あつま)” の例文
これ相州西鎌倉長谷はせ村の片辺かたほとりに壮麗なる西洋館の門前に、今朝より建てる広告標なり。時は三伏さんぷく盛夏の候、あつまり読む者のごとし。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それをお皿の上にさかさにして笠の裏を出して砂糖を少し振りかけておくと蠅がその匂いをぎつけて沢山あつまって来てそのつゆめます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
手拭てぬぐひひたたびちひさな手水盥てうずだらひみづつきまつたかげうしなつてしばらくすると手水盥てうずだらひ周圍しうゐからあつまやう段々だん/\つきかたちまとまつてえてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
水牛の背にも、昆蟲あつまりて寸膚を止めねば、時々怒りて自らテヱエルの黄なる流に躍り入り、身を水底にまろがしてこれをはらひたり。
〔譯〕雲煙うんえんむことを得ざるにあつまる。風雨ふううは已むことを得ざるにる。雷霆らいていは已むことを得ざるにふるふ。こゝに以て至誠しせい作用さようる可し。
この愛慕は一の目的物にあつまりて、而して四散せり、四散せるものた聚りて或一物の上に凝れり、彼の以後の生涯、是を証するを見るべし。
心機妙変を論ず (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
新時代の世界文明は東西の文化を融合して我が極東帝国の上にあつまり、桜花爛漫らんまんとして旭光きよくくわうに匂ふが如き青史未載せいしみさいの黄金時代を作るべきを論じて
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それは、「木の枝を断ちたるあと、フルヘッヘンドをなし、庭を掃除すれば、その塵土あつまりて、フルヘッヘンドをなす」
蘭学事始 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
大凡おおよそ物はその好む所にあつまる、彼の艱難かんなんの如きも、またいずくんぞ彼が自ら好んでこれを致したるに非ざるきを知らんや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
富山唯継の今宵ここにきたりしは、年賀にあらず、骨牌遊かるたあそびにあらず、娘の多くあつまれるを機として、嫁選よめえらみせんとてなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その尿あつまって末ついに川をなし流れ絶えず、英独フランドル諸国人その水を汲み去り最優等の麦酒ビールを作るを、妻どもこれは小便を飲む理屈だとて嫌うとある。
長造が、新聞紙をバリバリあける手許てもとに、一座のひとみあつまった。二重三重ふたえみえの包み紙の下から、やっと引出されたのは、ゴムと金具かなぐとで出来たおめんのようなものだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかしこの思想は腐った肉にあつまる蠅のごとくに払えど払えど去らなかったのである。このとき私の頭のなかにショウペンハウエルの意志説が影のごとくさしてきた。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
大異はその市中を通って東門にある自分の家へ帰ったが、撥雲の角、哨風の嘴、朱華の髪、碧光の睛、どうしても人間でないので、市中の者があつまってきたが、近くへは寄らなかった。
太虚司法伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
されどわれは早稻田文學中にあつまりたる衆美を見ざらむとして目をおほふものにあらず。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
年上の子供は船尾にあつまっていた。母親は送って来て「気をつけておいでよ」と言った時には、もう船は出ていた。橋石にぶつかって二三尺退しりぞいたが、すぐまた前に進んで橋を通り抜けた。
村芝居 (新字新仮名) / 魯迅(著)
なし是より三人づれにて丸龜城下なる後藤半四郎の方へといたりけり又後藤方にては此日は丁度ちやうど稽古日けいこびにておほく門弟もんていあつま竹刀しなひおと懸聲かけごゑかまびしく今稽古けいこ眞最中まつさいちうなる所へ三人は玄關げんくわんかゝ案内あんない
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
鴿はとになってそれから星になったといわれる七人娘のプレヤディース、金牛角上のアルデバラン、五星井にあつまって漢の高祖が天下を取って以来縁起の好い双子座のカストルとポラックスは勿論
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
犬烏あつまむ。天皇此のいざによぶ声を聞きて、心に悲傷いたみす。群卿にみことのりして曰く、それ生くるときにめぐみし所を以て亡者なきひとしたがはしむ。これ甚だいたきわざなり。それ古風といへども良からずば何ぞ従はむ。
本朝変態葬礼史 (新字新仮名) / 中山太郎(著)
「空より水の方が奇麗よ」と注意した糸子の声に連れて、残る三人の眼はことごとく水と橋とにあつまった。一間ごとに高く石欄干を照らす電光が、遠きこちらからは、行儀よく一列にくうに懸って見える。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
