くは)” の例文
そしてその免かれた方法も、もうこれでくはしく説明致したのでございますから、わたくしはこのお話を早く切り上げようと存じます。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
索搜たづね密々こつそり呼出よびだし千太郎に小夜衣よりの言傳ことづてくはしく語りおいらんは明てもくれても若旦那の事のみ云れて此頃はないてばつかり居らるゝを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
... 長谷川町はせがはちやう梅廼屋うめのやといふ待合まちあひを出したのです」「へえーさうでございますか」それぢやア梅廼屋うめのやのおふくろに聞けば塩原しほばらの事はくはしくわかる。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
その方面の事情をくはしく聞きたい人は横浜市元浜町もとはまちやう三丁目の酢屋定七すやさだしち君の本店に問合されるが好い。氏は三箇月ごとに日本へ往復して居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
それについては吉次郎も一々くはしく語らなかつたが、この話はかれが二十四五の頃で、浅草のある鰻屋にゐた時の出来事である。
魚妖 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
下部かぶ貝塚かひづかが、普通ふつうので、其上そのうへ彌生式やよひしき貝塚かひづかかさなつてるとか、たしかそんなことであつた。いま雜誌ざつし手元てもといのでくはしくはしるされぬ。
潮田さんの秘書役をして居た松本英子と云ふ婦人記者が一々くはしく書きとめたものがある。今その二つ三つをこゝに載せる。
政治の破産者・田中正造 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
叔母をばどくさうに、何故なぜ小六ころく世話せわ出來できなくなつたかを、女丈をんなだけに、一時間じかんかつてくはしく説明せつめいしてれたさうである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
十二三歳の頃京都に松岡門人津島恒之進つしまつねのしん、物産にくはしきことを知り、此の頃家君の京遊に従つて、始めて津島先生にえつし、草木の事を聞くこと一回。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
B ぼく政治上せいぢじやうこと趣味しゆみがないからくはしいことらないが、なんでも請願せいぐわんかはりに、多數たすう人民じんみんから衆議院議長しうぎゐんぎちやうてゝ葉書はがきさうとふのださうな。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
ありますとも、しかし、あれは、はじめに出たしんを止めて、二度目に一本出た花の、頭のさきを、ちよぼつと摘んだのがよろしいとくはしくをしへていただいた。
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
……ころしてなう、と逆上ぎやくじやうするうち、段々だん/\くはしくきますと、をんなが、不思議ふしぎひとふのをきらふ。めう姿すがたかくしたがるのは、の、われらばかりにはかぎらぬ樣子やうす
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
やがて懷中から玉の大きい老眼鏡を取り出し、道臣の枕元に坐つて、くはしく昨日からの入費を説明した。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
りしも二度にど三度さんど車夫しやふまたみちくはしからずやあらんいま此職このしよくれざるにやあらんおなみち行返ゆきかへりてかうてもしたらんにつよくいひてもしもせずしめすがまゝみちりぬ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
丑松は少年の時代から感化をけた自然のこと、土地の案内にもくはしいところからして、一々指差して語り聞かせる。蓮太郎は其話に耳を傾けて、熱心に眺め入つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
私は日本の事が気になつてならぬが、も少しくはしい通信を読んでから事をめようと思ひ、持つて来た小さい座布団を牀上しやうじやうに置き、うへに腰をおろして両足を牀上に延ばした。
南京虫日記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
わたしはお前の事をくはしく考へて見た。そしてお前の為めに祈祷をした。そこでわたしの得た神のお告はかうだ。これまでのやうに暮してゐて、身を屈するが好いと云ふのである。
己は妻君の機嫌の直つたのを見てきのふイワンの話した将来の計画をくはしく話し出した。立派な夜会を開いて、すぐつた客を招くと云ふ計画は細君の耳にも頗る快く聞き取られた。
梅屋敷うめやしきは文化九年の春より菊塢きくうが開きしなり、百花園くわゑん菊塢のでん清風廬主人せいふうろしゆじん、さきに国民之友こくみんのともくはしくいだされたれば、誰人たれびとも知りたらんが、近頃ちかごろ一新聞あるしんぶん菊塢きくう無学むがくなりしゆゑ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
火の起つたのは、武江年表に暮六時くれむつどきとしてあるが、此手紙には「夜五つ時分」としてある。火元は神田多町二丁目湯屋の二階である。これは二階と云ふだけが、手紙の方が年表よりくはしい。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
う云つてね、金田君は身上話を聞いて呉れたお礼だからと、僕が止めるのも聞かずに、到頭たうとう三鞭酒シヤンパンしゆを二本ばかり抜いた。流石さすが西洋通だけあつて葡萄酒だの、三鞭酒なぞの名前はくはしいもんだ。』
