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嬉
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うれ
ふりがな文庫
“
嬉
(
うれ
)” の例文
三人はこの頃の天気を恐れてみんな
護謨合羽
(
ゴムがっぱ
)
を用意していた。けれどもそれがいざ役に立つとなるとけっして
嬉
(
うれ
)
しい顔はしなかった。
初秋の一日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
雪
(
ゆき
)
の
中
(
なか
)
を
此
(
こ
)
の
紅鯛
(
べにだひ
)
綺麗
(
きれい
)
なり。
此
(
こ
)
のお
買初
(
かひぞ
)
めの、
雪
(
ゆき
)
の
眞夜中
(
まよなか
)
、うつくしき
灯
(
ひ
)
に、
新版
(
しんぱん
)
の
繪草紙
(
ゑざうし
)
を
母
(
はゝ
)
に
買
(
か
)
つてもらひし
嬉
(
うれ
)
しさ、
忘
(
わす
)
れ
難
(
がた
)
し。
寸情風土記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ことしは
芳之助
(
よしのすけ
)
もはや
廿歳
(
はたち
)
今
(
いま
)
一兩年
(
いちりやうねん
)
經
(
へ
)
たる
上
(
うへ
)
は
公
(
おほやけ
)
に
夫
(
つま
)
とよび
妻
(
つま
)
と
呼
(
よ
)
ばるゝ
身
(
み
)
ぞと
想
(
おも
)
へば
嬉
(
うれ
)
しさに
胸
(
むね
)
をどりて
友達
(
ともだち
)
の
嬲
(
なぶり
)
ごとも
恥
(
はづ
)
かしく
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
理助は起きあがって
嬉
(
うれ
)
しさうに笑って野原の方へ下りはじめました。私も包みを持ってうれしくて何べんも「ホウ。」と叫びました。
谷
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
大女がそこにあらはれるが早いか、子供たちはみんな走つてそのそばへ行くのが、ちやうどお母さんでも来たやうに、
嬉
(
うれ
)
しさうです。
虹猫の大女退治
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
▼ もっと見る
私
(
わたし
)
の長い
寫眞物語
(
しやしんものかた
)
りのペエジにも
悲喜
(
ひき
)
こも/″\の出來事が
繰
(
くり
)
返されたが、あの
刹那
(
せつな
)
にまさる
嬉
(
うれ
)
しさがもう
再
(
ふたゝ
)
びあらうとは
思
(
おも
)
へない。
写真と思ひ出:――私の写真修行――
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
なんとも言えないほど
嬉
(
うれ
)
しかったことには、行になって並んでいる数字のようなものが、ところどころに
斑点
(
はんてん
)
になって見えるんだね。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
と云いながら、歩いて見たり、立ち止って見たり、砂の上へぐっと伸ばして見たりして、自分でもその
恰好
(
かっこう
)
を
嬉
(
うれ
)
しそうに眺めました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼らだけがその宝を見ることができた。少なくとも彼らはそう信じて、二人だけの小さな秘密に
嬉
(
うれ
)
しくて、たがいに
微笑
(
ほほえ
)
みかわした。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
かの
温
(
あたたか
)
い
嬉
(
うれ
)
しい愛情は、単に女性特有の自然の発展で、美しく見えた眼の表情も、やさしく感じられた態度も
都
(
すべ
)
て無意識で、無意味で
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
私はその志を
嬉
(
うれ
)
しくは受けるが、この書を読まれるならば大方の誤解は解け去るであろう。私は宗教の真理に
懶惰
(
らんだ
)
であったのではない。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
読みて
大尉
(
たいゐ
)
の
壮行
(
さうかう
)
と
予
(
われ
)
も
共
(
とも
)
にするの感あり、
其
(
そ
)
は
此日
(
このひ
)
より
後
(
のち
)
の
事
(
こと
)
にして、
予
(
よ
)
は
此日
(
このひ
)
只一人
(
たゞひとり
)
嬉
(
うれ
)
しくて、ボンヤリとなり、社員にも
辞
(
じ
)
せず
隅田の春
(新字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
案ずるより
産
(
う
)
むが安い。さすがの竜之助もその心置きなき主人の気質がしのばれて、この時ばかりは涙のこぼれるほど
嬉
(
うれ
)
しかった。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
悟空
(
ごくう
)
の身体の部分部分は——目も耳も口も脚も手も——みんないつも
嬉
(
うれ
)
しくて
堪
(
たま
)
らないらしい。生き生きとし、ピチピチしている。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
御見物のお嬢様坊ちゃまがた、わたしはまあ何と言って皆様にお礼を申して
好
(
い
)
いやら、あんまり
嬉
(
うれ
)
しくて、申上げる言葉も知りません。
春
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
公園をさまよう若者達が「木馬館のラッパが、馬鹿によく響くではないか。あのラッパ吹き
奴
(
め
)
、きっと
嬉
(
うれ
)
しいことでもあるんだよ」
木馬は廻る
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
『
譽
(
ほ
)
められても
嬉
(
うれ
)
しくはないぞ。
玄竹
(
げんちく
)
、それより
何
(
なに
)
か
面白
(
おもしろ
)
い
話
(
はなし
)
でもせんか。』と、
但馬守
(
たじまのかみ
)
の
顏
(
かほ
)
には、どうも
冴
(
さ
)
え
切
(
き
)
らぬ
色
(
いろ
)
