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おろ
ふりがな文庫
“
愚
(
おろ
)” の例文
一日は
愚
(
おろ
)
か一刻さえ惜しまれるのであったが、師走の三日ばかりは、何が何としても国賓帯刀の門をくぐらないでは許されなかった。
くろがね天狗
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「そんなわけぢやありませんがね、——それから下男の伊太郎は三十位、無愛想な野郎で、これなら小娘は
愚
(
おろ
)
か牛だつて殺せますよ」
銭形平次捕物控:285 隠れん坊
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼女
(
かのじょ
)
は、この
愚
(
おろ
)
かな
聟
(
むこ
)
が、たとえ
自分
(
じぶん
)
を
慕
(
した
)
い、
愛
(
あい
)
してくれましたにかかわらず、どうしても
自分
(
じぶん
)
は
愛
(
あい
)
することができなかったのです。
海ぼたる
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
康頼 (船より目を放たず)わしの
愚
(
おろ
)
かな
妄想
(
もうそう
)
だろうか。いや、どうもいつもとは違うようだ。わしに与える気もちがちがっている。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
吾々
(
われ/\
)
は
覺醒
(
かくせい
)
せりと
叫
(
さけ
)
ぶひまに、私達はなほ暗の中をわが
生命
(
いのち
)
の
渇
(
かわ
)
きのために、
泉
(
いづみ
)
に
近
(
ちか
)
い
濕
(
しめ
)
りをさぐる
愚
(
おろ
)
かさを
繰
(
く
)
りかへすのでした。
冬を迎へようとして
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
▼ もっと見る
いや、深く考えてみると、悪いのは、そなたでも呂布でもなかった。この董卓が
愚
(
おろ
)
かだった。——貂蝉、わしが
媒
(
なかだ
)
ちして、そなたを
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
家は
愚
(
おろ
)
か、
父兄
(
ててあに
)
は愚か、
公方
(
くぼう
)
の威光までも、恋のために土足にかけようとするとは、あのお人も、思い詰められたものと見える——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
その点についてはインド人などはとても及ばんです。インド人は一般に実に
愚
(
おろ
)
かなるもので、草の名でも知って居る者はありはしない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「あゝさうか、二十二ね、女のひとが二十四五に見えるつてのは、
利巧
(
りかう
)
だつて云ふ事だよ。若く見て貰ひたいなンて
愚
(
おろ
)
かな事だ」
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
愚
(
おろ
)
かな私は、彼女の主人さえ知らぬ秘密について、彼女と二人きりで話し合う楽しみを、出来る丈け長く続けたかったのだ。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それは村の者の
愚
(
おろ
)
かしさの
印
(
しる
)
しであろうか、それともその老外人の
頑
(
かたくな
)
な気質のためであろうか? ……そう言うような話を聞きながら、私は
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
愚
(
おろ
)
かな
父
(
とう
)
さんは、好い
事
(
こと
)
でも
惡
(
わる
)
い
事
(
こと
)
でもそれを
自分
(
じぶん
)
でして
見
(
み
)
た
上
(
うへ
)
でなければ、その
意味
(
いみ
)
をよく
悟
(
さと
)
ることが
出來
(
でき
)
ませんでした。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
まだ
外
(
ほか
)
にもいろいろありますが、あまりにも
愚
(
おろ
)
かしい
事
(
こと
)
のみでございますので、
一
(
ひ
)
と
先
(
ま
)
ずこれで
切
(
き
)
り
上
(
あ
)
げさせて
戴
(
いただ
)
きます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
初め雲巌寺まで二里と聴いた水車小屋からは、二里は
愚
(
おろ
)
か無駄足をして既に四、五里は来たのに、この先まだ二里半あるとはガッカリガッカリ。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
いかに
阿呆
(
あほう
)
を装っても、もう誰一人葉之助を
愚
(
おろ
)
か者とは思わなかった。彼は高遠一藩の者から、偶像とされ
亀鑑
(
きかん
)
とされた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
日本は
愚
(
おろ
)
か、支那でも、西洋でも、
否
(
いな
)
、世界
開闢
(
かいびゃく
)
以来、
未
(
いま
)
だ
曾
(
かつ
)
て
何人
(
なんぴと
)
によっても試みられなかったであろうと、僕は
大
(
おおい
)
に得意を感ぜざるを得ない。
恋愛曲線
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
「二尺の
鯉
(
こい
)
を二
疋
(
ひき
)
獲
(
と
)
ってくれと、二三日前から頼まれて、この広い湖へ
片
(
かた
)
っ
端
(
ぱし
)
から網を入れているが、鯉は
愚
(
おろ
)
か、
雑魚
(
ざこ
)
もろくろくかかりゃしない」
ある神主の話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
