すう)” の例文
旧字:
しぼるような冷汗ひやあせになる気味の悪さ、足がすくんだというて立っていられるすうではないからびくびくしながら路を急ぐとまたしても居たよ。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「え、五円と云うところでしたね。しかしすうに於ては成功なんです。怪談祭の気味にはなったが、まず結構としておく事ですね」
友人一家の死 (新字新仮名) / 松崎天民(著)
私は暇さえあると、ボール紙や黒いクロースなどを買って来て、色々な恰好かっこうの箱をこしらえました。レンズや鏡も段々すうを増して行きました。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
林檎りんごが三つあると、三と云う関係を明かにさえすればよいと云うので、肝心かんじんの林檎は忘れて、ただ三のすうだけに重きをおくようになります。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「……それにしても九人というのは面白いですねえ。西洋の伝説にある妖婆ようばは、九というすうを非常に好むという話ですから」
手術 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「さそくに宿居とのいの方々へ御注進致しまして、取急ぎ御警固のすうを増やすよう申し伝えまするで厶りますゆえ、殿、御意ぎょいは?」
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
そしてこれに招くべき賓客ひんかくすうもほぼ定まっていた。然るに抽斎の居宅には多くかくくべき広間がないので、新築しなくてはならなかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
下役でさへさうだとすれば、別当とか、侍所のつかさとか云ふ上役たちが頭から彼を相手にしないのは、むしろ自然のすうである。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今まではとにかくにはいも取らずに来たが、次の戦いはどうであるか、すうよりせば、我が軍はとうてい北軍に比しがたい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
けわしいがけ中腹ちゅうふくを走っている列車は、それと同時どうじすうしゃくの下にいわをかんでいる激流げきりゅうに、墜落ついらくするよりほかはない。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
今度の休戦が昨年の十一月十一日の十一時に成立つたといふので、ある御幣担ぎは、この十一といふすうを何か特別のもののやうに縁起を担ぎ出した。
それを、そんな事を云ッて置きながら、ずうずうしく、のべんくらりと、大飯を食らッて……ているとは何所どこまでおしおもたいンだかすうが知れないと思ッて
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
小学校は全市で百九十六校あったのが百十八校まで焼け、り災した児童のすうが十四万八千四百人にのぼっています。
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
五俵、十俵と、雑穀をじえた百姓達のうりに出す米のすうは、豊作見越しの収穫まえだけに、倉庫の店先には、幾台となく、いつも売込うりこみの米は止まっていた。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
遊戯ゆうぎの際に早くも検校の真似をするに至ったのは自然のすうでありそれがこうじて習い性となったのであろう
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
史をあんじて兵馬の事を記す、筆墨もまたみたり。燕王えんおう事を挙げてより四年、ついその志を得たり。天意か、人望か、すうか、いきおいか、将又はたまた理のまさしかるべきものあるか。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すべては必然のすうである。自分の運命はかく定められたものである。自分には天の定めを乱す力はない。
これを無智単純と見、或いは慾にられての附随ふずいとし切るのは、この場合、余りにもいたましいすうである。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
温泉のすうはかず限りもない。温泉場と名のついた別府、浜脇、観海寺、亀川、鉄輪、芝石、堀田、明礬みょうばん、新別府などがある。別府市内だけでも浴場が十あまりある。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ちょうど、それだけのすうの小さなびんならんでいるようで、ジャンセエニュ先生せんせいは、そのびんの一つ一つへ学問という葡萄酒ぶどうしゅをつぎんでいらっしゃるのだというがします。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
たちまち、責任問題せきにんもんだいこりました。轢死者れきししゃすういちじるしくしたからです。なぜ、警笛けいてきらさなかったか? 被害者ひがいしゃがわでは、こういって、鉄道側てつどうがわ非難ひなんいたしました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その代りに応用化学の本家本元の仏蘭西フランスの大学で、理学博士の学位を取っている一種の発明狂と来ているんだ。持っているパテントのすうでも十や二十じゃ利かないだろう。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
患者かんじゃすうは五にん、そのうちにて一人ひとりだけは身分みぶんのあるものであるがみないやしい身分みぶんものばかり。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
清い宝玉でもちりばめたような星は次第にそのすうを増して行った。ヴァランタンは無言のうちに、警官達に合図をして、枝のしなだれかかったその木立の影まで忍び寄った。
