当時とうじ)” の例文
旧字:當時
あのときの、おんな先生せんせいは、まだいらっしゃるだろうか。それにつけ、ぼくは、ふかこころにのこって、わすれられない当時とうじおもがあります。
だれにも話さなかったこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
勝氏は真実しんじつの攘夷論者に非ざるべしといえども、当時とうじいきおいむを得ずして攘夷論をよそおいたるものならん。その事情じじょうもって知るべし。
しかし、火薬かやく鉄砲てっぽうも、当時とうじまだ南海の蛮船ばんせんから日本へ渡来とらいしたばかりで、硝石しょうせき発火力はっかりょくも、今のような、はげしいものではない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当時とうじわたくしりましては、んだ良人おっとうのがこのける、ほとんど唯一ゆいいつ慰安いあんほとんど唯一ゆいいつ希望きぼうだったのでございます。
「そうよ。おまけにこいつァ、ただのおんなつめじゃァねえぜ。当時とうじ江戸えどで、一といって二とくだらねえといわれてる、笠森かさもりおせんのつめなんだ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
白に関する最近の消息はうであった。昨春さくしゅん当時とうじの皇太子殿下今日の今上陛下きんじょうへいかが甲州御出の時、演習御覧の為赤沢君の村に御入の事があった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
当時とうじ夏目先生なつめせんせい面会日めんかいび木曜もくようだったので、私達わたしたちひるあそびにきましたが、滝田たきたさんはよるって玉版箋ぎょくばんせんなどに色々いろいろのものをいてもらわれたらしいんです。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
うめはなはなののどかな村むらを、粟毛くりげ額白ぬかじろの馬をのりまわした糟谷は、当時とうじわかい男女の注視ちゅうし焦点しょうてんであった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
江連えづれ当時とうじ榎本えのもと家族かぞくといっしょに静岡しずおかにすんでいたのですが、手紙てがみには、つぎのようにかいてありました。
今では小学校の読本とくほんは、日本中どこへいっても同じのを使つかっておりますが、その当時とうじは、北海道用という特別とくべつのがあって、わたしたちは、それをならったものです。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
あのころつまり私たちがその遊びをしていた当時とうじでさえ、の子どもたちはそういう遊びを知っていたかどうかもあやしい。いちおう私と同年輩どうねんぱいの人にたずねてみたいと思う。
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
昔の因縁いんねんを考えると、わしとて、譲らんでもないが、しかしあのように敗けてばかりいるのでは張合はりあいがない。——で、当時とうじ、醤の奴は、どこにいるのか。重慶じゅうけいか、成都せいとか、それとも昆明こんめい
この当時とうじは、武士ぶしのことばに、そうむやみにそむくわけにはいきませんでしたので、法一はなんとなく気味悪きみわるく思いながらも、びわをかかえて、その案内者あんないしゃに手をひかれて寺をでかけました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
どうだの、これはべつに、おいらが堺屋さかいやからたのまれたわけではないが、んといっても中村松江なかむらしょうこうなら、当時とうじしもされもしない、立派りっぱ太夫たゆう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
かれは、せめても、おしずにおりをされた、当時とうじの四つばかりの自分じぶんかお写真しゃしんによって、つくってみようとおもいたちました。
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
当時とうじわたくしには、せめて一でも眼前がんぜん自分じぶん遺骸いがいなければ、なにやらゆめでもるような気持きもちで、あきらめがつかなくて仕方しかたがないのでした。
もっともそれは、当時とうじからの腕白仲間わんぱくなかま鍛冶屋かじや虎之助とらのすけ桶屋おけやの市松などと、さしむかいでいる時にかぎってはいたが。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
糟谷かすやはまた自分の結婚けっこんするについてもその当時とうじあまりに思慮しりょのなかったことをいまさらのごとくいた。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
当時とうじ幕府の進歩派小栗上野介おぐりこうずけのすけはいのごときは仏蘭西フランスに結びその力をりて以て幕府統一のまつりごとをなさんとほっし、薩長さっちょうは英国にりてこれにこうたがい掎角きかくいきおいをなせり。
その当時とうじ、まだ二十だい青年せいねんで、あの石狩平野いしかりへいやを走る列車れっしゃ車掌しゃしょうとして乗りこんでいたおじからきいた話なのです。以下いか、わたしとか自分とかいうのは、おじのことです。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
にんむすめらは、当時とうじのようにわらいもせずに、いずれも心配しんぱいそうなかおつきをしていました。やがて父親ちちおやは、なにかいって金庫きんこほうゆびさしました。
青い時計台 (新字新仮名) / 小川未明(著)
じいさんのおはなしは、なにやらまわりくどいようで、なかなか当時とうじわたくしねたことはもうすまでもありますまい。
そん五もとく七もありゃァしません。当時とうじ名代なだい孝行娘こうこうむすめ、たとい若旦那わかだんなが、百にちかよいなすっても、こればっかりは失礼しつれいながら、およばぬこい滝登たきのぼりで。……
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
新しい学問をした獣医じゅういはまだすくない時代であるから、糟谷は獣医じゅういとしても当時とうじ秀才しゅうさいであった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
当時とうじ外国人にもおのずから種々の説をとなえたるものなきにあらずというその次第しだいは、たとえば幕府にて始めに使節しせつを米国につかわしたるとき、彼の軍艦咸臨丸かんりんまる便乗ぴんじょうしたるが
いや、当時とうじ、海外から日本にきていて、この工事こうじ見聞みききしたクラセとか、フェローのような、宣教師せんきょうしでも、みなしたいて、その高大こうだいをつぶさに本国ほんごくへ通信していた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこが、しろあとでありました。わずかにのこるものは、当時とうじ、とりでにつかったという、あおごけのはえた、おおきないしと、やぶにかくれた、いけくらいのものです。
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さすがに、英雄えいゆうはちがっていた。なんといわれても、仲間なかまとは、けんかをしなかったからな。」と、その当時とうじかれのあだをいったともだちまでが、かたいました。
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
当時とうじからると、なるほど、なか進歩しんぽしたが、のんびりとしたところがなくなって、らしづらくなりました。おじいさんのいわれたことは、みんなほんとうなのでした。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
たとえば、丹塗にぬりのやしろがあり、用水池ようすいいけがあり、古墳こふんはそのかたわらにあったことや、伝説でんせつはなしや、かんったときのありさまなど、当時とうじのことを、おもしながらかたったのであります。
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、当時とうじ若者わかものは、もういいはたらざかりになっていて、こうこたえました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このまちのあるところが、当時とうじ海岸かいがんであったのがわかるというのだ。
アパートで聞いた話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
バシャバシャとみずをはねかえして、つめたい氷水こおりみずびたときだけ、わずかに、自分じぶんまれたきた故郷こきょうにいた時分じぶんのことをおもしたり、また、ちょっと、その当時とうじ気持きもちになったのであります。
白いくま (新字新仮名) / 小川未明(著)
当時とうじ、ひまわりのはなは、この地方ちほうにすらめずらしいものにおもわれました。また、このはな種子たねから、くすりつくられるというので、小父おじさんは、それをってかえって、自分じぶんうちのまわりにまいたのであります。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こういって、けん一は、まことに危険きけんだった当時とうじ追想ついそうしました。
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)
あには、当時とうじ、くわをののしっていったことをおもしました。
くわの怒った話 (新字新仮名) / 小川未明(著)