着ている着物までも帯を解いて裏返して見たけれども、私の名前は
愚
(
おろ
)
か、頭文字らしいものすら発見し得なかった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
この場合目的のために手段を選ばぬということは、一般に悪いことだとされているが、同時に手段のために目的を忘れるのも、政治としては
愚
(
おろ
)
かである。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
かねて
見置
(
みお
)
きし
硯
(
すゞり
)
の
引出
(
ひきだ
)
しより、
束
(
たば
)
のうちを
唯
(
たゞ
)
二
枚
(
まい
)
、つかみし
後
(
のち
)
は
夢
(
ゆめ
)
とも
現
(
うつゝ
)
とも
知
(
し
)
らず、三
之
(
の
)
助
(
すけ
)
に
渡
(
わた
)
して
歸
(
かへ
)
したる
始終
(
しじう
)
を、
見
(
み
)
し
人
(
ひと
)
なしと
思
(
おも
)
へるは
愚
(
おろ
)
かや。
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
... 鉄鍋は
愚
(
おろ
)
か、銀の鍋を買ても知れたものだ」と主人の熱心は遂に小山の心を動かしけん「それでは僕も
銅
(
あかがね
)
や青銅の鍋を廃して残らず西洋鍋に
取代
(
とりか
)
えよう」
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
その卒業が父の心にどのくらい響くかも考えずにいた私は全く
愚
(
おろ
)
かものであった。私は
鞄
(
かばん
)
の中から卒業証書を取り出して、それを大事そうに父と母に見せた。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
だが一男が今のように看護婦の代りをしていたのでは、病人の薬代は
愚
(
おろ
)
か、米代もつづかないのだ。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
その喜びに対する
微笑
(
ほほえ
)
ましい気持が顔へまで
波及
(
はきゅう
)
するかと思われた。園は
愚
(
おろ
)
かなはにかみを覚えた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
王様はこの私の
唯
(
ただ
)
一人の王でございます。遠いむかしから私めの先生でございます。私はあのお方の
愚
(
おろ
)
かなしもべでございます。いや、まだおわかりになりますまい。
双子の星
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「なるほど、古市では座敷へ上らずに、庭へ
莚
(
むしろ
)
を敷いて聞かせてくれたな。しかしそれはあの土地の
慣例
(
しきたり
)
であろう、ここへ来てまでその慣例を守ろうとは
愚
(
おろ
)
かな遠慮」
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
予
(
わし
)
の
書齋
(
しょさい
)
へ。……
只今々々
(
たゞいま/\
)
!……はてさて、
愚
(
おろ
)
かにも
程
(
ほど
)
があるわ!……はい/\、
只今
(
たゞいま
)
參
(
まゐ
)
ります!
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
なるほど小金井は桜の名所、それで夏の盛りにその堤をのこのこ歩くもよそ目には
愚
(
おろ
)
かにみえるだろう、しかしそれはいまだ今の武蔵野の夏の日の光を知らぬ人の話である。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
むしろ早く思い棄てて
更
(
さら
)
に良縁を求むるこそ
良
(
よ
)
けれ、世間
自
(
おの
)
ずから有為の男子に乏しからざるを、彼一人のために
齷齪
(
あくせく
)
する事の
愚
(
おろ
)
かしさよと、思いも寄らぬ勧告の腹立たしく
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
斷割
(
たちわら
)
れ
鉛
(
なまり
)
の
熱湯
(
ねつたう
)
は
愚
(
おろ
)
か
水責
(
みづぜめ
)
火責
(
ひぜめ
)
海老責
(
えびぜめ
)
に成とも白状なすまじと覺悟せしが御奉行樣の
御明諭
(
ごめいゆ
)
により今ぞ我が
作
(
な
)
せし惡事の
段々
(
だん/\
)
不殘
(
のこさず
)
白状
(
はくじやう
)
せんと長庵が其決心は殊勝にも又
憎體
(
にくてい
)
なり
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
もしくはまるまる縁の無い
愚
(
おろ
)
かな
所作
(
しょさ
)
をして見せて、観衆を大いに笑わせるという演技法は奇抜なものだが、私などから見ると、是は対照によって前の正しいものの印象を深め
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
使
(
つか
)
って見ると、少し
愚
(
おろ
)
かしい
点
(
とこ
)
もあるが、如何にも親切な女で、
毎
(
いつ
)
も
莞爾々々
(
にこにこ
)
して居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
とぴよこ/\
出掛
(
でか
)
けましたが、
愚
(
おろ
)
かしい
故
(
ゆゑ
)
萬屋
(
よろづや
)
五
左衛門
(
ざゑもん
)
の
表口
(
おもてぐち
)
から
這入
(
はい
)
ればよいのに、
裏口
(
うらぐち
)
から
飛込
(
とびこ
)
んで、二
重
(
ぢう
)
の
建仁寺垣
(
けんねんじがき
)
を
這入
(
はい
)
り、
外庭
(
そとには
)
を
通
(
とほ
)
りまして、
漸々
(
やう/\
)
庭伝
(
にはづた
)
ひに
参
(
まゐ
)
りますと
にゆう
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
