りき)” の例文
しか崖丈がけだけ大丈夫だいぢやうぶです。どんなことがあつたつてえつこはねえんだからと、あたか自分じぶんのものを辯護べんごでもするやうりきんでかへつてつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いまあらためてうかゞひにやうとしてましたといふ、れはなんことだ、貴君あなたのおをさとげられて、馬鹿ばか/\おりきおこるぞと大景氣おほけいき
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ひどくりきんで「あの番組へ出ると誰でも泣くんだ。あれは“鐘は鳴る”ではなくッて——ここに彼は泣く——という番組なんですからね」
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
モウ一盃、これでお仕舞しまいりきんでも、徳利とくりふって見て音がすれば我慢が出来ない。とう/\三合さんごうの酒を皆のん仕舞しまって、又翌日は五合飲む。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
鎧袖一触的がいしゅういっしょくてきにやってみたいのだが、鎧袖一触も用いようによっては大笑いの種ですから、あまりりきまないのがよいと思いました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
女にしてはりきんだ眉をひそめて、団扇うちわを片手に低い溜息をついたのは、浅草金龍山きんりゅうざん下に清元きよもとの師匠の御神燈ごしんとうをかけている清元延津弥のぶつやであった。
廿九日の牡丹餅 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ついそのお上品なとこを見せようってんで、ああしてりきみ返るんでさ、それだけのことですよ! なあに、却ってもう可愛いくらいのもので。
こうなると為朝ためとも一人ひとりいかにりきんでもどうもなりません。れいの二十八もちりぢりになってしまったので、ただ一人ひとり近江おうみほうちて行きました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
門の外まで出て来て、『おりきい、お力い。』と体をこごめねばならぬ程の高い声を出して友達を呼んでゐる女の子もあつた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
声に出して、そういってみて、(どんなことになったって、知らんぞ)と、マンが、そこにいるかのように、りきみかえる。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「よし、おれが、今日きょうはしとめてくれるぞ。」とりきんで、猟師りょうし足音あしおとしのんで、ちかよって、そのようすをうかがいました。ところがどうでしょう。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うまけるのに手間てまれるとかとりきんで、上句あげくには、いつだまれとか、れこれうな、とかと真赤まっかになってさわぎかえす。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
こう認めた、たしかにこうだと、りきんで証明するものがあるとしたとても、それすら、二人の心からは門外漢である。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
祭礼の雑踏の中でりきんでまた叩かれ、逃げだしたところをうしろから斬りかけられ、大きな傷を背負って帰ってきた。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
排便時にりきんだところ、心臓部に五十分以上に亙って激しい締めつけるような疼痛がおこり、最寄りの医師の往診を受けたが翌日の心電図検査に依り
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
何かにつけて緑雨は万年博士をののしって、愚図愚図ぐずぐずいやア万年泣拝という手紙を何本も発表してやるとりきんでいた。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
本人は、しかし、それでてれた様子はすこしもなく、相変わらずりきみかえって、朝倉先生の顔を見すえていた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
われこたおこんねえのか」小柄こがらぢいさんは與吉よきちかくさぬ言辭ことばすこりきんだいきほひがけたやうになつてういつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何分とのさまがえるは三十がえるりきあるのですし、くさりかたびらは着ていますし、それにあまがえるはみんな舶来ウェスキーでひょろひょろしてますから
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
男子も人ならば女子も人なり。男子の為すところなんぞ女子に為しあたわざるの訳あらんやとりきんでみても、その体質の上からして女子は軍務に不向きである。
現代の婦人に告ぐ (新字新仮名) / 大隈重信(著)
りきんだのは数月前のことだったが、その小杉君がアメリカへ着かない中にもう撚りが戻って、又やめる必要を認めたのである。片岡君は年に三四回思い立つ。
一年の計 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
昔の小説家が主観的なりきみで、そういうママ性の範囲での闊達さに到達した、そういうのではない内容での闊達さ、美、簡素な力、そういうものが本当に欲しい。
手術と決ってはいたが、手術するまえに体にりきをつけておかねばならず、舶来はくらいの薬を毎日二本ずつ入れた。一本五円もしたので、こわいほど病院代は嵩んだのだ。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
何よりも、りきかえること、大声おおごえを立てることがきらいです。どんなことでも、静かに話せばわかり、また、静かにはなわなければ面白おもしろくないという主義しゅぎなのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
「わかったよ。でも、そんなに毎日、怖い顔をしてりきんでいなくてもいいじゃないか。このごろ少しせたようだぜ。あとで、マタイの六章を読んであげよう。」
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
