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溜
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たま
ふりがな文庫
“
溜
(
たま
)” の例文
取り付きの角の室を
硝子窓
(
ガラスまど
)
から覗くと、薄暗い中に
卓子
(
テーブル
)
のまわりへ
椅子
(
いす
)
が逆にして引掛けてあり、
塵
(
ちり
)
もかなり
溜
(
たま
)
っている様子である。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
だが、その版図の前線一円に渡っては数千万の田虫の列が紫色の
塹壕
(
ざんごう
)
を築いていた。塹壕の中には
膿
(
うみ
)
を浮かべた
分泌物
(
ぶんぴつぶつ
)
が
溜
(
たま
)
っていた。
ナポレオンと田虫
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
舌の上にはとろとろした血のりが
溜
(
たま
)
っていたではないか。彼はその舌で、ポトポトと赤いしずくを
垂
(
た
)
らしながら、口辺を
嘗
(
な
)
め廻した。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
何しろ、
取附
(
とっつけ
)
からすぐに坑夫なんだからね。坑夫なら楽なもんさ。たちまちのうちに金がうんと
溜
(
たま
)
っちまって、好な事が出来らあね。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
損「これ何をいうのだ、私の物を私が持って
往
(
ゆ
)
くのに追剥という事があるものか、料銭が
溜
(
たま
)
ったから蒲団を持って往くのが追剥ぎか」
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
床は
勿論
(
もちろん
)
椅子
(
いす
)
でもテーブルでも
埃
(
ほこり
)
が
溜
(
たま
)
っていないことはなく、あの折角の
印度更紗
(
インドさらさ
)
の窓かけも最早や
昔日
(
せきじつ
)
の
俤
(
おもかげ
)
を
止
(
とど
)
めず
煤
(
すす
)
けてしまい
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と、間もなく、その近江之介の首が
溜
(
たま
)
りへ投げ込まれて、喬之助は、それ以来、
厳
(
きび
)
しい詮議の眼を
掠
(
かす
)
めて、今に姿を現さぬのである。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そうして作者の心理状態が寂しい内にも
漸
(
ようや
)
く落ちついた処に僅かな余裕も
窺
(
うかがわ
)
れる。その自然の動きの現われてるのが、
溜
(
たま
)
らなく嘻しい。
歌の潤い
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
見かけからは河とか瀬戸とかいうべきだろうがそれがどうしてか海だった。かと思えばあるところは潟みたいに水が
溜
(
たま
)
ってもいる。
母の死
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
「あああ……」と弘はとうとう
溜
(
たま
)
らなくなったように、
欠伸
(
あくび
)
をわざと大きくしながら、足を投げ出した。そうしてくるりと横になった。
三つの挿話
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
屋根の
窪
(
くぼ
)
みなどに、雨水が
溜
(
たま
)
るからだ。僕等は、それによって、
渇
(
かつ
)
を
医
(
い
)
やすことができ、雨水を呑んで、わずかに飢えを
凌
(
しの
)
ぐのだった。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
運転手は何故そんなことを云われたのか
解
(
げ
)
せなかったが、病院へ入れられては
溜
(
たま
)
らないと思って、猛烈なスピードで車を飛ばした。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ここは龍野街道の一宿場なので、町というほどの戸数もないが、一膳めし屋、馬子の
溜
(
たま
)
り、
安旅籠
(
やすはたご
)
などの、幾軒かが両側に見える。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
髪の毛には
網
(
あみ
)
のように白い埃が
溜
(
たま
)
っていて、それを眼にした僕の口の中には、何か火の玉をくくんだように切ないものがあった。
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
この胸に
溜
(
たま
)
っているおもいを聞いてもらおうとするのに、耳をふさいで帰ることはできない筈だ、甲斐にはそうはできない筈だぞ
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その人が駅から帰って来ての話では、青森で七千人
溜
(
たま
)
っているからと言って、切符を売ってくれなかったということであった。
流言蜚語
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
ところが、十年の約束の
年限
(
ねんげん
)
が過ぎ、金も五十兩と
溜
(
たま
)
りましたが、主人はどうしても私にお暇も下さらず、預けて置いた金も下さいません。
銭形平次捕物控:142 権八の罪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
晩
(
おそ
)
かれ早かれ、降参しなければなるまい。ところが、我慢をすればするほど、
溜
(
たま
)
るわけだ。今すぐやっちまえば、ぽっちりしか出ないんだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
