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故
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ゆえ
ふりがな文庫
“
故
(
ゆえ
)” の例文
しかし、私は、今日まで、そういうことなど考えて見たことのない
生初心
(
きうぶ
)
な若者
故
(
ゆえ
)
、いざ行くとなると気が差してなかなか行き渋る。
幕末維新懐古談:20 遊芸には縁のなかったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
それ
故
(
ゆえ
)
新潮社の翻訳は定評があるとか、
杜撰
(
づさん
)
なものであるとか、そんな評判はよく聞く処であるが、私は少しもそれに耳をかさない。
翻訳製造株式会社
(新字旧仮名)
/
戸川秋骨
(著)
それが
人
(
ひと
)
の
言
(
い
)
うように
規則的
(
きそくてき
)
に
溢
(
あふ
)
れて
来
(
こ
)
ようとは、
信
(
しん
)
じられもしなかった。
故
(
ゆえ
)
もない
不安
(
ふあん
)
はまだ
続
(
つづ
)
いていて、
絶
(
た
)
えず
彼女
(
かのじょ
)
を
脅
(
おびや
)
かした。
伸び支度
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
故
(
ゆえ
)
に記述と説明とは、共に広義の学術に属するもので、芸術に属するものでない。芸術に属するものは、最後の表現あるのみである。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
しかしこの花の見た目に美しいことは忘れることが出来ない
故
(
ゆえ
)
に、単にそういう感じから付けた名も、また方々で拾うことが出来る。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
減らし色々の点で節約したけれども彼女の
慰安
(
いあん
)
には何一つ
遺漏
(
いろう
)
のないようにした
故
(
ゆえ
)
に盲目になってからの彼の労苦は以前に倍加した。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
光は
末
(
すえ
)
が
負
(
お
)
ひて竹村の姉の
許
(
もと
)
へ、天神様の
鳩
(
はと
)
を見になど行き候。かしこに猿もあり、猿は行儀わろきもの
故
(
ゆえ
)
見すなといひきかせ候。
ひらきぶみ
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
名誉心は抽象的なものであるにしても、昔の社会は今の社会ほど抽象的なものでなかった
故
(
ゆえ
)
に、名誉心はなお
根柢
(
こんてい
)
のあるものであった。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
かるが
故
(
ゆえ
)
に人間を観れば、大体その背後のものが判る。下らない人格の所有者に、立派な神霊の感応するようなことは絶対にない。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
それ
故
(
ゆえ
)
彼の行為が、ある程度を越えない限りに於ては、彼の好意を、単なる友人としての好意を、受けるに
吝
(
やぶさか
)
でなかったのである。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
初めには男の人に寝てもらうとよいとの事
故
(
ゆえ
)
、今晩はぜひとも寝てはくれまいかとの依頼でした、私は何心なくそれは結構な事で
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
「な、な、な何が
故
(
ゆえ
)
に、何が故に、君たちはど、ど、動物を食わないと云いながら、ひ、ひ、ひ、羊、羊の毛のシャッポをかぶるか。」
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
およそ
深刻摯実
(
しんこくしじつ
)
なる魂の所有者は皆そうであった。
故
(
ゆえ
)
に十章におけるヨブと九章前半における彼とは、全然その心の姿を異にしている。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
かう申せばまた
誤解呼
(
ごかいよば
)
はりをするかもしれねど、簡単に誤解呼はりをする以上の事実があるのを僕は
確
(
たし
)
かな人から聞いたの
故
(
ゆえ
)
だめに候。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
どうでもよいわ、萩原の死骸は
外
(
ほか
)
に菩提所も有るだろうが、飯島の娘お露とは深い因縁がある事
故
(
ゆえ
)
、あれの墓に並べて埋めて石塔を
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
何
(
なん
)
が
故
(
ゆえ
)
に
私宅教授
(
したくけふじゆ
)
の口がありても
錢取道
(
ぜにとるみち
)
を
考
(
かんが
)
へず、
下宿屋
(
げしゆくや
)
の
婢
(
ひ
)
に、
何
(
なに
)
を
爲
(
し
)
て
居
(
ゐ
)
ると
問
(
と
)
はれて
考
(
かんが
)
へる
事
(
こと
)
を
爲
(
し
)
て
居
(
ゐ
)
ると
驚
(
おどろ
)
かしたるや。
「罪と罰」の殺人罪
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
蓋
(
けだ
)
し論者のごとき当時の
事情
(
じじょう
)
を
詳
(
つまびら
)
かにせず、
軽々
(
けいけい
)
他人の言に
依
(
よっ
)
て事を
論断
(
ろんだん
)
したるが
故
(
ゆえ
)
にその論の全く事実に
反
(
はん
)
するも
無理
(
むり
)
ならず。
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
ぼくはものを感じるのは、まあ
人並
(
ひとなみ
)
だろうと、思っていますが、
憶
(
おぼ
)
えるのは、
面倒臭
(
めんどうくさ
)
いと考える
故
(
ゆえ
