トップ
>
面
>
おも
ふりがな文庫
“
面
(
おも
)” の例文
夜もすがら枕近くにありて
悄然
(
しよんぼり
)
とせし老人二人の
面
(
おも
)
やう、何處やら寢顏に似た處のあるやうなるは、
此娘
(
このこ
)
の若しも父母にては無きか
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
……
面
(
おも
)
うつりがするんだろうね。……だけど、そんなことを姉さんに言おうものなら、気にしそうだから、あたしゃ黙っているのさ。
三つの挿話
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
それらの無数な
精霊
(
しょうりょう
)
に内心で直面するとき、正成はいつもそそけ立ッた
面
(
おも
)
もちになる。ひとりの犠牲も
無
(
む
)
にしてはと詫びるのらしい。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女が「
面
(
おも
)
はゆげに」罪を謝したと云う「道阿弥話」の記事は、いかに此の夫人が己れの悲しむべき過失を
悔悟
(
かいご
)
したかを語っている。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
瘠
(
や
)
せているので、ほんとうの
身丈
(
みのたけ
)
よりずっと長身に見える。
面
(
おも
)
ざしは冷たすぎるほど
端正
(
たんせい
)
で、象牙のような
冴
(
さ
)
えかえった色をしていた。
キャラコさん:03 蘆と木笛
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
▼ もっと見る
水の
面
(
おも
)
は秋の空、
汀
(
みぎわ
)
に蘆の根が透く辺りは、薄濁りに濁って、
二葉
(
ふたは
)
三葉
(
みは
)
折れながら葉ばかりの
菖蒲
(
あやめ
)
の伸びた蔭は、どんよりと白い。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何
(
なに
)
となく
薄淋
(
うすさび
)
しくなつた
浪
(
なみ
)
の
面
(
おも
)
を
眺
(
なが
)
めながら、
胸
(
むね
)
の
鏡
(
かゞみ
)
に
手
(
て
)
を
措
(
を
)
くと、
今度
(
こんど
)
の
航海
(
かうかい
)
は
初
(
はじめ
)
から、
不運
(
ふうん
)
の
神
(
かみ
)
が
我等
(
われら
)
の
身
(
み
)
に
跟尾
(
つきまと
)
つて
居
(
を
)
つた
樣
(
やう
)
だ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
取出して
飮
(
のみ
)
暫時
(
しばし
)
其處に休み居ける中段々夜も
更行
(
ふけゆき
)
四邊
(
あたり
)
も
寂
(
しん
)
としける此時
手拭
(
てぬぐひ
)
に深く
面
(
おも
)
てを
包
(
つゝ
)
みし男二人伊勢屋の
門
(
かど
)
に
彳
(
たゝず
)
み内の樣子を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
何だかこう、
昨夕
(
ゆうべ
)
まで濁っていた沼の
面
(
おも
)
が、
今朝
(
けさ
)
起きて見ると、すっかりと澄みわたっているので、夢ではないかと思うような気がする。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
とはいえ、俺はどうにも、
面
(
おも
)
はゆくて弱った。何しろ肖像を描かれるなんぞ、この齢になっても、まったく初めての経験なのだから……。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
夏頃のゆき子とは、すつかり
面
(
おも
)
がはりして、ふつくらと肥り、
躯
(
からだ
)
つきも若々しく豊かになり、仏印の頃のゆき子の面影を取り戻してゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
三十をもう五つ六つ越したと思われる年頃だが、その
面
(
おも
)
やつれが却つてかげを深くするなまめかしさで、彼の神経を容赦なく撫でまわした。
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
月光
(
げつくわう
)
其
(
その
)
滑
(
なめ
)
らかなる葉の
面
(
おも
)
に落ちて、葉は
宛
(
さ
)
ながら
碧玉
(
へきぎよく
)
の
扇
(
あふぎ
)
と
照
(
て
)
れるが、
其上
(
そのうへ
)
にまた黒き
斑点
(
はんてん
)
ありてちら/\
躍
(
おど
)
れり。
李樹
(
すもゝ
)
の影の
映
(
うつ
)
れるなり。
良夜
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
丁蘭は
彫物
(
ほりもの
)
の道にかけては、ずぶの素人だつたが、出来上つた木像を見ると、簡素なうちに母親にそつくりな
面
(
おも
)
ざしがあつた。
茶話:11 昭和五(一九三〇)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
が、その
間
(
あひだ
)
も
勿論
(
もちろん
)
あの
小娘
(
こむすめ
)
が、
恰
(
あたか
)
も
卑俗
(
ひぞく
)
な
現實
(
げんじつ
)
を
人間
(
にんげん
)
にしたやうな
面
(
おも
)
もちで、
私
(
わたくし
)
の
前
(
まへ
)
に
坐
(
すわ
)
つてゐる
事
(
こと
)
を
絶
(
た
)
えず
意識
(
いしき
)
せずにはゐられなかつた。
蜜柑
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は
直
(
すぐ
)
に
起
(
た
)
ってそこの廊下の雨戸を一枚
