油断ゆだん)” の例文
旧字:油斷
油断ゆだんをしているうちに、達二たつじはいきなり山男に足をつかまいてたおされました。山男は達二を組みいて、刀をり上げてしまいました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「ねずみさん、油断ゆだんをしてはいけません。昨日きのう昼間ひるま人間にんげんがねずみとりぐすりものなかへいれて、そのへんにまいたようですから……。」
ねずみとバケツの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
油断ゆだんをつかれたように、母親はびっくりした。出発の前晩まで、母親はいろいろにくどいた。父親はだまっていたが、勿論もちろん賛成ではなかった。
白い道 (新字新仮名) / 徳永直(著)
それッと、検事は部下たちに目くばせして、博士のうしろに油断ゆだんなくついていかせた。検事自身は博士と並んでいく。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
するとかねてから為朝ためとものゆくえをさがしていた平家へいけかって、為朝ためとも油断ゆだんをねらって、大勢おおぜいにおそいかかってつかまえてしまいました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
で、何事なにごと油断ゆだんなく、よくよくこころまなこけて、乙姫様おとひめさまから愛想あいそをつかされることのないよう心懸こころがけてもらいたい……。ではわしはこれでかえりますぞ……。
前髪立ちの若衆わかしゅうと、三十前の年増としまだ……年上の女に可愛がられていい気でいる奴もあれば、ずんと年下の男を滅法界めっぽうかいに好く女もあらあ——油断ゆだんがなるものか。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その時よりして畏気おじけ附き、白昼ひるは更なり、も里方へはいで来らず、をさをさ油断ゆだんなかりしが。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
民部みんぶ龍太郎りゅうたろうも、一とうの人々は、見しらぬたびさむらい油断ゆだんはならないとたぶんな懐疑かいぎをもった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……私等わしらまた油断ゆだんなく奥様おくさま行衛ゆくゑさがしますだで、えら、こゝろくるはさつしやりますな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また木にのぼっていないときでも恭一君はよく、もののかげや、うしろから、わっといってびっくりさせるのでした。ですから小さい太郎は、恭一君の家の近くにくると、もう油断ゆだんができないのです。
小さい太郎の悲しみ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「正成一流のたばかりでもあろうぞ。油断ゆだんして裏掻うらかかるるな」
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
どうせ油断ゆだんはならないと思っている。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
きたくにでは、そうでありましても、こちらへきては、なかなか油断ゆだんがなりません。へびがどもをねらっていますから。」とこたえました。
南方物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは蜂矢が油断ゆだんをしていたときのことだったので、かれはぎくりとして、手にしていた短かいタバコをその場へとり落とし、うしろへふりかえった。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
童子どうじはこういって、おおぜいの腰元こしもと家来けらいにいいつけて、さけさかなをはこばせました。酒呑童子しゅてんどうじはそれでもまだ油断ゆだんなく、六にん山伏やまぶしためしてみるつもりで
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
すこしの油断ゆだんがあれば、姿すがたはいかに殊勝しゅしょうらしく神様かみさままえすわっていても、こころはいつしか悪魔あくまむねかよっている。
きょうのひるごろまでは、じぶんと一しょに、砦のおくのやぐらに、きのうと同じように油断ゆだんなく小太郎山こたろうざん見張みはっていたのに、いつのまにか櫓を下りていったきりかえってこない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
... さるに怎麼いかなればかく、おぞくも足をやぶられ給ひし」ト、いぶかり問へば黄金丸は、「これには深き仔細しさいあり。原来某は、彼の金眸と聴水を、倶不戴天ぐふたいてんあだねらふて、常に油断ゆだんなかりしが。 ...
