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いさぎよ
ふりがな文庫
“
潔
(
いさぎよ
)” の例文
有爲轉變
(
うゐてんぺん
)
の世の中に、只〻最後の
潔
(
いさぎよ
)
きこそ肝要なるに、天に
背
(
そむ
)
き人に離れ、いづれ
遁
(
のが
)
れぬ
終
(
をはり
)
をば、
何處
(
いづこ
)
まで
惜
(
を
)
しまるゝ一門の人々ぞ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
またいかに他人が自分を
疎
(
うと
)
んじても、我はあくまでも自ら
重
(
おも
)
んじて、所信を
貫
(
つらぬ
)
くという、みずから
潔
(
いさぎよ
)
しとするところがなければならぬ。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
けれど石権をはじめ、職人たちのほうは、かれらの飲みのこしなどをうけるのは
潔
(
いさぎよ
)
しとせぬように、たれも茶碗を出そうとしなかった。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「心得申した」と東条数馬は、さも
潔
(
いさぎよ
)
く引き受けた。「たとえ
義経
(
よしつね
)
、
為朝
(
ためとも
)
であれ、必ず
某
(
それがし
)
引っ組んで取り抑えてお目にかけまする」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お前も、これほど思い切ったことをやった男だから、思い切って男らしく
潔
(
いさぎよ
)
く、俺のいうことに答えてくれないかん。いいかい。
島原心中
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
よし、その余裕があったからとて、彼の気性では、
夷狄
(
いてき
)
の酒なんぞに、この腸を腐らせることを
潔
(
いさぎよ
)
しとしなかったかも知れない。
大菩薩峠:28 Oceanの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「なんだ、宮内その
拳
(
こぶし
)
は何処へやる気だ、刀へかけるのなら、
潔
(
いさぎよ
)
くかけろ、慎九郎は非力者が相手じゃとて、遠慮はせぬ男じゃ」
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
温泉
(
いでゆ
)
は、やがて
一浴
(
いちよく
)
した。
純白
(
じゆんぱく
)
な
石
(
いし
)
を
疊
(
たゝ
)
んで、
色紙形
(
しきしがた
)
に
大
(
おほき
)
く
湛
(
たゝ
)
へて、
幽
(
かす
)
かに
青味
(
あをみ
)
を
帶
(
お
)
びたのが、
入
(
はひ
)
ると、
颯
(
さつ
)
と
吹溢
(
ふきこぼ
)
れて
玉
(
たま
)
を
散
(
ち
)
らして
潔
(
いさぎよ
)
い。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
もし清川がそれに手を着けるのを
潔
(
いさぎよ
)
しとしないにしても、本を売らなくては引越しもできないほど、手元が不自由なのだろうか。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あの時、二人が
潔
(
いさぎよ
)
く打あけ合って居たら、どんなにか、心を軽くすることが出来たであろうにと、今更残念がっても致し方が御座いません。
秘密の相似
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
かといって、又、己は俗物の間に
伍
(
ご
)
することも
潔
(
いさぎよ
)
しとしなかった。共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との
所為
(
せい
)
である。
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それでいて、その男が頃合いを計って前へ出て、庄平のいわゆる
潔
(
いさぎよ
)
い謝りかたをすると、忽ち機嫌を直して、飯を振舞った上酒まで呑ました。
猫車
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
平次は
潔
(
いさぎよ
)
く
兜
(
かぶと
)
を脱ぎました。二間半
長柄
(
ながえ
)
の大槍で、三寸の狭い隙間から、少なくとも二間以上離れている人間を突けるわけはなかったのです。
銭形平次捕物控:282 密室
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
だからもし妻と妻の
従弟
(
いとこ
)
との間に、僕と妻との間よりもっと純粋な愛情があったら、僕は
潔
(
いさぎよ
)
く
幼馴染
(
おさななじみ
)
の彼等のために
犠牲
(
ぎせい
)
になってやる考だった。
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それはいつでも
潔
(
いさぎよ
)
い最期を遂げるように、切腹の覚悟をしていろと云う意味らしかった。女たちももう一人として落ち着いている者はなかった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
袈裟御前
(
けさごぜん
)
が夫の身代りに死んだは
潔
(
いさぎよ
)
けれど、死する事の一日後れてその身を
盛遠
(
もりとお
)
に汚されたる事千載の遺恨との評がある。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
一種の勇気をもってその五体は波打った。彼の眼に映る大通りの雪景色は、その広さと
潔
(
いさぎよ
)
さにおいて彼の心に等しかった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
後
(
うしろ
)
の
竹
(
たけ
)
の
林
(
はやし
)
はべつたりと
俛首
(
うなだ
)
れた。
冬
(
ふゆ
)
のやうにさら/\と
潔
(
いさぎよ
)
い
落
(
おち
)
やうはしないで、
濕
(
うるほ
)
ひを
持
(
も
)
つた
雪
(
ゆき
)
は
竹
(
たけ
)
の
梢
(
こずゑ
)
をぎつと
攫
(
つか
)
んで
放
(
はな
)
すまいとして
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
貴族の娘は貴族らしく品位を落とさないで他の軽侮を受けない身の持ち方で終始するのが世間へ対しても、それら自身にも