こまかいきれいな歯をくいしばってりきんでいて、上唇うわくちびるに長い二本のひげをはやし、下唇に二本の短い髭をはやし、そのくせ、ごく小さなかわいい目でいつも笑っており
山の別荘の少年 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
河伯も気の毒かつその短気に恐縮し三度まで投げ帰したので、一旦いったん見切った物を取り納むるような男じゃねーぞと滅明滅多無性にりきみ散らし、璧をこわして去ったと出づ。
最後に夏目漱石なつめそうせき先生の南山松竹なんざんしようちくを見て、同じく又敬意を表した。先生は生前、「おれは画でも津田つだに頭を下げさせるやうなものをいてやる」とりきんでゐられたさうである。
俳画展覧会を観て (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いつも薩摩大がすりの被布、四角ばった顔にりきんだ口もと、なんといっても輪郭は大きい。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
よしさあも、くまさあも、きんさあも、鹿しかあんも今年はもう行かねえそうだ。りきやんと加平かへいが、行こか行くまいかと大分迷っとったがとにかくも一ぺん行って見ようといっとったよ」
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
笑うまいとりきんで口を固く結んでいても、しぜん、ほぐれて、笑い出してしまう。生れつき、笑いの神様がちゃんと胸の中に鎮座ちんざしていらっしゃるのだと、福子自身はあきらめている。
万年青 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
巨人軍の川上という岩のように立派な身体の選手が、りきが足りない、もっと力が欲しいと嘆いてる始末じゃないか。まず第一に長助の背丈を延ばして、ふとらせなくちゃアいけない。
町内の二天才 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
りきと呼ばれたるは中肉の背恰好せかっこうすらりつとして洗ひ髪の大嶋田おおしまだに新わらのさわやかさ、頸元えりもとばかりの白粉もなく見ゆる天然の色白をこれみよがしにのあたりまで胸くつろげて
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
庭に在る、こけむした怪しげな古い石や、不自然にりきみかえっている年老いた樹木やは、彼に対して皮肉な、不明瞭な説明を試みた。否、説明ではない、それはむしろ毒々しい嘲笑であった。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
彼は緊張して眺め、さつと顔を紅らめ、りきんだやうになり、それから急に下こゞみになつて水洗ひの仕事にかゝつたが、明かに上の空だつた。彼は始終落ちつきなく対岸の路を眺めやつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
大吉の小さなからだはといっしょに、海にのめりこみそうに見えたりする。そのけんめいさは、小舟とともに大吉の小さなからだにあふれていて、見ているこちらもしぜんにりきんできた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
此の時権八は自分の母親が好いあんばいに私をがなりつけるのにりきんで何時いつの間にか、そこの土間にある下駄を振り上げて私に打つてかかつた。私はそこでは手出しをせずに打たれてやつた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
「あゝ、左様さうとも。真実ほんたうにお前さんは出世しましたわね。どうして、おりきさんはナカ/\の遣り手だなんて、よく吾家うちへ来る人がお前さんの噂サ、その度に、私は自分の鼻が高くなりますよ。」
死の床 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「そうや。どうも法律を知っているといって、りきんでいるそうやさかえ」
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お前は腕ずくで強淫ごういんをする積りか、馬鹿な事をする怖い人だ、いやだよと云ってこうとすると、そうはやらぬと私のすそを押えて離さない処へ、おかねさんやおりきさんが出て参りまして取押える拍子に
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おい、おれを、まあ、何だと思う。浅草田畝たんぼに巣を持って、観音様へ羽をすから、はやぶさりき綽名あだなアされた、掏摸すりだよ、巾着切きんちゃくきりだよ。はははは、これからその気で附合いねえ、こう、頼むぜ、小父さん。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今更いまさら逃げようたって逃すもんか」彼はりきごえをふりしぼった。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この一件が持上るに及び、忽ち本氣むきになつてりきみ出した。
古い村 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
これらは独り相撲ずもうりきんでおる人である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
うんとりきみ返り
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
りきんでいるだ
母の手紙 (新字新仮名) / 中野鈴子(著)
あゝ貴君あなたのやうにもないおりき無理むりにも商買しようばいしてられるは此力このちからおぼさぬか、わたし酒氣さかけはなれたら坐敷ざしきは三昧堂まいどうのやうにりませう
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「ああ、染吉か。」とわたしは二十三四の、色の白い、眉のりきんだ、右の目尻に大きい黒子ほくろのある女の顔をあたまに描いた。
鴛鴦鏡 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
場代が高いと言ってしりごみをして、この珍しいものを見ないで帰るのは、たしかに江戸っ児の沽券こけんさわるとりきみ出すものが多くありました。
どうかなるって、ただ貴公のように、りきんでばかりいたってどうもならん。まず、一郡の士を持たんとするには、一旗の兵がいる。一旗の兵を
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)