片方かたほう)” の例文
とおい、とおい、むかしのこと、ある武士ぶしが、このはまでかもめをました。しかし、は、すこしはずれて、片方かたほうつばさきずつけたばかしです。
はまねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
馬鹿ばかなペンペはだまされるともらずに、また片方かたほう眼玉めだまをたべてしまつた。もう四千メートルにちかきりなかだ。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
このふたつのうたについてると、片方かたほうは、4・6・4・5・7といふへんなかたちになつてゐるが、大體だいたい短歌たんかの5・7・5・7・7といふのと、かずてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
次に今一つ、棒の片方かたほうはしに荷物をしかとくくりつけて、それをななめに肩にかけることがあった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
けれどもしきいまたときに、片方かたほう上沓うわぐつげたので、片足かたあしには、上沓うわぐつ穿き、片足かたあしは、沓下くつしただけで、前垂まえだれけ、片手かたてには、黄金きんくさり片手かたてには、ヤットコをって、まちなか跳出とびだしました。
片方かたほうはいままではいていた長靴ながぐつで、片方はさっきもらったばかりの長靴だ。
よしッ、とばかりモンクスは、いきなり富田とみただん片方かたほうの足へ飛びついて、小脇こわききかかえた! すかさず右の手をのばして、弾丸だんがんのような顎打アッパー・カット打撃だげき、がんとあごへ飛ぼうとしたそのときだ。
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
片方かたほうに三日かかるそうですから、一週間入院しなければなりません」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
小太郎こたろうは、すがでありました。自分じぶんにもあまりおぼえのない時分じぶんに、どうして片方かたほうをつぶしてしまったのかわかりません。
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いまごろがついたか。おれもはらつてきたので、自分じぶん眼玉めだま片方かたほうえぐりだしてつてるのだ。それにしばらくすると、またもとどほりに眼玉めだまがちやんと出来できてくるから奇妙きめうなものさ。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
あたかもとしくれにて、春のいそぎの門松かどまつを、まだ片方かたほうはえ立てぬうちにはや元日になりたればとて、今もこの家々にては吉例として門松の片方を地に伏せたるままにて、標縄しめなわを引き渡すとのことなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
片方かたほうは、たかいがけになって、ちょうどとされたように、あかはだをしずかなみずおもてにうつしていました。
南方物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして格別かくべつあぢだとはんばかりにのどらした。さむさもさむさだが、自分じぶん眼玉めだまがたべられるなんていたので、おもわずブルルッと身震みぶるひしたペンペは、さつそく片方かたほう眼玉めだまをたべてみた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
「よせ、おまえがわるいのだ。」と、仲間なかま少年しょうねんはなそうとしました。片方かたほうから、どこかのおじさんが
中学へ上がった日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おまえは子供こども時分じぶん片方かたほうがいけなくてをしていたが、ほんとうの小太郎こたろうならわるいはずだ。
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
太郎たろうは、このからすのれのなかに、ただ一片方かたほうつばさいたんでいる、あわれなからすを発見はっけんしました。
翼の破れたからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
正二しょうじくんは、おじいさんのっていられた眼鏡めがね自分じぶんって、片方かたほうについているねじをました。それは、ちいさな、たいらなあたまみぞのついているものでした。
小さなねじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
むらまつ片方かたほうえだは、ふゆ大雪おおゆきったときにれたものでした。旅人たびびとは、なつかしそうに、ひじょうにそれとよく姿すがたている、まつしたにきてやすみました。
曠野 (新字新仮名) / 小川未明(著)
小西こにしは、青木した眼鏡めがねつめました。なるほど、片方かたほうたましろいひびがはいっています。
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そんなとき、どうするかというに、のもえていくなん十メートルかさきはやしりはらって、あきちをつくるのだ。そして、火事かじのあるもり片方かたほうのはしへをつけるのだ。
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
いままであそびにをとられていた子供こどもらは、まるくしてそのじいさんの周囲しゅういあつまって、片方かたほうはこうえてたいろいろの小旗こばたや、不思議ふしぎ人形にんぎょうなどに見入みいったのです。
空色の着物をきた子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このごろははばちの片方かたほうはねがすこしやぶれているのをかんがえると、むねいたくなるのをかんじました。
ある夏の日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
あちらのそらは、さおうみいろをし、また片方かたほうそらで、しずみかけていました。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたりおしえられた牛乳店ぎゅうにゅうてんへいきましたが、みせさきに、西日にしびたってテーブルのうえには、新聞しんぶんひろげられていました。そして片方かたほうのたなにはきびんがずらりとならんでいました。
野菊の花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しんちゃんはこしながいものさしをさし、片方かたほうをつぶって、片方かたほうをうしろにかくしながら、あたまをちょっとかしげて、みんながおはなしをしているところへ、いばっててきました。
片目のごあいさつ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「なにしろ、ちいさいものだから、ちょっとわからないだろう。」と、おじいさんは、片方かたほうのつるがはずれて、かけられなくなった眼鏡めがねちながら、こまったかおつきをしていられました。
小さなねじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
きよは、こまってしまいました。障子しょうじやぶれからのぞくと、子供こどもは、病気びょうきとみえて、とこについて、ねていました。そのまくらもとには、片方かたほうくるまのとれたタンクが、ころがっていました。
雪の降った日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まちはずれので、くろ支那服しなふく親方おやかたは、ふと鉄棒てつぼうをぶんぶんとりまわしたり、それをそらたかげて、上手じょうずったり、また、片方かたほうちゃわんにかくした、あかしろたま
春風の吹く町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あいつが、植木鉢うえきばち小便しょうべんをかけたし、いつかくつが片方かたほうくなったのも、きっとあいつがどこかへくわえていったのだ。」と、叔父おじは、こたえたが、なんの理由りゆうもつけずにいじめるのは
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このが、このあいだから、いたいといいますので、今日きょうきててもらいますと、もうておくれになっているので、すぐに片方かたほううでりとってしまわなければ、いのちがないとおっしゃいます。
きつねをおがんだ人たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
「よくもあったものだ。やはり、片方かたほうえだれていたっけが。」
曠野 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まっかな洋服姿ようふくすがたのおどり人形にんぎょうが、片方かたほうあしげてっていました。
空にわく金色の雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
片方かたほうなかには、あめがはいっているとおもわれました。みんなは、これまでむらへたびたびやってきたあめりのじいさんをっています。しかし、そのじいさんはどうしたか、このごろこなくなりました。
空色の着物をきた子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)