る莫迦ものはねえだ。安心さっし」
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)