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一
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ひ
ふりがな文庫
“
一
(
ひ
)” の例文
蛇嫌
(
へびぎらい
)
な南日君は股まで浸って上手の瀬を渉った。
一
(
ひ
)
と所左手の屏風がへし折れて山裾からぼろぼろになった石の綿がはみ出していた。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
ルンペンどもは前もって明智の逃げ道を察し、そこの出口に
一
(
ひ
)
とかたまりになって、手に手に
得物
(
えもの
)
を持って待ち構えていたのである。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
何しろ
一
(
ひ
)
と目見たいと云いますから、そんならばと云うので娘に話し、損料を借りて来る、湯に往って
化粧
(
おしまい
)
をする、漸く出来上った。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
一
(
ひ
)
と
度
(
たび
)
書物以外に踏みだして実験をするという事になり、始めてありのままの自然に面するとなると、誠に厄介な事になって来る。
物理学実験の教授について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ここにも葛の葉が
一
(
ひ
)
とかたまりになって茂っているところがあったが、その蔭から、異様な人物が、ヌーと姿を現したのであった。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
併し、そんな事があったにも拘らず、横里鯨之進の矢留瀬苗子への接近は、同新聞社の耳目を驚かしたことは
一
(
ひ
)
と通りではありません。
奇談クラブ〔戦後版〕:14 第四次元の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
見ると二十五、六歳の遊び人
態
(
てい
)
の男が、刑吏に引きすえられ、
一
(
ひ
)
イ
二
(
ふ
)
ウ
三
(
み
)
イ……と数を読む青竹の下に、ビシビシ
撲
(
なぐ
)
りつけられている。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一
(
ひ
)
と
口
(
くち
)
に
申
(
もう
)
したらその
時分
(
じぶん
)
の
私
(
わたくし
)
は、
消
(
き
)
えかかった
青松葉
(
あおまつば
)
の
火
(
ひ
)
が、プスプスと
白
(
しろ
)
い
煙
(
けむり
)
を
立
(
たて
)
て
燻
(
くすぶ
)
っているような
塩梅
(
あんばい
)
だったのでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
その印刷術も
一
(
ひ
)
ト通りは心得ておかねば不自由ダと思い、そこで神田錦町にあった
一
(
ひとつ
)
の石版印刷屋で一年程その印刷術稽古をした。
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
着けて、そうして口の内でくちゃくちゃやっていますね。あれじゃ蕎麦の味はないですよ。何でも、こう、
一
(
ひ
)
としゃくいに引っ掛けてね
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
せめて
一
(
ひ
)
と目なりとも本当のお顔をお見上げして、この世のお
名残
(
なご
)
りに致したいというような、やる瀬のない思いに引き止められまして
押絵の奇蹟
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
一
(
ひ
)
ト月過ぎ
二
(
ふ
)
タ月
過
(
すぎ
)
ても
此
(
この
)
恨
(
うらみ
)
綿々
(
めんめん
)
ろう/\として、
筑紫琴
(
つくしごと
)
習う
隣家
(
となり
)
の
妓
(
こ
)
がうたう唱歌も我に引き
較
(
くら
)
べて絶ゆる事なく悲しきを、コロリン
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
一
(
ひ
)
ト月ばかり経ったある晩、タツが銭湯に行こうとして出かかると、フイと、長屋の
路地
(
ろじ
)
をこっちへやってくる栗原の姿をみた。
工場新聞
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
一
(
ひ
)
トしきり重吉の
膝
(
ひざ
)
にもたれて笑っていたお千代は坐り
