“掻:か” の例文
“掻:か”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花63
太宰治51
野村胡堂39
吉川英治33
中里介山31
“掻:か”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語15.8%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)3.0%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆1.6%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「いいえ、」女は上半身を起し、髪をきあげて、「奥様は、ご立派なお方です。あたし、親兄弟の蔭口きくかた、いやです。」
古典風 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「御前がその気でなくっても、世間と云うものがあります。出るなら出るようにして出てくれないと、御母さんが恥をきます」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さあらぬように話しかけられたことは、表面おちつきかけたものをき立てて、またぶすぶすとくすぶらしたに等しかった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
二九番の止宿ししゅく人ではなかったが、やはりハンベリイ街の売春婦で、ひと思いに咽頸いんけい部をき斬ってあった。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
そこへ最初案内に立つた同心が来て、「わたくし共の木刀にはつばがありますから、引つ掛けてき寄せませう」と云つた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
御当人にはずいぶん丹念な種本かも知れない、これを暴民共に滅茶滅茶にさせてはお気の毒だ、ひとつき集めてこの袋に入れて
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ほどなく一升の酒を平げ、飯を食い――終ると、膳を押片づけて、行燈あんどんき立て、うたいをうなりはじめます。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
突当り路地へでも追いつめられて、ギュウの音も立てず、名も無き敵に首をかれるようでは、がんりきとしても浮びきれない。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
木屑きくずなどをいた位で追着おッつかぬと、売物の蚊遣香は買わさないで、杉葉すぎッぱいてくれる深切さ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見ると、なるほど喬之助は、園絵を前に喧嘩屋のふたりをはばかってニヤニヤ笑いながら、頭をいている。右近は気がついて、
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一本筋の幅の詰まった紺博多の帯に鉄鎖をからませて、胡座あぐらいた虚脛からすねみ出るのを気にしては
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
午前十時頃、店はき廻されるような騒ぎで、そこらに群がる男女なんにょの店員は一分間も静坐じっとしてはいられない。
一日一筆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
きまりの魚軒さしみふと、だいぶ水氣立みづけだつたとよりは、あせいて、かどおとして
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
男ども苅置かりおきたるまぐさを出すとて三ツ歯のくわにてきまわせしに、大なるへび見出みいだしたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
考えれば考えるほど、口惜くやしさと腹立たしさとが何遍でもき上って来て、胸の中がきむしられるようになります。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
機関車が過ぎ客車がかすめて行った。明るい窓の行列。機関車のビストンの音は客車の軌条をむ音にき消された。
汽笛 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
それを見て黒馬が走り葦毛が駆けだし、三頭の馬は土埃つちぼこりき立てながら、まりのようになって新道路を走った。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
なぜ妻にまで秘密にする必要があるのだろう? と思うと、彼女はなにかしらむしりたいような気持ちになっていた。
猟奇の街 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
すると、「この恋もし成就じょうじゅする時は、大いに恥をく事あるべし」とあったので、彼女は読みながら吹き出した。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
寒月は火鉢の灰を丁寧にらして、俯向うつむいてにやにや笑っていたが、やがて口を開く。極めて静かな調子である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから、女二人の旅券だの船だの信用状だのを、自分一人でき込むようにしてらちを開け、神戸まで見送ってれた。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
家に一銭でも大事の日なのに、手箱の底をいて一歩金いちぶきん二つ三つ、小粒銀三十ばかり財布に入れて懐中にねじ込み
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そして火鉢の向うに胡坐あぐらいた、がっしりした体格の大村を見て、語気もその晴れ晴れしさに釣り込まれて答えた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
空間にあへなき支点を求めて覚束おぼつかなくも微風に揺られてゐるきつきあまつた新蔓は、潮の飛沫しぶきのやうだ。
蔦の門 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
といって道庵は、しきりにおびえながら、その荷物をき集めて、こんなところには一刻もいられないというような身ぶりをする。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大番頭夫人は、小さな丸髷まるまげとはつりあわない、四分玉の珊瑚珠さんごじゅの金脚で、髷の根をきながらいった。
冷ややかな風の身にしむように吹き込んでくるのにお誘われになって、宮は十三絃をほのかにおき鳴らしになるのであった。
源氏物語:37 横笛 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ざされてしまわないようちからかぎあしみずをばちゃばちゃいていなければなりませんでした。
はまぐり貝は又物をき取るにてきしたり。魚鱗ぎよりんちたるままのもの貝塚かいづかより出づる事有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
恋しい男の右衛門へ取り付き縋っているとは夢にも知らず彼女は血汐の涙を流し、必死の思いで口説くどくのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それと打付うちつけてうのも、院長いんちょうはじかせるようなものと、なんともわずにはいたが