があつた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
父と下町へ行くのはいつも私の楽しみにして居たことで、此日もかういはれると
嬉
(
うれ
)
しくて
堪
(
たま
)
らず、父の手に
引
(
ひか
)
れてイソ/\
出
(
い
)
で
行升
(
ゆきまし
)
た。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
「わたくしとても何気ない朝の
麗
(
うる
)
わしさには、こころから
嬉
(
うれ
)
しくぞんじています。貞時さまのお
咳
(
せき
)
のこえまで覚えましてございます。」
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
はじめて弁当をもってきた末弟は、いつも
嬉
(
うれ
)
しそうにしている顔をよけいニコニコさせて、兄貴のまえにまるい
膝
(
ひざ
)
を
揃
(
そろ
)
えて坐った。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
おとよは家を出るまでは出るのが
嬉
(
うれ
)
しく、家を出てしばらくは出たのが嬉しかったが、今は省作を思うよりほかに何のことも頭にない。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
こんな悪たれを胸の中に沸き立たせながら、小走りになってむす子を追いかけて行くとき、かの女の
焦
(
いら
)
だたしくも不思議に
嬉
(
うれ
)
しい気持。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「そうかね」と病人は云ったが、何事に
依
(
よ
)
らず
友達
(
ともだち
)
の言う事を
猜疑
(
さいぎ
)
の耳を持って聞く癖が付いているので、
嬉
(
うれ
)
しくも思わなかった。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
婆さんの前では小娘の様に
嬉
(
うれ
)
し
相
(
さう
)
な
顔附
(
かほつき
)
をして
物言
(
ものいひ
)
も甘えたやうな調子である。そして一日に幾
度
(
ど
)
となく額や手に接吻を交換して居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
カピ長
何
(
なん
)
ぢゃ、
何
(
なん
)
ぢゃ!
小理窟屋
(
こりくつや
)
が!
何
(
なん
)
ぢゃそれは? 「
名譽
(
めいよ
)
ぢゃ」、「
嬉
(
うれ
)
しいと
思
(
おも
)
ひまする」、「
嬉
(
うれ
)
しいと
思
(
おも
)
ひませぬ」。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
助けられしは
嬉
(
うれ
)
しく思ひしが是また同じく
勾引
(
かどはかし
)
か
盜人
(
どろばう
)
にてあるべし如何して
能
(
よか
)
らんやと
薄氣味惡
(
うすきみわる
)
く
胡亂々々
(
うろ/\
)
するを見て半四郎は是を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
八太郎はさう
独語
(
ひとりごと
)
を
云
(
い
)
つて、二匹の子犬を拾ひ上げて、懐の中に入れてやりました。子犬は
温
(
あたたか
)
い懐の中で、
嬉
(
うれ
)
しがつて鼻を鳴らしました。
犬の八公
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
八ツぐらいの時であったが、母は私に手を焼き、お前は私の子供ではない、
貰
(
もら
)
い
子
(
ご
)
だと言った。そのときの私の
嬉
(
うれ
)
しかったこと。
石の思い
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
或る日、私の父が、私のために小さな竜を彫った
真鍮
(
しんちゅう
)
の
迷子札
(
まいごふだ
)
を手ずからこしらえてくれた。それが私にはいかにも
嬉
(
うれ
)
しかったのだろう。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
行幸の供にまかる人を送りては、「聞くだに
嬉
(
うれ
)
し」と詠み、雪の頃旅立つ人を送りては、「用心してなだれに
逢
(
あ
)
ふな」と詠めり。
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
「今日」と、お宮は
嬉
(
うれ
)
しさを包みきれぬように
微笑
(
わら
)
い徴笑い「これから?
遅
(
おそ
)
かなくって?」行きとうもあるし、
躊躇
(
ためら
)
うようにもいった。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
今までそんな形の本は見たことがないのですから、
嬉
(
うれ
)
しくってたまりません。「わたくしに解るかしら」と、おかっぱ頭をかしげました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
毎年の元旦に玄関で
平突張
(
へいつくば
)
らせられた
忌々
(
いまいま
)
しさの
腹慰
(
はらい
)
せが
漸
(
やっ
)
とこさと出来て、
溜飲
(
りゅういん
)
が
下
(
さが
)
ったようなイイ気持がしたと
嬉
(
うれ
)
しがった。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
燕
(
つばめ
)
は
嬉
(
うれ
)
しさうに
父
(
とう
)
さんを
見
(
み
)
て
尻尾
(
しつぽ
)
の
羽
(
はね
)
を
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふり
)
ながら、
遠
(
とほ
)
い
空
(
そら
)
から
漸
(
やうや
)
くこの
山
(
やま
)
の
中
(
なか
)
へ
着
(
つ
)
いたといふ
話
(
はなし
)
でもするらしいのでした。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
昨日の御訪問、なんとも
嬉
(
うれ
)
しく存じました。その折には、また僕には花束。竹さんとマア坊には赤い小さな英語の辞典一冊ずつのお土産。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
此時
(
このとき
)
の
嬉
(
うれ
)
しさ!