日本娼婦のすう坡港はかうばかりで現に六百四五十人(この外に洋妾やうせふとなつて居る女は百人もあるさうだ。)あると云ふから、印度インド、濠洲、南洋諸島へ掛けては六七千人にものぼるのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
到底インドの安寧あんねいを保たれないことは明らかなすうでございましょうから、おそらくその事をおもんぱかって英国はチベットに対し深き注意を加えて居るのではあるまいかと想像されたです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
またある時はどこかの二等線路を一手に引き受けられる程のすうの機関車を所有していた。またある時は、平生活人画かつじんが以上の面白味はかいせないくせに、歴代の名作のある画廊を経営していた。
国芳の山水画には東海道及東都名所の二種あれどもいづれもそのすう多からず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
書付も要らなければ条約も要らない、ただ口で請取たら請取たとうたけで沢山だ、是れは只覚書にすうを記したけの事、もとよりこんな物は証拠にしないと云う風に出ようと相談をめて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「えっ、それは本当か。死骸が山のように積んであるって、どの位のすうか」
柳浪子りうらうし主筆しゆひつにして小文学せうぶんがく小冊子せうさつしを発行した、これとてもはゞ硯友社機関けんいうしやきくわんでありました、そもそも九とすう硯友社けんいうしやに取つては如何いかなる悪数あくすうであるかこの小文学せうぶんがくまた九号にして廃刊はいかんする始末しまつ
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
……一々かぞえたらよほどのすうのぼったでございましょう。
「君、生れて来た以上は死ぬってことが自然のすうだ」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
流行歌のすうは、実におびただしいものです。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
の鳥がすう
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しぼるやうな冷汗ひやあせになる気味きみわるさ、あしすくんだといふてつてられるすうではないから、びく/\しながらみちいそぐとまたしてもたよ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鼠のすうは、皆で、五匹で、それに李の父の名と母の名と妻の名と、それから行方ゆくえの知れない二人の子の名とがつけてある。
仙人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
文明は人の神経を髪剃かみそりけずって、人の精神を擂木すりこぎと鈍くする。刺激に麻痺まひして、しかも刺激にかわくものはすうを尽くして新らしき博覧会に集まる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
四十七は赤穂義士のすうでもあり、いろは文字のすうでもある。その通俗な事にかけては、馬鹿者の多い政党員にとつて、何よりも分り易い数字である。
活栓は一分間に二百五十回の割で動きましたから、脈搏のすうかぞえることは出来ませんが、血液が無事に巡回して居ることは、はっきり感ぜられました。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
不世出の英雄朱元璋しゅげんしょうも、めいといいすうというものゝ前には、たゞこれ一片の落葉秋風に舞うが如きのみ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いくまんいくまん、そのすうはわかりません。わたしたちは、太陽たいようかがやいているそらくらくすることができます。また、どんなににぎやかなあかるいまちでもくらくすることができます。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今日きょうは三十にん患者かんじゃければ、明日あすは三十五にんる、明後日あさっては四十にんってく、かく毎日まいにち毎月まいげつ同事おなじこと繰返くりかえし、打続うちつづけてはくものの、市中まち死亡者しぼうしゃすうけっしてげんじぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
益々そのすうを増し、道々の花は踏みにじられ、蹴散けちらされて、満目の花吹雪ふぶきとなり、その花びらと湯気としぶきとの濛々もうもうと入乱れた中に、裸女の肉塊は、肉と肉とをり合せて
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そうして悪魔の『瞬』……七ツの果物は悪魔のすうであった。……私は七ツのすうに咀われた。悪魔の美紅に欺された。悪魔の『瞬』に踏みにじられた。ああ恐ろしい。……嗚呼ああ苦しい。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
然れどもそのすうにおいて世界に冠たるは米国 Bostonボストン 市の Museum of Fine Arts(美術館)にして屏風びょうぶ衝立ついたて類四百種、肉筆画四千種、板画類一万種に達すといふ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
また二度のつとめをしてますます深みへ落ちようも知れず、もとより抱妓を置く金で仲之町から引取って手許てもとで稼がせるすうではなし。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その叔父の二重人格を見たと云う実例などを数えましたら、恐らくそれは、おびただしいすうに上る事でございましょう。
二つの手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
金の卵を産むにはとりを持つてゐるものは、何よりもまづその卵のすうを控へ目にさせなければとむかしの人も言つてゐた。
世おのずからすうというもの有りや。有りといえば有るがごとく、無しとせば無きにも似たり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)