なづ)” の例文
然し、お蝶さんの家には「白」となづける大きな犬が飼われて居まして、この犬が非常に賢く、二人のよい友達になって居たのであります。
狂女と犬 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
売櫛家くしをうるいへ多し。土人説に上古此地に大なる樟木くすのきあり。神功皇后の三韓を征する時艨艟四十八艘を一木にて造れり。因て船木となづく。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
外出のかたかるべきは予期せる所なりしを以て、運動に供せんため自ら室内操櫓器そうろきなづくる者を携え行きたりしが室内狭くしてしばしばこれを
しかるにかの自然派もしくは浪漫派となづくるものはその中に含まれたる多くの書物の特性をあらわしておって、大分複雑であるのみならず
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
釈迦は出離しゅつりの道を求めんがため檀特山だんどくせんなづくる林中に於て六年精進しょうじん苦行した。一日米の実一つぶ亜麻の実一粒を食したのである。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その間にはさまる使徒らの書翰しょかんは「霊的実験の提唱」ともいうべく、「教理の解明」とも称すべく、または簡単に「教訓」ともなづくべきである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
美妙に於てはほとんど情熱となづくべきものあるを認めず。舒事家としては知らず、写実家としての彼の技倆は紅葉に及ぶべからず。
情熱 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
タイトルページの横文字の如きも、後年になったら琉球木活字版とでもなづけてかえって珍重がる人がないではなかろう。
白馬節会あおうまのせちえの白馬を青馬とますを古く不審いぶかしく思うた人少なからぬと見え、平兼盛たいらのかねもりが「ふる雪に色もかはらてくものを、たれ青馬となづそめけん」
この品評会は土曜日の午下半日の閑を消するの意で半閑はんかん社となづけられ、その雅約は毅堂がこれを草した。雅約の文を書き改めると次の如くである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
二百五十余年、一定不変となづけたる権力に平均を失い、その事実にあらわれたるものは、この度の事件をもって始とす。(事は文久三癸亥きがいの年に在り)
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
通道つうみちなづけ通と云れたがる者ならでは通らず梅花道人少しおくれたるテレ隱しに忽ち此道に驅け上る危ないぞと聲を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
マダケは大竹にしてハチク、モウソウチクと並び称して三大竹となづくべし。而してその花は容易に見るを得べからずと雖どもまた時にこれを出すことあり。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
大革命だいかくめいともなづけられるくらゐだ、防腐法ばうふはふ發明はつめいによつて、大家たいかのピロウゴフさへも、到底たうてい出來得できうべからざることみとめてゐた手術しゆじゆつが、容易たやすられるやうにはなつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「春風馬堤曲」とは支那の曲名を真似まねたる者にて、そのかくなづけし所以は蕪村の書簡につまびらかなり。書簡に曰く
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
なお進めば落葉の下を潜る露の雫をもなづけて河といえるようなもので主義の本などいうことも、殆ど言葉のたくみなる用法によりて如何いかようにも説明されるけれども
デモクラシーの要素 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
若紳士がまだ挙ないことと思っておのれもまた下げて居るのを、奇観々々これをお辞誼じぎ交際づきあいなづけると、遠くで見ておかしがって居た藍縞あいじまの一重袴を穿いた男が
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
乞食等の沙門の形なれども、其の行儀僧にもあらぬを濫僧となづけて、施行ひかるゝをば濫僧供と云ふ。
何とならば「ハタラカレタルモノ」即ち「意識の対象」を強ひて「過去」となづける必要はさらにない。
意識と時間との関係 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
尤も埃及エヂプトでは猫と同じやうに犬を尊んで川の神と祀つて、恰度ナイルの氾濫時分にシリヤス星が見えるので、此星を犬星ドツグスターなづけて犬を星の精だといつたものださうな。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
すなはち文化の一具を欠くものと謂可いふべし。(中略)余ここに感ずる所あり。寸暇すんかを得るの際、米仏とうの書をひもとき、その要領を纂訳へんやくしたるもの、此冊子さつしを成す。よつて之を各国演劇史となづ
本の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そこの雑誌とふのは、半紙はんし両截ふたつぎり廿枚にぢうまい卅枚さんぢうまい綴合とぢあはせて、これ我楽多文庫がらくたぶんこなづけ、右の社員中から和歌わか狂歌きやうか発句ほつく端唄はうた漢詩かんし狂詩きやうし漢文かんぶん国文こくぶん俳文はいぶん戯文げぶん新躰詩しんたいし
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
『して其人は何處いづこにおする』。『そは此處こゝより程とほからぬ往生院わうじやうゐんなづくる古き僧庵に』。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
つまところ大紛爭だいもんちやく引起ひきをこして、其間そのあひだ多少たせう利益りえきめんとくわだてゝる、じつその狡猾かうくわつなること言語げんごぜつするほどだから、いま櫻木大佐さくらぎたいさ公明正大こうめいせいだいこのしま發見はつけんし、なづけて朝日島あさひとう
宿し男の子をもうけしが固より施寧の子と云いなし陳寧児ちんねいじなづけて育てたり是より一年余も経たる頃とせしことより施寧は妾と金起との間を疑いいたく怒りて妾を打擲ちょうちゃくし且つ金起を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
