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然
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さ
ふりがな文庫
“
然
(
さ
)” の例文
越前
(
ゑちぜん
)
の
府
(
ふ
)
、
武生
(
たけふ
)
の、
侘
(
わび
)
しい
旅宿
(
やど
)
の、
雪
(
ゆき
)
に
埋
(
うも
)
れた
軒
(
のき
)
を
離
(
はな
)
れて、二
町
(
ちやう
)
ばかりも
進
(
すゝ
)
んだ
時
(
とき
)
、
吹雪
(
ふゞき
)
に
行惱
(
ゆきなや
)
みながら、
私
(
わたし
)
は——
然
(
さ
)
う
思
(
おも
)
ひました。
雪霊記事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
鍬
(
くは
)
を
擔
(
かつ
)
いで
遺跡
(
ゐせき
)
さぐりに
歩
(
ある
)
き、
貝塚
(
かひづか
)
を
泥
(
どろ
)
だらけに
成
(
な
)
つて
掘
(
ほ
)
り、
其
(
その
)
掘出
(
ほりだ
)
したる
土器
(
どき
)
の
破片
(
はへん
)
を
背負
(
せお
)
ひ、
然
(
さ
)
うして
家
(
いへ
)
に
歸
(
かへ
)
つて
井戸端
(
ゐどばた
)
で
洗
(
あら
)
ふ。
探検実記 地中の秘密:01 蛮勇の力
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
稱道するんですね、文藝全體から見て
然
(
さ
)
う云ふ傾向も無論なくてはならん。兎に角自分の信ずる處を遠慮なく發揮されるがいゝです。
新帰朝者日記
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
東京の女中!
郷里
(
くに
)
で考へた時は何ともいへぬ華やかな樂しいものであつたに、……
然
(
さ
)
ういへば自分はまだ手紙も一本郷里へ出さぬ。
天鵞絨
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
然
(
さ
)
ればと
云
(
いい
)
て
之
(
これ
)
を幕府の方に渡せば、殺さぬまでもマア
嫌疑
(
けんぎ
)
の筋があるとか取調べる
廉
(
かど
)
があるとか
云
(
いっ
)
て
取敢
(
とりあ
)
えず牢には入れるだろう。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
世に
生業
(
なりはひ
)
も数多く候に、優き優き御心根にもふさはしからぬ
然
(
さ
)
やうの道に
御入
(
おんい
)
り
被成候
(
なされさふらふ
)
までに、世間は
鬼々
(
おにおに
)
しく
御前様
(
おんまへさま
)
を苦め
申候
(
まをしさふらふ
)
か。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
彼とても
芸妓
(
げいしや
)
と飲む酒の
甘
(
うま
)
い事は知つて居やう、
併
(
しか
)
し一度でも
然
(
さ
)
う云ふ場所へ足を向けた事の無いのは友人が皆不思議がつて居る。
執達吏
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
眼も
然
(
さ
)
うだが、顏にも姿にも
下町
(
したまち
)
の
匂
(
にほい
)
があツて、
語調
(
ことばつき
)
にしろ
取廻
(
とりまはし
)
にしろ身ごなしにしろ表情にしろ、氣は利いてゐるが
下卑
(
げび
)
でゐる。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
何が辛いといつても一番辛いことはお父さんや春子に彼女が惡者の如く思はれることです。
然
(
さ
)
う思はれても僕のこの身に罰が當ります。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
鍋町
(
なべちやう
)
は
裏
(
うら
)
の
方
(
はう
)
で
御座
(
ござ
)
いますかと
見返
(
みかへ
)
れば
否
(
いな
)
鍋町
(
なべちやう
)
ではなし、
本銀町
(
ほんしろかねちやう
)
なりといふ、
然
(
さ
)
らばとばかり
馳
(
は
)
せ
出
(
いだ
)
す
又
(
また
)
一町
(
いつちやう
)
、
曲
(
まが
)
りませうかと
問
(
と
)
へば
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
『
然
(
さ
)
らば』とドード
鳥
(
てう
)
が
嚴格
(
げんかく
)
に
云
(
い
)
つて
立上
(
たちあが
)
り、『
此
(
この
)
會議
(
くわいぎ
)
の
延期
(
えんき
)
されんことを
動議
(
どうぎ
)
します。
蓋
(
けだ
)
し、もつと
早
(
はや
)
い
有効
(
いうかう
)
な
治療
(
ちれう
)
方法
(
はうはふ
)
が——』
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
其休むる時間
丈
(
だ
)
け全く其事を忘れ尽して他の事を打楽しむ癖を生じたる如くなるも余には仲々其真似出来ず「
然
(
さ
)
らば」とて夫婦に分れを
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
と
然
(
さ
)
り
気
(
げ
)
なく答えはいたしまするものゝ、その慌てゝ居ります様子は直ぐ知れます、そわ/\と致して
些
(
ちっ
)
とも
落著
(
おちつ
)
いては居ません。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
然
(
さ
)
るを、家名断絶も覚悟して、今日、刃傷の禁犯を敢ていたした迄には、よくよく、忍びがたき仔細もあればこそと思われまする。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なせし者なり江戸表へ御供致せば