)
もあって、自信がありません。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「御覧下さいまし。算哲博士のお描きになったこれが、黒死館の邪霊なのでございます。栄光は
故
(
ゆえ
)
なくして放たれたのではございません」
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
一瞥
(
いちべつ
)
いたすに、
士規
(
しき
)
整然として、以前の世評とは打って変った御家政ぶり、近年の隆々たるお勢いも、
故
(
ゆえ
)
あるかなと、思いあたってござる
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
拝啓学位辞退の儀は既に発令後の申出にかかる
故
(
ゆえ
)
、
小生
(
しょうせい
)
の希望通り取計らいかぬる
旨
(
むね
)
の御返事を
領
(
りょう
)
し、
再応
(
さいおう
)
の御答を致します。
博士問題の成行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それ
故
(
ゆえ
)
遊ぶ度々の
玉祝儀
(
ぎょくしゅうぎ
)
待合の席料から盆暮の
物入
(
ものいり
)
までを
算盤
(
そろばん
)
にかけて見て、この先何箇月間の勘定を一時に支払うと見れば
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「何と言いやる、今まで水の底にかくれていた当家の主人の
亡骸
(
なきがら
)
が、このたび、見つかった
故
(
ゆえ
)
に、それを引取って参ったとな」
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
故
(
ゆえ
)
に本職は、各人が此辺の事情を理解し、指揮者の命に
随
(
したが
)
い、官民一体となって此の重大事に善処せんことを望むものである。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
真志屋五郎作は神田
新石町
(
しんこくちょう
)
の菓子商であった。
水戸家
(
みとけ
)
の
賄方
(
まかないかた
)
を勤めた家で、
或
(
ある
)
時代から
故
(
ゆえ
)
あって
世禄
(
せいろく
)
三百俵を給せられていた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
所
(
ところ
)
で旅行中の費用は
都
(
すべ
)
て官費であるから、政府から
請取
(
うけとっ
)
た金は皆手元に残る
故
(
ゆえ
)
、その金を
以
(
もっ
)
て今度こそは有らん限りの原書を
買
(
かっ
)
て来ました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
此の公判の模様に就ては、
之亦
(
これまた
)
新聞紙がこぞって書き立てた事
故
(
ゆえ
)
、みなさん十分御承知のことと思いますから、詳しくはここに述べますまい。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
余一日、家童、門生の業を
抛
(
なげう
)
ち学を廃するを見、その
故
(
ゆえ
)
を問う。皆
云
(
い
)
う、今日日曜日なり、これをもってかくのごとしと。
日曜日之説
(新字新仮名)
/
柏原孝章
(著)
ローマの昔、カラカラ皇帝
故
(
ゆえ
)
なくして弟ゲータを殺し、直ちに当時の大法律家パピニアーヌス(Papinianus)を召して、命じて曰く
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
それ
故
(
ゆえ
)
に、
結局
(
けっきょく
)
へとへとになって、
揚句
(
あげく
)
は
酒場
(
さかば
)
で
泥酔
(
でいすい
)
し、わずかに
鬱
(
うつ
)
を
晴
(
は
)
らしたのです。
彼
(
かれ
)
は、
芸術
(
げいじゅつ
)
を
商品
(
しょうひん
)
に
堕落
(
だらく
)
さしたやからをも
憤
(
いきどお
)
りました。
風はささやく
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
之に遇えば物に害あり。
故
(
ゆえ
)
に
大厲
(
だいれい
)
門に入りて
晋景
(
しんけい
)
歿
(
ぼっ
)
し、
妖豕
(
ようし
)
野
(
の
)
に
啼
(
な
)
いて
斉襄
(
せいじょう
)
殂
(
そ
)
す。
禍
(
か
)
を
降
(
くだ
)
し
妖
(
よう
)
をなし、
災
(
さい
)
を
興
(
おこ
)
し
薜
(
せつ
)
をなす。
牡丹灯籠 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
故
(
ゆえ
)
に日本内地に於ける石油の秘密貯蔵個所を発見して、万一の際これを爆破するだけの用意を整えおけば、それだけにても戦闘準備は十分なり。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
故
(
ゆえ
)
もなく自分の好きな人物に永久に怒りを感じさせるということはこの土地を選んだ最初の私の目的に反するのである。
睡蓮
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
人々
(
ひとびと
)
に
心
(
こころ
)
せよ、それは
汝
(
なんじ
)
らを
衆議所
(
しゅうぎしょ
)
に
付
(
わた
)
し、
会堂
(
かいどう
)
にて
鞭
(
むちう
)
たん。また
汝等
(
なんじら
)
わが
故
(
ゆえ
)
によりて、
司
(
つかさ
)
たち
王
(
おう
)
たちの
前
(
まえ
)
に
曳
(
ひ
)
かれん。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
斯く入り口又は
窓
(
まど
)
を
隔
(
へだ
)
てて品物の
遣
(
や
)
り
取
(
と
)
りを
爲
(
な
)
せしは
同類
(
どうるい
)
の間ならざるが
故
(
ゆえ
)
ならん。コロボックル
同志
(
どうし
)
ならば
親
(
した
)
しく相對して
事
(
こと
)
を
辨
(
べん
)
