)” の例文
机を置いてこれに対し、浴衣に縮緬ちりめん扱帯しごきめて、ひじをつき、けざまの目をねむるがごとくなるは、謂うまでもなく鴨川であった。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先刻グロテスクだと思った彼の手を堅く握りめて、今更のように肩幅の広い、厳丈なこの山人の体を頼もしげに見詰めたのであります。
案内人風景 (新字新仮名) / 百瀬慎太郎黒部溯郎(著)
女が五人に男が二人、めて七人、それで一番上の子供が十三ですから赤ん坊に至るまでズッと順よく並んでまあ体裁よくそろっております。
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
黒縮緬くろちりめん羽織はおり唐繻子たうじゆすおびめ、小さい絹張きぬばり蝙蝠傘かうもりがさそばに置き、後丸あとまるののめりに本天ほんてん鼻緒はなをのすがつた駒下駄こまげたいた小粋こいき婦人ふじんが、女
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
この人は前垂をめてはいるが、武術の心得も有るらしい体格で、大きな律義りちぎそうな手を出して、旦那や客に酒を勧めた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
通りすがりに覗きながら歩いて行く慶三の眼には、夜になって綺麗に化粧をして帯をきちんとめてしまった姿よりもはるかに心を迷わすように見えた。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
黒髪バラリと振り掛かれる、あをおもてに血走る双眼、日の如く輝き、いかりふる朱唇くちびる白くなるまでめたる梅子の、心きはめて見上たる美しさ、たゞすごきばかり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
いま、ふとそれを思い起し、わたくしの脳味噌がこれ等の感情の杵搗き合いで、ガン漬けになり、それを自分の心が味いめているように思えてなりません。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
何時いつ不断着ふだんぎ鼠地ねずみじ縞物しまもののお召縮緬めしちりめん衣服きものを着て紫繻子むらさきじゅすの帯をめていたと云うことを聞込ききこんだから、私も尚更なおさら、いやな気がおこって早々に転居してしまった。
女の膝 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
握りめ「是が本統に、運のつきと、云う者です」と言掛けて涙にむせぶ目「運の尽とはう云う者です、 ...
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
破門された各務房之丞、山東平七郎、轟玄八以下三十名の剣星と、自らを破門してそれを率いる師軍之助と、月輪一刀流中そうそうの容列、めて三十一士であった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
前後も知らぬ高鼾たかいびきで、さも心持さそうに寝ておりますから、めた! おのれ画板め、今乃公おれが貴様の角を、残らず取り払ってやるからにわ、もう明日あしたからわ角なしだ
三角と四角 (その他) / 巌谷小波(著)
一座にいあわせる女たちのみか、浪路の供をして来て、控えの間につつしんでいた女中たちさえ、廊下までのぞきに来て、お互に手をめ合って、といきを洩らしている。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
問屋の帳場が揚荷の帳付ちょうつけ。小買人が駆廻る、仲買が声をらす。一方では競売せりが始まっていると思うと、こちらでは荷主と問屋が手をめる。雑然、紛然、見る眼を驚かす殷賑いんしん
売り上げはめて二円にも足らなかった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
起返って、帯をお太鼓にきちんとめるのを——お稲や、何をおしだって、叔母さんがとがめた時、——私はおっかさんのとこへ行くの——
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれども一たんこの寮へわたくしが入ると、まるで鼠取りの籠の中へ鼠が入った途端にめたとばかり捕え主が苛め出すように、池上はすぐさま嫉妬し始めました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
鼻がいやアに段鼻になって、眼の小さな口の大きいほうで、服装なり木綿縮もめんちゞみの浅黄地に能模様丸紋手のうもようまるもんて単物ひとえもの唐繻子とうじゅすの帯をめ、丸髷には浅黄鹿あさぎがの手柄を掛けて居ます
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「今から浅黄の帯揚なぞがめられるもんですか」とお雪はナサケないという眼付をした。「今からこんな物をせなんて——若い時に〆なければ〆る時はありゃしません」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
見やりつゝ「何の運動でも、婦人が這入はひつて来る様になればめたものだ、虚無党でも社会党でも其の恐ろしいのは、中心に婦人が居るからだ、日本でもポツ/\其の機運が見えて来た」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
現在むすめお艶が羽織に身売りしたその代とをめて五十になる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
帯もめで、懐中ふところより片手出して火鉢に翳し、烈々たる炭火うずたかきに酒のかんして、片手に鼓の皮乾かしなどしたる、今も目に見ゆる。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と膝に手を突いて起上りますると、鼠小紋ねずみこもん常着ふだんぎ寝着ねまきにおろして居るのが、汚れッが来ており、お納戸色なんどいろ下〆したじめを乳の下に堅くめ、くびれたように痩せて居ります。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
高く前掛をめてはいたが、最早醜く成りかけた身体の形は隠されずにある。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「何だ」といきまく養母のおもて、ジロリ横目に花吉は見やりつ「ハイ、乞食のおやふところで、其時泣きじにに死んだなら、芸妓げいしやなどになりさがつて、此様こんな生耻いきはぢさらさなくとも済んだでせうにねエ」唇めて
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「父上ッ! めて九人……!」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
