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平常
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いつも
ふりがな文庫
“
平常
(
いつも
)” の例文
平常
(
いつも
)
は死んだ源五郎鮒の目の樣に鈍い目も、此時だけは激戰の火花の影を猶留めて、極度の恐縮と嘆願の情にやゝ濕みを持つて居る。
雲は天才である
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
幸吉
(
こうきち
)
は、またかわいそうに、
自分
(
じぶん
)
が
平常
(
いつも
)
ジャックをかわいがってやるものだから、
助
(
たす
)
けてくれると
思
(
おも
)
って、
家
(
うち
)
の
物置
(
ものおき
)
にきて
隠
(
かく
)
れたのだ。
花の咲く前
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
この男の
王仏元
(
おうぶつげん
)
というのも、
平常
(
いつも
)
主人らの
五分
(
ごぶ
)
もすかさないところを
見聞
(
みきき
)
して知っているので、なかなか賢くなっている奴だった。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
清
(
きよ
)
は
夫
(
それ
)
からすぐ
起
(
お
)
きた。三十
分
(
ぷん
)
程
(
ほど
)
經
(
た
)
つて
御米
(
およね
)
も
起
(
お
)
きた。
又
(
また
)
三十
分
(
ぷん
)
程
(
ほど
)
經
(
た
)
つて
宗助
(
そうすけ
)
も
遂
(
つひ
)
に
起
(
お
)
きた。
平常
(
いつも
)
は
好
(
い
)
い
時分
(
じぶん
)
に
御米
(
およね
)
が
遣
(
や
)
つて
來
(
き
)
て
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
姉さん達は白い着物を着て、
平常
(
いつも
)
より何倍美しいか知れない。頭に花を揷している。乃公の耳を引張ったりしそうには見えない。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
▼ もっと見る
平常
(
いつも
)
はあまり眼に立たぬほどの切れの浅い二重瞼が少し
逆上
(
ぼっ
)
となって赤く際だってしおれて見えた。睫毛が長く
眸
(
め
)
を霞めている。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
それほどの珍客があると云うに
平常
(
いつも
)
の如く書生ばかりで手伝の人も来ていず、座敷も
取散
(
とりちら
)
した儘で掃除する様子もありません。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
併
(
しか
)
し其後では必ず嫉妬心と憎悪とが
跟
(
つ
)
いて来る。
夫
(
そ
)
れが他人の夫人であるからだ。彼は
平常
(
いつも
)
の通り勝手な想像を胸に描いて此心持を消そうとした。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
平常
(
いつも
)
のように平気の顔で五六人の教師の上に立ち
数
(
す
)
百の児童を導びいていたが、暗愁の影は
何処
(
どこ
)
となく彼に伴うている。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
応
(
うむ
)
、
肯
(
き
)
かれないな。よし、肯かれなきゃあ無理に肯かすまでのことだ。して見せる事があるわい。というは
平常
(
いつも
)
の
折檻
(
せっかん
)
ぞとお藤は手足を
縮
(
すく
)
め紛る。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その悲慘な物語を、だん/\つゞけて行くうちに、昂奮のために疲れて、私の言葉は
平常
(
いつも
)
よりもずつと抑へられてゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
幾干
(
いくばく
)
もない自己の生命を、正太は自覚するもののように見えた。その日は
沈着
(
おちつ
)
いて、言うことも
平常
(
いつも
)
と変らなかった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
己
(
じぶん
)
の家の方へ帰っていたと思っていたものが、反対に隣村の方へ往って、其処の
渡船
(
わたし
)
場へ出てやっと気が
注
(
つ
)
いたと云うような話は
平常
(
いつも
)
のことであった。
村の怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「
寒
(
さむ
)
かあんめえな」おつぎは
事
(
こと
)
もなげにいつた。
與吉
(
よきち
)
は
懷
(
ふところ
)
の
中
(
なか
)
で
頻
(
しき
)
りにせがんで
居
(
ゐ
)
る。お
品
(
しな
)
は
平常
(
いつも
)
のやうでなく
何
(
なに
)
も
買
(
か
)
つて
來
(
こ
)
なかつたので、ふと
困
(
こま
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
驚いたのはダンチョンで、彼は甘い自分達の恋を妨げられでもしたかのように、
平常
(
いつも
)
の彼に似もやらずやにわに拳を揮り上げて支那青年に跳び掛かった。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
親戚
(
しんせき
)
という名に
繋
(
つな
)
がっていても、
平常
(
いつも
)
はめったに顔を見せない
不沙汰
(
ぶさた
)
者までが、今夜は一堂に寄ったのである。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平常
(
いつも
)
は茶店なども出てゐるらしいが、今日は雨で誰も出てゐない。二三日來の雨で、瀧は夥しく増水してゐるのだ相だ。大粒の飛沫が冷かに颯々と面を撲つ。
熊野奈智山
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