ぜしなるべし。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
粗末なおでんすら、出来たて
故
(
ゆえ
)
に私たちの味覚をよろこばすのであるから、お座敷おでんといえる「なべ料理」は、相当の満足を与えるに相違ない。
鍋料理の話
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
おときは全く理解出来ないように云ったが、心の中では夫の何事にも細かい観察を忘れないで、
面白味
(
おもしろみ
)
を見出すのは広い心の
故
(
ゆえ
)
だと思って感心した。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
人
(
ひと
)
と
交際
(
こうさい
)
することは
彼
(
かれ
)
は
至
(
いた
)
って
好
(
この
)
んでいたが、その
神経質
(
しんけいしつ
)
な、
刺激
(
しげき
)
され
易
(
やす
)
い
性質
(
せいしつ
)
なるが
故
(
ゆえ
)
に、
自
(
みずか
)
ら
務
(
つと
)
めて
誰
(
たれ
)
とも
交際
(
こうさい
)
せず、
随
(
したがっ
)
てまた
親友
(
しんゆう
)
をも
持
(
も
)
たぬ。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
わけてもその壮麗なるが
故
(
ゆえ
)
にジュピターと名づけられた「交響曲第四一番ハ長調K五五一」を、ワルターの指揮する
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
殊更
憂
(
うれい
)
を含む
工合
(
ぐあい
)
凄味
(
すごみ
)
あるに
総毛立
(
そうけだち
)
ながら
尚
(
なお
)
能
(
よ
)
くそこら
見廻
(
みまわ
)
せば、床に
掛
(
かけ
)
られたる一軸
誰
(
たれ
)
あろうおまえの姿絵
故
(
ゆえ
)
少し
妬
(
ねた
)
くなって一念の
無明
(
むみょう
)
萌
(
きざ
)
す途端
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
故
(
ゆえ
)
に余輩は彼を知るに於て、彼の日記を通して彼の過去を知るは
勿論
(
もちろん
)
、馬島に於ける彼が日常をも推測せざる
可
(
べか
)
らず。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
元来、久政は長政十六歳のとき、家老達から隠居をすすめられて、長政に家督を譲った位の男
故
(
ゆえ
)
、あまり利口でなく、旧弊で頑固であったに違いない。
姉川合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
月たらずであるのに生れて二三時間手当なしであった
故
(
ゆえ
)
。寒気のためによわったのであろうと思われた。それから一時間半ばかりたって遂に絶命した。
牛舎の日記
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
藤原
(
ふじわら
)
氏や将軍家にとって何がために天皇制が必要であったか。何が
故
(
ゆえ
)
に彼等自身が最高の主権を握らなかったか。
堕落論〔続堕落論〕
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
京都で
富小路家
(
とみのこうじけ
)
に
侍奉公
(
さむらいぼうこう
)
していたが、
故
(
ゆえ
)
あって故郷に帰り、大森通仙と名を更えて、怪しげな医師になっていた。
傾城買虎之巻
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
「
昨夜
(
ゆうべ
)
の事件について御意見を伺いたくてきたが、お留守
故
(
ゆえ
)
帰る」と、置き手紙を残して事務所を立ち去った。
黒襟飾組の魔手
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
己
(
おのれ
)
の
珠
(
たま
)
に
非
(
あら
)
ざることを
惧
(
おそ
)
れるが
故
(
ゆえ
)
に、
敢
(
あえ
)
て刻苦して
磨
(
みが
)
こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、
碌々
(
ろくろく
)
として
瓦
(
かわら
)
に伍することも出来なかった。
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
松本市は古い町
故
(
ゆえ
)
、色々の手仕事が
為
(
な
)
されたでありましょうが、今作るもので私の眼に止まったのは竹細工でした。寒い国のこととて細い
篠竹
(
しのだけ
)
を使います。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
それ
故
(
ゆえ
)
に鮮しい肉は味がないので牛ならば今頃は四、五日目鳥ならば二、三日目になりますとエキス分が肉の中に分解されて味も好く肉も柔くなりますが
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
また
西沢李叟
(
にしざわりそう
)
は江戸の化粧に関して「
上方
(
かみがた
)
の如く
白粉
(
おしろい
)
べたべたと塗る事なく、至つて薄く目立たぬをよしとす、元来女は男めきたる気性ある所の
故
(
ゆえ
)
なるべし」
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
“故”の意味
《名詞》
(ふる)使い古したもの。おさがり。
(ふる)年を経たこと。
(ふる)以前のもの。
(ゆえ、体言や活用語の連体形などに付いて用いられる)理由。わけ。特別な事情。
(ゆえ)由緒。
(ゆえ)おもむき。
(ゆえ)縁故。
(ゆえ)故障。
《形容動詞》
(ことさら)故意に。わざと。わざわざ。
(ことさら)とりたてて。とりわけ。特に。格別。
(出典:Wiktionary)
故
常用漢字
小5
部首:⽁
9画
“故”を含む語句
何故
故郷
事故
故障
故意
其故
縁故
故々
故家
所故
反故
故里
故事
故国
故人
物故
故主
何故々々
故買
故國
...