)” の例文
大学を辞して朝日新聞に這入はいったらう人が皆驚いた顔をして居る。中には何故なぜだと聞くものがある。大決断だとめるものがある。
入社の辞 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「私はどんな罪を前生で犯してこうした悲しい目にうのだろう。親たちにも逢えずかわいい妻子の顔も見ずに死なねばならぬとは」
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
彼は早く神中にいたかった。神中に逢いさえすればいやなことを考える必要がなかった。しかし、神中のいる処はわからなかった。
雀が森の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ことによったら氏は家庭へ帰る代りに誰かに昨夜ひそかにって来たのでは無いかしら……誰かに……或いは彼女……X夫人に……。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
皆さんが実によく、種々いろいろ可恐おそろしいのを御存じです。……たしかにお聞きになったり、また現にったり見たりなすっておいでになります。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひげむしやの鳥居とりゐさまがくちから、ふた初手しよてから可愛かわいさがとおそるやうな御詞おことばをうかゞふのも、れい澤木さわぎさまが落人おちうど梅川うめがはあそばして
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかしわたくしは三かわらしいものをわたったおぼえはない……閻魔様えんまさまらしいものにった様子ようすもない……なになにやらさっぱりちない。
ハッキリとは記憶しませんが、それは何でもジーナにってから五、六日の後、四月の二十五、六日頃ではなかったかと、思います。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
し、同じような意味で選まれたとすると、その男が飛んだ目にったように、僕も何時いつかは、飛んだ目に逢いそうです。はゝゝゝ。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それは通例きわめて漠然としたものであるが、それでも直接った時に予期との合不合をはっきり感じさせるほどの力強いものである。
面とペルソナ (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「ふん、坊主ばうずか」とつてりよしばらかんがへたが、「かくつてるから、こゝへとほせ」とけた。そして女房にようばうおくませた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「もうどうしても二十二、三、学校に通っているのではなし……それは毎朝わぬのでもわかるが、それにしてもどこへ行くのだろう」
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
お前は何歳で獅子ししに救われ、何歳で強敵にい、何歳で乞食こじきになり、などという予言を受けて、ちっともそれを信じなかったけれども
苦悩の年鑑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
しかし、一方では、どうしたわけか、しばらくぶりでった従兄弟たちが、何とはなしに物足りないように思われてならなかった。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ねて、どうすかしても、しかつてもはうとしませんので、女官じよかん面目めんぼくなさそうに宮中きゆうちゆうかへつてそのことをまをげました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
葉子は下宿へいに来る一色とついで二三度庸三の書斎に姿を現わしたが、ある晩到頭一人でやって来て机の前にいる彼に近づいた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そこでとうさんはお墓參はかまゐりにみちはうから、るべくつたひとはない田圃たんぼわきとほりまして、こつそりと出掛でかけてきました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
十七のあきたおつぎの姿すがたがおしなくもたことをおもしては、他人ひとうはさいて時々とき/″\つてもたい心持こゝろもちがした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
Aは昨夜ゆうべギンザ・シネマへいったので今日寝坊してしまったのです。大急ぎで学校へくる道で、学校の方から帰ってくるBにいました。
祖母の死後私は旅先にゐる父のもとに引きとられた。その時は六つ位で、私は初めて父につたのである。同時に継母を知つた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
「我は爾にわんがためにここへ来た。爾は我に玉を与えにここへ来た。爾は帰れ。」と大兄はいって再び空の月へ眼を向けた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
これはさすがに露という季を入れていて、私にったクウシュウの心もちを述べたものでありまして、俳諧の規則にかなっております。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
玄竹げんちく其方そちつたのは、いつが初對面しよたいめんだツたかなう。』と、但馬守たじまのかみからさかづき玄竹げんちくまへして、銚子てうしくちけながらつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
行幸の供にまかる人を送りては、「聞くだにうれし」と詠み、雪の頃旅立つ人を送りては、「用心してなだれにふな」と詠めり。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
今云ったようなむちゃな事をもう一遍云って見るがい。己はお前の目に掛からないところへ隠れてしまって、生涯お前にわない事にする。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