直
(
なお
)
って、「それさえ大丈夫なら安心だわ。楽しみ半分にいいじゃありませんか。」
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
暁
(
あかつき
)
の四時か五時頃だったろう、障子の外がほんのり
白
(
しら
)
み初めたと思ったら、どこかうしろの山の方で、不意に
一
(
ひ
)
と声ほととぎすが
啼
(
な
)
いた。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一
(
ひ
)
ト
度
(
たび
)
グレーの講義を聞くものは皆語学の範囲を
超
(
こ
)
えてその芸術的妙趣を感得し、露西亜文学の熱心なる信者とならずにはいられなかった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「ハヽヽヽヽ」と剛造は
一
(
ひ
)
ときは高笑ひ「商売にしてからが、矢ツ張り忠君愛国と言つたやうな流行の看板を
懸
(
か
)
けて行くのサ」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
そして、向う岸に立つてゐる
一
(
ひ
)
と
本
(
もと
)
太いアカダモの高木を、自分の札幌以來外部的にもます/\育ちあがつた姿と仰いで見た。
泡鳴五部作:04 断橋
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
若狭の
一
(
ひ
)
と塩、石狩の新巻、あるいは
燕巣
(
えんそう
)
、あるいは銀耳、
鵞鳥
(
がちょう
)
の肝、キャビア、まあそんなもののうまさに似た程度のうまさであるならば
河豚食わぬ非常識
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
また、その人々のうちには、あの時いっそ
一
(
ひ
)
と思いに死んだ方が
優
(
ま
)
しであったなどと思った人もないとはいえない。世に
悼
(
いた
)
ましいことである。
九月四日
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
自分の悪い事を
公
(
おおや
)
けにするは余り面白くもないが、
正味
(
しょうみ
)
を言わねば事実談にならぬから、
先
(
ま
)
ず
一
(
ひ
)
ト通り幼少以来の飲酒の歴史を語りましょう。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
私はこれからゆっくりと
一
(
ひ
)
と
息
(
いき
)
して、ゆるやかに神気を養い、更に私の画業の楽しみをつづけてゆこうかと考えています。
あゝ二十年:やっと御下命画を完成した私のよろこび
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
坊主頭は大きく
頷首
(
うなず
)
いた。湯水の音が
一
(
ひ
)
としきり話しを消す。助五郎は軽石を探すような様子をしてふいと立ち上った。二人の遣り取りが続く。
助五郎余罪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
「どなた!」と、まだ聞いたことのない卵のように円いなまめかしい声で呼ばれると、慌てて門へ
馳
(
か
)
け出しながら、
吻
(
ほっ
)
と
一
(
ひ
)
と
息
(
いき
)
つくのであった。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「ぐず/\いうこたァねえ。——日暮里を来すぎたら、こゝまで来たんだ、もう
一
(
ひ
)
ト
呼吸
(
いき
)
伸
(
の
)
して田端へ出りゃァいゝ。」
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
そして些と娘の方を見て、「ですから私等も、
一
(
ひ
)
とつ頃は
可成
(
かなり
)
に暮してゐたものなんですが、此う
落魄
(
おちぶれ
)
ちや
糞
(
くそ
)
ですね。」
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
すると妙な口つきをしてくちびるを動かしていましたが、急に両手を開いて指を折って
一
(
ひ
)
、
二
(
ふ
)
、
三
(
み
)
と読んで
十
(
とう
)
、十一と飛ばし、顔をあげてまじめに
春の鳥
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
何処
(
どこ
)
を
何
(
なに
)
して歩いたものか、それともじっと
一
(
ひ
)
と
所
(
ところ
)
に
立止
(
たちどま
)
っていたものか、道にしたら