見
(
み
)
ると一
尺
(
しやく
)
位
(
ぐら
)
いの
鰺
(
あぢ
)
で、
巨大
(
きよだい
)
なる
魚群
(
ぎよぐん
)
に
追
(
お
)
はれた
爲
(
ため
)
に、
偶然
(
ぐうぜん
)
にも
艇中
(
ていちう
)
に
飛込
(
とびこ
)
んだのである。
天
(
てん
)
の
賜
(
たまもの
)
と
私
(
わたくし
)
は
急
(
いそ
)
ぎ
取上
(
とりあ
)
げた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
柔
(
やさ
)
しく
嬉
(
うれ
)
しく勇ましき丈夫の心をも聴くことを得たる今は、又た何をか思ひ残さん、いざ、立ち帰りなんか、——帰りとも無し
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「いや。……」と私は頭に手をやり乍ら、それでも晴々した気持になつて、
揃
(
そろ
)
つてゐる
皆
(
みんな
)
の顔を見渡し乍ら、
嬉
(
うれ
)
しさうに
其処
(
そこ
)
の座についた。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
紙製玩具の、電車の
車掌
(
しゃしょう
)
さんの
鞄
(
かばん
)
を買ってくれとせがむのである。それを肩にかけると非常に御機嫌で、切符パンチを
嬉
(
うれ
)
しそうに使用する。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
それから両手を高く上げ、鳥の飛ぶやうな形をして、
嬉
(
うれ
)
しさうに叫びながら、町の通りを一散に走り出した。(『文藝』1937年1月号)
田舎の時計他十二篇
(新字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「そなたが、江戸に下られた
噂
(
うわさ
)
は、
瓦版
(
かわらばん
)
でも読んでいた。いやもう、大変な評判で、
嬉
(
うれ
)
しく思う。さあこれへ進まれるがよい」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
躊躇
(
ためら
)
っていたらしい静子が、信一郎の顔を見ると、
艶然
(
にっこり
)
と笑って、はち切れそうな
嬉
(
うれ
)
しさを抑えて、いそ/\と
駈
(
か
)
け降りて来るのであった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ところがいちばん小さい男の子は、心から
嬉
(
うれ
)
しそうにうなずいてみせました。そして、この子なりの言葉で大声に
叫
(
さけ
)
びました。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
嬉
(
うれ
)
しそうに人のそわつくを見るに付け聞くに付け、またしても
昨日
(
きのう
)
の我が
憶出
(
おもいいだ
)
されて、
五月雨
(
さみだれ
)
頃の空と湿める、嘆息もする、面白くも無い。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
『お
別
(
わか
)
れしてから
随分
(
ずいぶん
)
長
(
なが
)
い
歳月
(
としつき
)
を
経
(
へ
)
ましたが、
図
(
はか
)
らずも
今
(
いま
)
ここでお
目
(
め
)
にかかることができまして、
心
(
こころ
)
から
嬉
(
うれ
)
しうございます。』
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
そして読みおわってから庸三が二三批評の言葉を口にすると、彼女は「どうもすみません」と言って、
嬉
(
うれ
)
しそうにお辞儀をするのであった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
たいていの子どもには
嬉
(
うれ
)
しくて
止
(
や
)
められず、大きくなってからも正月が来るたびに、いつも思い出すたのしい遊びであった。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「
私
(
わたし
)
、すつかり、そんなこと忘れてゐました。」これをきいて、小ぐまさんはお猫さんが、おこつてゐないので、どんなに
嬉
(
うれ
)
しかつたでせう。
小ぐまさん の かんがへちがひ
(新字旧仮名)
/
村山籌子
(著)
わたしね、あなたがここまで来てくださらないでも、陰であなたの声を聞いたり足音を聞いたりしているだけでも
嬉
(
うれ
)
しいのよ
宝石の序曲
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
飾磨屋の事だから、定めて祝儀もはずむのだろうに、
嬉
(
うれ
)
しそうには見えない。「勝手な馬鹿をするが好い。
己
(
おれ
)
は舟さえ漕いでいれば済むのだ」
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
“嬉”の解説
嬉(うれし)は、大阪府富田林市南東部の一地域。同市域の石川右岸、金胎寺山西麓にあたる(富田林市嬉)。
(出典:Wikipedia)
嬉
漢検準1級
部首:⼥
15画
“嬉”を含む語句
嬉々
嬉敷
嬉笑
嬉戯
嬉遊笑覧
嬉遊
心嬉
嬉涙
嬉野
嬉泣
御嬉
嬉気
游嬉
陳嬉
相嬉
遊嬉
佚楽戯嬉
嬉貌
嬉色
嬉石
...