見向みむ)” の例文
「そんぢやぢい砂糖さたうでもめろ」とおつぎは與吉よきちだい籰棚わくだなふくろをとつた。寡言むくち卯平うへい一寸ちよつと見向みむいたきりでかへつたかともいはない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ロチスター氏は聞いたが、しかし見向みむきもしなかつた。彼はたゞ私の手をとるより外には身動きもせず、頑固にじつと立つてゐた。
しかし、そこをりがけに、自分じぶんかおは、そんなにみにくいのであるかと、ついかがみほう見向みむかずにいられませんでした。
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たとい自分の口が裂けようとみこみますが、死んでいるものはどんなうまそうなものでも見向みむきもしないという美食家びしょくかです。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
狭い一室ひとまに、束髪たばねがみひっかけおびで、ふつくりしたい女が、糸車を廻して居たが、燭台につけた蝋燭ろうそく灯影ほかげに、横顔で、旅商人たびあきうど、私の其の縁続きの美男を見向みむいて
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
教頭けうとう隨分頑固ずゐぶんぐわんこをとこで、こんな不都合ふつがふ示威運動じゐうんどう讓歩ぢやうほしては學校がくかう威嚴ゐげんたもたれないとつて、葉書はがきなんまいようと見向みむきもしなかつたが、状態じやうたい一月ひとつきばかりもつゞいて
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
そばにどんなひとがゐるか見向みむきもしなかつた。如何いかなるものがそとからはひつてても、まつた注意ちゆういしなかつた。彼等かれらきた彫刻てうこくやうおのれをして、のないへや肅然しゆくぜんすわつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其中そのうちはらすいたとえてラクダルは面倒臭めんだうくささうに手をのばして無花果いちじくとつくちれた。しか少年こども見向みむきもしないしのばさないばかりか、木實このみ身體からだそばちてすらあたまもあげなかつた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
てた燐寸マツチえさしが道端みちばた枯草かれくさけて愚弄ぐろうするやうながべろ/\とひろがつても、見向みむかうともせぬほどかれものうげである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しょうは、かねると、長年ながねん苦労くろうを一つにしてきたうしが、さびしそうにあとのこされているのを見向みむきもせずに、さっさとていってしまいました。
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いゝえぞんじません。)といふときたちまをかすべからざるものになつたから、わしくちをつぐむと、婦人をんなは、さぢげてきぬちりはらふてうま前足まへあししたちいさな親仁おやぢ見向みむいて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うつくしいふうをしたおんなや、おとこみちばたに、こうして、あわれなおんなが、すくいをもとめているということを、見向みむきもせずに、さっさとゆきすぎてしまったのです。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちよいと見向みむいて、すゞし御覧ごらんなすつて莞爾につこりしてお俯向うつむきで、せつせとつてらつしやる。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
キヤツとさけびてたふるゝを、見向みむきもやらずとほりしは、いうにやさしきひとの、黄楊つげくしくちびるくはへしなり。うらぶれし良家りやうかむすめの、ちゝ病氣いたつきなるに、夜半よはへるみちなりけり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひでちゃんは、はるかうえのやまがらのほうかって、できるだけたかげて、ちいさなゆびしてせました。しかし、やまがらは、もうそんなものには見向みむきもしませんでした。
山へ帰ったやまがら (新字新仮名) / 小川未明(著)
……そして、肩越かたごしに此方こなた見向みむいた、薄手うすでの、なかだかに、すつと鼻筋はなすぢとほつた横顏よこがほ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はたけには、はないていましたから、そのはなたずねて、やまから小鳥ことりんできたのだろうとおもって、いいなきごえのするほう見向みむきますと、おじいさんが、たくさんのとりかごをさおの両方りょうほうにぶらさげて
酔っぱらい星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
トタンにかまち取着とツつきはしらもたれた淺黄あさぎ手絡てがら此方こつち見向みむく、うらわかいのとおもてはせた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
また一ツ背中せなかたゝいた、親仁おやぢこひげたまゝ見向みむきもしないで、山路やまぢうへかた
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あぶ、あぶ、あツぷう。」と、まるつらを、べろりといたいけなでて、あたまからびたしづくつたのは、五歳いつゝばかりの腕白わんぱくで、きよろりとしたでひよいとて、また父親おやぢ見向みむいた。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
樣子やうすを、間近まぢかながら、どくのある見向みむけず、呪詛のろひらしきしはぶきもしないで、ずべりとまど仰向あふむいて、やまひかほの、泥濘ぬかるみからげた石臼いしうすほどのおもいのを、ぢつとさゝへて病人びやうにん奇特きどくである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きよろりと見向みむいて
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)