明
(
あ
)
けて、立って待っておると
戸外
(
おもて
)
は
朧
(
おぼろ
)
の夜で庭の
面
(
おも
)
にはもう薄雪の一面に降っていた。
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
櫂
(
かい
)
からしたたる水は、ささやかな
琶音
(
アルペジオ
)
や半音階を奏した。乳色の
靄
(
もや
)
が河の
面
(
おも
)
に揺れていた。星がふるえていた。鶏が両岸で鳴きかわしていた。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
相して貧きに失ふアヽ
悞
(
あやま
)
ちぬと
悔
(
くゆ
)
るにつけても昨夜の泊り醉狂に乘じて太華氏露伴子に引別れたる事の
面
(
おも
)
なさよ今日は先に中津川に待ち
酒肴
(
しゆかう
)
を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
先づその容貌をいはんに為山氏は丈高く
面
(
おも
)
長く全体にすやりとしたるに反し、不折君は丈低く面鬼の如く
髯
(
ひげ
)
ぼうぼうとして全体に強き方なり。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
頓
(
とみ
)
に答ふべき詞なきを、真女児
一〇七
わびしがりて、女の浅き心より、
一〇八
鳴呼
(
をこ
)
なる事をいひ出でて、
一〇九
帰るべき道なきこそ
面
(
おも
)
なけれ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
温泉地であるから、毎晩のように三味線の音や女の唄声などが、宿屋の明るい窓を洩れて、暗い湖の
面
(
おも
)
に消えていくというような風情があった。
私のふるさと
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
と帆村は沈思し、春部カズ子も黙したままにて帆村の
面
(
おも
)
に動く一筋の色も見のがすまいとこちらを凝視し、しばし時刻はうつろのままに過ぐる。
千早館の迷路
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
名乗られて顔をながめると、一高の廊下で時々見かけたころの漱石の
面
(
おも
)
ざしが、非常にはっきりと出ているように思えた。
漱石の人物
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
オオ、いやなこった! と萩乃は、想像の源三郎の
面
(
おも
)
ざしと、この男の顔と、どっちも見まいとするように眼をつぶって
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
妹の爽やかな調子に、圭子はいましがたの自分のあさましい所業に、
面
(
おも
)
ぼてりがして、一時に身内がカーッとほてって、返事をしないでいると
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
あの
円満
(
うま
)
し
人
(
びと
)
が、どうしてこんな顔つきになるだろう、と思われる表情をすることがある。其
面
(
おも
)
もちそっくりだ、と
尤
(
もっとも
)
らしい言い分なのである。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
お杉と法師とが全く
面
(
おも
)
ざしを異にして、同じ根同じ土から前後して生れて出ることが、昔の人には珍らしかったのである。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
立居のおだやかな寡黙な質で、にこやかな
面
(
おも
)
だちは親しみ易いが、折おり妙に気詰りな思いがして座をはずしたくなる。
痀女抄録
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
友
達
(
たち
)
なんかと
話
(
はな
)
してゐると三人の
位置
(
いち
)
が
引
(
ひき
)
玉に
考
(
かんが
)
へられたり、三つ
並
(
なら
)
んだ
茶
(
ちや
)
碗の
姿
(
すがた
)
が
面
(
おも
)
白い
押
(
おし
)
玉の
恰好
(
かつこう
)
に見※たりする。
文壇球突物語
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
ゆえに戦い敗れて彼の同僚が絶望に圧せられてその故国に帰り
来
(
きた
)
りしときに、ダルガス一人はその
面
(
おも
)
に
微笑
(
えみ
)
を
湛
(
たた
)
えその
首
(
こうべ
)
に希望の春を
戴
(
いただ
)
きました。
デンマルク国の話:信仰と樹木とをもって国を救いし話
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
それは、声だけでも無論わかるはずですが、この時は、
面
(
おも
)
だち、その姿、それがお雪でなければならないと思いました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
池の
面
(
おも
)
は
黄昏
(
たそが
)
れる空の光を受けて、きらきらと
眩
(
まばゆ
)
く輝き、枯蘆と霜枯れの草は、かえって明くなったように思われた。
元八まん
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その
面
(
おも
)
ざしがよく似ている。どうやら三人は兄弟らしい。その中の二人は武士であったが、一人は前髪を立てたままの、十七、八歳の少年であった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
面
(
おも
)
ざしの葉子によく似た十三の少女は、汗じみた顔には下げ髪がねばり付いて、
頬
(
ほお
)
