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やつ
ふりがな文庫
“
奴
(
やつ
)” の例文
「往来で物を云いかける無礼な
奴
(
やつ
)
」と云う感情を
忽
(
たちま
)
ち
何処
(
どこ
)
へか引込めてしまって、我知らず月給取りの根性をサラケ出したのである。
途上
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
これからはいよ/\お
民
(
たみ
)
どの
大役
(
たいやく
)
なり、
前門
(
ぜんもん
)
の
虎
(
とら
)
、
後門
(
こうもん
)
の
狼
(
おほかみ
)
、
右
(
みぎ
)
にも
左
(
ひだり
)
にも
怕
(
こわ
)
らしき
奴
(
やつ
)
の
多
(
おほ
)
き
世
(
よ
)
の
中
(
をか
)
、あたら
美玉
(
びぎよく
)
に
疷
(
きず
)
をつけ
給
(
たま
)
ふは
経つくゑ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「本物の
葡萄酒
(
ぶどうしゅ
)
に違いない。グランテールが眠ってるのは仕合わせだ。
奴
(
やつ
)
が起きていたら、なかなかこのまま放っておきはすまい。」
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「おお、心懸の
可
(
い
)
い
奴
(
やつ
)
じゃ、宜しい。さあぐッとお飲み。余り酔わないように致せ、これ、
女房
(
かみさん
)
がまた心配をするそうじゃからな。」
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「疎暴だッて
関
(
かま
)
わんサ、あんな
奴
(
やつ
)
は時々
打
(
な
)
ぐッてやらんと癖になっていかん。君だから何だけれども、僕なら直ぐブン打ッてしまう」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
▼ もっと見る
斬るったら、斬られるまでさ。こういう暴れンぼの勝つ時世にゃ、腕と才覚のねえ
奴
(
やつ
)
は、斬られるまでが、寿命と思うのさ。はははは
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
此家
(
こゝ
)
へ
世辞
(
せじ
)
を
買
(
かひ
)
に
来
(
く
)
る者は
何
(
いづ
)
れも
無人相
(
ぶにんさう
)
なイヤアな顔の
奴
(
やつ
)
ばかり
這入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
ます。
是
(
これ
)
は
其訳
(
そのわけ
)
で
無人相
(
ぶにんさう
)
だから
世辞
(
せじ
)
を
買
(
かひ
)
に来るので婦人
世辞屋
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「
龍
(
たつ
)
は
雷
(
かみなり
)
のようなものと
見
(
み
)
えた。あれを
殺
(
ころ
)
しでもしたら、この
方
(
ほう
)
の
命
(
いのち
)
はあるまい。お
前
(
まへ
)
たちはよく
龍
(
たつ
)
を
捕
(
と
)
らずに
來
(
き
)
た。うい
奴
(
やつ
)
どもぢや」
竹取物語
(旧字旧仮名)
/
和田万吉
(著)
赤緒
(
あかお
)
の
下駄
(
げた
)
と云えば、
馬糞
(
ばふん
)
のようにチビた
奴
(
やつ
)
をはいている。だが、
雑巾
(
ぞうきん
)
をよくあててあるらしく古びた割合に木目が
透
(
す
)
きとおっていた。
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「失態も
糸瓜
(
へちま
)
もない。世間の
奴
(
やつ
)
らが何と言ったって……二人の幸福は二人で作る、二人の幸福は二人で作る、
他人
(
ひと
)
の世話にはならない」
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
叱言
(
こごと
)
一ついわず、「馬鹿、それ位のことでくよくよする
奴
(
やつ
)
があるかい。さア、一緒に、洋服を作りに行ってやるから、起きろ、起きろ」
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「なにッ。死んだ
奴
(
やつ
)
が、そんなに上手に口がきけるか。また、おれの声が、きこえたりするものか。ばかなことも、やすみやすみいえ」
地底戦車の怪人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