一月一日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
湯村は昨夜田住に話したことをくはしく説明した上
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
すると其方にも罪が掛るぞ有體に白状致せと有ければ願山は仰天ぎやうてんして思ふ樣は斯までくはしく知らるゝ上はとてもかなはぬ處と覺悟を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あなたの現場を一目に見渡していらつしやる前で、わたくしはあなたにくはしいお話を致さうと思つて、こゝへ御案内いたしたのでございます。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
それでは塩原しほばらのことをくはしく知つてゐる人がありませうかとつて聞いたところが、いといふ。何処どこさがしてもわからない。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
自分は前に述べた通り仏蘭西フランスの中流以上の家庭をくはしく観察する機会を得ないのを遺憾に思つてります。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
東鑑の十三に、くはしき縁起候とよ。いにしへは七堂伽藍、雲に聳え候が、今は唯麓の小家二三のみ。
逗子より (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
二度目には前よりくはしく話した。己の調子は熱心であつた。己はイワンの親友として周旋して遣らなくてはならないと思つたからである。併し今度も主人は少しも感動する様子がない。
今日けふ郡司大尉ぐんじたいゐ短艇遠征たんていゑんせいかうを送るに、ねて此壮図このさうと随行ずゐかうして其景況そのけいきやうならびに千島ちしま模様もやうくはしくさぐりて、世間せけん報道はうだうせんとてみづから進みて、雪浪萬重せつらうばんちよう北洋ほくやう職務しよくむためにものともせぬ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
併しセルギウスは商人に先づ身を起させて、その事柄をくはしく話せと命じた。
N君も日本の事が心配でまらぬのでやはり朝食もせずに日本媼のところに来た途中なのであつた。N君の持つてゐるけふの朝刊新聞の記事を読むと、きのふの夕刊よりもややくはしく出てゐる。
日本大地震 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
櫟津いちひづは大和の添上そへかみ郡だといふから、櫟津いちひづ檜橋ひばしとつづけると、神田の龍閑橋りうかんばしとか芝の土橋どばしとかいふふうに方向まで示してゐるので、その土地にくはしくもないくせに、大和生れの娘の顏を見て
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
令孃ひめ鎌倉かまくらごもりのうはさむねとヾろきてさとししばしはあきれしが、なほ甚之助じんのすけくはしくへば、相違さうゐなき物語ものがたりなかばきながらにて、何卒なにとぞめにやう工風くふうきかとたのまれて、さてなにとせん
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
道子みちこはそのへん蕎麦屋そばやさそひ、くはしくいろ/\の事情じじやうをきいた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
そへて差上申べしと云ければ後藤始め大いに悦び夫は何よりの幸ひ何分頼むと有りけるに八五郎は後藤ごとうならびに夫婦の者の素性すじやうくはしく書状にしたゝめ是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此日このひ此地このち此有様このありさまなが描写べうしやとゞまりて、後年こうねんいかなる大業たいげふ種子たねとやならん、つどへる人を見て一種いつしゆたのもしき心地こゝちおこりたり、此一行このいつかう此後こののち消息せうそく社員しやゐん横川氏よこかはしが通信にくはしければ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
初めはわたくしは気が変になつてゐて、くはしく周囲の様子を観察することが出来なかつたのでございます。初めは只気味の悪い偉大な全体の印象が意識に登つた丈であつたのでございます。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
... そりやアなんともへないすご怪談くわいだんがある」「へー、それはどうすぢです」「くはしい事は知らないが、なんでも初代しよだい多助たすけといふ人は上州じやうしうはうから出てた人で、同じ国者くにもの多助たすけ便たよつてて、 ...
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
……それへおれの病を君からくはしく書いてやつて呉れ。まだ容態ようだいをくはしく書いてやらうとしてゐて書いてやらないから。……身のおきどころがない。……坐つてゐても玉のやうな汗が額から出る。
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
己は腹の立つのを我慢して、チモフエイの言つた事をくはしく話して聞かせた。併しイワンが己の声の調子で己が侮辱せられたやうに感じてゐると云ふ事だけは察するやうに努めて饒舌しやべつたのである。
フイイレンチエゆきの汽車の時間が迫つたからくはしく書く余裕が無い。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
云ふもまた可笑をかつひに我輩問ひて此地の流行唄はやりうたに及びしに彼またくはしく答へて木曾と美濃と音調のたがひあることを論じ名古屋はまた異なりと例證に唄ひ分けて聞す其聲亮々りやう/\として岩走る水梢を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)