をどり周圍しうゐにはやうや村落むら見物けんぶつあつまつた。混雜こんざつして群集ぐんしふすこはなれて村落むら俄商人にはかあきんどむしろいて駄菓子だぐわしなし甜瓜まくはうり西瓜すゐくわならべてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
せ申した。せ申した。方々、かようでござる。木の枝を断ち申したるあと、癒え申せばたかくなるでござろう。塵土あつまれば、これもたかくなるでござろう。
蘭学事始 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
自ら此老先生の一身にあつまつて、其痩せて千年の鶴の如き老躯は、宛然さながらこれ生きた教員の儀表となつて居る。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ちゝ無足婦人むそくふじん膝行軌ゐざりぐるませ、みづかしめぐらして京都けいとみんなみかたより長安ちやうあんみやこきたり、いちなかにて、うぞやをる。あつまるもの、數千人すうせんにんくだらず。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
〔評〕十年のなん、賊の精鋭せいえい熊本城下にあつまる。而て援軍えんぐん未だ達せず。谷中將死を以て之を守り、少しも動かず。賊勢ぞくせい遂に屈し、其兵を東する能はず。昔者むかし加藤嘉明よしあき言へるあり。
翌日家の者があつまって話していると、見あげるような大きな男が不意に空からおりてきて、手にしていた門の扉のような大きな刀をふるって斬りかかってきた。家の者はもう一人いつめられて斬られた。
胡氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
四箇よつ頭顱かしらはラムプの周辺めぐりに寄る池のこひの如くひしあつまれり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それ聖代せいだいには麟鳳りんほう來儀らいぎ仁君じんくんの代には賢臣けんしんあつまるとうべなるかな我がてう徳川とくがは八代將軍有徳院殿いうとくゐんでんの御代に八賢士あり土屋相摸守つちやさがみのかみ松平右近將監まつだひらうこんしやうげん加納遠江守かなふとほたふみのかみ小笠原若狹守をがさはらわかさのかみ水野山城守みづのやましろのかみ堀田相摸守ほつたさがみのかみ大岡越前守おほをかゑちぜんのかみ神尾若狹守かんをわかさのかみ是なり然るに其有徳院殿の御代享保きやうほ二年大岡越前守町奉行ぶぎやうと成始めて工夫のさばきあり其原因を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それにみぎかたのあたりでこはばつたやうでうごかしやうによつてはきや/\と疼痛いたみおぼえた。かれ病氣びやうき其處そこあつまつたのではないかとおもつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
話がバタリと止んで、視線が期せずして其方にあつまる。ヌッと許り鬚面が入つて來た。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
楚歌そか一身にあつまりて集合せる腕力の次第に迫るにも関わらず眉宇びう一点の懸念なく、いと晴々しき面色おももちにて、渠は春昼せきたる時、無聊むりょうに堪えざるもののごとく、片膝を片膝にその片膝を、また片膝に
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不思議や黄雲遽然にわかに蒸して眼前にあつまりぬ、主従之に打乗り
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
未だ知らずいずれの日にか更にあいあつまらん
愛卿伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
漸くで二房三房とつた。豆の花と同じ形のがあつまつてゐるのである。少し隔つてから振り返つて見ると滴る樣な新緑の間にほつほつと黄色い房のあるのは際立つて鮮かであつた。
炭焼のむすめ (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
話がバタリと止んで、視線が期せずして其方にあつまる。ヌツと許り髭面が入つて来た。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
楚歌そか一身にあつまりて集合せる腕力の次第に迫るにもかかはらず眉宇びう一点の懸念けねんなく、いと晴々はればれしき面色おももちにて、かれ春昼しゅんちゅうせきたる時、無聊むりょうえざるものの如く、片膝を片膝にその片膝を、また片膝に
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
不思議ふしぎ黄雲くわううん遽然にはかにして眼前がんぜんあつまりぬ、主從しゆうじうこれうち
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
智惠子が其處へ入ると、有つ丈の眼が等しく其美しい顏にあつまつた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
智恵子が其処へ入ると、ありつたけの眼が等しく其美しい顔にあつまつた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)