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斜
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なな
ふりがな文庫
“
斜
(
なな
)” の例文
いつも、
暮
(
く
)
れ
方
(
がた
)
の
陽
(
ひ
)
が、
斜
(
なな
)
めにここへ
射
(
さ
)
すころ、
淡紅色
(
たんこうしょく
)
の
小
(
ちい
)
さなちょうがどこからともなく
飛
(
と
)
んできて、
花
(
はな
)
の
上
(
うえ
)
へ
止
(
と
)
まるのでした。
戦友
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
白きは空を見よがしに貫ぬく。白きものの一段を尽くせば、
紫
(
むらさき
)
の
襞
(
ひだ
)
と
藍
(
あい
)
の襞とを
斜
(
なな
)
めに畳んで、白き
地
(
じ
)
を不規則なる
幾条
(
いくすじ
)
に裂いて行く。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
蟹の子供らもぽっぽっぽっとつづけて五六
粒
(
つぶ
)
泡を
吐
(
は
)
きました。それはゆれながら水銀のように光って
斜
(
なな
)
めに上の方へのぼって行きました。
やまなし
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
平次に重ねて言われると、自分の書いた手紙を二十四通、膝の上に置いて、身体を
斜
(
なな
)
めにしたまま、極り悪そうに勘定しておりましたが
銭形平次捕物控:244 凧の糸目
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
博士の
機嫌
(
きげん
)
は、
斜
(
なな
)
めならず、フォークとナイフとを使いながら、何かしきりに
呟
(
つぶや
)
いている様子が、たいへん楽しそうに見えた。
大使館の始末機関:――金博士シリーズ・7――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
咲耶子
(
さくやこ
)
はチラと
眉
(
まゆ
)
をひそめたが、にわかに
右手
(
めて
)
の笛をはげしく
斜
(
なな
)
めにふって落とすこと二へん、最後に左の肩へサッとあげた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただし
斜
(
なな
)
めに後ろから見た上半身。人形の首はおのずから人間の首に変ってしまう。のみならずこう少年に話しかける。——
浅草公園:或シナリオ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
戸の開いた便所の内側は、電燈の光を
斜
(
なな
)
めにうけているので、よくは見えない。しかし、だれか中で掃除をしていることだけはたしかだった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
斜
(
なな
)
めに冬木立の
連
(
つら
)
なりてその上に鳥居ばかりの少しく見えたる、冬田の水はかれがれに
錆
(
さ
)
びて
刈株
(
かりかぶ
)
に
穭穂
(
ひつじぼ
)
を見せたる
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
斜
(
なな
)
め下には、教会堂の
尖塔
(
せんとう
)
も
鋭
(
するど
)
く、空に、つき
刺
(
さ
)
さって、この通俗的な
抒情画
(
じょじょうが
)
を、
更
(
さら
)
に、
完璧
(
かんぺき
)
なものにしていました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
テーブルの足と足の間に二枚の鏡が
斜
(
なな
)
めに張ってあったのです。犯人はそのうしろにかくれて、手首だけをテーブルの上に出し、巻き物の箱をつかんだのです。
おれは二十面相だ
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
着物の地や柄は婆やにはよく見えなかったが、袖裏に赤いものがつけてあるのはさだかに知れた。
斜
(
なな
)
め後ろから見ただけでも
珍
(
めず
)
らしく美しそうな人に思われた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
民さんの生あたたかい小便をしているうしろから、どうかしたはずみに、きんたまを見たことがあった。きんたまは、昼すぎの
斜
(
なな
)
めの日にうかんで、いろは白かった。
生涯の垣根
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
斜
(
なな
)
めにかぶった運動帽の下からときどきまぶしそうな顔を持ち上げながら、その下図をとりだした。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
杉の
古樹
(
こじゅ
)
の陰に
笹
(
ささ
)
やら
楢
(
なら
)
やらが茂って、土はつねにじめじめとしていた。晴れた日には、夕方の光線が
斜
(
なな
)
めに林にさし
透
(
とお
)
って、向こうに広い野の空がそれとのぞかれた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
こう
粋
(
すい
)
をきかして泰軒が立ち去ったのち、二人は、あれでどれほど長く玉姫神社の階段に腰をかけて語り合っていたものか——気がついた時は、陽はすでに
斜
(
なな
)
めに昇って
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
夕陽が向う側の監獄の壁を赤く染めて、手前の庭の半分に、煉瓦建の影を
斜
(
なな
)
めに落していた。
独房
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
そして
中央
(
まんなか
)
の
所
(
ところ
)
がちょっと
折
(
お
)
れ
曲
(
まが
)
って、
斜
(
なな
)
めに
外
(
そと
)
に
出
(
で
)
るようになって
