奇妙きみょう)” の例文
もっともやま一つせば、ゆきらないのに、こちらは、ゆきが四しゃくも五しゃくもあるのだから、まったく自然しぜん現象げんしょうばかりは奇妙きみょうなものだ。
風雨の晩の小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
子家鴨こあひるはみんながれだって、そらたかくだんだんとのぼってくのを一心いっしんているうち、奇妙きみょう心持こころもちむねがいっぱいになってきました。
しかし奇妙きみょうなことには、重吉は目から鼻へけるほどの利口者りこうものでしたが、六兵衛は反対はんたいに何をやらせても、のろまで馬鹿ばかでした。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ぼくは其処そこのところが、奇妙きみょうに好きで、誰もいないのを幸い、何遍も何遍もかけ直しては、面をたれて、歌をきいていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ふしぎや、小文治こぶんじやりも民部の太刀も、その奇妙きみょうかまえを、どうしても破ることができない。ところへ、同時にかけあつまったまえの三人。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百姓ひゃくしょうはふしぎにおもって、そっとそばにってみますと、それは奇妙きみょうかおをして、かみ逆立さかだった、からだな、子供こどものようなかたちのものでした。
雷のさずけもの (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
『これは奇妙きみょう妄想もうぞうをしたものだ。』と、院長いんちょうおもわず微笑びしょうする。『では貴方あなたわたくし探偵たんていだと想像そうぞうされたのですな。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
父はわたしに、奇妙きみょう影響力えいきょうりょくを持っていたし、そう言えば、たがいの関係にしたところで、やはり奇妙なものだった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
それは奇妙きみょうな音色をあげつつ、かわっていった。と、二人はにわかむなさきがわるくなって、はきそうになった。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「それが奇妙きみょうで、学校の門を出るとすぐに題が心に浮んで、わずかの道の中ですっかり姿すがたまとまりました。」
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ひさしぶりでかしらはうつくしいこころになりました。これはちょうど、あかまみれのきたな着物きものを、きゅうににきせかえられたように、奇妙きみょうなぐあいでありました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
わたくしなにやら奇妙きみょうかんじ……かねかんがえていたのとはまるきりちがった、なにやらしみじみとせぬ、なにやら物足ものたりないかんじに、はっとおどろかされたのでございます……。
ところが、奇妙きみょうな男がやってきてからというものは、おかみさんも主人しゅじんのホールもすっかりちつきをなくしてしまい、ともすればくらい気もちにおそわれるのだった。
その顔は「面」のように作られ、奇妙きみょうに清らかな「死相」を感じさせる。天空の彼方かなたから吹き来たる風が、衣裳のたもとや、手にした竹の枝葉をかすかに揺らしている。……
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
真珠しんじゅの眼玉を持ってる小鳥のことだの、空いっぱいにまっ赤な花を開いた大きな草のことだの、奇妙きみょうな声で歌いながら踊る虫のことだの、五色の息を吐く怪物のことだの
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
彼もまた死人を見たいと云う、人間に特有な奇妙きみょうな、好奇心にとらわれてしまった。彼は幾何いくばくかの強力ごうりきをもって、群衆の層の中へと、自分の身を割込わりこませて行ったのである。
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
富士男はトンネルの奥で、しきりにかべをほっていると、どこやらに奇妙きみょうなうなり声をきいた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
そうした奇妙きみょうな日本語は、時にしばしば、家庭内のユーモラスな流行語となったであろう。
私自身も初めてこの村へ来た当時は、何度も道に迷ってしまった位ではあったし、それにまたそんなことからして一人の少女と私との奇妙きみょうな近づきが始まったりしたので、私は
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
この一週間は、塾生たちにとっては、まったく奇妙きみょうな感じのする一週間だった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
くもっていた空は少しずつ晴れまを見せ、ま昼の太陽は海の上にぎらぎらしていた。二階はまぶしいほどのあかるさなのに、山に面した北窓のほうは今にも降ってきそうな、奇妙きみょう空模様そらもようである。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
父は、奇妙きみょうな声で、風琴を鳴らしながら
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
その奇妙きみょうな岩の名の由来は分らなかった。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
奇妙きみょうな形の マントをひいて
魔法の笛 (新字新仮名) / ロバート・ブラウニング(著)
この奇妙きみょうなものは、バケツのなかで、たがいにしくらまんじゅうをして、バケツのまわりにあたまをつけています。
真昼のお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