故に妙法蓮華經めうほふれんげきやうなづく。日蓮にちれん又日月と蓮華との如くなり。信心の水すまば利生の月必ずおうれ、守護し給べし。とくとくうまれ候べし。法華經云如是妙法ほけきやうにいはくによぜめうほふまたいはく安樂産福子云々あんらくさんふくしうんぬん
これをなづけて Woman'sウーマンス revengeレヴェンジ(婦人の復讐ふくしゅう)という。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ういふわけ黄金餅こがねもちなづけたかとまうすに、しば将監殿橋しやうげんどのばしきは極貧ごくひんの者ばかりがすん裏家うらやがござりまして金山寺屋きんざんじや金兵衛きんべゑまうす者の隣家となりるのが托鉢たくはつばうさんで源八げんぱちまうす者
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
とくになづけられていない横町にわたしの生れもすれば育ちもしたうちはあった。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
予また幕末ばくまつ編年史へんねんしを作り、これを三十年史となづ刊行かんこうして世にわんとせし時、誰人たれびとかに序文じょぶんわんと思いしが、駿しゅんかたわらりて福沢先生の高文こうぶんを得ばもっとも光栄こうえいなるべしという。
んぬる頃より一つ合せて、七条西朱雀にしすざく、丹波街道の北に島原とて、肥前天草一揆あまくさいっきのとりこもりし島原の城の如く、三方はふさがりて、一方に口ある故に、斯様にはなづはべり」(浮世物語)
離婚は悲しむべき事で或場合には罪悪となづけてもいと考えますが、また或場合には罪悪からのがれる正当な手段と見る事も出来ますから、十分その真相を調べた上でなければ是非の判断はむずかしい。
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
さてしからば先生は故郷くにで何をていたかというに、親族が世話するというのもこばんで、広い田の中の一軒屋の、五間いつまばかりあるを、何々じゅくなづけ、近郷きんじょの青年七八名を集めて、漢学の教授をしていた
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
これをなづけて悪魔といふ。
なづけましかば明星と
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
うつくしとのみなづ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
えたる行動は、一気に遂行する勇気と、興味に乏しいから、自らその行動の意義を中途で疑う様になる。彼はこれをアンニュイとなづけていた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あなたの家に伝わる病気は血友病となづけるものでありますが、この病気はその家系のうち、男子のみがかかって、女子には決して起こらないのです。
血友病 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
香以は贔屓の連中を組織して、荒磯連あらいそれんなづけ、その掟文おきてぶみと云うものを勝田諸持に書かせた。九代目の他日の成功は半香以の庇蔭ひいんったのである。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
れその第一のむすめをエミマとなづけ第二をケジアと名け第三をケレンハップクと名けたり、全国の中にてヨブの女子らほど美しき婦人は見えざりき
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
その書庫を二、三千巻書閣となづけその書斎を対古人斎といい、その家塾を止至善塾と称し常に酒を置いて来訪の士を迎え放談豪語することを好んだ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
愛山生が徳川時代の文豪の遺風を襲ひて、「史論」となづくる鉄槌をふるふことになりたるも、其の一現象と見るべし。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
大革命だいかくめいともなづけられるくらいだ、防腐法ぼうふほう発明はつめいによって、大家たいかのピロウゴフさえも、到底とうてい出来得できうべからざることをみとめていた手術しゅじゅつが、容易たやすられるようにはなった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これをイワタバコというのは岩に生えてその葉が烟草葉に似ているから、そうなづけられたものである。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
段々やかましくなって、外国貿易をする商人がにわかに店を片付けて仕舞しまうなどゝうような事で、浪人となづくる者がさかんに出て来て、何処どこに居て何をして居るのか分らない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「乞食等の沙門の形なれども、其の行儀僧にもあらぬを濫僧となづ」くとあるその「濫僧」は、多くは実に平安朝において落伍した公民のなれの果てであったのである。
白馬を「あおうま」とのみみしは、『平兼盛家集』に「ふる雪に色もかはらでくものを、たれ青馬となづそめけん」、高橋宗直の『筵響録』巻下に室町家前後諸士涅歯でっしの事を述べて
山中に二種の猛獣がいる。そこで一方を獅子となづけ他方を虎と名ける。これは必要上区別するのだ。してみるとアダムと名称を与えた以上、既にイブは神の御心に生きていたのかも知れぬ。
イエスキリストの友誼 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その頃佐野川市松さのがわいちまつという役者が一と小間置こまおきに染め分けた衣裳へ工夫致しましてそのしまを市松となづけて女方おんながたの狂言を致しました時に、帯を紫と白の市松縞にして、着物をあいの市松にしたのが派手で
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
然間しかるあひだかみ我子わがことなづけたり。さてこそ正哉吾勝まさやあかつとはなづけたれ。日蓮うまるべきたねをなづけて候へば、いかで我子わがこにをとるべき、有一寶珠價値三千等ういつはうしゆかちさんぜんとう無上寶聚不求自得むじやうはうしうふきうじとく釋迦如來皆是吾子等云々しやかによらいみなこれわがこうんぬん