おとゝ)” の例文
まき「誠にお気の毒さまで、毎度おみ足を運ばせて済みませんが、御存じの通り母が眼病でございまして、おとゝも車をいて稼ぎますが」
坂井さかゐふよりも、坂井さかゐ所謂いはゆる冒險者アドヹンチユアラーとして宗助そうすけみゝひゞいたそのおとゝと、そのおとゝ友達ともだちとしてかれむねさわがした安井やすゐ消息せうそくにかゝつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
れはうもおまへさんのこと他人たにんのやうにおもはれぬはういふものであらう、おきやうさんおまへおとゝといふをつたこといのかとはれて
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かくてのちおとゝ別家べつけする時家の物二ツにわかちて弟にあたへんと母のいひしに、弟は家財かざいのぞまず光る石を持去もちさらんといふ。
つかんで十兵衞が其の儘息はたえにけり長庵刀の血をぬぐひてさやに納め懷中くわいちう胴卷どうまきを取だし四十二兩はふくかみおとゝの身には死神しにがみおのれがどうにしつかりくゝり雨もやまぬにからかさ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大佐はニヤリと浜子を一瞥しつ「が、閣下、山木は閣下に比ぶれば、だ十幾つと云ふおとゝださうですよ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
(おみのは呆れた體にておとゝの顏をぢつと眺めてゐたりしが、やがてわつと地に泣き伏す。)
佐々木高綱 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
いだして娘子むすめの手を引かんとすれど子供はスネてか又は脊に負はれしおとゝを羨みてや兩手を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
てゝせり呉服ごふくるかげもなかりしが六間間口ろくけんまぐちくろぬり土藏どざうときのまに身代しんだいたちあがりてをとこ二人ふたりうちあに無論むろんいへ相續あととりおとゝには母方はゝかたたえたるせい
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
竹「何卒どうぞしておとゝに会いたい、年歯としはもいかない事であるから、また梅三郎にあざむかれて、途中で不慮の事でも有ってはならん」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「えゝ物數奇ものずきぎますね、蒙古刀もうこたうは」とこたへた。「ところおとゝ野郎やらうそんな玩具おもちやつてては、兄貴あにき籠絡ろうらくするつもりだからこまりものぢやありませんか」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かくてのちおとゝ別家べつけする時家の物二ツにわかちて弟にあたへんと母のいひしに、弟は家財かざいのぞまず光る石を持去もちさらんといふ。
かためて引取りけり夫より役人方一同退散たいさんに付大岡殿も評定所より歸宅きたくされ即刻定廻り同心どうしんよばれて小柳町一丁目に住居ぢうきよ致す切首多兵衞并に同居のおとゝ願山と申すそう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
梅子はいとも莞爾にこやかに「剛さん、可笑をかしいのねエ、私が何時いつ貴郎あなたを信用しなかつたの、私は貴郎の様な学問も品性も優等なるおとゝのあることを、お友達にまで誇つて居る程ぢやありませんか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
わたし一人子ひとりご同胞きやうだいなしだからおとゝにもいもとにもつたこと一度いちどいとふ、左樣さうかなあ、それでは矢張やつぱりなんでもいのだらう
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
坂井さかゐ一昨日をとゝひばん自分じぶんおとゝひやうして、一口ひとくちに「冒險者アドヹンチユアラー」とつた、そのおんいま宗助そうすけみゝたかひゞわたつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おとゝわたくしと内職を致して稼ぎましても勝手が知れませんから、何をしても損ばかりいたし、お恥かしい事でございますが、お米さえも買う事が出来ません所から
申すやと有しかば雲源うんげんまつたいつはりは申上ず私し盜賊たうぞくまぎれ之なく候御仕置おしおき仰付おほせつけらるべしと云に大岡殿おほをかどのいや彼の吉三郎は其方と兄弟にあらずや人相にんさう恰好かつかう音聲おんせいまでもよく似たりなんぢおとゝ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
梅子は、急ぎておとゝさへぎりつ「剛さん、貴郎あなたは何をおつしやるんです」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
合點がいつたら何事も胸に納めて知らぬ顏に今夜は歸つて、今まで通りつゝしんで世を送つて呉れ、お前が口に出さんとても親も察しるおとゝも察しる
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
呼出しになりました時に、五郎治のおとゝ四郎治がまかり出ます事になりお縁側の処へ薄縁うすべりを敷き、其の上に遠山權六が坐って居ります。お目付は正面に居られます。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
代助は二人ふたりの子供に大変人望がある。あによめにもなりある。あにには、あるんだか、ないんだかわからない。たまあにおとゝが顔を合せると、たゞ浮世うきよ話をする。双方とも普通の顔で、大いに平気でつてゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
合點がてんがいつたら何事なにごとむねおさめて、らぬかほ今夜こんやかへつて、いままでどほりつゝつしんでおくつてれ、おまへくちさんとてもおやさつしるおとゝさつしる
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
催促しなければい気になってこれまで返金に及ばぬから此方こっちおとゝが抱いて寝るは当然ではないか
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もう/\退けてるにはおよびません、身分みぶんなんであらうがちゝもあるはゝもある、としはゆかねど亥之助いのすけといふおとゝもあればそのやうなかにじつとしてるにはおよばぬこと
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
承知致しませんでお腹立はらだちもございましょうが、まさか母やおとゝの居ります前で結構な事でございますから、何卒どうぞ妾にお世話を願いますとは伯母さん、申されませんでしたが
うしろの土手どて自然生しぜんばへおとゝ亥之いのをつて、びんにさしたるすゝきまね手振てぶりもあはれなるなり。
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
目付「神原五郎治だいおとゝ四郎治、遠山權六役目の儀ゆえ言葉を改めますが、左様に心得ませえ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ねえさんとばるれば三すけおとゝのやうに可愛かあゆく、此處こゝ此處こゝへとんでかほのぞいて、さぞとゝさんが病氣びやうきさびしくらかろ、お正月せうぐわつきにればあねなんつてげますぞえ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
年のきません二人の子供は家の潰れる訳ではないが、白島村の伯父多右衞門たえもんが引取り、伯父の手許てもとで十五ヶ年の間養育を受けて成人致しまして、姉は二十二歳おとゝは十七で、小造こづくり華者きゃしゃな男で
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)