いやらん、もうぬまで、ズボンや、チョッキ、長靴ながぐつにはよういのかもれん。しかし奇妙きみょう成行なりゆきさ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
と、探偵は歯をくいしばって、博士の手のひらにのっている奇妙きみょう幾何模型きかもけいみたいなものを見すえた。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
日がたつにつれて、ジナイーダは、いよいよますます奇妙きみょうな、えたいの知れないむすめになっていった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ところが、きのうあたりから、あの蛾次郎がじろうが、団子だんご焼餅やきもちなどをたずさえて、チョクチョク白旗の森にすがたを見せ、竹童のごきげんとりをやりだしたのも奇妙きみょうである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時間じかんあまりもトーマスはベンチにすわって、こんな奇妙きみょうなことをくりかえしてやっていた。
ややもすれば年老としおいて女の役の無くなるころのぞむと奇妙きみょうにも心状こころ焦躁じれたり苛酷いらひどくなったりしたがるものであるから、この女もまたそれの時に臨んでいたせいででもあろうか
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
お察しの通りです。わたしはこいをしているのです。でもそれは奇妙きみょうな恋でございます。お聞きください。わたしと女とは小さい頭を総角あげまきにゆっているころから知りあっていました。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
あなたはおどろいたように顔をあげて、ぼくをみた、真面目まじめになった、あなたの顔が、月光に、青白く輝いていた。それは、童女のかおと、成熟した女の貌との混淆こんこうによる奇妙きみょう魅力みりょくでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
それはおもわず自分じぶんくるまなんぞのようみずなかげかけ、んでくみんなのほうむかってくびをさしべ、おおきなこえさけびますと、それはわれながらびっくりしたほど奇妙きみょうこえたのでした。
その姿すがたえませんが、大ぜいあつまって、なにかむしゃむしゃ、べたりんだりしている様子ようすです。そのうちにだんだん、そうぞうしくなってきて、奇妙きみょううたうたいながらおどしました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いつか、そのおんなひとは、自分じぶんて、とおくはなれている父親ちちおやのことをおもうといったが、これは、またなんという奇妙きみょうなことであろうと、おとこかんがえたのでした。
窓の下を通った男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人は、三角岳研究所の見えるところまで来たけれども、研究所の建物の奇妙きみょうな形を見ると、おそろしさが急にこみあげて来て、そっちへ廻って行くのはやめにした。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ちょうどその夜、わたしは奇妙きみょうおそろしいゆめをみた。わたしは、天井てんじょうの低い暗い部屋へ入って行くところだった。……と父が、鞭を手に仁王立におうだちになって、足をみ鳴らしていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「やア、奇妙きみょう奇妙」竹童はうれしさのあまり、手をたたき、踊りをおどって狂喜した。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或時あるとき徒然つれづれなるにまかせて、書物しょもつ明細めいさい目録もくろく編成へんせいし、書物しょもつにはふだを一々貼付はりつけたが、こんな機械的きかいてき単調たんちょう仕事しごとが、かえって何故なにゆえ奇妙きみょうかれ思想しそうろうして、興味きょうみをさええしめていた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
むろん、その事件じけんを調べたその土地の警察けいさつからである。奇妙きみょうな事件であった。
そうしたとき、奇妙きみょうに強く、想われるのはやはりあなたの面影おもかげでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
さっきからのさわぎに、少年たちは寝台をけって起き、奇妙きみょうな少女を見物していたのであった。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、熱心ねっしんふえいていますと、一つ一つのあなからるものは、かげかたちもないではなくて、たしかに、いろいろ奇妙きみょう姿すがたをした、一人ひとり一人ひとり人間にんげんであるようにおもわれました。
赤い船のお客 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その鞄の中から、赤いひもが二本ぶらぶらとれているのが、甚だ奇妙きみょうであったのと、その鞄が地面へつくと同時に、あたりが急にへんにくさくなったことが特記せらるべきだった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
くらい、よるのことであります。このとしとったおとこは、ランプのした仕事しごとをしていますと、きゅうにじっとしていたあほうどりばたきをして、奇妙きみょうこえをたてて、しつなかをかけまわりました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おや、機械人間が、ひとりでこっちへ歩いて来るぞ。これは奇妙きみょうだ」
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一つのバケツには、かにや、かめのはいっていました。のぞくと、むずむずとかさなりったり、ぶつぶつとあわをいています。の一つのバケツには、それこそ奇妙きみょうなものがはいっていました。
真昼のお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
どこからともなく、北国ほっこくに、奇妙きみょうおとこはいってきました。
薬売り (新字新仮名) / 小川未明(著)