山伏やまぶし)” の例文
山家やまがあたりにむものが、邸中やしきぢう座敷ざしきまでおほききのこいくつともなくたゝるのにこうじて、大峰おほみね葛城かつらぎわたつた知音ちいん山伏やまぶしたのんでると
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
山伏やまぶし姿すがたにやつしてはおいでになりますが、あなたがたはきっと酒呑童子しゅてんどうじ退治たいじするために、京都きょうとからおくだりになった方々かたがたでしょう。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
目見めみえ以上、五百石以下の未決囚は揚座敷へ。お目見以下、御家人、僧侶、山伏やまぶし、医者、浪人者は、ひと格さがった揚屋へ入れられる。
顎十郎捕物帳:08 氷献上 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
徘徊はいくわいめぐり/\て和歌山わかやまの平野村と云へる所にいたりける此平野村に當山派たうざんは修驗しゆけん感應院かんおうゐんといふ山伏やまぶしありしが此人甚だ世話好せわずきにて嘉傳次を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「本人は山伏やまぶし崩れだと言つてはゐますがね。野伏せり見たいな野郎で、八祈祷きたう禁呪まじなひも心得てゐる上に法螺ほらと武術の達人で」
そはこの話にとどまらず、安珍あんちん清姫きよひめの話を翻訳したる「紀州きしう日高ひだかの女山伏やまぶしを殺す事」も然り、くずの話を翻訳したる、「畜類人とちぎ男子をのこを生む事」
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
法華行者ほっけぎょうじゃ山伏やまぶしなどの長い念珠ねんじゅを首に掛ける者も、絶無ではなかったろうが、あの頃はそう普通でなかった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
山の総円そうえんさんに来て貰って、紙捩こよりで封じて貰った、総円さんは飲んだくれのようなやくざ山伏やまぶしと人はいうけれども、俺はつくづくと今度だけはえらいと思った
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
が、谷の入り口から四里の間と云うものは、全くみちらしい路のないおそろしい絶壁ぜっぺきの連続であるから、大峰修行の山伏やまぶしなどでも、容易にそこまでは入り込まない。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
伝説では山伏やまぶしの名はべんねんといって、板敷山の山路で聖人に切りかかると、そのつど聖人の姿はかき消えたということになっており、そんな絵を見たこともある。
加波山 (新字新仮名) / 服部之総(著)
「古来山に宿るものは山賊やまがつ山伏やまぶしたぐいにかぎります。豊臣秀吉公や徳川家康公が富士登山をしたという史実がございますか? 大名だいみょう狩座かりくらのほかに山野を跋渉ばっしょういたしません」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「それは、あの、法螺貝ほらがひを吹いて、御祈祷ごきたうをいたします、山伏やまぶしの一人でございました。」
岩を小くする (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
すこし銭あるものはさとより山伏やまぶしをたのみていのらすもあり、されば九人にして十人はする也。此ゆゑに秋山の人他所へゆきてはうそうありとしれば、何事の用をもすてにげかへる也。
藤作 今度ござらっしゃったのは金比羅こんぴらさんの巫女さんで、あらたかなもんやってな。神さまが乗りうつるんやていうから、山伏やまぶしの祈祷とは違うてな、試してみたらどんなもんですやろ。
屋上の狂人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「それがその……なんとも手のつけられねえ強情ッ張りな山伏やまぶしなんでして」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山伏やまぶしというものはこんな日にこそ声を出して泣きたくなるものだ」
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
先生の郷里が大分県の英彦山えひこさんの附近であることはたしかだったし、また、前身が山伏やまぶしだったとか、少くも父の代までは山伏稼業だったとかいうことが、どこからかまことしやかに伝えられていたので
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
久野は丹後の国において幽斎公に召し出され、田辺御籠城ごろうじょうの時功ありて、新知しんち百五十石たまわり候者に候。矢野又三郎介錯いたし候。宝泉院は陣貝吹じんがいふき山伏やまぶしにて、筒井順慶つついじゅんけいの弟石井備後守吉村いしいびんごのかみよしむらが子にそろ
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一休と山伏 ある日のこと、ある山伏やまぶしが、一休和尚おしょうに向かって
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
さてここに、鞍馬寺くらまでら山伏やまぶし安珍あんちんというのがあった
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
中にもせいの高き山伏やまぶし 翁
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
