今時いまどき)” の例文
「こういう品は今時いまどき、この山国でもなければ滅多には出て来ないわい、いざ神尾殿、よく穂先からこみの具合まで、鑑定めききして御覧あれ」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「旦那方。私はハマの仙太の番をするくらいなら、今時いまどきこんな場所を一人で歩いちゃいませんぜ」と私はちょっと嘘をついた。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
巖谷氏いはやし住所ぢうしよころ麹町かうぢまち元園町もとぞのちやうであつた。が麹町かうぢまちにも、高輪たかなわにも、千住せんぢゆにも、つこと多時たじにして、以上いじやう返電へんでんがこない。今時いまどきとは時代じだいちがふ。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今時いまどきこんなことをまじめで申し上げると、なんだか嘘らしいように思召おぼしめすかも知れませんが、まったく実録なんですからその積りで聴いてください。
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
言ふ迄もなく、金春家の主人は香道にはごくの素人で、今時いまどきの文学者と一緒に蚊取線香の匂ひを嬉しがる方の男だつた。
今時いまどきの時節にそんな馬鹿なことがあるものか、一分や二分ではどうなることも出来やしない。私は一両二分差し上げる。また急なものだから時々夜業を
「だからそのくらいなことは知ってますわよ。けど今時いまどきそんな旧弊な読み方をする人があるか知ら。此処の家の人もキッチョウって云ってるようだわ」
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
其上今時いまどきの御嬢さんの様に読み書きが達者でないものだから、こんなまづい字でも、かくのに余っ程骨が折れる。
坊っちやん (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
第一、今時いまどきは大抵の奴あ英語の少し位かじつてるから、中学生だか何だか、知れたもんぢやないぢやありませんか。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「丹さんは唐琴屋からことや丹次郎たんじろうさ。わからねえのか。今時いまどきの娘はだから野暮で仕様がねえ。おかみさんに聞いて御覧ごらん。おかみさんは知らなくってどうするものか。」
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「そげに難儀して行ったところで、今時いまどき、胡弓など本気になって聴いてくれるものはありゃしないだよ」
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
わたしの父と云ふのは、よろしいですか、頑固な昔者でしてね、古風なイギリスぶりの饗應が自慢なのです。父ほど純粹にイギリス田舍紳士の型を保つてゐる人間は今時いまどき珍しいでせう。
まして九つより『栄華えいが』や『源氏げんじ』手にのみ致し候少女は、大きく成りてもます/\王朝の御代みよなつかしく、下様しもざま下司げすばり候ことのみつづり候今時いまどきの読物をあさましと思ひ候ほどなれば
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
今時いまどきの民家は此様の法をしらずして行規ぎょうぎみだりにして名をけがし、親兄弟にはじをあたへ一生身をいたずらにする者有り。口惜くちおしき事にあらずや。女は父母のおおせ媒妁なかだちとに非ざれば交らずと、小学にもみえたり。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「そんな旧式なことアだめだよ。それよりゃア初めから何円以上でなけりゃア招かれない、そして貴族なら貴族のように平民よりもずッと高く出せと、前もって請求する方が今時いまどきはかえって見識だろう」
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
今時いまどきあらうわけもない。
のう御同役、遠いところへ隠してあるならば、なにも古金の耳を揃えなくても、今時いまどき通用する吹替物ふきかえものでも苦しゅうはござらぬてな
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
家内安全かないあんぜん、まめ、そくさい、商賣繁昌しやうばいはんじやう、……だんご大切たいせつなら五大力ごだいりきだ。」と、あらうことか、團子屋だんごや老爺とつさまが、今時いまどきつてめた洒落しやれふ。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今時いまどきこんなお話をいたしますと、他人ひとさまはお笑いになるかも知れませんが……」と、鶴吉は躊躇しながら云った。
半七捕物帳:61 吉良の脇指 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それも今時いまどきに珍しい原始的な方法で、吉野川の水にこうぞ繊維せんいさらしては、手ずきの紙を製するのである。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
わっち癇性かんしょうでね、どうも、こうやって、逆剃さかずりをかけて、一本一本ひげの穴を掘らなくっちゃ、気が済まねえんだから、——なあに今時いまどきの職人なあ、るんじゃねえ、でるんだ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「坂本君、今時いまどき詰襟で歩いてゐるものは、郵便配達夫と電車の車掌とそれから……」
今時いまどきの女学校出身の誰々さんのように、夫の留守に新聞雑誌記者の訪問をこれ幸い、有難からぬ御面相の写真まで取出して「わらわの家庭」談などおっぱじめるような事は決してない。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
帆村の探偵事務所は、まるうちにあったが、今時いまどき流行はやらぬ煉瓦建れんがだて陰気いんきくさい建物の中にあった。びしょびしょにれたような階段を二階にのぼると、そこに彼の事務所の名札なふだが下げてあった。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