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
それで二人が神楽坂かぐらざかのところまで来ると、紙屑買いは足が痛い痛いと言い出す。どうやらおれをく気だなと悟った七兵衛は、わざと油断ゆだんをしていると、ふいと路地を切れて姿を隠す。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのようすで、悪意あくいのないのをさとりはしたけれど、なおははねこは、油断ゆだんをせず、えさちかづこうとしませんでした。
どこかに生きながら (新字新仮名) / 小川未明(著)
「へえ、そうかね。私たちは、スパイじゃないから安心なものだが、油断ゆだんのならない話だね。で、その七八人の荒くれ男というのは一体、どこの国の人たちかね」
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
だから、弦之丞も、お綱を引っ抱えて海へ入ったのは、おそらく、逃げるだけの自信があってしたことに違いないし、船も阿波の沖へ近づいていたといえば、かたがた油断ゆだんはなるまいというのだ
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頼光らいこうはこんな山奥やまおく不思議ふしぎだとおもって、これもおにけたのではないかと油断ゆだんのない目でていますと、おじいさんたちはその様子ようすさとったとみえて、にこにこしながら、ていねいにあたまげて
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あるあさのこと、すこしの油断ゆだんはからって、かれは、一からしました。そして、どこというあてもなく、ただ遠方えんぽうへと、あしまかせてはしったのです。
サーカスの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なにしろその後、烏啼の消息しょうそくがさっぱり分らないので、油断ゆだんはならないとのことであった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こうして為朝ためとも一人ひとりすくめられて、そのまもっているもんにはだれもちかづきませんでしたが、なんといってもこうは人数にんずうおおい上に、こちらの油断ゆだんにつけんで夜討ようちをしかけてたのですから
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
幼少ながら、かれのすえ浜松城はままつじょうのろいであった。それをらえたのは近ごろの快事かいじ、いずれも斬刑ざんけいのすみしだいに、恩賞おんしょうにおよぶであろうが、その日のくるまでは、かならず油断ゆだんせまいぞ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ほんとうに、いつこのひか大事だいじしなぬすまれるかしれないから、油断ゆだんはできないぞ。」と、こうおつとはいいって、二人ふたりは、それを大事だいじまもっていました。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「この尊い犠牲を生かさねば、われわれの義務は果せませんぞオ。——さあ全員配置について、スピードをあげましょう。ここは丁度、恐ろしい無引力空間の近くです。油断ゆだん禁物きんもつ!」
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
人間にんげんにも油断ゆだんができなければ、いぬや、また、ほかのねこたちにも、けっしてこころゆるせなかったからです。
ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちに千田や船員が油断ゆだんをするだろうから、脱出も出来ようと考えた。但し脱出したのがよいか、しないで辛抱していた方が安全か、これはとくと考えてみなければならない問題だと思った。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ちいさな白鳥はくちょうは、はじめて、これによって、敏捷びんしょうな、本性ほんしょうざめさせられたのです。こののち、どんなときに、油断ゆだんをしてはならないかということをりました。
魚と白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「魚眼レンズを使っているのか? よおし、油断ゆだんはしないぞ」
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あたりが、やっとおちついて、むかしのような平和へいわがきたとおもったら、いつのまにか、人間にんげんこころわってしまって、信用しんようどころか、なんだか危険きけんで、油断ゆだんができなくなったよ。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
「とんでもない。彼奴あいつ油断ゆだんのならない喰わせ者だよ」
「いいえ、ここにいるとしとったねこは、それはりこうで、のぼることが上手じょうずです。いつか、わたしですら、もうちょっとでつかまるところでしたから、油断ゆだんをしてはいけません。」
木の上と下の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これは油断ゆだんのならぬ世の中になったものである。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ここにすんでいればこそ安心あんしんなんだよ。それは、もっとさとちか野原のはらにゆけば食物しょくもつもたくさんあるし、おまえたちのよろこびそうなはなや、ながれもあるけれど、すこしも油断ゆだんはできないのだ。
兄弟のやまばと (新字新仮名) / 小川未明(著)
「こいつは、油断ゆだんがならないぞ!」
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ほんとうに、油断ゆだんがなりませんのね。あなたが注意ちゅういしてくださらなければ、もうちょっとでわたしは、あみにかかるところでした。」と、ちょうは、花弁はなびらうえにとまって、こころから感謝かんしゃしました。
くもと草 (新字新仮名) / 小川未明(著)
油断ゆだんなき警戒
うみのすさまじいおとが、そらにまでとどろいてこえました。いつやみそうもない暴風ぼうふうは、油断ゆだんをすると、いまにもきつけて、このおそろしいなみのうずきのなかへ、自分じぶんとそうとしました。
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、しろくもの、あわただしくながれるでした。このおすのほおじろは、このあいだから、つけねらっていたまち鳥刺とりさしのために、すこしの油断ゆだんすかされて、ついにらえられてしまいました。
平原の木と鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
猟師りょうしはすこしも油断ゆだんをせずにやまなかへはいってゆきました。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)