居
(
お
)
ります。
岩屋
(
いわや
)
の
所在地
(
しょざいち
)
は、
相当
(
そうとう
)
に
高
(
たか
)
い、
岩山
(
いはやま
)
の
麓
(
ふもと
)
で、
山
(
やま
)
の
裾
(
すそ
)
をくり
抜
(
ぬ
)
いて
造
(
つく
)
ったものでございました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
順作はうっとりと何か考え込んだが、気が
注
(
つ
)
いて近くの瓶の傍へ往って、
狭
(
せば
)
まっている底のほうに力を入れて押してみた。
瓶
(
かめ
)
はなかなか重かったがそれでも
斜
(
なな
)
めに傾きかけた。
藍瓶
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
斜
(
なな
)
めにうねった
道角
(
みちかど
)
に、
二抱
(
ふたかか
)
えもある
大松
(
おおまつ
)
の、その
木
(
き
)
の
下
(
した
)
をただ
一人
(
ひとり
)
、
次第
(
しだい
)
に
冴
(
さ
)
えた
夕月
(
ゆうづき
)
の
光
(
ひかり
)
を
浴
(
あ
)
びながら、
野中
(
のなか
)
に
咲
(
さ
)
いた一
本
(
ぽん
)
の
白菊
(
しらぎく
)
のように、
静
(
しず
)
かに
歩
(
あゆ
)
みを
運
(
はこ
)
んで
来
(
く
)
るほのかな
姿
(
すがた
)
。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
神保町から一つ橋、神田橋から鎌倉河岸、それから
斜
(
なな
)
めに本石町へ出、日本橋通を銀座の方へ、女はズンズン歩いて行く。だから、もちろん、岡八も歩いて行かなければならなかった。
染吉の朱盆
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
雨の
滴々
(
したたり
)
しとしとと屋根を打って、森の暗さが
廂
(
ひさし
)
を通し、
翠
(
みどり
)
が黒く
染込
(
しみこ
)
む絵の、
鬼女
(
きじょ
)
が投げたる
被
(
かずき
)
を
背
(
せ
)
にかけ、わずかに
烏帽子
(
えぼし
)
の
頭
(
かしら
)
を
払
(
はら
)
って、
太刀
(
たち
)
に手をかけ、腹巻したる
体
(
たい
)
を
斜
(
なな
)
めに
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
風前猶剰旧夭斜
風前
(
ふうぜん
)
に
猶
(
な
)
お
剰
(
あま
)
す
旧夭
(
きゅうよう
)
の
斜
(
なな
)
めなり〕
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
鹿はおどろいて一度に
竿
(
さお
)
のように立ちあがり、それからはやてに
吹
(
ふ
)
かれた木の葉のように、からだを
斜
(
なな
)
めにして
逃
(
に
)
げ出しました。
鹿踊りのはじまり
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
こんどは余は石段の上に立ってステッキを突いている。女は
化銀杏
(
ばけいちょう
)
の下で、行きかけた
体
(
たい
)
を
斜
(
なな
)
めに
捩
(
ねじ
)
ってこっちを見上げている。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
八五郎は少し
斜
(
なな
)
めになって、プイと外へ出てしまいました。この上お北のために働いてやる工夫のないのが、淋しくも張合いのない様子です。
銭形平次捕物控:051 迷子札
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ただし、
斜
(
なな
)
め上から見たところがうつっている。ちょうど、ビルの三階ぐらいから地上を見下ろしたような調子であった。
洪水大陸を呑む
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ふりかえると、猫間川の水が、大きな波紋を
描
(
か
)
いて、
苫
(
とま
)
をかぶせた小舟が一
艘
(
そう
)
、
斜
(
なな
)
めに
辷
(
すべ
)
って、
水禽
(
みずとり
)
のように寄ってきた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かれは塾生たちの静坐の姿勢を直したあと、朝倉先生の横に
斜
(
なな
)
め
向
(
む
)
きにすわっていたので、よく全体が
見渡
(
みわた
)
せたのである。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
茶色
(
ちゃいろ
)
の
古
(
ふる
)
びた
帽子
(
ぼうし
)
を
斜
(
なな
)
めにかぶった、
口
(
くち
)
ひげのあるおじさんは、なんとなくずるそうな
目
(
め
)
つきをして、
自分
(
じぶん
)
のまわりに
立
(
た
)
っている
子供
(
こども
)
たちの
顔
(
かお
)
を
見
(
み
)
まわしました。
花の咲く前
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
二度、三度、ドシンドシンと、ぶっつかっているうちに、ギギギ……と音がして、ちょうつがいがはずれ、ドアが
斜
(
なな
)
め向こうに
倒
(
たお
)
れて、人のはいる
隙間
(
すきま
)
ができました。
電人M
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
……やがて別館から彼女の父らしいものが姿を現した。そしてその二人づれは私の窓の前を
斜
(
なな
)
めに横切って行ったが、見ると、彼女はその父よりも背が高いくらいであった。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
車はあるいは急角度に横にまがり
斜
(
なな
)
めにおち、ガッタンガッタンと、登ったかとおもえば、また陥ちる、頭の
髪
(
かみ
)
が、風にふかれて
舞
(
ま
)
い上がるのも、
恐怖
(
きょうふ
)