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ええれったいと罪のなき髪をきむしり、一文もらいに乞食が来ても甲張り声にむご謝絶ことわりなどしけるが
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……鮪茶漬まぐちやづうれしがられた禮心れいごころに、このどんぶりへ番茶ばんちやをかけてんだ。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、灌木かんぼくの枝をきわけながら、ザワザワと低地へ下りて行きかけたが、何にひとみたれたのか、
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紀州田辺地方でも、鉦太鼓を叩くとともに、くしの歯をもって桝の尻をいて、変な音を立てる風があった(雑賀君報)。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それから、お樂の手の爪の中につむぎの糸屑が、ほんの少しだが入つて居る、抱き附いて背中を刺された時きむしつたんだね
「いや、そう云う人間は御免こうむる。のみならずこの不景気じゃ仕様がない」と云って誠吾はさくさく飯をき込んでいた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ラップは頭のさらきながら、正直にこう返事をしました。が、長老は相変わらず静かに微笑して話しつづけました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「もう新しいのに換えて置きました」妻はそう答えたのち箪笥たんすの上の鏡をのぞき、ちょいと襟もとをき合せた。
子供の病気:一游亭に (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は草木や蔦蘿つたかずらを腕一ぱいにきのけながら、時々大きな声を出して、うなって行く風雨に答えたりした。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
熊本君は笑わず、ビイルのコップを手にとって目の高さまで捧げ、それから片手で着物のえりをきちんとき合わせて、
乞食学生 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そのレッテルは、爪で半分以上もきはがされていましたが、洋字の部分が残っていて、それにはっきり書かれていました。
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
蝶子の姿を見ると柳吉は「どや、ええ按配あんばいに煮えて来よったやろ」長い竹箸たけばしで鍋の中をき廻しながら言うた。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
おれは顔中ぼりぼりきながら、顔はいくられたって、口はたしかにきけますから、授業には差しつかえませんと答えた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
片膝かたひざ座蒲団ざぶとんの上に突いて、灯心をき立てたとき、花のような丁子ちょうじがぱたりと朱塗の台に落ちた。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その度に彼等は立止って、そのむっちりと張切った白い太股ふともものあたりをあわせてやらねばならなかった。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「よく知ってますね」と内儀さんは、はだけた胸をわせながら云った。「ちょいといい男ですわヨ、ホッホッホ」
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すると老紳士は、幼年生に巧みにいい返された先生といった快笑を顔中にみなぎらせて、頭をいた。「やあ、これは、参った」
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
越後はベッドの上に大きくあぐらをいて、娘さんの活花いけばな手際てぎわをいかにも、たのしそうに眺めながら、
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
するとミーロはとうとう決心したようにいきなり咽喉のどきはだけて、はんの木の下の空箱の上に立ってしまいました。
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
たとえば長い間集めた物を、一々心覚えをして箱に入れて置いたのを、人に上を下へとき交ぜられたような物である。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
『菩薩本行経』には、一婦人こがしを作る処へ羊来り盗むを、火をく杖に火の著いたまま取り上げて打つと羊毛に燃え付いた。
にわかに中国大陸土産みやげき集めるやらで、こまねずみのようにきりきり舞いをしていたが、それでも一時間後には
またしかし、ここは、料理場と違って、駒井甚三郎の研究しかけた事項には、断じてき廻させてはならないことがあるに相違ない。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
仏頂寺は立派に腹を切りえた上に、咽喉をききっている。これは反魂香はんごんこうの力でも呼び生かすすべはない。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
水が引いたあと、ヘドロをくのと、れた衣物きものや書籍が洗いきれずに腐って、夜になると川へ流して捨てた。
そしていかにも易々やすやすあししたみずけて、見事みごとおよまわるのでした。
太宰は瞬間まったくの小児のような泣きべそをいたが、すぐ、どす黒い唇を引きしめて、傲然ごうぜんと頭をもたげた。
ダス・ゲマイネ (新字新仮名) / 太宰治(著)
かぶと虫は牛のやうによちよちと歩きました。小さい太郎が糸のはしを押へると、まへへ進めなくて、カリカリと縁板をきました。
かぶと虫 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
やや暫し、あしの洲に半身はんしんを没して、じっと行手を見定めていたが、何思ったか、俄かに芦をき分けて走りだした。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土をき分けてやっと地面に顔を出すと、むぐらもちとまちがえられて鼻を切られた、というような結末になった例も多い。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
老母と寧子とは、雪と土とを根気よくじっていた。求める蕗のとうの一ツでもと、祈りに似る気持で捜していた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とさらに念を押す。私はどういうものか、小説家と言われると妙に照れ臭いので、おでこをむやみにきながらうなずくと、
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
胸まで来る深い湯の中で彼は眼を閉じ、ひそひそと何か話し合いながらトランクをき廻している彼女らの声を聞いているだけだった。
いのちの初夜 (新字新仮名) / 北条民雄(著)
体中珠数生じゅずなりになったのを手当てあたり次第にむして、抜き取りなどして、手を挙げ足を踏んで
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この手、この足、かゆいときにはき、痛いときにはでるこの身体からだが私かと云うと、そうも行かない。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