僅
(
わず
)
かに三四
町
(
ちょう
)
のところだが、そこを
徘徊
(
はいかい
)
していたものらしい。
死神
(新字新仮名)
/
岡崎雪声
(著)
横浜へ来てから、さんざん着きってしまった子供の衣類や、
古片
(
ふるぎれ
)
、
我楽多
(
がらくた
)
のような物がまた
一
(
ひ
)
ト
梱
(
こおり
)
も二タ梱も殖えた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
さて、この村から
一
(
ひ
)
と
条
(
すじ
)
に
浄法寺
(
じょうほうじ
)
へとぬける街道がある。今でもそうだが、多くの者が
椀
(
わん
)
だとか
片口
(
かたくち
)
だとか木皿だとかを
担
(
にな
)
って
市日
(
いちび
)
へと出かけてゆく。
陸中雑記
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
自分がいつも
燐寸
(
マッチ
)
を探す場所、
燐寸
(
マッチ
)
の燐がもえる瞬間にちらッと部屋のなかに放たれる最初の一瞥、——そうしたことが、窓から
一
(
ひ
)
と思いに飛び降りて
ある自殺者の手記
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
一
(
ひ
)
と
渉
(
わた
)
り四方を見まわしておいて、まっすぐに宿へ帰ると、給仕にちょっと
躯
(
からだ
)
をささえられながら階段を登って、さっさと自分の部屋へ入ってしまった。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
大方は雨漏に朽ち腐れて、柱ばかり
参差
(
しんし
)
と立ち、畳は破れ天井裂け、戸障子も無き部屋どもの、昔はさこそと
偲
(
しの
)
ばるるが
一
(
ひ
)
い
二
(
ふ
)
ウ
三
(
み
)
いと数うるに
勝
(
た
)
えず。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
学年始めの式の朝登校すると、控所で
一
(
ひ
)
と
塊
(
かたまり
)
になつて誰かれの成績を批評し合つてゐた中の一人が、私を
弥次
(
やじ
)
ると即座に、一同はわつと声を
揃
(
そろ
)
へて笑つた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
たとひ
草菴樹下
(
そうあんじゅげ
)
にてもあれ、法門の一句をも思量し、
一
(
ひ
)
と
時
(
とき
)
の坐禅をも
行
(
ぎょう
)
ぜんこそ、誠の仏法興隆にてあらめ。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
ギンはがっかりして、もうお
家
(
うち
)
へかえろうと思いました。すると、ふいに
一
(
ひ
)
とむれの牛が湖水の中からうき上って、のこのことこちらへ向って歩いて来ました。
湖水の女
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
その指をかぞへるに「一イ二ウ三イ」とやらず「
一
(
ひ
)
に
二
(
ふ
)
に
三
(
み
)
に
四
(
よ
)
に」とゆくのも、へんに可笑しかつた。
初代桂春団治研究
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
何
(
なに
)
ごとにも
一
(
ひ
)
と
筋
(
すぢ
)
なる
乙女氣
(
をとめぎ
)
には
無理
(
むり
)
ならねど、さりとは
歎
(
なげ
)
かはしき
迷
(
まよ
)
ひなり、
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
親
(
した
)
しく
逢
(
あ
)
ひて
親
(
した
)
しく
語
(
かた
)
りて、
諫
(
いさ
)
むべきは
諫
(
いさ
)
め
慰
(
なぐさ
)
むべきは
慰
(
なぐさ
)
めてやりたし
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
そしてわずか
一
(
ひ
)
と月ほどの間に、あの療養地のN海岸で偶然にも、K君と相識ったというような、一面識もない私にお手紙をくださるようになったのだと思います。
Kの昇天:或はKの溺死
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
殆
(
ほと
)
んど
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
くことも
出來
(
でき
)
ませんでした、
辛
(
やつ
)
とのことで
左手
(
ゆんで
)
の
一
(
ひ
)
ト
片