気アタリという
奴
(
やつ
)
は厭なものだネ。わたしも若い時分には時々そういうおぼえがあったが。ナーニ必ず中るとばかりでも無いものだよ。
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その食卓に、ついさい
前
(
ぜん
)
ちま子を殺した
奴
(
やつ
)
が、何食わぬ顔で列席しているのだ。隣でフォークを
嘗
(
な
)
めている奴がそうかも知れない。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
つねから、お前の
悧巧
(
りこう
)
ぶった
馬面
(
うまづら
)
が
癪
(
しゃく
)
にさわっていたのだが、これほど、ふざけた
奴
(
やつ
)
とは知らなかった。程度があるぞ、馬鹿野郎。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
無論
(
むろん
)
です、けれど
本船
(
ほんせん
)
の
當番
(
たうばん
)
水夫
(
すゐふ
)
は
眼
(
め
)
の
無
(
な
)
い
奴
(
やつ
)
に、
情
(
こゝろ
)
の
無
(
な
)
い
奴
(
やつ
)
です、
一人
(
ひとり
)
は
茫然
(
ぼんやり
)
して
居
(
ゐ
)
ます、
一人
(
ひとり
)
は
知
(
し
)
つて
知
(
し
)
らぬ
顏
(
かほ
)
をして
居
(
ゐ
)
ます。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
主人がその
中
(
うち
)
で一番
旨
(
うま
)
い
奴
(
やつ
)
を——何と云ったか名は思い出せないが、下男に云いつけて、
笊
(
ざる
)
に一杯取り出さして、みんなに
御馳走
(
ごちそう
)
した。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「もし私どもがお望みどおりのことをしたら、
奴
(
やつ
)
らの新聞仲間の
威嚇
(
いかく
)
に負けたぐあいになることが、あなたにはわかりませんか。」
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
聞れ吉兵衞其方は
狂氣
(
きやうき
)
にても致したるや
取留
(
とりとめ
)
もなきこと
而已
(
のみ
)
申
奴
(
やつ
)
かな然ながら千太郎は久八と兄弟なりとは如何の譯にて右樣の儀を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
男の声 (女からすがりつかれたらしい)おっとと! それに、どんな
奴
(
やつ
)
が入りこんで、なにをしたか……げんに、こうして——
胎内
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
招んだって行くな。あんな軽薄な
奴
(
やつ
)
のとこに誰が行く馬鹿があるか。あんな奴にゃア黒田の娘でも惜い位だ! あれから見ると同じ大学を
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
しかし又彼等の或ものは彼の嘲笑を感ずる為にも余りに模範的君子だった。彼は「
厭
(
いや
)
な
奴
(
やつ
)
」と呼ばれることには常に多少の愉快を感じた。
大導寺信輔の半生:――或精神的風景画――
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「君は喰わず嫌いだよ。会って見もしないで悪くいう
奴
(
やつ
)
があるもんか。一度会って見ろ、決して
不快
(
わる
)
い気持はしない、
極
(
ごく
)
捌
(
さば
)
けた男だよ、」
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
マーキュ はて、
兎
(
うさぎ
)
ではない、
兎
(
うさぎ
)
にしても
脂肪
(
あぶら
)
の
滿
(
の
)
った
奴
(
やつ
)
ではなうて、
節肉祭式
(
レントしき
)
の
肉饅頭
(
にくまんぢう
)
、
食
(
く
)
はぬうちから、
陳
(
ふる
)
びて、
萎
(
しな
)
びて……
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
まだそのほかに小僧の五、六人も居るというような訳ですから、
鮨
(
すし
)
を
詰
(
つ
)
めるように詰めても寝られんで、外へ寝て居る
奴
(
やつ
)
もある。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「やつぱし僕達に引越せつて譯さ。なあにね、