源太は腹に戸締りのなきほど
愚
(
おろ
)
かならざれば、
猪口
(
ちょく
)
を
擬
(
さ
)
しつけ高笑いし、何を云い出した清吉、寝ぼけるな我の前だわ、三の切を出しても初まらぬぞ、その手で女でも口説きやれ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
蚊やり……と世間さまは
暑熱
(
しょねつ
)
と闘うに忙しいのだが、この長庵の宅と来たら、これはまた恐ろしく涼しい限りで、家具と名のつくものは
愚
(
おろ
)
か、医者の道具らしい物も何一つもなく
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
王は嬰寧に
愚
(
おろ
)
かな所のあるのを残念に思ったが、どうすることもできなかった。
嬰寧
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
蟷螂
(
とうろう
)
の
竜車
(
りゅうしゃ
)
に刄向うよりもなお
愚
(
おろ
)
かしき手向いだてと思われるのに、引きもせずじりじりと、爪先立ちになって、九本の刄を
矢来目陣
(
やらいめじん
)
に備えながら、退屈男に押し迫ろうとしましたので
旗本退屈男:03 第三話 後の旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
それにもかかわらず、
直焼
(
じかや
)
きを誇るがごとき、笑うに耐えたる
陋習
(
ろうしゅう
)
というべく、一刻も早く改めねばなるまい。のみならず、養殖のうなぎをもって、うなぎの論をぶつのは
愚
(
おろ
)
かと申すべきだろう。
握り寿司の名人
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
この種の美しさは、この国の人々の間に在っては余りにも
稀
(
まれ
)
なので、子路のこの
傾向
(
けいこう
)
は、孔子以外の誰からも徳としては認められない。むしろ一種の不可解な
愚
(
おろ
)
かさとして映るに過ぎないのである。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
が、顔を見ると、光のない鈍い眼、小鼻の広い平たい鼻、硬そうな黒い皮膚がどうしても
愚
(
おろ
)
かものらしく彼れを見させた。他人から慈愛を寄せられそうな
潤
(
うる
)
みや光は、身体のどこにも持っていない。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
あれの美しさに
惹
(
ひ
)
きつけられて、我も我もとこの儂のところに云い寄って来ては、
執拗
(
しつこ
)
くあれを所望したが、
誰
(
だれ
)
も彼もみな一時の浮気心であれを我物にしようとする色好みの
愚
(
おろ
)
か
者
(
もの
)
ばかりなのじゃ。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
二世
(
にせ
)
は
愚
(
おろ
)
か
三世
(
さんぜ
)
までもと
思
(
おも
)
ふ
雪枝
(
ゆきえ
)
も、
言葉
(
ことば
)
あらそひを
興
(
きよう
)
がつて
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
悟
(
さと
)
らなかったのは何と云うもったいないことかと自分の
愚
(
おろ
)
かさが省みられたされば自分は神様から眼あきにしてやると云われてもお断りしたであろうお師匠様も自分も盲目なればこそ眼あきの知らない幸福を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
愚
(
おろ
)
かにもその晩、ぼくはよく
眠
(
ねむ
)
れませんでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
自分にははなはだ
愚
(
おろ
)
かなる方法であると思った。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
しかし、何という
愚
(
おろ
)
かな私だったことでしょう。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「ああ、これが、ほんとうの
芸術家
(
げいじゅつか
)
というものなのか。」と、いままでの、
自分
(
じぶん
)
の
愚
(
おろ
)
かさを
恥
(
は
)
じながら、
茫然
(
ぼうぜん
)
と
見
(
み
)
つめていました。
しいたげられた天才
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
平次も續いてお勝手から、水下駄を突つかけて外へ出ましたが、その邊には若くて美しい女は
愚
(
おろ
)
か、野良犬一匹姿を見せません。
銭形平次捕物控:226 名画紛失
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
猶
(
なほ
)
その
愚
(
おろ
)
かな
母
(
はゝ
)
に
對
(
たい
)
してそゝぎ
得
(
う
)
るだらうか? あゝ
若
(
も
)
しもさうだとしたならば——?
彼女
(
かのぢよ
)
はたゞ
子供
(
こども
)
のために
無慾
(
むよく
)
無反省
(
むはんせい
)
な
愛情
(
あいじやう
)
のために
悔
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
それをお前は知ってるくせに。
愚
(
おろ
)
か者!
未練
(
みれん
)
なわしよ。あゝわしはもう自分に頼る気もなくなった。どうしてわしは死んでしまわないのだ。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
“愚”の意味
《名詞》
(グ)おろかなこと。ばかなこと。
《代名詞》
(グ)自分の謙称。
(出典:Wiktionary)
愚
常用漢字
中学
部首:⼼
13画
“愚”を含む語句
愚痴
愚鈍
愚人
頑愚
愚昧
迂愚
愚物
愚者
愚圖
愚僧
愚父
愚哉
拾遺愚草
愚弄
愚図愚図
愚図
愚図々々
愚癡
痴愚
愚直
...