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燈火
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ともしび
ふりがな文庫
“
燈火
(
ともしび
)” の例文
新字:
灯火
しるべの
燈火
(
ともしび
)
かげゆれて、
廊下
(
らうか
)
の
闇
(
やみ
)
に
恐
(
おそ
)
ろしきを
馴
(
な
)
れし
我家
(
わがや
)
の
何
(
なに
)
とも
思
(
おも
)
はず、
侍女
(
こしもと
)
下婢
(
はした
)
が
夢
(
ゆめ
)
の
最中
(
たゞなか
)
に
奧
(
おく
)
さま
書生
(
しよせい
)
の
部屋
(
へや
)
へとおはしぬ。
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
京伝馬琴以後落寞として
膏
(
あぶら
)
の
燼
(
つ
)
きた
燈火
(
ともしび
)
のように明滅していた当時の小説界も龍渓鉄腸らのシロウトに新らしい油を注ぎ込まれたが
四十年前:――新文学の曙光――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
その一隻の屋形船には、不思議にも
燈火
(
ともしび
)
がついていない。で、真っ暗な船である。
漕
(
こ
)
いでいる船頭の姿さえ、陰影のように真っ黒だ。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
見ると
幸
(
さいわい
)
小家の主人は、まだ眠らずにいると見えて、
仄
(
ほの
)
かな
一盞
(
いっさん
)
の
燈火
(
ともしび
)
の光が、戸口に下げた
簾
(
すだれ
)
の隙から、軒先の月明と
鬩
(
せめ
)
いでいた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
わざと、
燭
(
しょく
)
は
燈
(
とも
)
さずにある。すすきの穂の影が、縁や、そこここにうごいている。
廂
(
ひさし
)
から
射
(
さ
)
し入る月は
燈火
(
ともしび
)
よりは遥かに明るかった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
彼は耳をすまして、誰の声か聞きとろうとした。すると
燈火
(
ともしび
)
がふと消え、はなしごえが絶えて、表から誰か出て行くようすだった。
蜆谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
神宮
猿渡何某
(
さるわたりなにがし
)
が神殿において
神勇
(
かむいさめ
)
の
大祝詞
(
おおのりと
)
を捧げ終ると同時に、
燈火
(
ともしび
)
を打消し、八基の神輿は粛々として練り出されるのであった。
怪異暗闇祭
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
願はくは汝を高きに導く
燈火
(
ともしび
)
、汝の自由の意志のうちにて、かの
※藥
(
えうやく
)
の巓に到るまで盡きざるばかりの多くの蝋をえんことを 一一二—
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
またぼうとなって、
居心
(
いごころ
)
が
据
(
すわ
)
らず、四畳半を
燈火
(
ともしび
)
の
前後
(
まえうしろ
)
、障子に
凭懸
(
よりかか
)
ると、透間からふっと蛇の
臭
(
におい
)
が来そうで、驚いて
摺
(
ず
)
って出る。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見れば、暗い本堂のほうには微かに寒々とした
燈火
(
ともしび
)
のいろが動いている。それが破れ障子へ、ションボリ狐いろの光りを投げかけている。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
あちらには、
獰猛
(
どうもう
)
な
獣
(
けもの
)
の、
大
(
おお
)
きい
目
(
め
)
のごとく、こうこうとした
黄色
(
きいろ
)
の
燈火
(
ともしび
)
が、
無気味
(
ぶきみ
)
な
一筋
(
ひとすじ
)
の
線
(
せん
)
を
夜
(
よる
)
の
奥深
(
おくふか
)
く
描
(
えが
)
いているのです。
雲と子守歌
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
窓を開いて助けを求めようにも、両側はうち続く並木と
生垣
(
いけがき
)
ばかり、まれに人家が見えても、みな
燈火
(
ともしび
)
を消して寝静まっている。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
詠
(
ながめ
)
やれば
遙
(
はるか
)
向ふに
燈火
(
ともしび
)
の光のちら/\と見えしに吉兵衞
漸
(
やう
)
やく
生
(
いき
)
たる
心地
(
こゝち
)
し是ぞ
紛
(
まが
)
ひなき人家ならんと又も
彼火
(
かのひ
)
の
光
(
ひかり
)
を
目當
(
めあて
)
に
雪
(
ゆき
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
陰気な
燈火
(
ともしび
)
の下で
大福帳
(
だいふくちょう
)
へ
出入
(
でいり
)
の
金高
(
きんだか
)
を書き入れるよりも、川添いの
明
(
あかる
)
い二階家で
洒落本
(
しゃれほん
)
を読む方がいかに面白かったであろう。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
宇宙人生のかくれたる意義を掻き起すと
稱
(
とな
)
へながら、油乾ける
火盞
(
ほざら
)
に暗黒の
燈火
(
ともしび
)
を點ずるが如き痴態を執るものではなかつた。
新しき声
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
書斎は三間になっているので、彼はその東の
室
(
へや
)
で寝ることにした。
燈火
(
ともしび
)
にむかって独りで坐っていると、西の室から何者か現われて立った。
