姿勢しせい)” の例文
何かが破裂はれつしたのだ。客はギクリとしたようだったが、さすがは老骨ろうこつだ。禅宗ぜんしゅう味噌みそすり坊主ぼうずのいわゆる脊梁骨せきりょうこつ提起ていきした姿勢しせいになって
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
電燈はつけたままだったし、お祖母さんの姿勢しせいは、便所に立つまえとはいくぶんちがっていたが、やはり二人ともつっ伏したままだった。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
せめて、もうすこしらくな姿勢しせいにでもならなければたまりませんが、そのためには、ガチョウのせなかによじのぼるよりほかありません。
不図ふと自分じぶんかえってると、おじいさんも、また守護霊しゅごれいさんも、先刻せんこく姿勢しせいのままで、ならんで神壇しんだんまえってられました。
『それは舞踏ぶたう第一だいいち姿勢しせいだわ』とつたものゝあいちやんは、まつた當惑たうわくしたので、しきりに話頭はなしへやうとしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ジャンセエニュ先生せんせいは高い椅子いす姿勢しせい真直まっすぐにして腰掛こしかけていらっしゃいます。厳格げんかくですけれど、やさしい先生せんせいです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
そしてその種名の cernua は点頭てんとう、すなわち傾垂けいすいの意で、それはその花の姿勢しせいもとづいて名づけたものだ。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
巫女くちよせばあさんの姿勢しせいはこはなれて以前いぜんふくしたとき抑壓よくあつされたやうにつてすべてがにはかにがや/\とさわした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
花前はそういう下から、すぐはじめの赤牛からしぼりにかかった。花前の乳しぼる姿勢しせいははなはだ気にいった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
となりには黒い洋服ようふくをきちんとたせいの高い青年がいっぱいに風にかれているけやきの木のような姿勢しせいで、男の子の手をしっかりひいて立っていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
料理りょうりをはこんで、もういちど客室きゃくしつにきてみると、客はまだ、さっきとおなじ姿勢しせいまどのほうをむいていた。
受けとって押しいただいた民部みんぶは、駕籠かごの上に立ったまま、八ぽうの戦機をきッと見渡したのち、おごそかに軍師ぐんしたるの姿勢しせいをとり、さいのさばきもあざやかに
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つむぎあはせ、前のめりになつて、佛壇は開いたまゝ、——その佛壇は駒込町の往來に背を向けて、六疊一パイにはめ込みになつた豪勢なもの、拜んだ姿勢しせいが、佛のいま
つめている呼吸こきゅうが、いまにも、うううともれて、うなりだしそうにかたくなっている。気をつけのその姿勢しせいは、だれが見たって笑わずにいられるものではなかった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
カーキいろふく戦闘帽せんとうぼうかぶって、あかいたすきをかけた父親ちちおや肩幅かたはばひろ姿勢しせい毅然きぜんとして、まるはたったみんなからおくられて、平常へいぜいは、あまりひととおらないさびしいみち
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
とびおりの姿勢しせいになり、下へ足がついたときに、ピョイピョイと、とぶようにしました。
怪人と少年探偵 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
中根なかねはあわてて無格好ぶかくかう不動ふどう姿勢しせいをとつたが、そのかほには、それがくせけたニヤニヤわらひをうかべてゐた。——またやられるな‥‥とおもつて、わたし中根なかねのうしろ姿すがたた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
足のかたちでもこし肉付にくつきでも、またはどうならちゝなら胸なら肩なら、べて何處どこでもむツちりとして、骨格こつかくでも筋肉きんにくでも姿勢しせいでもとゝのツて發育はついくしてゐた。加之それにはだしろ滑々すべ/″\してゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
白服しろふく姿勢しせいで、ぴたりとまつて、じろりとる、給仕きふじ氣構きがまへおそれをなして
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
吉之丞はぐったりとなり、あおのけに寝て胸の上で手をんだ、いつものらく姿勢しせいをとると、ひょっとすると、明日は眼がさめないのかも知れないと思いながら、うつらうつらしだした。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
『さうか、』とつて志村しむら其儘そのまゝふたゝこしろし、もとの姿勢しせいになつて
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
なに艦長かんちやうめいかんとて、姿勢しせいたゞしててる三四めい水兵すいへいは、先刻せんこくより熱心ねつしん武村兵曹たけむらへいそうかほ見詰みつめてつたが、そのうち一名いちめい一歩いつぽすゝでゝ、うや/\しく虎髯大尉こぜんたいゐ艦長かんちやうとにむかひ、意味いみあり
何時いつ?」と御米およね湯呑ゆのみをつとまへしたとき姿勢しせいまゝいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さまざまな誇張的こちやうてき姿勢しせい活躍くわつやくしてるさまがゑがかれてある。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そこでぼくはみんなに知らせた。何だか手を気をけの姿勢しせいで水を出たり入ったりしているようで滑稽こっけいだ。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
朝倉先生は、かなり永いこと同じ姿勢しせいで立っていたが、やがて次郎の背をなでるようにして両手をはなし、「君がこれから真剣に考えなけりゃならん問題は——」
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それはしろっぽい、幾分いくぶんふわふわしたもので、そして普通ふつう裸体はだかでございます。それが肉体にくたい真上まうえ空中くうちゅうに、おな姿勢しせい横臥おうがしている光景ありさまは、けっしてあまりよいものではございませぬ。
彼女は身体を楽な姿勢しせいにして、すみ切った細い声で、彼女の幼少の頃からの、不思議な思出おもいでを物語るのであった。私はじっと耳をすまして、長い間、殆ど身動きもせずそれに聞き入っていた。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この質問しつもんには、ドードてう大思想家だいしさうかでないためこたへることが出來できず、一ぽんゆび其額そのひたひおさえ、ながあひだつてました(よくにある沙翁シエークスピアのやうな姿勢しせいをして)其間そのあひだのものもみなだまつてつてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
しかもその姿勢しせいで男先生は歌いだしたのである。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
アルプスの探険たんけんみたいな姿勢しせいをとりながら、青い粘土ねんど赤砂利あかじゃりがけをななめにのぼって、せなかにしょった長いものをぴかぴかさせながら、上の豆畠まめばたけへはいってしまった。
さいかち淵 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼は思わずこぶしを握って、はね起きそうな姿勢しせいになったが、すぐまたぐったりとなった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
二つのひれをちょうど両手りょうてをさげて不動ふどう姿勢しせいをとったようなふうにして水の中からび出して来て、うやうやしく頭を下にして不動ふどう姿勢しせいのまままた水の中へくぐって行くのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
二人は、それからかなり永いこと同じ姿勢しせいでいた。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)