渠がこの家にきたりし以来、吉造あか附きたるふどしめず、三太夫どのもむさくるしきひげはやさず、綾子のえりずるようにりて参らせ
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御重役でも榊原様では平生へいぜいは余りなりはしない御家風で、下役の者は内職ばかりして居るが、なれども銘仙めいせんあらい縞の小袖に華美はでやかな帯をめまして、文金の高髷たかまげ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぎりぎり繃帯ほうたいをしていました、綿銘仙のあかじみたあわせに、緋勝ひがち唐縮緬めりんすと黒の打合せの帯、こいつを後生大事にめて
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云っているうちに伊之助は起あがりて帯をめておりますると、表をトン/\/\と叩くものがございますんで、二人はびっくりいたして、お若さんは手早く床をあげ、伊之助を戸棚へ隠し
綾子はぞろりと外出そとでなり繻珍しゅちんの丸帯を今めて、姿見に向いたるが、帯留の黄金きん金具をぱちんと懸けつつ振返りて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新「何ようございます、其処そこをぴったりめて」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
寝る時、着換きかへて、とつて、むすめ浴衣ゆかたと、あか扱帯しごきをくれたけれども、角兵衛獅子かくべえじし母衣ほろではなし、母様おっかさんのいひつけ通り、帯をめたまゝで横になつた。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と云うので引戸をめてしまうと
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それから四張の三味線を座敷に運んで、調子を合せて、差置くや否や、取って返して、自分がもちの下方の調しらべの緒をめる時分には、二人悠々と入って来る。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「待て、」といいつつ両人、懐をおさえ、つまを合わせ、羽織のひもめなどして、履物を穿いてばたばたとおかあがって、一団ひとかたまりになると三人言い合せたように
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
世間体にも、容体にも、せてもはかまとあるところを、毎々薄汚れたしま前垂まえだれめていたのは食溢くいこぼしが激しいからで——この頃は人も死に、やしきよそのものになった。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「大きにお世話だ、学者に帯をめさせる奴があるもんか、おい、……まだ一人じゃ結べないかい。」
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下じめの端を両手できりきりとめながら、蹌踉よろめいて二階を下りて来た、蝶吉の血相は変っている。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
またっせえ、あいにくたすきがねえ、わしがこの一張羅の三尺じゃあ間に合うめえ! と、かろう、合したものの上へめるんだ、濡れていても構うめえ、どッこいしょ。」
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私、おじいさんに見せてから、といいましたけれど、いいえ、着て御覧、ここでッて、それから帯も自分でめてやろう、結びようが下手だって、結んでくれたんです。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのかわり、衣服きものは年上の方が、紋着もんつきだったり、おめしだったり、時にはしどけない伊達巻だてまき寝着ねまき姿と変るのに、若いのは、きっしまものにさだまって、帯をきちんとめている。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
のかはり、衣服きもの年上としうへはうが、紋着もんつきだつたり、おめしだつたり、ときにはしどけない伊達卷だてまき寢着姿ねまきすがたかはるのに、わかいのは、きつしまものにさだまつて、おびをきちんとめてる。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それで高帽子たかじゃっぽで、羽織がというと、しま透綾すきやを黒に染返したのに、五三の何か縫着紋ぬいつけもんで、少し丈不足たけたらずというのを着て、お召が、阿波縮あわちぢみで、浅葱あさぎ唐縮緬とうちりめん兵児帯へこおびめてたわ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大漢子おほをのこ兩手りやうては、のびをして、天井てんじやう突拔つきぬごとそらざまにたなかゝる、と眞先まつさきつたのは、彈丸帶たまおびで、外套ぐわいたうこしへぎしりとめ、つゞいてじうろして、ト筈高はずだかにがツしとけた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「したが私の深切を受ければ、此のむすめに不深切になるところ。感心にお前、母様おっかさんに結んで頂いた帯をめたまゝ寝てること、腕白もの、おい腕白もの、目をぱちくりして寝て居るよ。」
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
衣服きものおびめて、やがてしり端折はしをらうところ、ふとはしうへると、堅氣かたぎおほいが、賣女屋ばいぢよやのあるちひさな宿やどなんとなく自墮落じだらくふうまるとえて、宿中しゆくぢういづれも朝寢あさねらしい。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見るもの一ツとして欲しからざるは無きを、初鰹は買はざれども、昼のお肴なにがし、晩のお豆府いくらと、帳合ちやうあひめて、小遣の中より、大枚一歩がところ、苗七八種をずばりと買ふ
草あやめ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
蒼面そうめん、乱髪、帯もめず、衣服も着けず、素肌に古毛布ふるげっと引絡ひきまといて、破れたる穴の中よりにょッきと天窓を出だせるのみ、歩を移せば脛股けいこすなわち出ず、警吏もしその失体を詰責きっせきせんか
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大柄な婦人おんなで、鼻筋の通った、容色きりょう、少しすごいような風ッつき、乱髪みだれがみ浅葱あさぎ顱巻はちまきめまして病人と見えましたが、奥ののふちに立膝をしてだらしなく、こう額に長煙管をついて
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)