潔
(
いさぎよ
)
いことだろうと思う。
源氏物語:48 椎が本
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「我が家におかえり下さらぬか。我が家はそなたの家も同様なのだ。もう
情実
(
なさけ
)
は負わなくともいい、
潔
(
いさぎよ
)
くお越しあれ。」
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
潔
(
いさぎよ
)
しとしない氣持だな。新井白石のいはゆる、一尺の蛇の一寸の傷は、十尺になれば傷もまた十倍になると云ふ奴だ。
生活の探求
(旧字旧仮名)
/
島木健作
(著)
それは当然死よりも
愁
(
つら
)
くまた出来にくかったであろうが、正しい取るべき道は、最初倉持との恋愛が
萌
(
きざ
)
した時に、
潔
(
いさぎよ
)
く
良人
(
おっと
)
に打明けるべきであった。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
その代わり、君の事も確たる証拠は何一つないのだから、何にもいわぬというので、私も
潔
(
いさぎよ
)
く原稿を差し出しました。
ニッケルの文鎮
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
嚴
(
いつ
)
かしき昔の父、おもかげに今し立ち、
潔
(
いさぎよ
)
しわが父やげに、昭和八年一月元旦、父の子は我は、
嘖
(
ころ
)
ばえて涙しながる。
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
これじゃア自分は
潔
(
いさぎよ
)
く
兜
(
かぶと
)
を
脱
(
ぬ
)
ごうという正直な
謙遜心
(
けんそんしん
)
を起して、「そうしてその俳優はそれからどういたしました」
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
私はこの男にそれから逃れさすために、自分も
潔
(
いさぎよ
)
くそれを捨てよう。私は女と生れた甲斐には気丈になって、この男を更生さしてやらなければならない。
扉の彼方へ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼もまた、青年の時代には、家の為に束縛されることを
潔
(
いさぎよ
)
しとしなかったので、志を
抱
(
いだ
)
いて国を出たものである。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
どうぞ此同舟の会合を最後の
団欒
(
だんらん
)
として、
袂
(
たもと
)
を分つて
陸
(
りく
)
に
上
(
のぼ
)
り、
各
(
おの/\
)
潔
(
いさぎよ
)
く処決して
貰
(
もら
)
ひたい。自分等
父子
(
ふし
)
は
最早
(
もはや
)
思ひ置くこともないが、
跡
(
あと
)
には女小供がある。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
龍馬が大さう喜んで、お龍よ橋本の仕事は実に
潔
(
いさぎよ
)
ひ、己れの抱へる者は皆なコンな者だと褒めて居りました。
千里駒後日譚
(新字旧仮名)
/
川田瑞穂
、
楢崎竜
、
川田雪山
(著)
隊長も、士官も、武士
気質
(
かたぎ
)
を持っていた。軍人が労資の対立にちょっかいを入れることを
潔
(
いさぎよ
)
しとしなかった。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
或は一個人が己自身を
潔
(
いさぎよ
)
うする一人の善行よりも、たとい純粋なる善動機より出でずとするも、多数の人を利する行為の方が
勝
(
まさ
)
っているというのでもあろう。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
この宿命の
潔
(
いさぎよ
)
い担ひ手を私は、すでに私の周囲に発見して、自分の仕事の力強い支へとしてゐるのである。
演劇統制の重点
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
現在の日本ほど為すべき事の多くしてしかも容易な国は恐らくあるまい。しかしそういう風な世渡りを
潔
(
いさぎよ
)
しとしないものは
宜
(
よろ
)
しく自ら譲って
退
(
しりぞ
)
くより
外
(
ほか
)
はない。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
新時代においては彼らは実質上の精神的支配者たるに甘んじ、またこれを以てその天分と為し、形式的支配者の地位は
潔
(
いさぎよ
)
くこれを人民に譲らなければならない。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
潔
(
いさぎよ
)
きには似たれどもわが生身の堪ふるところにあらず、果して多數者と意嚮を同じくするや否やはしらずといへども、如かず進んで吾も亦わが一票を投ぜんには。
貝殻追放:001 はしがき
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
(四二)
或
(
あるひ
)
は
曰
(
いは
)
く、
(四三)
天道
(
てんだう
)
は
親
(
しん
)
無
(
な
)
く、
常
(
つね
)
に
善人
(
ぜんにん
)
に
與
(
くみ
)
すと。
伯夷
(
はくい
)
・
叔齊
(
しゆくせい
)
の
若
(
ごと
)
きは、
善人
(
ぜんにん
)
と
謂
(
い
)
ふ
可
(
べ
)
き
者
(
もの
)
か
非
(
ひ
)
か。
仁
(
じん
)
を
積
(
つ
)
み
行
(
おこなひ
)
を
潔
(
いさぎよ
)
うし、
此
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
くにして
餓死
(
がし
)
せり。
国訳史記列伝:01 伯夷列伝第一
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
「では検分しよう。
潔
(
いさぎよ
)
いことだ……。それにしても、どうしてこんなところへ落ちてこられたのか、かねて不審に思っていた。聞けるものなら、聞いておきたい」
奥の海
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「まあいいやな」と男は
潔
(
いさぎよ
)
く首を
掉
(
ふ
)
って、「お互いに
小児
(
がき
)
の時から知合いで、気心だって知って知って知り抜いていながら、それが妙な羽目でこうなるというのは、 ...