平常
(
ふだん
)
から大きい美しい眼は、今にも、ちょっと物でも
触
(
さわ
)
れば、すぐ泣き出しそうに、一層大きくこちらを見張って、露が一ぱい
溜
(
たま
)
っている。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「ほほ、ほほほほほ。お酒が毒になッて、お
溜
(
たま
)
り
小法師
(
こぼし
)
があるもんか。ねえ此糸さん。じゃア小万さん、久しぶりでお前さんのお酌で……」
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
しかし
塵埃
(
あか
)
が
溜
(
たま
)
るから、始終いつもそれを綺麗に掃除しておかねばならない、ということばは、たいへん意味ふかいものです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
その日私たちは
完全
(
かんぜん
)
なくるみの
実
(
み
)
も二つ
見附
(
みつ
)
けたのです。火山礫の層の上には前の
水増
(
みずま
)
しの時の水が、
沼
(
ぬま
)
のようになって処々
溜
(
たま
)
っていました。
イギリス海岸
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
樹と樹のあいだに
菰
(
こも
)
を張った即席の屋根から、
溜
(
たま
)
った雨水がごぼりと落ちた。灰かぐらを立て、ひと
塊
(
かたま
)
りのおきを黒くした。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「今の通りで結構です。けれども後悔しているなんて書かないで下さいよ。
然
(
そ
)
う何本もあやまり
証文
(
しょうもん
)
を取られちゃ
溜
(
たま
)
らない」
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
短い糸はつなぎ合せて玉にしてあり、それも木綿と絹とが別にしてあって、幾つか
溜
(
たま
)
ると
蒲団
(
ふとん
)
の
被
(
おおい
)
などに織ってもらいます。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
たちまち天に
蔓
(
はびこ
)
って、あの湖の薬研の銀も真黒になったかと思うと、村人も、
往来
(
ゆきき
)
も、いつまたたく間か、どッと
溜
(
たま
)
った。
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
胸が押し付けられるように切ないのに、
微笑
(
ほほえ
)
んでいても好い。息が詰まって
溜
(
たま
)
らないのに、手にキスをして遣っても好い。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
祖母は広い廊下を通って、おさい銭
函
(
ばこ
)
の横の一角の、参詣人が「お
蝋燭
(
ろうそく
)
」と階下から怒鳴ると、おーと返事をする坊さんたちの
溜
(
たま
)
りの方へいった。
旧聞日本橋:20 西川小りん
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「水は海に
竭
(
つ
)
き、河は
涸
(
か
)
れて乾く」とは砂漠地にて常に目撃する現象である(海とは真の海ではない、池の如くすべて水の
溜
(
たま
)
れる処をいうのである)
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
先刻
(
せんこく
)
瀧
(
たき
)
のやうに
降注
(
ふりそゝ
)
いだ
雨水
(
あめみづ
)
は、
艇底
(
ていてい
)
に
一面
(
いちめん
)
に
溜
(
たま
)
つて
居
(
を
)
る、
隨分
(
ずいぶん
)
生温
(
なまぬる
)
い、
厭
(
いや
)
な
味
(
あぢ
)
だが、
其樣事
(
そんなこと
)
は云つて
居
(
を
)
られぬ。
兩手
(
りようて
)
に
掬
(
すく
)
つて、
牛
(
うし
)
のやうに
飮
(
の
)
んだ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
女房
(
にようばう
)
は
横臥
(
わうぐわ
)
することも
其
(
そ
)
の
苦痛
(
くつう
)
に
堪
(
た
)
へないで、
積
(
つ
)
んだ
蒲團
(
ふとん
)
に
倚
(
よ
)
り
掛
(
かゝ
)
つて
僅
(
わづか
)
に
切
(
せつ
)
ない
呼吸
(
いき
)
をついて
居
(
ゐ
)
た。
胎兒
(
たいじ
)
を
泛
(
う
)
かしめた
水
(
みづ
)
が
餘計
(
よけい
)
に
溜
(
たま
)
つたのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
やがてガラガラと
竹刀
(
しない
)
を引くと、
溜
(
たま
)
りへ行って道具を脱ぎ、左右の破目板を
背後
(
うしろ
)
に負い、ズラリと二列に居流れた。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
直前
(
すぐまへ
)
のK法学士が、
溜
(
たま
)
らなささうに
喚
(
わめ
)
いて眼を
露
(
む
)
くと、皆は一度に眼を
開
(
あ
)
いて笑ひ出した。娘はとう/\
居溜
(
ゐたゝま
)
らなくなつて次の
室
(
ま
)
に逃げ出したさうだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
少
(
すこ
)
しやそつとの
紛雜
(
いざ
)
があろうとも
縁切
(
ゑんき
)
れになつて
溜
(
たま
)
る
物
(
もの
)
か、お
前
(
まへ
)
の
出
(
で
)
かた一つで
何
(
ど
)
うでもなるに、ちつとは
精
(
せい
)
を
出
(
だ
)
して
取止
(
とりと
)
めるやうに
心
(
こゝろ
)
がけたら
宜
(
よ
)
かろ