「イヤ、一文多く渡したのだが、
平常
(
いつも
)
なら何でも無いが、こういう場合だから、又右衛門め
周章
(
あわ
)
てたなと思われるのが残念だから、
一寸
(
ちょっと
)
行って取戻してくる」
鍵屋の辻
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
それに
平常
(
いつも
)
はあんなに多勢入り交り立ち替り附いていて下すったのに、あいにく今朝は
真
(
ほん
)
の私一人きりでね。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
第一お前は
平常
(
いつも
)
と違って三時間以上余計に朝寝をしていたのはどういう訳か。絞め殺しておいて
胡魔化
(
ごまか
)
すつもりで寝ていたのが、つい寝過したのじゃないか。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
家中
(
うちじゅう
)
の者の定説では、わたしはたしかに猫の
敵
(
かたき
)
と見られている。わたしはかつて猫を殺したことがある。
平常
(
いつも
)
好く猫を
打
(
う
)
つ、ことに彼等の交合の時において甚しい。
兎と猫
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
その吹き溜りには、濃い茶褐色の泡が
平常
(
いつも
)
溜っています……去年の夏水泳をしながらあの中へはまり込んで、随分気味の悪い思いをしましたから、よく覚えていますよ
死の快走船
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
「で、兄貴が乗込んで行って、
平常
(
いつも
)
の
術
(
て
)
で存分に
啖呵
(
たんか
)
を切って、思い切り
厭
(
いや
)
がらせを言うんだ」
銭形平次捕物控:012 殺され半蔵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
乃
(
そこ
)
で
愛
(
あい
)
ちやんは
恰度
(
ちやうど
)
お
稽古
(
けいこ
)
の
時
(
とき
)
のやうに
前掛
(
まへかけ
)
の
上
(
うへ
)
へ
兩手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
んで、それを
復習
(
ふくしう
)
し
初
(
はじ
)
めました、が
其聲
(
そのこゑ
)
は
咳嗄
(
しわが
)
れて
變
(
へん
)
に
聞
(
きこ
)
え、
其一語々々
(
そのいちご/\
)
も
平常
(
いつも
)
と
同
(
おな
)
じではありませんでした。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
平常
(
いつも
)
の
積
(
つもり
)
で何心なく
外
(
そと
)
から帰って見ると、母が妙な顔をして奥から出て来て、
常
(
いつ
)
になく小声で、お前は、まあ、何処へ行ッていたい? お
祖母
(
ばあ
)
さんがお
亡
(
なく
)
なンなすッたよ、という。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
ルピック氏は、
平常
(
いつも
)
よりゆっくりしているわけでもなく、また急ぐわけでもない。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
先
(
ま
)
ず
私
(
わたくし
)
の
服装
(
みなり
)
が
瞬間
(
しゅんかん
)
に
変
(
かわ
)
りましたが、
今日
(
きょう
)
は
平常
(
いつも
)
とは
異
(
ちが
)
って、
身
(
み
)
には
白練
(
しろねり
)
の
装束
(
しょうぞく
)
、
手
(
て
)
には
中啓
(
ちゅうけい
)
、
足
(
あし
)
には
木
(
き
)
の
蔓
(
つる
)
で
編
(
あ
)
んだ一
種
(
しゅ
)
の
草履
(
ぞうり
)
、
頭髪
(
かみ
)
はもちろん
垂髪
(
さげがみ
)
……
甚
(
はなは
)
ださッぱりしたものでございました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
平常
(
いつも
)
の私でしたら嘲笑しながら冷かし半分にまぜっ返して聞くのが落ちですが、今は到底そんな気にはなれませんでした。何故と云って、その人の話ぐらい私の胸を打ったものはなかったからです。
消えた霊媒女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
起きれば
愁
(
うれ
)
はしい
平常
(
いつも
)
のおもひ
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
平常
(
いつも
)
は死んだ源五郎鮒の目の様に鈍い
眼
(
まなこ
)
も、此時だけは激戦の火花の影を猶留めて、極度の恐縮と嘆願の情にやゝ
湿
(
うる
)
みを持つて居る。
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
乃公
(
おれ
)
が傍へ行ってお島に教わった通りに挨拶したら、
平常
(
いつも
)
になく丁寧に答礼をした。いよいよ此奴が乃公の兄さんになるんだな。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
此の男の王仏元といふのも、
平常
(
いつも
)
主人等の五分もすかさかいところを見聞して知つてゐるので、中々賢くなつてゐる奴だつた。
骨董
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
平常
(
いつも
)
はもとより、たとえ
天気
(
てんき
)
のよくないような
日
(
ひ
)
であっても、この
港
(
みなと
)
の
中
(
なか
)
だけはあまり
波
(
なみ
)
も
高
(
たか
)
く
立
(
た
)
たず、ここにさえ
逃
(
のが
)
れれば
安心
(
あんしん
)
というので
カラカラ鳴る海
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
もしそれが
平常
(
いつも
)
の通りわかるならちょっとえらいところがある。五六分するとその本を
叩
(
たた
)
き付けるように机の上へ
