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塊
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かたまり
ふりがな文庫
“
塊
(
かたまり
)” の例文
彼等は自分の
背後
(
うしろ
)
に岩石の崩れる音を聞いた。間もなく何か重たい、
塊
(
かたまり
)
のやうなものが、濕つた土にどしりと落ちたやうであつた。
鷲の巣
(旧字旧仮名)
/
ビョルンステェルネ・ビョルンソン
(著)
品川は青木に代ってそこを覗く勇気はなく、ごみだらけの板敷の隅っこに
蹲
(
うずくま
)
って、何かの黒い
塊
(
かたまり
)
みたいに、身動きもしないでいた。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「
熊
(
くま
)
さん、どうです、
今日
(
けふ
)
あたりは。
雪
(
ゆき
)
の
唄
(
うた
)
でもうたつておくれ。わしあ、
氷
(
こほり
)
の
塊
(
かたまり
)
にでもならなけりやいいがと
心配
(
しんぱい
)
でなんねえだ」
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
飯の
菜
(
さい
)
に
奴豆腐
(
やっこどうふ
)
を一丁食ったところが、その豆腐が腹へ
這入
(
はい
)
るや否や急に
石灰
(
いしばい
)
の
塊
(
かたまり
)
に変化して、胃の中を
塞
(
ふさ
)
いでいるような心持である。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
畫の中で岩石の重い
塊
(
かたまり
)
や、または大きな檞の木の瘤立つた幹が、黒々と濃く前景に描かれて、空色の丘や陽の照つてゐる地平線や
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
▼ もっと見る
そう云いながら、老人は勝平の身体を
半
(
なかば
)
抱き起すようにした。が、
巨
(
おお
)
きい身体は少しの弾力もなく石の
塊
(
かたまり
)
か何かのように重かった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
其間をトマムの
剰水
(
あまり
)
が
盆景
(
ぼんけい
)
の
千松島
(
ちまつしま
)
と云った様な
緑苔
(
こけ
)
の
塊
(
かたまり
)
を
洄
(
めぐ
)
って、流るゝとはなく唯
硝子
(
がらす
)
を張った様に光って居る。やがて
麓
(
ふもと
)
に来た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「
俺
(
お
)
ら
云
(
ゆ
)
はんねえでも
藥
(
くすり
)
は
氣
(
きい
)
ついてたのよ」
勘次
(
かんじ
)
はおつぎのいふのを
迎
(
むか
)
へて
聞
(
き
)
いた。
彼
(
かれ
)
の三
尺帶
(
じやくおび
)
には
其
(
そ
)
の
時
(
とき
)
もぎつと
括
(
くゝ
)
つた
塊
(
かたまり
)
があつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
縁側から見渡せば、一めんに崩れ落ちた家屋の
塊
(
かたまり
)
があり、やや
彼方
(
かなた
)
の鉄筋コンクリートの建物が残っているほか、目標になるものも無い。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
お浜は語り終って吐息を
吐
(
つ
)
きました。何か娘心では
背負
(
しょ
)
い切れない、大きな恥の
塊
(
かたまり
)
をおろして、ホッとしたような心持でしょう。
銭形平次捕物控:064 九百九十両
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
この
日
(
ひ
)
から、
少年
(
せいねん
)
のちいさい
胸
(
むね
)
には
大
(
おほ
)
きな
黒
(
くろ
)
い
塊
(
かたまり
)
がおかれました。
妬
(
ねた
)
ましさににて
嬉
(
うれし
)
く、
悲
(
かな
)
しさににて
懐
(
なつか
)
しい
物思
(
ものおもひ
)
をおぼえそめたのです。
桜さく島:見知らぬ世界
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
「なあに、水をかけることはないよ。もう火はおさまっている。戦車がとけて、鉄の
塊
(
かたまり
)
になっただけでおさまったよ。はははは」
人造人間エフ氏
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
不思議だろう! こんな泥みたいな
塊
(
かたまり
)
から芽が出て来て、それからまた子を産むんだ、そしてそれが人間の口に這入って
滋養
(
じよう
)
になるんだ。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
終りには、大きな砂糖の
塊
(
かたまり
)
を其処に置いて、蟻が吸いついたり、食いもぎって持っていったりするのを、縁側に腹匐いになって眺め初めた。
或る素描
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
この
煮物
(
にもの
)
をさましていくつもの
塊
(
かたまり
)
に切り、その切り口へあなをあけて、毒薬を
詰
(
つ
)
め、その上へチーズを厚くぬってふたをした。
動物物語 狼の王ロボ
(新字新仮名)
/
アーネスト・トンプソン・シートン
(著)
それから元気よく
口笛
(
くちぶえ
)
を
吹
(
ふ
)
きながらパン
屋
(
や
)
へ
寄
(
よ
)
ってパンの
塊
(
かたまり
)
を一つと
角砂糖
(
かくざとう
)
を一
袋
(
ふくろ
)
買いますといちもくさんに走りだしました。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
而して驚かされた乳酪の
塊
(
かたまり
)