(
かけ
)
を
少
(
すこ
)
しばかり
嚥
(
の
)
み
込
(
こ
)
みました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
這
(
は
)
って行く。
脚
(
あし
)
が地に
泥
(
なず
)
んで、
一
(
ひ
)
と
動
(
うごき
)
する
毎
(
ごと
)
に痛さは
耐
(
こらえ
)
きれないほど。うんうんという
唸声
(
うめきごえ
)
、それが
頓
(
やが
)
て泣声になるけれど、それにも
屈
(
めげ
)
ずに
這
(
は
)
って行く。やッと
這付
(
はいつ
)
く。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
その
後
(
のち
)
幸
(
さいわ
)
い
一
(
ひ
)
と
月
(
つき
)
ばかりは何の変事も
起
(
おこ
)
らなかった、がさすがにその当座は夜分便所に行く事だけは出来なかった、そのうち
時日
(
じじつ
)
も
経
(
た
)
ったし職務上
種々
(
しゅじゅ
)
な事があったので
暗夜の白髪
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
「ところで昨夜のことは何も知らないと仰言る——では、一体何う云うわけで
一
(
ひ
)
と晩の中に髪の毛がそんなに真白になったのですね?」しかしミラは一
言
(
ごん
)
も答えなかった。
目撃者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それで
余
(
よ
)
は
先
(
ま
)
づ
發掘場
(
はつくつば
)
を
一
(
ひ
)
ト
巡
(
めぐ
)
りして
見
(
み
)
ると、
珍把手
(
ちんとつて
)
、
珍破片
(
ちんはへん
)
、
少
(
すくな
)
からず
有
(
あ
)
る
中
(
なか
)
に、
大々土瓶
(
だい/″\どびん
)
の
口邊
(
こうへん
)
の、
最
(
もつと
)
も
複雜
(
ふくざつ
)
なる
破片
(
はへん
)
が
有
(
あ
)
る。
完全
(
くわんぜん
)
で
有
(
あ
)
つたら
懸價無
(
かけねな
)
しの
天下
(
てんか
)
一
品
(
ぴん
)
だ。
探検実記 地中の秘密:07 末吉の貝塚
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
この輩のごときは、かかる
多事紛雑
(
たじふんざつ
)
の際に何か
一
(
ひ
)
と
仕事
(
しごと
)
して
恰
(
あたか
)
も一杯の酒を
贏
(
か
)
ち
得
(
う
)
れば
自
(
みず
)
からこれを
愉快
(
ゆかい
)
とするものにして、ただ当人
銘々
(
めいめい
)
の
好事心
(
こうずしん
)
より出でたるに過ぎず。
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
挑戦の面白味も
一
(
ひ
)
と
際
(
きわ
)
増して来るのと、読者の側になんとなく落着いた気分が与えられて来るのとでその挿入が甚だ時宜を得ており、非常に効果的であると思って感心した。
J・D・カーの密室犯罪の研究
(新字新仮名)
/
井上良夫
(著)
今のみつともない手ちがひが、彼の頭の中をあつさり
一
(
ひ
)
と掻き掻き廻したのである。時々、ウウと低い唸り声を発した。自分が怒つたそも/\の原因は、もう忘れてしまつた。
四人
(新字旧仮名)
/
芥川多加志
(著)
彼は、ミキサーに引いてあるゴムホースの水で、
一
(
ひ
)
と
先
(
ま
)
ず顔や手を洗った。そして弁当箱を首に巻きつけて、一杯飲んで食うことを専門に考えながら、彼の長屋へ帰って行った。
セメント樽の中の手紙
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
仮令
(
たとひ
)
良人に
恕
(
ゆる
)
し難き大失策があつても、基督の精神を以て其の罪を
恕
(
ゆる
)
す、と夫人の理想はまア出たいのであるが、
一
(
ひ
)
ト
抱
(
かゝへ
)
あれど柳は柳哉、
幾程
(
いくら
)
基督の精神を持つてゐる令夫人でも
未亡人と人道問題
(新字旧仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
私のお話し申す
一
(
ひ
)
と
通
(
とおり
)
お聞きなすつて下さいまし、これまでもあなた様へこそ御無心を
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
“一”を含む語句
一寸
一時
一昨日
一杯
唯一
一昨年
万一
一人
一切
一片
一通
同一
一日
一向
一方
一層
一端
一夜
一番
一生
...