に追われ逆立つおもいでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
看護員は身を
斜
(
なな
)
めにして、椅子に片手を投懸けつつ、手にせる鉛筆を
弄
(
もてあそ
)
びて
海城発電
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
部屋
(
へや
)
の
中
(
なか
)
は、
窓
(
まど
)
から
差
(
さ
)
すほのかな
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
で、
漸
(
ようや
)
く
物
(
もの
)
のけじめがつきはするものの、ともすれば、
入
(
い
)
れ
換
(
か
)
えたばかりの
青畳
(
あおだたみ
)
の
上
(
うえ
)
にさえ、
暗
(
くら
)
い
影
(
かげ
)
が
斜
(
なな
)
めに
曳
(
ひ
)
かれて、じっと
見詰
(
みつ
)
めている
眼先
(
めさき
)
は
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
月はもう
余程
(
よほど
)
高くなり、星座もずいぶんめぐりました。
蝎座
(
さそりざ
)
は西へ
沈
(
しず
)
むとこでしたし、天の川もすっかり
斜
(
なな
)
めになりました。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
友の
挨拶
(
あいさつ
)
はどの
辺
(
へん
)
に落ちたのだろうと、こそばゆくも首を
捩
(
ね
)
じ向けて、
斜
(
なな
)
めに三段ばかり上を見ると、たちまち目つかった。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
身体が
斜
(
なな
)
めに
傾
(
かたむ
)
いたのだ。僕はズデンドウと
尻餅
(
しりもち
)
をつくだろうと思った。ところが尻餅なんかつかないのだ。身体は
尚
(
なお
)
も傾いて身体が横になる。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
白い光の
縞
(
しま
)
が、
斜
(
なな
)
めに天地をかすめている、遠くからながめると、飛んでくる
白鷺
(
しらさぎ
)
とも見える二つの
蓑笠
(
みのかさ
)
をかぶった者が
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かれは、玄関をはなれると、くぬぎ林のまえの広場を
斜
(
なな
)
めに、正門のほうに向かって自転車の速力をはやめた。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
と
行儀
(
ぎょうぎ
)
わるく、火鉢を
斜
(
なな
)
めに
押出
(
おしだ
)
しながら
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「おや、
御母
(
おっか
)
さん」と
斜
(
なな
)
めな身体を柱から離す。振り返った眼つきには
愁
(
うれい
)
の影さえもない。
我
(
が
)
の女と謎の女は互に顔を見合した。実の親子である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と云いながら画かきはまた急に意地悪い顔つきになって、
斜
(
なな
)
めに上の方から軽べつしたように清作を見おろしました。
かしわばやしの夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
矢数
(
やかず
)
はひょうひょうと
虹
(
にじ
)
のごとく
放
(
はな
)
たれたが、時間はほんの
瞬間
(
しゅんかん
)
、すでに
大鷲
(
おおわし
)
は町の空を
斜
(
なな
)
めによぎって、その
雄姿
(
ゆうし
)
を
琵琶湖
(
びわこ
)
のほうへかけらせたが
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼はすっかり
隙間
(
すきま
)
のないほど
身固
(
みがた
)
めし、腰にはピストルの
革袋
(
かわぶくろ
)
を、肩から
斜
(
なな
)
めに、大きな
鶴嘴
(
つるはし
)
を、そしてズックの
雑袋
(
ざつぶくろ
)
の中には三本の酒壜を忍ばせて
月世界探険記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
宗助は大きな姿見に映る白壁の色を
斜
(
なな
)
めに見て、番の来るのを待っていたが、あまり退屈になったので、洋卓の上に重ねてあった雑誌に眼を着けた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
林の中には月の光が青い棒を何本も
斜
(
なな
)
めに投げ
込
(
こ
)
んだように
射
(
さ
)
して居りました。その中のあき地に二人は来ました。
雪渡り
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
少尉は、背後に向って、携帯用の懐中電灯を、
斜
(
なな
)
め
十字
(
じゅうじ
)
に振った。それは下士官を呼ぶ信号だった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
一見不用意に似た尺八の構えは、いわゆる八面鉄壁な
斜
(
なな
)
め
青眼
(
せいがん
)
、たしかに一流をこなしている。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「動かばこそと云うのは、動けるのに動かない時の事を云うのだろう」と細長い眼の
角
(
かど
)
から
斜
(
なな
)
めに相手を
見下
(
みおろ
)
した。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“斜”の意味
《名詞》
(シャ 主に例句で)正面からずれた位置。
(出典:Wiktionary)
斜
常用漢字
中学
部首:⽃
11画
“斜”を含む語句
傾斜
斜向
斜違
斜面
斜視
左斜
斜陽
傾斜地
狭斜
斜交
斜子
黒斜子
斜上
斜坑
斜後
傾斜面
横斜
斜掛
第二斜檣
緩傾斜
...