祖父殿おんぢいどんはの、山伏やまぶし姿すがたしたたび修業者しゆげふじやが、道陸神だうろくじんそば病倒やみたふれたのを世話せわして、死水しにみづらしつけ……修業者しゆげふじやならつたひます。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さていよいよ大江山おおえやまけてつことにきめると、頼光らいこうはじめ六にん武士ぶしはいずれも山伏やまぶし姿すがたになって、あたま兜巾ときんをかぶり、篠掛すずかけました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かくて名主甚左衞門は寶澤をまねき申渡しける樣はさて先達せんだつて師匠の死去しきよせしより當村に山伏やまぶしなしかつまた感應院には子もなければ相續さうぞくすべき者なし依て今日村中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
仏法の一派と認めている修験しゅげん山伏やまぶしとよく類似し、後者もまたこれを承認して、時としてはその道の祖師であり守護神ででもあるかのごとく、崇敬しかつ依頼する風のあったことは
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いで、戰場せんぢやうのぞときは、雜兵ざふひやういへど陣笠ぢんがさをいたゞく。峰入みねいり山伏やまぶしかひく。時節じせつがら、やり白馬しろうまといへば、モダンとかいふをんなでも金剛杖こんがうづゑがひととほり。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
童子どうじはこういって、おおぜいの腰元こしもと家来けらいにいいつけて、さけさかなをはこばせました。酒呑童子しゅてんどうじはそれでもまだ油断ゆだんなく、六にん山伏やまぶしためしてみるつもりで
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それから久しい以前より問題にしている旅の女性、みことか歌比丘尼うたびくにとかいうものの地方に与えた影響や、験者げんじゃ山伏やまぶしという一派の宗教家の、常人じょうじんの上に振うていた精神的威力など
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
つぎ候樣村中むらちう相談さうだんの上申聞候にかれ幼年えうねんながら發明はつめいにて我々へ申候には山伏やまぶし艱行苦行なんぎやうくぎやうする者にて幼年の私し未だ右等みぎら修行しゆぎやうも致さず候へばしばら他國たこく致し苦行くぎやうを修め候上立戻たちもど師匠ししやうあと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
山伏やまぶしの首が、高く、とざした門を、上から俯向うつむいて見込む時、小法師こほうしの姿は、ひよいと飛んで、棟木むなぎしゃがんだ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
阿蘇あそ那羅延坊ならえんぼうなどという山伏やまぶしは、山家に住みながら川童予防の護符を発行した。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
うちこそ、みねくもに、たにかすみに、とこしへふうぜられて、自分等じぶんら芸術げいじゆつかみ渇仰かつがうするものが、精進しやうじんわしつばさらないでは、そま山伏やまぶし分入わけいこと出来できぬであらう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
吉野の下市の町近くには、善鬼垣内ぜんきかいとという地名もあって、この地に限らず五鬼の出張が方々にありました。諸国の山伏やまぶしの家の口碑には、五流併立を説くことがほとんと普通になっています。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かぶとのやうな額皺ひたいじわの下に、おそろしい目を光らしながら、山伏やまぶしは赤い鼻をひこ/\と笑つたが
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
例は幾らもあろうが私はここに山伏やまぶしのことを考えてみる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
りやくしてまをすのですが、其處そこ案内あんないもなく、づか/\とはひつてて、立状たちざま一寸ちよつとわたし尻目しりめにかけて、ひだりについた一にんがあります——山伏やまぶしか、隱者いんじやか、とおも風采ふうさいで、ものの鷹揚おうやう
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
これにぎよつとしながら、いま一祈ひといのいのりかけると、そのきのこかさひらいてスツクとち、をどりかゝつて、「ゆるせ、」と𢌞まは山伏やまぶしを、「つてまう、つてまう。」とおびやかすのである。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「それ、山伏やまぶしつぱ山伏やまぶしなり、なん殊勝しゆしようなか。」と威張ゐばつて、兜巾ときんかたむけ、いらたかの數珠じゆずみにんで、いのるほどに、いのるほどに、いのればいのるほど、おほききのこの、あれ/\おもひなしか
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
山伏やまぶし兜巾ときんいたゞいたやうなものぢや、としやうれぬことふ。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と云つた山伏やまぶしは、真赤な鼻をつまむやうに、つるりとでて
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)