第一権現様の時代と今日とは時代が違いますぜ、今時いまどき、江戸に生れて清元の一つもうなれねえようなのは人間とは言われませんや。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もとより口実、狐が化けた飛脚でのうて、今時いまどき町を通るものか。足許あしもとを見て買倒かいたおした、十倍百倍のもうけおしさに、むじなが勝手なことをほざく。引受ひきうけたり平吉が。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「この前の日曜に東風子とうふうし高輪泉岳寺たかなわせんがくじに行ったんだそうだ。この寒いのによせばいいのに——第一今時いまどき泉岳寺などへ参るのはさも東京を知らない、田舎者いなかもののようじゃないか」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我輩こちとらとは違つて今時いまどきの若いものは感心だね。」宗匠そうしやうは言葉を切つて
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
帆村は今時いまどき珍らしい、日本趣味の女性に敬意と当惑とうわくとをささげた。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今時いまどき、世間の物騒なのにつれて備うることの必要を感じたのか知れないが、人民に対して、威張り腐ることの代名詞になっているような代官その人が
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
つたく、唐土もろこし長安ちやうあんみやこに、蒋生しやうせいふは、土地官員とちくわんゐんところ何某なにがしだんで、ぐつと色身いろみすましたをとこ今時いまどき本朝ほんてうには斯樣こんなのもあるまいが、淺葱あさぎえり緋縮緬ひぢりめん
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「然し今時いまどき女子をなごは、昔と違ふて油断が出来んけれ、御気を御付けたがえゝぞなもし」
坊っちやん (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「でも、化物なんて、今時いまどき本当にあるのかしら」
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今時いまどき、甲州でこんなうめえ目刺が食えるわけのものじゃねえ、ほかの国ならばどんな魚でも食えるんだけれど、この甲州という山国へ来ては、たとえ
はい、これは五十ねんばかりまへまではひと歩行あるいた旧道きうだうでがす。矢張やツぱり信州しんしうまする、さきは一つで七ばかり総体そうたいちかうござりますが、いや今時いまどき往来わうらい出来できるのぢやあござりませぬ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今時いまどき、尾張の中村で、豊太閤と加藤清正の供養を単独でいとなみ、容易ならぬ注意人物の嫌疑を受けて、もろくも名古屋城下へ拘引されて来た道庵主従。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
はい、これは五十年ばかり前までは人が歩行あるいた旧道でがす。やっぱり信州へ出まする、先は一つで七里ばかり総体近うござりますが、いや今時いまどき往来の出来るのじゃあござりませぬ。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうだ、流行りものとなると、人気がまるっきり別になってしまうんだ。今時いまどき攘夷じょういというやつもそれと同じで、そのことができようとできまいと、それを
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いふまでもなく極月しはすかけて三月さんぐわつ彼岸ひがんゆきどけまでは、毎年まいねんこんななか起伏おきふしするから、ゆきおどろくやうなものわすれても土地柄とちがらながら、今年ことし意外いぐわいはやうへに、今時いまどきくまでつもるべしとは
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つまり、今時いまどき、このところを走るべからざるものが走ったから、それで米友が俄然として眼をさましたのです。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もとより其のつもりぢや来たけれど、私だつて、これ当世の若い者、はじめから何、人の命を取るたつて、野に居る毒虫か、函嶺はこねを追はれたおおかみだらう、今時いまどきつまらない妖者ばけものが居てなりますか
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今時いまどきは投節を面白く歌うて聞かせる芸子もなければ、それを聞いてよろこぶ客もない。あんなガサツな流行唄はやりうたや、突拍子とっぴょうしもない詩吟で、廓の風情ふぜいも台なし、いよいよ世は末じゃて
かへるても、さわがしいぞ、とまをされて、かせなかつたのである。其處そこくと、今時いまどき作家さくかはづかしい——みなうではあるまいが——番町ばんちやうわたしるあたりではいぬえてもかへるかない。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今時いまどき、ああいう走りの金を、十五両一分で融通するなんというのは格別の計らいなんですよ、それを有難いとも思わずに、待ってくれ待ってくれで、今日で三日目だろう、いいわ
恁麼こんなふとつてりますから、うお可愧はづかしいほどあついのでございます、今時いまどき毎日まいにちも三てはうやつてあせながします、みづがございませんかつたらういたしませう、貴僧あなた、お手拭てぬぐひ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
慶長小判から今時いまどき贋金にせがねまで、両がえ屋の見本よろしくズラリと並べた上、この近所の地面を買いつぶして、坪一両あてにして何百両、それに建前や庭の普請を見つもってこれこれ
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今時いまどきバアで醉拂よつぱらつて、タクシイに蹌踉よろんで、いや、どツこいとこしれると、がた、がたんとれるから、あしひきがへるごと踏張ふんばつて——上等じやうとうのはらない——屋根やねひくいからかゞごしまなこゑて
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もっと今時いまどきそんな紋着を着る者はない、他国たこくには勿論もちろんないですね。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今時いまどき、そんなことはどうにでもなるのである。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「まあ、今時いまどき、どんな、男です。」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)