が椅子の上からすべり下り、
料理人
(
コツク
)
が細かに玉葱の庖丁を刻み、
懶
(
なま
)
けたソフアの物思が軟かに温かい欠伸をつく。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
或人
(
あるひと
)
問
(
とふて
)
曰
(
いはく
)
、雪の
形
(
かたち
)
六出
(
むつかど
)
なるは
前
(
まえ
)
に
弁
(
べん
)
ありて
詳
(
つまびらか
)
也。
雪頽
(
なだれ
)
は雪の
塊
(
かたまり
)
ならん、
砕
(
くだけ
)
たる
形
(
かたち
)
雪の
六出
(
むつかど
)
なる
本形
(
ほんけい
)
をうしなひて
方形
(
かどだつ
)
はいかん。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
結び上げた
総角
(
あげまき
)
(組み紐の結んだ
塊
(
かたまり
)
)の
房
(
ふさ
)
が
御簾
(
みす
)
の端から、
几帳
(
きちょう
)
のほころびをとおして見えたので、薫はそれとうなずいた。
源氏物語:49 総角
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
頭の上は大空で、否、大空の中に、
粗削
(
あらけず
)
りの石の
塊
(
かたまり
)
が挟まれていて、その塊を土台として、
蒲鉾形
(
かまぼこなり
)
の
蓆
(
むしろ
)
小舎が出来ている。
奥常念岳の絶巓に立つ記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
大蛇
(
だいじゃ
)
が
顋
(
あぎと
)
を
開
(
あ
)
いたような、
真紅
(
まっか
)
な土の
空洞
(
うつろ
)
の中に、づほらとした黒い
塊
(
かたまり
)
が見えたのを、
鍬
(
くわ
)
の先で
掻出
(
かきだ
)
して見ると——
甕
(
かめ
)
で。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
宿屋の亭主
風情
(
ふぜい
)
に見くびられたと思っての腹立ちか、懐中からずる/″\と
納戸縮緬
(
なんどちりめん
)
の少し汚れた胴巻を取出し、汚れた紙に包んだ
塊
(
かたまり
)
を見ると
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
翌年の春、試みにその漁師に一
塊
(
かたまり
)
の鰍の卵を送って試してみろと言った。漁師からすぐ返事がきて、素敵な成績である。
鰍の卵について
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
モシできる事なら、大理石の
塊
(
かたまり
)
のまん中に、半人半獣の二人がかみ合っているところを彫ってみたい、塊の
外面
(
そと
)
にそのからみ合った手を現わして。
号外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
お茶が運ばれて来ると、彼は立ったままで、
把手
(
とって
)
のついた大コップを
二
(
ふ
)
た口で
空
(
から
)
にし、ほとんど
瞬
(
またた
)
くひまに白パンの大きな
塊
(
かたまり
)
を平らげてしまった。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
「
銭
(
ぜに
)
は
持
(
も
)
っていないが、ここに、さんごや
真珠
(
しんじゅ
)
や
金
(
きん
)
の
塊
(
かたまり
)
があります。これで
売
(
う
)
ってください。
私
(
わたし
)
の
着物
(
きもの
)
でありません。お
爺
(
じい
)
さんの
着
(
き
)
る
着物
(
きもの
)
です。」
黒い旗物語
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
濶々
(
ひろ/″\
)
とした北浦はいつか後に、次第に川らしい感じになつて来た。氷の
塊
(
かたまり
)
のそここゝに動いてゐるのが微かに見えた。
船路
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
そいからまたしても
痛
(
いと
)
なり出して、今度は前よりもっと苦しそうにのた打ち廻って、何や血の
塊
(
かたまり
)
みたいなもんが出たらしいいうたりするのんですが
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
向けて来る物干竿の切っ先は炎々たる闘志の
塊
(
かたまり
)
であった。清十郎の体にはさすが拳法の
嫡子
(
ちゃくし
)
、それを受けるだけの余裕と鍛えたものが十分に見える。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その無意識な不格好なあわれな肉の
塊
(
かたまり
)
は、自分に定められてる労苦の一生を予感してるかのようである。そして何物も彼を静めることはできない……。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
口の中に真黒い血が一と
塊
(
かたまり
)
泌み出いておる処を見ると、これは
尋常事
(
ただごと
)
じゃないと気が付いた
故
(
けに
)
、今日がきょうまで世間の噂を探りおったものじゃがなあ
狂歌師赤猪口兵衛:博多名物非人探偵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
胸に出来ている
塊
(
かたまり
)
を、吐き出したいという願いもあった。どぎった事をやってみたい。こういう望みも持っていた。
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
外の雪は、まだまだ
歇
(
や
)
むべき模様もなく、時々吹雪が裏の板戸を
撫
(
な
)
でて通り過ぎると、ポタポタと雪の
塊
(
かたまり
)
が植込の
梢
(
こずえ
)
を
辷
(
すべ
)