中国怪奇小説集:17 閲微草堂筆記(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
燈火
(
ともしび
)
の工合で、とき/″\影が大きくひろがり、鼻のあるところ全体が暗くなる。ふと、鼻が見えたり見えなくなったりする。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
泣いて泣いて、暫らくは口が
利
(
き
)
けませんでした。竜之助は冷然として
燈火
(
ともしび
)
に顔をそむけて、お玉の泣くのに任せておきました。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
これからが責任が重いんだという感激もあった。明るい、神々しいような
燈火
(
ともしび
)
が、風もないのに眼先に
揺
(
ゆら
)
いで、新吉の眼には涙が浮んで来た。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
雪下
(
ゆきふる
)
事
盛
(
さかん
)
なる
時
(
とき
)
は、
積
(
つも
)
る雪家を
埋
(
うづめ
)
て雪と
屋上
(
やね
)
と
均
(
ひとし
)
く
平
(
たひら
)
になり、
明
(
あかり
)
のとるべき処なく、
昼
(
ひる
)
も
暗夜
(
あんや
)
のごとく
燈火
(
ともしび
)
を
照
(
てら
)
して家の内は
夜昼
(
よるひる
)
をわかたず。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
星だらけの空を真黒く区切った樫の木立の中に
燈火
(
ともしび
)
を消した轟家は人が居るか居ないか、わからない位ヒッソリとしている。
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
便所の中にあか/\と
燈火
(
あかり
)
が點いてゐるので、此方から聲をかけたが、答へはなくて、
燈火
(
ともしび
)
がふつと消えて
了
(
しま
)
つたといふことをも思ひ出した。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
宿屋はまだ皆
開
(
あ
)
いていて、
燈火
(
ともしび
)
の影に女中の立ち働いているのが見える。手近な一軒につと這入って、留めてくれと云った。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
……すなわち、夜、暖簾のかげ、硝子戸の内部は、あかるい、機嫌のいい
燈火
(
ともしび
)
のかげを忍ばせる店ばかり並んだのである。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
明るくかがやかした
燈火
(
ともしび
)
、ぞろぞろと踏んで通る
下駄穿
(
げたばき
)
の音、その雑踏の中を分けて、何か品物が売れる度に捨吉は入口と帳場の間を往来した。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そしてその囁きの方をちらと見下したとき、
館
(
やかた
)
の正面を
映
(
うつ
)
した私の眼は窓に輝やく
燈火
(
ともしび
)
を認めた。晩くなつたことに氣がついて私は道を急いだ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
水の面に小さい星のやうにうつる
燈火
(
ともしび
)
もある。そのうち冷たい、濁つた、薄緑な「暁」が町の狭い
巷
(
こうぢ
)
を這ひ寄つて来る。
聖ニコラウスの夜
(新字旧仮名)
/
カミーユ・ルモンニエー
(著)
玄関をはいると古びた家の匂いがプンと鼻を
衝
(
つ
)
く。だだっ広い家の真中に掛かる
燈火
(
ともしび
)
の光の薄らぐ
隅々
(
すみずみ
)
には壁虫が死に絶えるような低い声で啼く。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
笑ふにもあらず、
顰
(
ひそ
)
むにもあらず、
稍
(
やや
)
自ら
嘲
(
あざ
)
むに似たる隆三の顔は、
燈火
(
ともしび
)
に照されて、常には見ざる
異
(
あやし
)
き相を
顕
(
あらは
)
せるやうに、貫一は覚ゆるなりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
小万は上の間へ行ッて窓から
覗
(
のぞ
)
いたが、太郎稲荷、入谷
金杉
(
かなすぎ
)
あたりの人家の
燈火
(
ともしび
)
が
散見
(
ちらつ
)
き、遠く上野の電気燈が
鬼火
(
ひとだま
)
のように見えているばかりだ。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
そのあとで警部は、今しがた第三の犠牲者のハンドバックから見付けてきた例の十字架に
髑髏
(
どくろ
)
の
標章
(
マーク
)
を、車内の明るい
燈火
(
ともしび
)
の下で、注意深く調べた。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
襖
(
ふすま
)
手荒らに開かれて現はれたる一丈天、其の
衣
(
きぬ
)
の身に合はず見ゆるは、
大洞
(
おほほら
)
のをや仮り着せるならん、既に
稍々
(
やゝ
)
酒気を帯びたる
面
(
かほ
)
を
燈火
(
ともしび
)
に照らしつ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
花卉
(
くわき
)
の
薫
(
かをり
)
、幽かなる樂聲、暗き
燈火
(
ともしび
)
、
軟
(
やはらか
)
なる長椅は我を夢の世界に
誘
(
いざな
)
ひ去らんとす。
現
(
げ
)
に夢の世界ならでは、この人に邂逅すべくもあらぬ心地ぞする。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
らんぷの黄色い
燈火
(
ともしび
)
の下でしょんぼり草双紙をお読みになっていらっしゃる婆様のお美しい御姿、左様、私はことごとくよく覚えているのでございます。
葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