惡事
(
あくじ
)
露顯
(
ろけん
)
いたすべし
然
(
さ
)
れば
忽
(
たちま
)
ち
罪科
(
ざいくわ
)
に行はれんが此儀は如何あらんと云ふに吉兵衞は答へて予が守護を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
『
否
(
いえ
)
、
然
(
さ
)
うぢやないのです。』ミハイル、アウエリヤヌヰチは
更
(
さら
)
に
云直
(
いひなほ
)
す。『
其
(
そ
)
の、
君
(
きみ
)
の
財産
(
ざいさん
)
は
總計
(
そうけい
)
で
何位
(
どのくらゐ
)
と
云
(
い
)
ふのを
伺
(
うかゞ
)
うのさ。』
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「然うさね。美人だけれど少し鼻が低い代りに額が高いと確信しているんだろう。
然
(
さ
)
もなくてあゝ白粉をコテ/\塗る
理由
(
わけ
)
はない」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
渠は悪を悪とするを知る、
然
(
さ
)
れども悪の悪なるが故に
自
(
みづか
)
ら制止することは能はず、能はざるに非ず、するの意志を有せざるなり。
心機妙変を論ず
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
帝
之
(
これ
)
を
然
(
さ
)
なりとは
聞召
(
きこしめ
)
したりけれど、
勢
(
いきおい
)
既に定まりて、削奪の議を取る者のみ
充満
(
みちみ
)
ちたりければ、
高巍
(
こうぎ
)
の説も用いられて
已
(
や
)
みぬ。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
よし
然
(
さ
)
うでないにせい、
前
(
まへ
)
のは
最早
(
もう
)
絶滅
(
だめ
)
ぢゃ、いや、
絶滅
(
だめ
)
も
同樣
(
どうやう
)
ぢゃ、
離
(
はな
)
れて
住
(
す
)
んでござって、
貴孃
(
こなた
)
のまゝにならぬによって。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
或は足下は言はん、先生は
然
(
さ
)
る波瀾に富んだ性行の人ではなく、世に平凡なる偉人と言はれし通り頗る常識の發達せる平凡なる人であつたと。
貝殻追放:007 愚者の鼻息
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
こんな容易しい言語が世の中に又と有らうと思へぬ。さう容易しくては複雑な思想は
言顕
(
いひあら
)
はせまいと思ふ人もあらうが、ところが
然
(
さ
)
うでない。
エスペラントの話
(新字旧仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
それに私なんか
恁
(
か
)
う見えても
温順
(
おとな
)
しいんだから、
鉄火
(
てつか
)
な真似なんか
迚
(
とて
)
も柄にないの。ほんとうに温順しい
花魁
(
おいらん
)
だつて、みんなが
然
(
さ
)
う言ふわよ。
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
木曾は愈〻勢ひに乘りて、
明日
(
あす
)
にも都に押寄せんず
風評
(
ふうひやう
)
、平家の人々は今は居ながら
生
(
い
)
ける心地もなく、
然
(
さ
)
りとて敵に向つて死する力もなし。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
看
(
み
)
給
(
たま
)
へ、
露西亜
(
ロシヤ
)
帝国政府の
無道擅制
(
ぶだうせんせい
)
は、露西亜国民の敵ではありませんか、
然
(
さ
)
れ
共
(
ども
)
独り露西亜政府のみでは無いです、各国政府の政策と
雖
(
いへど
)
も
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
此一条は戯場の作り狂言のようなる事なれども、
然
(
さ
)
にあらず、我が知音中村
何某
(
なにがし
)
、其の時は
実方
(
みのかた
)
津
(
つ
)
の藩中に在る時の事にて、近辺故現に其の事を
雁
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
然
(
さ
)
れば現時の米国海軍——其軍人は
左迄
(
さま
)
で勇壮ならざるべし。多くの雇兵より成れる陸軍は敢て恐るゝに足らざるべし。
警戒すべき日本
(新字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
人の世にあるや、とある夕、何事もあらざりしを、久しくえ忘れぬやうに、美しう思ふことあるものなるが、かの歸路の景色、また
然
(
さ
)
る
類
(
たぐひ
)
なりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「
然
(
さ
)
うかなあ。俺は少し、底に
斯
(
か
)
う空色を帯びたやうな赤い
莟
(
つぼみ
)
があつたと思つたのに。それを一つだけ欲しかつたのさ」
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
ユダ
橄欖
(
かんらん
)
の林を歩める時、悪魔彼に云ひけるは、「イエスを祭司の
長
(
をさ
)
たちに
売
(
わた
)
せ。
然
(
さ
)
すれば三十枚の
銀子
(
ぎんす
)
を得べし。」
LOS CAPRICHOS
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
逍遙子はシエクスピイヤが作の傑出ならざるものに
然
(
さ
)
るたぐひありといひ、又衆戲曲家の作に然るたぐひ多しといふ。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「六郎さんが丈夫ですと、今年は一緒に大学へ来るんでした。一昨日の晩