明日
(
あした
)
あたり屹度
母
(
かあ
)
さんから金が來るからね、直ぐ引越すよ、あんな
奴
(
やつ
)
幾ら怒つたつて平氣さ」
子をつれて
(旧字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
するとまあ何としたことだ、又してもむつくり黄色い頭がもちあがつたぢやないか。何たる
往生際
(
おうじょうぎわ
)
の悪い
奴
(
やつ
)
だ、と僕は思はず舌うちしたね。
三つの挿話
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
ばかな
奴
(
やつ
)
ら! その水で
盃
(
さかずき
)
をそそぎ、その流れで
手拭
(
てぬぐい
)
をしぼって頭や胸を拭く、三尺へだたれば
清
(
きよ
)
しなんて、いい気なものだ。
旧聞日本橋:17 牢屋の原
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「
僕
(
ぼく
)
だって、あんな
奴
(
やつ
)
、やっつけられるんだよ。」と、
年
(
とし
)
ちゃんはいって、なぜもっと
早
(
はや
)
く、この
勇気
(
ゆうき
)
が
出
(
で
)
なかったものかと
後悔
(
こうかい
)
しました。
友だちどうし
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
君たちは僕が本能万能説を
抱
(
いだ
)
いているのをいつも攻撃するけれど、実際、人間は本能がたいせつだよ。本能に従わん
奴
(
やつ
)
は生存しておられんさ
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「
選
(
よ
)
りに
選
(
よ
)
つて
奴
(
やつ
)
が
落
(
お
)
ちるなんてよつぽど
運
(
うん
)
が
惡
(
わる
)
いや‥‥」と、
一人
(
ひとり
)
はまたそれが
自分
(
じぶん
)
でなかつた
事
(
こと
)
を
祝福
(
しゆくふく
)
するやうに
云
(
い
)
つた。
一兵卒と銃
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
A どうも
永々
(
なが/\
)
と
御馳走樣
(
ごちそうさま
)
。
葉書
(
はがき
)
で
始
(
はじ
)
まつた
御縁
(
ごえん
)
だから
毎日
(
まいにち
)
二
枚
(
まい
)
づつの
往復
(
わうふく
)
ぐらゐ
當
(
あた
)
り
前
(
まへ
)
だね。
然
(
しか
)
し
何
(
なに
)
しろ
葉書
(
はがき
)
といふ
奴
(
やつ
)
は
面白
(
おもしろ
)
いものだね。
ハガキ運動
(旧字旧仮名)
/
堺利彦
(著)
彼は自分の好奇心を満足させた上で、兵卒と共にイエスを
侮
(
あなど
)
り
嘲弄
(
ちょうろう
)
したのです(ルカ二三の六—一二)。実に卑しむべき
奴
(
やつ
)
だ。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
「でも、運命って
奴
(
やつ
)
は、わからんよ。こうして漂流しているうちに、ひょっとして、この上空を飛行機が通らぬとも限らんよ」
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
近頃の文章にはよく「世間という
奴
(
やつ
)
とかく
云々
(
うんぬん
)
」というような文字が見えるが罪のない世間にまで
奴呼
(
やつよば
)
わりをしないでもよさそうなものだ。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
しかるに時には十里歩いたことをもって、非常なる成功と思って、僕は何か世に
偉
(
えら
)
い
奴
(
やつ
)
であったごとくに賞賛する人もあろう。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
なんでもお若いお武家とかの袂へ
悪戯
(
わるさ
)
をするところを感づかれて、すんでのことでつかまろうとしたのを、まあ
奴
(
やつ
)
にとっちゃあこの人混みを
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
身分の好い人だと、成丈外聞のない様にしますからな。
何時
(
いつ
)
ぞやも、農家の娘でね、十五六のが
草苅
(
くさか
)
りに往ってたのを、
奴
(
やつ
)
が
捉
(
つらま
)
えましてな。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
(三)ナニ僕より角の多い
奴
(