「大悲おどろいて火宅の門に入る」で、もうジッとしてはおられないのです。「いたさ見たさに来たわいな」というのはそれです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
どうぞしてものにせうとまっしゃるのぢゃが、あのよなひとふよりは、わし蟾蜍ひきがへるうたはうがましぢゃ、とうてな、あの蟾蜍ひきがへるに。
今になって残っているのは言葉でも肉体でもなく、ただ愛情の周囲を歩いたおもい出だけです。今のあなたにはおいしたくない。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
再びアルチュ・ラマにう するとそこには召使ばかり居て誰もが居らんでしたが、その夜になってアルチュ・ラマが帰って参ったから
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
英米人えいべいじんまへには「ジヤパン」とせうし、佛人ふつじんへば「ジヤポン」ととなへ、獨人どくじんたいしては「ヤパン」といふはなんたる陋態ろうたいぞや。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
元園町もとぞのちょうでも相当の商売があって、わたしも度々たびたび買ったことがある。ところが、このおでん屋は私の父にうと相互たがいに挨拶する。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それにつれなきは方様かたさま其後そののち何の便たよりもなく、手紙出そうにも当所あてどころ分らず、まさかに親子おいづるかけて順礼にも出られねばう事は夢にばか
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……(間)死んだ妹のところで、おれは十年前、ちょいちょいあの人にったものだ。あの人は十七で、おれは三十七だった。
仮に朝晩口に任せて、う人ごとに同じ能書のうがきを繰返してまわったとしても、結局それは時代の変遷とは何の交渉も無しに終るかも知れぬ。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そこで早速さつそく理髪店とこやつてそのみゝ根元ねもとからぷつりとつてもらひました。おもてへるとゆびさして、ふものごとわらふのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
私は今日まで工藝美に関する正しい著作にめぐった経験をもたない。私の前には私の見解と縁遠き幾多の本が思い出されるばかりである。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
一世の尊崇を集めた大詩人ゲーテにって、その賞讃しょうさんの言葉を浴び、当時の大ピアニストなるモシェレスに逢って親交を結び
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
「あなたをお見舞に來たのよ、ヘレン。あなたがひどく惡いつて聞いて、あなたにつて話をしないうちは、寢られないの。」
それから、ロビンソン、クルーソーみたように難船にって一人ッきり、人跡じんせきの絶えた島に泳ぎ着くなんかも随分面白かろうと考えるんです。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
おじいさんはがみがみと叱りつけたから、おこっていたのかと思ったら、昔のランプにうことができて喜んでいたのである。
おじいさんのランプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「いたずらばかりするから、とうとうこんなことになったのだ。お父さんが帰って来たら、ひどい目にわされるのだよ。」
促織 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
田甫道たんぼみちをちらちらする提燈ちょうちんの数が多いのは大津法学士の婚礼があるからで、校長もその席に招かれた一人二人にみちった。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
明日あした明後日あさってうちへ帰って来た時きっとおうね。いいかい。きっとよ。約束してよ。あたいのうちへおいでよ。よくッて。」
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その執着は、初めて富岡につてみて、形の違ふものになつて来てゐたが、ゆき子は、一応、富岡に逢へた事は嬉しかつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
これまで永い間私はあまり荒々しい人々のなかにのみみすぎたように思っていましたが、あなたとって私ははとのような
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
この長左衛門には、重ねてめでたくお祝いにわんなどとは存じも寄りません。この御拝領はその意味でひとしおありがたく頂戴して参りまする
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いにしえから美女は京都を主な生産地としていたが、このごろ年ごとに彼地へ行って見るが、美人には一人もわなかったといってよいほどであった。
明治大正美人追憶 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
たかちゃんはしばらくわなかったので、すこし気まり悪そうな顔をしていたが、しかし私に対する昔の従順な態度を少しも変えていなかった。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
だが、妙子にはいつかえるよ。一つ探して見たまえ。そして、ある恐ろしい場所で、君が娘の無残なむくろと対面した時、どんな顔をするか。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
人はもろともに暮していたはずのものが別れてはたらき、別れて行きうということがもう悲しみのはじめに思われます。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)