抛
(
ほう
)
り出す。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
平常
(
いつも
)
と違って客はないし、
階下
(
した
)
で
老婢
(
ばあさん
)
が
慈姑
(
くわい
)
を煮る香ばしい臭いをききながら、その夜くらい好い寝心地の夜はなかった。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
其処
(
そこ
)
で
平常
(
いつも
)
の通り弁当持たせて磯吉を出してやり、自分も飯を食べて
一通
(
ひととおり
)
片附たところでバケツを持って木戸を開けた。
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
さてやがて
乗込
(
のりこ
)
むのに、
硝子窓
(
ガラスまど
)
を
横目
(
よこめ
)
で
見
(
み
)
ながら、
例
(
れい
)
のぞろ/\と
押揉
(
おしも
)
むで
行
(
い
)
くのが、
平常
(
いつも
)
ほどは
誰
(
だれ
)
も
元気
(
げんき
)
がなさゝうで、
従
(
したが
)
つて
然
(
さ
)
まで
混雑
(
こんざつ
)
もしない。
銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
実が前垂掛で
胡坐
(
あぐら
)
にやっている側には、大きな
桐
(
きり
)
の机が置いてあって、その深い
抽斗
(
ひきだし
)
の中に
平常
(
いつも
)
小使が入れてある。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
偶
(
たま/\
)
抽斗
(
ひきだし
)
から
出
(
だ
)
した
垢
(
あか
)
の
附
(
つ
)
かぬ
半纏
(
はんてん
)
を
被
(
き
)
て、
髮
(
かみ
)
にはどんな
姿
(
なり
)
にも
櫛
(
くし
)
を
入
(
い
)
れて、さうして
弔
(
くや
)
みを
濟
(
すま
)
すまでは
彼等
(
かれら
)
は
平常
(
いつも
)
にないしほらしい
容子
(
ようす
)
を
保
(
たも
)
つのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
平常
(
いつも
)
ならば私も挨拶の一つ位ゐはする所であるが、彼等の好奇に動く顏を見るとまた不愉快がこみ上げて來て目禮一つせず、默つたまま、隅の方に腰を下した。
熊野奈智山
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
そして、翌々日の午後来ると云った女の
詞
(
ことば
)
を信用して、その日は学校に往ったが
平常
(
いつも
)
の習慣で学校の食堂で
喫
(
く
)
うことになっている
昼飯
(
ひるめし
)
をよして急いで帰って来た。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「は……この先の
河和田
(
かわだ
)
に住んでおる若い職人で、
平常
(
いつも
)
、酒ばかり飲んで、喧嘩ばかり仕かけ、村でも仲間でも、手におえぬ厄介者とされておる奴でござります」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その時に私が
平常
(
いつも
)
の通りのニコニコ顔で鷹揚にうなずいた態度も、いかにも名優気取であったと言う。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
もう私は
平常
(
いつも
)
の通りに落着いた氣持になつてゐた。そのジプシイの樣子には何一つ人の心を亂すやうなものなど無かつた。彼女は本を閉ぢると、ゆつくりと眼をあげた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
後では一緒に碁など打って、
平常
(
いつも
)
のような調子で別れたが、叔父の顔色はよくなかった。二人は事務員に帳簿を持ってこさして、長いあいだ細かしいことを話し合っていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
平常
(
いつも
)
の
白粉
(
おしろい
)
を着ければ知れねえ様になり段々薄くなるから
心配
(
しんぺえ
)
しねえがえゝよ
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
雲の間をお通りなさる時は、忍びやかに恐ろしそうに、丁度暗殺者の群の中を及び腰で通って行くようだ。お月様の周囲を取りかこんでいる雲は、
平常
(
いつも
)
の夜とは違って形が怪しく見えるじゃないか。
レモンの花の咲く丘へ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
其夜の夢に
逢瀬
(
おうせ
)
平常
(
いつも
)
より嬉しく、胸あり
丈
(
た
)
ケの
口説
(
くぜつ
)
濃
(
こまやか
)
に、恋
知
(
しら
)
ざりし珠運を
煩悩
(
ぼんのう
)
の
深水
(
ふかみ
)
へ導きし
笑窪
(
えくぼ
)
憎しと云えば、
可愛
(
かわゆ
)
がられて喜ぶは浅し
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「
平常
(
いつも
)
の
樣
(
やう
)
に
犬
(
いぬ
)
がゐると
好
(
よ
)
かつたんですがね。
生憎
(
あいにく
)
病氣
(
びやうき
)
なので、四五
日前
(
にちまへ
)
病院
(
びやうゐん
)
へ
入
(
い
)
れて
仕舞
(
しま
)
つたもんですから」と
主人
(
しゆじん
)
は
殘念
(
ざんねん
)
がつた。
宗助
(
そうすけ
)
も
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
心もち
平面
(
ひらおもて
)
の、鼻が少し低いが私の好きな口の小さい——尤も笑うと少し崩れるが、——眼も
平常
(
いつも
)
はそう好くなかった。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
平
常用漢字
小3
部首:⼲
5画
常
常用漢字
小5
部首:⼱
11画
“平常”で始まる語句
平常着
平常衣
平常服
平常帯
平常底
平常心
平常穿
平常著
平常通
平常遣