萬事ばんじ)” の例文
新字:万事
同伴者つれ親類しんるゐ義母おつかさんであつた。此人このひと途中とちゆう萬事ばんじ自分じぶん世話せわいて、病人びやうにんなる自分じぶんはらまでおくとゞけるやくもつたのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
其方儀天一坊身分しかと相糺さず萬事ばんじ華麗くわれいていたらく有しを如何いかゞ相心得居申候やうつたへもせず役儀やくぎをもつとめながら心付ざる段不屆に付退役申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
つぎ著意ちやくいしてみちもとめるひとがある。專念せんねんみちもとめて、萬事ばんじなげうつこともあれば、日々ひゞつとめおこたらずに、えずみちこゝろざしてゐることもある。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
萬事ばんじが金銭上の義理ばかりでなくて相方さうはうの好意から自然とおいと葭町よしちやうくやうにれがひるともなくきまつてたのである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
また地面ぢめん? 何時迄いつまでもあのことばかりかんがへてらつしやるのね。だつて、貴方あなた萬事ばんじよろしくねがひますと、叔父をぢさんにおつしやつたんでせう」とふ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
くわふるに春枝夫人はるえふじん日出雄少年ひでをせうねん部室へやわたくし部室へやとは隣合となりあつてつたので萬事ばんじいて都合つがうからうとおもはるゝ。
もとより些細ささいのことながら萬事ばんじしてくのごとけむ、向後かうご我身わがみつゝしみのため、此上このうへ記念きねんとして、鳥籠とりかごとこゑ、なぐさみとなすべきぞ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
らつしやらないか、とおしたまうします所が誠に不思議だ、あれだけうも旦那だんな萬事ばんじ御様子ごやうすが違ふんだとつてますの、まア二階へおあがんなさいましよ
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
念佛衆ねんぶつしううちにはえらばれて法願ほふぐわんばれて二人ふたりばかりのぢいさんが、むづかしくもない萬事ばんじ世話せわをした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しかわたくしうまれた其日そのひより今日迄こんにちまでえず苦痛くつうめてゐるのです、其故それゆゑわたくし自分じぶん貴方あなたよりもたかいもの、萬事ばんじおいて、よりおほ精通せいつうしてゐるものとみとめてるです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
遠方ゑんぱうまでわざ/\出迎でむかへをけて、大儀たいぎであつた。何分なにぶん新役しんやくのことだから、萬事ばんじよろしくたのむ。しかしかうして、奉行ぶぎやうとなつてれば、各々おの/\與力よりき同心どうしんは、のやうにおもふ。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
令息れいそくこゝろよ出迎でむかへられて、萬事ばんじ便誼べんぎあたへられ、人足にんそくにんさへばれたのであつた。
萬事ばんじ其人そのひとまかせて其人そのひと獨立心どくりつしん依頼いらいせしめるやう習慣しふくわんをつけねばなりません。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
いとがいよ/\芸者になつてしまへばれまでのやうに毎日ふ事ができなくなるのみならず、それが萬事ばんじをはりであるらしく思はれてならない。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
幼君えうくん思召おぼしめしかなひけん、「しからばこゝろみにふべきなり。萬事ばんじなんぢまかすあひだきにはからさせよ」とのたまひぬ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たつしける萬事利發りはつ取廻とりまはしゆゑ重役衆ぢうやくしうには其樣にはからひ下役人へは賄賂わいろおく萬事ばんじ拔目ぬけめなきゆゑ上下こぞつて吉兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
同時どうじかれつとめやすんでわざ/\此所こゝまでをとこであつた。紹介状せうかいじやういてれたひと萬事ばんじけてれる宜道ぎだうたいしても、あまりに輕卒けいそつ振舞ふるまひ出來できなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あゝ、人間にんげん萬事ばんじじつ天意てんゐまゝだと、わたくしふかこゝろかんずるとともに、たちま回想くわいさうした一事いちじがある。
『で、きみ萬事ばんじエウゲニイ、フエオドロヰチのことばしたがふやうに、ねえきみたのむから。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
い菓子ではりませんけれども、萬事ばんじとゞいてります。
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
萬事ばんじ引受ひきうけよし如何なるわけにて文右衞門の質物しちもつ而已のみ五ヶ月限りに貸遣かしつかはしたるや此儀申立てよと申さるゝに久兵衞は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
萬事ばんじはうあひまかせる、此女このもの何處いづこにてもともなき、妙齡としごろれんまで、人目ひとめにかけずかくけ。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
御世話おせわどころか、萬事ばんじ不行屆ふゆきとゞきさぞ御窮屈ごきゆうくつ御座ございましたらう。しか是程これほど御坐おすわりになつても大分だいぶちがひます。わざ/\御出おいでになつただけこと充分じゆうぶん御座ございます」とつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかるに、人間にんげん萬事ばんじは、じつ意外いぐわいまた意外いぐわいこの喜悦よろこび最中さいちう非常ひじやう事變じへんおこつた。