やつ
)
がおる。馬鹿いい
給
(
たも
)
うな。
凡
(
およ
)
そ世界わ広しといえども、僕より余計に角を
持
(
もっ
)
た奴わないはずだ。
三角と四角
(その他)
/
巌谷小波
(著)
「工藤祐經て、あの工藤左衞門やらう、赤い臺の上に坐つて、ピカ/\した羽織着て、ゴツい紐結んでよる
奴
(
やつ
)
や。……吉例曾我の對面。……」
太政官
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
やはり、鮎は、ふつうの塩焼きにして、うっかり食うと
火傷
(
やけど
)
するような熱い
奴
(
やつ
)
を、ガブッとやるのが香ばしくて最上である。
鮎の食い方
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
広瀬淡窓
(
ひろせたんそう
)
などの事は、
彼奴
(
あいつ
)
は
発句師
(
ほっくし
)
、俳諧師で、詩の題さえ出来ない、書くことになると漢文が書けぬ、何でもない
奴
(
やつ
)
だと
云
(
いっ
)
て居られました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
と背中をどやして逃げ出す素早い
奴
(
やつ
)
を追いかけてお鶴も「明日またおいで」と言って、別れ際に今日の終りの頬擦りをして横町へ曲って行く。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
「アア、人の婚礼でああ騒ぐ
奴
(
やつ
)
の気が知れねえ。」というように、新吉は
酔
(
え
)
いの
退
(
ひ
)
いた蒼い顔をしてグッタリと床に就いた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
さしでがましいことをする
奴
(
やつ
)
だといふので、良寛さんは捕へられ、罪に落され、家は取りつぶされるといふのが、結末になるに違ひなからう。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
ふん、
物
(
もの
)
の
値打
(
ねうち
)
のわからねえ
奴
(
やつ
)
にゃかなわねえの。
女
(
おんな
)
の
身体
(
からだ
)
についてるもんで、
年
(
ねん
)
が
年中
(
ねんじゅう
)
、
休
(
やす
)
みなしに
伸
(
の
)
びてるもなァ、
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
と
爪
(
つめ
)
だけだぜ。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
八五郎の
奴
(
やつ
)
は、八幡樣の
神馬
(
しんめ
)
の生れ變りで、福徳圓滿、富貴望むが儘なるべし——は少し
眉唾
(
まゆつば
)
だが、顏の長いところは、馬に縁がないでもない。
銭形平次捕物控:304 嫁の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そいつは、彼らの憤慨しまた驚いたことには、チョークで戸口の上に書いてあるのだ、
奴
(
やつ
)
らがないというそのチョークで。
ペスト王:寓意を含める物語
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
そして木村の方へ向いて、「これまで死刑になった
奴
(
やつ
)
は、献身者だというので、ひどく
崇
(
あが
)
められているというじゃないか」
食堂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「
不都合
(
ふつごう
)
な
奴
(
やつ
)
だ。しかしおとなしく人形をだしたから、
命
(
いのち
)
だけは
助
(
たす
)
けてやる。どこへなりといってしまえ。またこれから
泥坊
(
どろぼう
)
をすると
許
(
ゆる
)
さんぞ」
人形使い
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
“奴”の意味
《名詞》
(やっこ)(家つ子の転)家来、家の子。
(やっこ)徳川時代における武家の下僕、中間。
(やっこ)徳川時代の侠客。
(やつ)人や物などをぞんざいに言う語。
(出典:Wiktionary)
“奴”の解説
奴(やっこ)は、江戸時代の武家の下僕のこと。『古事記』が編纂された古代においては奴は奴隷階級を意味したと考えられる。
(出典:Wikipedia)
奴
常用漢字
中学
部首:⼥
5画
“奴”を含む語句
彼奴
奴婢
奴隷
彼奴等
奴輩
何奴
奴等
奴僕
這奴
黒奴
奴凧
匈奴
守銭奴
此奴等
畜生奴
小奴
冷奴
農奴
渠奴
爺奴
...