明
(
あか
)
るい
燈火
(
ともしび
)
の
下
(
した
)
に
三人
(
さんにん
)
が
待設
(
まちまう
)
けた
顏
(
かほ
)
を
合
(
あ
)
はした
時
(
とき
)
、
宗助
(
そうすけ
)
は
何
(
なに
)
よりも
先
(
ま
)
づ
病人
(
びやうにん
)
の
色澤
(
いろつや
)
の
回復
(
くわいふく
)
して
來
(
き
)
た
事
(
こと
)
に
氣
(
き
)
が
付
(
つ
)
いた。
立
(
た
)
つ
前
(
まへ
)
よりも
却
(
かへ
)
つて
好
(
い
)
い
位
(
くらゐ
)
に
見
(
み
)
えた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
城廓の中は確に一種の大きな興奮に支配されてゐた。広庭には松明を持つた従者が縦横に駈け違ひ、頭の上には又
燈火
(
ともしび
)
の光が階段から階段へ上下してゐた。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
波止場に入りし時、翁は夢みるごときまなざしして
問屋
(
といや
)
の
燈火
(
ともしび
)
、影長く水にゆらぐを見たり。舟
繋
(
つな
)
ぎおわれば
臥席
(
ござ
)
巻
(
ま
)
きて
腋
(
わき
)
に抱き櫓を肩にして岸に
上
(
のぼ
)
りぬ。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
女
(
むすめ
)
と壮い男がとり乱した姿をして、
燈火
(
ともしび
)
の光の中に出ました。吠えかかるような修験者の声が家の中に響きました。
女
(
むすめ
)
と壮い男は寝室の外へ逃げだしました。
宇賀長者物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
鱶との距離、あと三メートル、あと、二メートル、あと一メートル! 今太郎君の
生命
(
いのち
)
は風前の
燈火
(
ともしび
)
です!
動く海底
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
その途端に
燈火
(
ともしび
)
はふっと消えて跡へは闇が行きわたり、燃えさした跡の
火皿
(
ひざら
)
がしばらくは一人で
晃々
(
きらきら
)
。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
ストレーカは馬をつれ出して、
燈火
(
ともしび
)
をつけても人の眼につかぬようにあの凹みへ降りて行きました。
白銀の失踪
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
曲り角から三軒目の家を見ると、入口がパン屋の店になつてゐる奥の方の窓から、
燈火
(
ともしび
)
の光が差して、その光が筋のやうになつてゐる処丈、雨垂がぴか/\光つてゐる。
死
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
その名さえゆかりもあるというところから、意気もあい、当時の人気作家、花形の青年たちは、毎夜のように、
紅葉
(
もみじ
)
の
襖
(
ふすま
)
の照り
映
(
は
)
ゆる、
燈火
(
ともしび
)
のもとに集まったのだった。
大橋須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
セルギウスは顔を
窓硝子
(
まどガラス
)
に当てた。併し室内の
燈火
(
ともしび
)
の光が強く反射してゐて、外は少しも見えなかつた。そこで両手で目を囲つて覗いて見た。外は霧と闇と森とである。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
あの底には、もしくは外には、都会がある、群集がある、
燈火
(
ともしび
)
、音曲、寄席、芝居がある、群集と喧噪の圧迫から
遁
(
に
)
げて、天涯の一角に立ったときに、孤独と静粛の圧迫!
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
なすなりといふ昨夜は醉にまぎれたれば何ともなかりしが今宵は梅花子と兩人相對して
燈火
(
ともしび
)
も暗きやうに覺え盃をさすにも
淋
(
さみ
)
しく話も
途絶勝
(
とだえがち
)
なれば梅花道人忽ち大勇猛心を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
そして磨きあげられた貝殻は、
燈火
(
ともしび
)
のもとで、まったく宝石のように光り輝いて見えました。
市郎の店
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
甲板の昇降口より波打込みしものか分らねど、何しろこの海水のために余の身辺の
燈火
(
ともしび
)
は消えて四方は真暗く、ただ船内ズット船尾の方に高く掲げられたる一個の船燈のみが
南極の怪事
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
潮
(
うしほ
)
の様な人、お八重もお定も唯小さくなつて源助の両袂に縋つた儘、
漸々
(
やうやう
)
の思で改札口から吐出されると、何百輛とも数知れず列んだ
腕車
(
くるま
)
、広場の彼方は昼を欺く
満街
(
まんがい
)
の
燈火
(
ともしび
)
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
しかれども
春雨
(
はるさめ
)
に
傘
(
かさ
)
、暮春に女、
卯花
(
うのはな
)
に尼、
五月雨
(
さみだれ
)
に馬、
紅葉
(
もみじ
)
に滝、暮秋に牛、雪に
燈火
(
ともしび
)
、
凩
(
こがらし
)
に
鴉
(
からす
)
、名所には京、
嵯峨
(
さが
)
、
御室
(
おむろ
)
、大原、
比叡
(
ひえい
)
、
三井寺
(
みいでら
)
、瀬田、須磨、奈良、宇津
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
燈
部首:⽕
16画
火
常用漢字
小1
部首:⽕
4画
“燈火”で始まる語句
燈火占
燈火台
燈火節
燈火信号
燈火管制