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
伸太郎 そうかな、ここんとこちょっと
溜
(
たま
)
っていた仕事を一遍にしたものだから疲れが出ているのだよ。……栄二の子供達はまだ来ていなかったのだね。
女の一生
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
鉋屑
(
かんなくづ
)
が
溜
(
たま
)
ればそれを
目籠
(
めかご
)
に押し込んで外へ捨てに行つたり、職工達が墨を
曳
(
ひ
)
いた大小の木材を
鋸切
(
のこぎ
)
り
場
(
ば
)
へ持つて行つて、
挽
(
ひ
)
いて貰つたり、昼飯時が来ると
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
文明人の
思及
(
しきゅう
)
だも許されない
怖愕
(
テロリズム
)
の極点に達して、犯人が手を使用して引き出したらしい腹部の内部諸器官が、鮮血の
溜
(
たま
)
りと一緒に
極彩色
(
ごくさいしき
)
の画面のように
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
雪の降ってる中ですから
殊更
(
ことさら
)
に池のような深み
溜
(
たま
)
りの間に入ってそうして雪を
掃
(
はら
)
い込んでその中へ寝たんです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
クリストフは
蕭条
(
しょうじょう
)
たる野の中で、国境から数歩の所に立ち止まった。彼の前にはごく小さな沼があった。いと清らかな水
溜
(
たま
)
りで、
陰鬱
(
いんうつ
)
な空が反映していた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
順に廻り今日は
好
(
よき
)
天氣
(
てんき
)
とか又は
惡
(
わる
)
い風とか
御寒
(
おさむ
)
いとか
御暑
(
おあつい
)
とか云て
未
(
まだ
)
くづは
溜
(
たま
)
りませんかと一
軒
(
けん
)
づつ聞て
歩行
(
あるく
)
が宜しからん其の中には心安くなり人にも
顏
(
かほ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
弱い朝日の光が霧を透すので
青青
(
あをあを
)
とした水が、紫を帯び、其れに前の
家家
(
いへいへ
)
の柱や欄干や旗やゴンドラを繋ぐ
杭
(
くひ
)
などが
様様
(
さま/″\
)
の色を映してるのが
溜
(
たま
)
らなく美しい。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
されば流れざるに水の
溜
(
たま
)
る
如
(
ごと
)
く、
逢
(
あ
)
わざるに
思
(
おもい
)
は積りて
愈
(
いよいよ
)
なつかしく、我は薄暗き部屋の
中
(
うち
)
、
煤
(
すす
)
びたれども天井の下、赤くはなりてもまだ
破
(
や
)
れぬ畳の上に
坐
(
ざ
)
し
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼の頬被りした
海水帽
(
かいすいぼう
)
から四方に小さな瀑が落ちた。
糸経
(
いとだて
)
を被った甲斐もなく総身濡れ
浸
(
ひた
)
りポケットにも靴にも一ぱい水が
溜
(
たま
)
った。彼は水中を泳ぐ様に歩いた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
二月半ほど留守にした間に、置捨てて行った荷物でも書籍でも
下手
(
へた
)
に
触
(
さわ
)
られないほどの
塵埃
(
ほこり
)
が
溜
(
たま
)
っていた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
成る程
其処
(
そこ
)
には、三尺四方
位
(
くら
)
いの機械油の
溜
(
たま
)
りが、一度水に浸されたらしく
半
(
なか
)
ばぼやけて残っている。
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
薬味付きのパンを食ったのが腹に
溜
(
たま
)
っていたので、悪い夢を見たのだろうと思いながら、自分の部屋へ引っ返したが、からだが痛むので、歩くのが容易でなかった。
世界怪談名作集:13 上床
(新字新仮名)
/
フランシス・マリオン・クラウフォード
(著)
「宗匠、いよいよ
遣
(
や
)
られましたぜ。鳶の者が櫂で叩落されたと同じ様に、御前も川へドブンですぜ。
肱鉄砲
(
ひじでっぽう
)
だけなら好いが、水鉄砲まで食わされては
溜
(
たま
)
りませんな」
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
「はい、
金峰山颪
(
きんぽうざんおろし
)
が吹きます時なぞは、わたしの故郷
八幡
(
やわた
)
村あたりは二尺も
溜
(
たま
)
ることがありまする」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
昇の横柄な言葉を思ふと、癪にさはつて
溜
(
たま
)
らない。あんな奴の爲めに原稿を書いてやつたり、身の上のことを頼みに行つたりしたことが、また癪にさはつて溜らない。
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
ちょっとした水
溜
(
たま
)
りの中に、何か知ら不思議な奴が充満しているといっていい位い右往左往しているのだ、目に見える奴だけがこれだから、もし細菌といった奴なら
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
“溜”の解説
溜(ため)は、江戸時代において、病気になった囚人などを保護する施設である。
(出典:Wikipedia)
溜
漢検準1級
部首:⽔
13画
“溜”を含む語句
水溜
芥溜
埃溜
塵溜
吹溜
血溜
溜息
掃溜
足溜
肥溜
肥料溜
溝溜
一溜
溜塗
武者溜
蒸溜
溜間
溜水
蒸溜器
蒸溜水
...