って庭へ落ちる音が聞えます。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
浮いて来る
埃塵
(
ごみ
)
の
塊
(
かたまり
)
や、
西瓜
(
すいか
)
の皮や、腐った猫の
死骸
(
しがい
)
や、
板片
(
いたきれ
)
と同じように、気に掛るこの世の中の
些細
(
ささい
)
な事は皆ずんずん流れて行くように思われた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「俊夫さん、大変です。たった今うちへ泥棒が入って、大切な
白金
(
はっきん
)
の
塊
(
かたまり
)
をとってゆきました。早く来てください」
暗夜の格闘
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
そこへまた、
何
(
なに
)
か
雷
(
かみなり
)
のやうに
怒鳴
(
どな
)
る
聲
(
こえ
)
がしたかと
思
(
おも
)
ふと、
小牛
(
こうし
)
ほどもある
硬
(
かた
)
い
氷
(
こほり
)
の
塊
(
かたまり
)
がピユーツと
墜
(
を
)
ちてきて、
真向
(
まつこう
)
からラランのからだを
撥
(
は
)
ね
飛
(
と
)
ばした。
火を喰つた鴉
(新字旧仮名)
/
逸見猶吉
(著)
地の底とは思われない広い部屋に、大勢の黒い
塊
(
かたまり
)
が
累々
(
るいるい
)
と、また
蠢々
(
しゅんしゅん
)
と、動きまわり、かたまり合っているところ、実に浮世離れのしたながめであった。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
炭焼き小屋がありまして、そこの炭焼き男に一夜の宿を乞うたのでありますが、その男が炭俵を編むのに使っている
帙櫨
(
ちつろ
)
は、黄金の
塊
(
かたまり
)
だったのであります。
文学に現れたる東北地方の地方色:(仙台放送局放送原稿)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
学年始めの式の朝登校すると、控所で
一
(
ひ
)
と
塊
(
かたまり
)
になつて誰かれの成績を批評し合つてゐた中の一人が、私を
弥次
(
やじ
)
ると即座に、一同はわつと声を
揃
(
そろ
)
へて笑つた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
しかしそれだけでは要吉の胸の中につかえている重くるしい
塊
(
かたまり
)
は少しも軽くはなりませんでした。(昭3・7)
水菓子屋の要吉
(新字新仮名)
/
木内高音
(著)
「ミゼラブル」の中でファンティーヌが往来で乱暴な男に肩へ雪の
塊
(
かたまり
)
をおっつけられるところもあります。これはユーゴーが実際に見た出来事だそうです。
先生への通信
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
皆ごく小声で語り合っていて、抵抗力のある太い堅固な
緻密
(
ちみつ
)
なほとんど貫き難い
塊
(
かたまり
)
となっていた。そのうちにはもうほとんど黒服も丸帽子も見えなかった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
皇帝の
御
(
お
)
居間の
直下
(
すぐした
)
に当ると云ふ広場などは人間の
塊
(
かたまり
)
で身動きの成らぬ程であつたが、自分達は自動車に乗つて居たお蔭で
辛
(
から
)
うじて通り抜ける事が出来た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
私は家内があまり静かなので、変に思って懐中電燈を照しながら、座敷の方へ這入って行くと、丁度居間との境とも思われる辺に、暗黒な
塊
(
かたまり
)
が
横
(
よこた
)
わっていた。
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
康おじさんはみんなが
耳朶
(
みみたぶ
)
を引立てているのを見て、
大
(
おおい
)
に得意になって瘤の
塊
(
かたまり
)
がハチ切れそうな声を出した。
薬
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
彼女は下宿人の前に、出がらしの茶を入れたひびのいった自前の
茶碗
(
ちゃわん
)
を置き、黄色い砂糖の
塊
(
かたまり
)
を二つのせた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
坂を下りながら向うを見ると遠くの屋根の上に真赤な
塊
(
かたまり
)
が忽ち現れたのでちょっと驚いた。
箒星
(
ほうきぼし
)
が三つ四つ一処に出たかと思うような形で怪しげな色であった。
熊手と提灯
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
その人物たるや、まったく
歪
(
ゆが
)
んだ、なにかの
塊
(
かたまり
)
を引き延ばしたとも、或いはたがいに離れようとして徒らに力なくもがいている粗野な断片の集まりとも見えた。
世界怪談名作集:14 ラザルス
(新字新仮名)
/
レオニード・ニコラーエヴィチ・アンドレーエフ
(著)
彼れは腹がけの
丼
(
どんぶり
)
の中を探り廻わしてぼろぼろの紙の
塊
(
かたまり
)
をつかみ出した。そして
筍
(
たけのこ
)
の皮を
剥
(
は
)
ぐように幾枚もの紙を剥がすと真黒になった三文判がころがり出た。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
小學校の兒童が五人、八人づつ
一塊
(
ひとかたまり
)
になつて歸つて來る。其の
塊
(
かたまり
)
の中から可愛らしいお光を見出して家へ呼び込む。それが小池の毎日の仕事のやうになつてゐた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
塊
常用漢字
中学
部首:⼟
13画
“塊”を含む語句
土塊
一塊
肉塊
石塊
凝塊
氷塊
二塊
岩塊
塊的
血塊
磊塊
塊然
雪塊
結塊
金塊
山塊
根塊
団塊
節塊立
黒塊
...