は熱でもあるように上気している。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その
面
(
おも
)
ざしの何処やら似ているのを見ると、あるいは兄弟か叔父甥などでは無いかという説もあったが、これとても一部の人々の想像に過ぎなかった。
半七捕物帳:46 十五夜御用心
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
夫人は先ず船中一の美人であろう。細っそりして、色が白い。
身重
(
みおも
)
で、時には
面
(
おも
)
やつれがして見えるが、そのせいか何かコケチッシュにも感じられる。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
「無礼者。
妾
(
わらわ
)
を知らぬか」と
一睨
(
いちげい
)
すると、呉一郎は愕然たる
面
(
おも
)
もちで鍬を控えて立止ったが、「アッ。
貴女
(
あなた
)
は楊貴妃様」と叫びつつ砂の上に
跪座
(
きざ
)
した。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
多分お父さんとお嬢さんだろう、どこやら
面
(
おも
)
ざしが似ている。男の方は少し前屈みで背がひょろ高かった。顔はまだ若い、それだのに頭髪は真白だった。
妖影
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
折柄の
夕陽
(
せきよう
)
は
横斜
(
よこはす
)
に小虎の半身を赤々と照らした。それが流れの鈍い水の
面
(
おも
)
にも写るので有った。上にも小虎、下にも小虎、一人が二人に割れて見えた。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
ハラリと落ちる布のうしろから、現われたのは、アア、果して、果して、行衛不明となっていた、二郎の恋人、花園洋子の、変り果てた
面
(
おも
)
ざしであった。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
黄金色
(
こがねいろ
)
に藻の花の咲く
入江
(
いりえ
)
を出ると、広々とした沼の
面
(
おも
)
、絶えて久しい
赤禿
(
あかはげ
)
の駒が岳が忽眼前に
躍
(
おど
)
り出た。東の肩からあるか無いかの
煙
(
けぶり
)
が
立上
(
のぼ
)
って居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
独立の思想をいだきて、人なみならぬ
面
(
おも
)
もちしたる男をいかでか喜ぶべき。危うきは余が当時の地位なりけり。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
のみならずその
面
(
おも
)
ざしは、
円頂僧衣
(
えんちょうそうい
)
の姿に変ってこそおれ、
初
(
う
)
い初いしさ、美しさ、朝程霧の道ではっきり記憶に刻んでおいたあの
謎
(
なぞ
)
の娘そっくりでした。
旗本退屈男:06 第六話 身延に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
その彫像はにわかに生気が出てきた! 蒼ざめた大理石の
面
(
おも
)
ざし、膨らんだ大理石の胸、
浄
(
きよ
)
らかな大理石の足が、突然、一面に抑えきれぬ紅潮を呈してくる。
しめしあわせ
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
すじ向いに座を構えたまうを帽の
庇
(
ひさし
)
よりうかゞい奉れば、花の御かんばせすこし痩せたまいて時々小声に何をか物語りたまう
双頬
(
そうきょう
)
に薄紅さして
面
(
おも
)
はゆげなり。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
しかしただ驚ろかせるだけではつまらない。なるほど画になっていると驚かせなければつまらない。どう
工夫
(
くふう
)
をしたものだろうと、一心に池の
面
(
おも
)
を見詰める。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
少年
(
しょうねん
)
には、そのことがなんとなく、
面
(
おも
)
はずかしいことのような
気
(
き
)
がしました。しかし、このことがあってから、
夜
(
よる
)
になると、
人々
(
ひとびと
)
は
黒
(
くろ
)
く
二人
(
ふたり
)
を
取
(
と
)
り
巻
(
ま
)
きました。
街の幸福
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
しばしは庭のすみずみを照らししばらくして次第に消えゆくをかれは静かにながめてありしが火消えて後もややしばらくは
真闇
(
まくら
)
なる庭の
面
(
おも
)
をながめいたりとぞ。
おとずれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
生
(
う
)
まれが生まれだけにどことなし、
人柄
(
ひとがら
)
なところがあって、さびしい
面
(
おも
)
ざしがいっそうあわれに見える。
老獣医
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
色は衰えたといってもまだ
残
(
のこ
)
んの春を
蓄
(
たくわ
)
えている。
面
(
おも
)
だちは長年の
放埒
(
ほうらつ
)
で
荒
(
すさ
)
んだやつれも見えるが、目もと口もとには散りかけた花の感傷的な気分の反映がある。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
面
常用漢字
小3
部首:⾯
9画
“面”を含む語句
表面
面貌
面紗
正面
地面
面白
外面
前面
上面
真正面
面色
横面
海面
面帕
水面
渋面
面相
川面
強面
側面
...