停車場
(
ステーション
)
でお母様が
然
(
さ
)
う云つて泣かれました。」と、坐ると
行也
(
いきなり
)
、その事を云出す。
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
然
(
さ
)
うすると私達も、いつかは茸のやうな
這麼
(
こんな
)
仄
(
ほの
)
かな風味に
舌鼓
(
したづゝみ
)
を打つ興味に感じなくなつて
了
(
しま
)
ふかも知れぬ。
茸の香
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
長い間世間の上に喘ぎながら今日まで何も掴み得なかつたみのるの心は、いつともなく臆病になつてゐて、
然
(
さ
)
うしてその心の上にもう疲勞の影が射してゐた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
然
(
さ
)
うだ。私がこの頃来求め苦み、尋ね喘ぎてゐた道の方向を示してくれるのはこの詞よりほかにない。
愛は、力は土より
(新字旧仮名)
/
中沢臨川
(著)
故に此理性道理と云ふ字義の内には、天理天道など云ふ意は含まぬ事と知る可し。
然
(
さ
)
て一方の「ネチュラル・ラウ」と云ふは、理法と譯す。直譯なれば天然法律の義なり。
尚白箚記
(旧字旧仮名)
/
西周
(著)
「私どももやはり
然
(
さ
)
うですよ。をぢさんにご
厄介
(
やつかい
)
になつたんだからよく御礼をおつしやいよ。」
ザボンの実る木のもとに
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
「オ、
然
(
さ
)
うだ、如何したんだね米ちやん、もつと此方に出ておいでよ、寒いだらう、其處は。」
姉妹
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
唯
(
ただ
)
昔から
馬琴
(
ばきん
)
其他の、作物は多く讀んだが、詰りが明窓淨几の人で無くつて
兵馬倥偬
(
へいばこうそう
)
に
成長
(
ひとゝな
)
つた方のだから自分でも文士などゝ任じては居らぬし、世間も大かた
然
(
さ
)
うだらう。
兵馬倥偬の人
(旧字旧仮名)
/
塚原渋柿園
、
塚原蓼洲
(著)
「爾曹もし
瞽
(
めしい
)
ならば罪なかるべし
然
(
さ
)
れど今われら見ゆと言いしに因りて爾曹の罪は
存
(
のこ
)
れり。」
野ざらし
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
巴里の三越と云つてよい大きなマガザンのルウヴルの三階などに
陳
(
なら
)
べられて居るので、
然
(
さ
)
まで珍しくも無いであらうが、白足袋を
穿
(
は
)
いて
草履
(
ざうり
)
で歩く足附が野蠻に見えるらしい。
巴里にて
(旧字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
然
(
さ
)
り
氣
(
げ
)
ない調子と言ふよりは、已むを得ないと言つた口調で顫へ上がる友二郎を
顧
(
かへり
)
みます。
銭形平次捕物控:015 怪伝白い鼠
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
疑うということすら、かかる矛盾的自己同一から起るのである。無論、私はいわゆる経験論者の如く知識は外からというのでもない。
然
(
さ
)
らばといって、単に内からというのでもない。
デカルト哲学について
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
わが常に求むる真実を過ちの対象に見出したるは、一面より言えば不幸なるがごとくなれど、必ずしも
然
(
さ
)
らで、過ちを変じて光あるものとなすべき向上の努力こそわが切なる願いに候。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
このような絵の直接御用命者には
然
(
さ
)
る○○な方々もある。西洋人もある。間接の手を経て外国へも続々行くらしい。某ホテルのボーイ頭なぞはその仲介に立って大金を
蓄
(
た
)
めていると聞く。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
その矢さきへ、この相談を持ち掛けられたのであるから、長三郎はよろこんで即座に承諾した。彼はぜひ一緒に連れて行ってくれと答えると、伝兵衛は
然
(
さ
)
もこそと云うようにうなずいた。
半七捕物帳:69 白蝶怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
三六三
然
(
さ
)
て我をいづくにも連れゆけといへば、いと
喜
(
うれ
)
しげに
点頭
(
うなづ
)
きをる。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
人跡到らぬキトウス山の陰から来るのだ。
然
(
さ
)
もあろう。今こそ駅逓には冬も氷らぬ
清水
(
しみず
)
が山から引かれてあるが、まだ其等の設備もなかった頃、翁の灌水は夏はもとより冬も此斗満川でやったのだ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
ああエルサレム、エルサレム、予言者たちを殺し、
遣
(
つかわ
)
されたる人々を石にて撃つ者よ、
牝鶏
(
めんどり
)
のその
雛
(
ひな
)
を翼の下に集むるごとく、我なんじの子らを集めんと
為
(
せ
)
しこと幾度ぞや、
然
(
さ
)
れど、汝らは好まざりき
駈込み訴え
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ああ若人よ、神明に
然
(
さ
)
るべき物を獻ずるは、 425
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“然”を含む語句
全然
偶然
自然
悄然
判然
寂然
悠然
憫然
宛然
凝然
勃然
悚然
嫣然
公然
確然
突然
飄然
整然
歴然
茫然
...