主人はうーん、むにゃむにゃと云いながら例の赤本を突き飛ばして、黒い腕を皮癬病ひぜんやみのようにぼりぼりく。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
女房は手拭をい取ったが、ぶちのあたりほんのりと、逆上のぼせた耳にもつれかかる、おくれ毛を撫でながら、
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かの女は、向側の窓硝子に映った自分の姿を見るのが嫌になって、寒そうに外套がいとうの襟をき合せ、くるりと首を振り向けた。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
悠揚と引かれたまゆに左の上鬢うわびんからき出した洋髪の波の先が掛り、いかにも適確で聡明そうめいに娘を見せている。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
竹さんは黙っていた。黙って摩擦をつづけた。摩擦がすんで引きあげる時に、竹さんはおくれ毛をき上げて、妙に笑い、
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼はちょっとした誘惑を感じたが己のへやで机にひじをもたせて、己の帰りを待っている女の顔がすぐその誘惑をき乱した。
蟇の血 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
吾輩は頭をいた。マサカにタッタ一本の毛が恐ろしく、逆立ちが出来ないとは云えないからスッカリ赤面してしまった。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一同、入乱れて、遮りとどむるを、振払い、くぐって、はて真中まんなか取籠とりこめられる。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御存じでもあろうが、あれは爪先つまさき刺々とげとげを軽くおさえて、手許てもとへ引いてく。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大蛇のようないびきく。……めかけはいいなぶりものにされたじゃないか。私は浅ましいと思った。大入の芝居の桟敷で。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
長い火箸で火をいていた池田は、お雪ちゃんから、思いがけなく先生と呼ばれたので、ちょっと驚いた眼つきをすると、
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そしておもむろに、衣の袖をきあわせ、瞑目めいもく合掌の後、しずかに水晶の数珠をすりあげ、つぶやくようにひくく、
危い弥生をみとめて、走りざまに陸尺ろくしゃくのひとりが片手にきこみ、むりやりに駕籠の一つへでも押しこんだものであろう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
れと打付うちつけてふのも、院長ゐんちやうはぢかせるやうなものと、なんともはずにはゐたが
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
と私は門前へ躍り出しました。が、不思議にも! その時はもうスパセニアの姿は、き消すように、見えなくなってしまったのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
涙に暮れる枝垂柳しだれやなぎよ、おまへの髮をきあげて、そら御覽よ、あすこを通る人を、あかつきをかに立つ人を、
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ゆき子は蒲団に片肘かたひぢついて横坐りになると、ジャケツの胸の上から大きなまるい乳房を、たゝくやうにしていてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
広巳はそれに深く触れたくなかった。広巳はそれをはぐらかすために勢よく飯をきこんだ。お町は前へ来て立っていた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
私は恐らくこれ以上簡潔に、これから述べようとする趣旨をいつまんで云うことはできない。だがもう一度次のようにも強く云おう、
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「へえ。若い時東京に奉公をいたしておりましたから、いくらか違いますのでございましょう」と云って、禿げた頭をいている。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
そしてそれはこがらしに追われて、砂漠のような、そこでは影の生きている世界の遠くへ、だんだん姿をき消してゆくのであった。
冬の日 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
父親のベッドにさえ、紀久子はそこに自分の動静をうかがっている者が潜んでいるような気がして、神経をき立てられるのだった。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
奥さんは火鉢の灰をらした。それから水注みずさしの水を鉄瓶てつびんした。鉄瓶はたちまち鳴りを沈めた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それからめしみ込むようにき込んで、私がまだ席を立たないうちに、自分のへやへ引き取りました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
静臥しているはずの膝が高く折り曲げられていて、両手は宙に浮き、指は何物かをかんとするもののように、無残な曲げ方をしている。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
控室に帰って、部屋の壁によりかかってあぐらをき、三十分くらい待っているうちに、僕と同じ組の四人の受験生も順々に帰って来た。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
始終たすきがけの足袋跣たびはだしのままで、店頭みせさきに腰かけて、モクモクと気忙きぜわしそうに飯をッ込んでいた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
金をさらって家を逃げ出してくれるとか、お袋をなぐり殺して高飛びをするとか、そんなことをすらお庄の耳元で口走った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
何處どこでも眞白まつしろだよ」おつぎはたけ火箸ひばし落葉おちばてながらいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
はかあなけたやう赤土あかつちが四はううづたかげられてあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
鍋釜なべかまを満載したリヤカーや、老母を載せた乳母車うばぐるまが、雑沓ざっとうのなかをきわけて行く。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
つんのめり、いあがり、ずり落ち、木の根にすがり、土をき掻き、少しずつ少しずつかず枝のからだを林の奥へ引きずりあげた。
姥捨 (新字新仮名) / 太宰治(著)
増田博士は胡坐あぐらいて、大きいこわい目の目尻めじりしわを寄せて、ちびりちびり飲んでいる。
里芋の芽と不動の目 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
不破の関守氏は、そろそろと炉辺へ近寄って来て、腰をかけ、煙管きせるき出しながら心安げに話をしました――
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)