仕舞しまひ)” の例文
もう加減かげんあるいてつて、たにがお仕舞しまひになつたかとおも時分じぶんには、またむかふのはう谷間たにま板屋根いたやねからけむりのぼるのがえました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
達磨だるまはそれぎり話題わだいのぼらなかつたが、これがいとくちになつて、三にんめしまで無邪氣むじやき長閑のどかはなしをつゞけた。仕舞しまひ小六ころくへて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「ここで飲んぢやうまくないね。さうして形が付かなければ、何時いつまでだつて帰りはせんよ。酒が仕舞しまひになつてこればかりのこられたらなほ困る」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
廻り仕舞しまひ取出しあらため見れば小判八十兩ありて外には書付かきつけもなきゆゑおどろきながら早々さう/\町役人へ屆けしに行事ぎやうじ打寄相談の上うつたへ出なほ町内へも札を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
取りますが、どうしてもなついてくれません、——商人もたしなみだからと言つて、仕舞しまひなどを教へようとなさるからでせう
削るのかんなかんなとをんなとおん近きもこれまた自然の道理なり緋威ひをどしの鎧とめかし込み艶福がるといづれ仕舞しまひは深田へ馬を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
仕舞しまひには、そのどつちがほんとの自分じぶん區別くべつ出來できなくなつた。そして、時時ときどき我知わたしらずぐらぐらとひよろけ自分じぶんからだをどうすることも出來できなかつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
その苦しみを堪へしのんだのちに死んだが、死んで見たらば始めて女であつたことがわかつたといふ筋である。その小説の仕舞しまひのところに、火事のことがある。
奇麗きれいはなでしたけれどもゝうしをれて仕舞しまひました、貴君あなたにはあれから以來いらい御目おめにかゝらぬでは御座ござんせぬか、何故なぜひにくださらないの、何故なぜかへつてくださらぬの
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しからば、死刑執行者しけいしつかうしやれてまゐらう』とせつまをされて、王樣わうさまいそいでつてお仕舞しまひになりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
女性をんなの誰もまぬがれない愛情の潜んで居るのぢや無からうかと思ふんですよ——私などは斯様こんな軽卒がさつなもんですから、直ぐ挙動にあらはして仕舞しまひますがネ、貴嬢の様に強意しつかりした方は、自ら抑へるだけ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
仕舞しまひにはあしいたんでこしたなくなつて、かはやのぼをりなどは、やつとのこと壁傳かべづたひに身體からだはこんだのである。その時分じぶんかれ彫刻家てうこくかであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つか仕舞しまひしかば三人は約束の如く思ひ/\に別れけり夫より雲切仁左衞門は本郷六丁目へ住居ぢうきよして家名を甲州屋とよび米商賣こめしやうばい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ほんに御門ごもんまへとほことはありとも木綿着物もめんきもの毛繻子けじゆす洋傘かふもりさしたときにはす/\お二かいすだれながら、あゝせきなにをしてことかとおもひやるばかり行過ゆきすぎて仕舞しまひまする
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
芝居ぐらゐにはお出掛になつても可ささうなものだが、全然まるつきり影も形もお見せなさらん。なんぼお大事になさるつて、そんなに仕舞しまひ込んでお置きなさるものぢやございません。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
手なづけて困る、——と店中の者が言つてゐたぜ。劍術ごつこや喧嘩や勝負事は、子供には仕舞しまひうたひより面白いだらう。大急ぎで六郎の行方を搜して見るがいゝ、俺の方でも手配してみる
不用ふようのものを廉價れんかつて便宜べんぎいうしてゐることなどにうつつて、仕舞しまひその家庭かてい如何いかにも陽氣やうきで、にぎやかな模樣もやうちてつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
仕舞しまひ住馴すみなれ京都みやこあとになし孤子みなしごかゝへて遙々はる/″\あづまそらおもむ途中とちう三州迄は來たれどもほとん困窮こんきうせまり餘儀なく我が子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しよ、ことわつてお仕舞しまひなとへば、こまつたねとおきやう立止たちどまつて、それでもきつちやんわたしあらはりきがて、もうおめかけでもなんでもい、うで此樣こんつまらないづくめだから
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あたまてつの様におもかつた。代助は強いても仕舞しまひ迄読み通さなければならないと考へた。総身さうしんが名状しがたい圧迫を受けて、わきしたからあせが流れた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此樣このやう人形にんぎやうりしとほこかほすれば、姉樣ねえさまうた御覽ごらんなされしや、してなんおつしやりしとへば、なんともはずに文庫ぶんこいれてお仕舞しまひなされしが、今度こんどまたあのやううたみて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私はあなたが家事の暇をぬすんで『傳説の時代』をとう/\仕舞しまひまで譯し上げた忍耐と努力に少からず感服して居ります。書物になつて出ると餘程よほどの頁數になるさうですがさぞ骨の折れた事でせう。
『伝説の時代』序 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
萬一もしにそぐなはぬことならばとあんじられまして、此事このことをおもふに今宵こよひさびしきことてもちてもあられぬほどのなさけなさより、ふてはならぬとぞんじましたれど、此樣このやう申上まうしあげ仕舞しまひました
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うそおつしやい。ついでだから、みんなけて御仕舞しまひなさい」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
れい酒癖しゆへき何處どこみせにかたふれて寢入ねいりても仕舞しまひしものかそれなればいよいよこまりしことなりうちにてもさぞあん此家こゝへもまたどくなりなにとせんとおもほどよりつもゆきいとゞ心細こゝろぼそ燭涙しよくるゐながるゝおもて二階にかい一人ひとり取殘とりのこされし新田につたのおたか
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)