指先ゆびさき)” の例文
ばんごと喧嘩けんくわをしてめてやるのだが隨分ずゐぶんおもしろいよとはなしながら、鐵網かなあみうへもちをのせて、おゝ熱々あつ/\指先ゆびさきいてかゝりぬ。
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかし、あまりとりうつくしいので、つかまえるがにぶったか、指先ゆびさきが、にふれんとした瞬間しゅんかんきゅうとりは、おどろいてちました。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こう武士ぶしはつぶやくと、法師のりょう耳は、いきなり鉄棒てつぼうのような指先ゆびさきで、ひきちぎられました。けれど法師は、声もだせませんでした。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
本堂の中にと消えた若い芸者の姿すがたは再び階段の下にあらはれて仁王門にわうもんはうへと、素足すあし指先ゆびさき突掛つゝかけた吾妻下駄あづまげた内輪うちわに軽く踏みながら歩いてく。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ひとこころこころって、いよいよ調子ちょうしづいたのであろう。茶代ちゃだいいらずのそのうえにどさくさまぎれの有難ありがたさは、たとえ指先ゆびさきへでもさわればさわどくかんがえての悪戯いたずらか。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そして、それらの人間にんげんほねはほとんど完全かんぜんに、指先ゆびさきほねまでのこつてゐる場合ばあひがすくなくないのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
はじかれ寒氣さむけおぼえ、吐氣はきけもよほして、異樣いやう心地惡こゝちあしさが指先ゆびさきまで染渡しみわたると、なにからあたま突上つきあげてる、さうしてみゝおほかぶさるやうながする。あをひかり閃付ちらつく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かへりたいだらう。なまぬるい、あをんぶくれのやうな人間にんげんどもが、年中ねんぢう指先ゆびさきでも、なかでも算盤そろばんはじいて、下卑げびたことばかりかんがへてゐるこの土地とちに、まことの人間にんげんらしい人間にんげんはとてもられないね。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
えりをあとへ、常夏とこなつゆびすこいて、きやしやな撫肩なでがたをやゝなゝめつたとおもふと、衣絵きぬゑさんのかほは、まつげく、凝然じつながら片手かたてほゝ打招うちまねく。……しなふ、しろ指先ゆびさきから、つきのやうなかげながれた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
幸運にも宝石が指先ゆびさきにかかったのであった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あねは、ずっとせいたかかった。そして、くろかみが、なが肩頭かたさきかられていました。彼女かのじょは、指先ゆびさきでそのかみをいじっていました。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そういいながら、指先ゆびさき器用きよううごかした春重はるしげは、糠袋ぬかぶくろくちくと、まるできんこなでもあけるように、まつろうてのひらへ、三つばかりを、勿体もったいらしくげた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
はじかれ寒気さむけおぼえ、吐気はきけもよおして、異様いよう心地悪ここちあしさが指先ゆびさきにまで染渡しみわたると、なにからあたま突上つきあげてる、そうしてみみおおかぶさるようながする。あおひかり閃付ちらつく。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いやに文字もんじあひだをくツ付けて模様もやうのやうに太く書いてある名題なだい木札きふだ中央まんなかにして、その左右にはおそろしく顔のちひさい、眼のおほきい、指先ゆびさきの太い人物が、夜具やぐをかついだやうなおほきい着物を着て
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ぐわつすゑよりなれば此月このつきうでも約束やくそく期限きげんなれど、此中このなかにてなんとなるべきぞ、ひたいあはせて談合だんがうつま人仕事ひとしごと指先ゆびさきよりいだして拾錢じつせんかせぎもらず、三すけかするとも甲斐かひなし
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ここをはなれて、だんだんさびしい野原のはらにさしかかるとゆきふかくなりました。手足てあしさむさにこごえて、ことにあし指先ゆびさきは、れてちそうに、いたみをかんじたのであります。
星の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
指輪ゆびわのかゝやくしろ指先ゆびさきを、籐編とあみの火鉢ひばちふちにぞけたる。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しわのったてのひらにぜにならべて、ほそ指先ゆびさき勘定かんじょうしては、前垂まえだれのなかうつしていました。
善いことをした喜び (新字新仮名) / 小川未明(著)
指先ゆびさきでつまんで、これが、みずなかにいる時分じぶん姿すがた想像そうぞうして、空中くうちゅうおよがしてみました。
真昼のお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、味方みかた陣営じんえいかって、いきかけたのであるが、またなにをおもったか、かえしてきて、戦友せんゆううでについている時計とけいのゆるんだねじをきました。かれは、指先ゆびさきうごかしながら
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひでちゃんのっているやまがらは、それは、よくれて、かごからると指先ゆびさきにとまったり、あたまうえにとまったり、また、みみにとまったりするので、みんなからかわいがられていました。
山へ帰ったやまがら (新字新仮名) / 小川未明(著)
これらの人々ひとびとは、こうして、なにか問題もんだいこるとたがいにくちをききあうが、そうでもなければ一けんいえでも、めったにはなしすらせずにしたいて指先ゆびさきをみつめながら仕事しごとをしているのでした。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)