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
其の職其の身にもあらぬため
却
(
かえ
)
って罪となりつるか、かゝる無人島に
彷徨
(
うろつ
)
いて
徒
(
いたず
)
らに乾殺され、後世人の笑いを受けるより、
寧
(
いっ
)
そ此の場に切腹して
潔
(
いさぎよ
)
く相果て申さん
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
または軍人の妻女が良人出陣の
砌
(
みぎり
)
に痴情の涙を
湛
(
たた
)
えて離別を惜しむと、あるいは
潔
(
いさぎよ
)
く
袂
(
たもと
)
を別ちて奉公義勇の精神を
鼓吹
(
こすい
)
するとは、そのいずれか国家の富強に益あるか
国民教育の複本位
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
タイムは、それにも
拘
(
かかわ
)
らず、遊んでいるような外国クルウに比し、全然、
劣
(
おと
)
っておりましたが、ぼく達は、努力しすぎて負けることを、少しも
恥
(
はじ
)
とせぬ
潔
(
いさぎよ
)
い気持でした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
空氣は
飽
(
あく
)
まで清澄にして、中に言ふべからざる秋の靜けさとさびしさとを交へたり。木曾川の溪流よりは
朝
(
あした
)
の水烟
盛
(
さかん
)
に登りて、水聲の
潔
(
いさぎよ
)
き、この人世のものとしも覺えず。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
彼
(
あ
)
れは
快
(
こゝろよ
)
く
瞑
(
めい
)
することが
出來
(
でき
)
ると
遺書
(
ゐしよ
)
にもあつたと
言
(
い
)
ふではないか、
彼
(
あ
)
れは
潔
(
いさぎよ
)
く
此世
(
このよ
)
を
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つたので、お
前
(
まへ
)
の
事
(
こと
)
も
併
(
あは
)
せて
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つたので
決
(
けつ
)
して
未練
(
みれん
)
は
殘
(
のこ
)
して
居
(
ゐ
)
なかつたに
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
『矢島君。さあひとつ、
潔
(
いさぎよ
)
く言って
呉
(
く
)
れ給え。山田源之助の屍体を運んで行って、この海の中のどの辺へ沈めたのかって事をだね。多分原田喜三郎と同じ場所なんだろう?』
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
汝は臆病ものなれば
辭
(
いな
)
まむも知れねど、われは強ひて
潔
(
いさぎよ
)
き決鬪を汝に求む、共に來れといふ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
ねえ、私達は
潔
(
いさぎよ
)
くその恩を被ようではありませんか! さうして愛を
豐
(
ゆた
)
かに持つことに
努
(
つと
)
め、それをすべてに
捧
(
さゝ
)
げることに、決して自分の
利益
(
りえき
)
を考へないやうにと
心掛
(
こゝろが
)
けませう。
冬を迎へようとして
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
が、
有体
(
ありてい
)
にいうと沼南は度量海の如き大人格でも、清濁
併
(
あわ
)
せ
呑
(
の
)
む大腹中でもなかった。それよりはむしろ小悪微罪に触れるさえ忍び得られないで独りを
潔
(
いさぎよ
)
うする潔癖家であった。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
爆発物は妾の所持品にせんといいたるに、
否
(
いな
)
拙者
(
せっしゃ
)
の所持品となさん、もし発覚せばそれまでなり、
潔
(
いさぎよ
)
く
縛
(
ばく
)
に
就
(
つ
)
かんのみ、
構
(
かま
)
えて同伴者たることを
看破
(
かんぱ
)
せらるる
勿
(
なか
)
れと古井氏はいう。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
この保守的なるサドカイ派に対する改革派がすなわちパリサイ派で、彼らは神殿礼拝よりも律法遵守を重んじ、政治的にはローマの支配に対する妥協的・屈辱的態度を
潔
(
いさぎよ
)
しとしなかった。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
山なす借金、
所詮
(
しょせん
)
払えそうもないので、ドウセ毒皿だ、クソ、ドシドシ使い込んでやれ、踏倒して逃げてやれ、と
悪度胸
(
わるどきょう
)
を
据
(
す
)
えた時もあります。然しもう
潔
(
いさぎよ
)
く観念しました。返えします。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
潔
常用漢字
小5
部首:⽔
15画
“潔”を含む語句
清潔
潔斎
純潔
不潔
皎潔
小清潔
潔癖
潔白
精進潔斎
高潔
清潔好
清浄潔白
潔清
潔浄
清潔法
廉潔
清廉潔白
不潔物
皓潔
簡潔
...