始終しじう)” の例文
「お前は始終しじう二階にゐて、皆んなと顏を合せてゐた筈ぢやないか。薄暗い四疊半にゐるのを、お前と間違へるのは變ぢやないかな」
しかしそれをたれてはなかつた。それでもかれ空虚から煙草入たばこいれはなすにしのびない心持こゝろもちがした。かれわづか小遣錢こづかひせんれて始終しじうこしにつけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
元二げんじは、えず、うたを、はだへてつてて、ひとにつくやうに、つかないやうに、ちら/\としては始終しじうぢつる。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
目懸惡漢共に付込れし所僥倖さいはひ貴公樣あなたさま御庇蔭おかげを以て一命を無難に助かり候事呉々有難く候と涙を流してかたりければ旅の武士は始終しじう樣子やうす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
茶店ちやみせ老人夫婦らうじんふうふとは懇意こんいつて『旦那だんなまた石拾いしひろひですか。始終しじうえては、りますまい』とわらはれるくらゐにまでなつた。
想像さうざうすれば、始終しじう青一色チンイイソオをさせたり、滿貫役まんぐわんやくをつけさせたりするのだらうが、それが自然しぜんりの阿堵物あとぶつになることはふまでもない。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かねて見置みおきしすゞり引出ひきだしより、たばのうちをたゞまい、つかみしのちゆめともうつゝともらず、三すけわたしてかへしたる始終しじうを、ひとなしとおもへるはおろかや。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つたりつたりするのは、始終しじうのことでせう。わたしつてもましたけれど、頭脳あたま普通ふつうぢやないやうです。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ミラア先生が學課をやつてあなたに質問しつもんしてゐる時、あなたは決して氣を散らしたりしてゐないの。ところが私となると始終しじうどつかへ氣が散つてゐるのよ。
くわふるに橄欖島かんらんたう附近ふきんには、始終しじう有名いうめいなる海賊船かいぞくせん横行わうかうし、また屡々しば/\歐洲をうしう諸國しよこく軍艦ぐんかん巡航じゆんかうしてますから、其邊そのへん海底戰鬪艇かいていせんとうてい機關きくわん活動くわつどううしなつて
始終しじう人間にんげんつくつた都會とくわいなかばかりを駕籠かご往來わうらいしてゐた玄竹げんちくが、かみつくつた田舍ゐなかこゝろゆくまでつたときは、ほんたうの人間にんげんといふものがこれであるかとかんがへた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
うはさには毎度まいどうけたまはつてりましたよ、立派りつぱなお住宅すまひでおにはう、なにうと、くまア、んでございますよ、名草屋なくさやきん七といふ道具屋だうぐやまゐりまして始終しじううはさでございますよ。
何方どちちかと謂へば、落着おちつついた、始終しじう やはらかなみたゝよツてゐる内氣うちきらしい眼だ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
B まつたく。始終しじう葉書はがきくせをつけると持藥ぢやくやうなものだよ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
「そりや、はあ、さうだが」たゞこれだけいつて寡言むくち卯平うへい自分じぶんたといふやう始終しじうくぼんだしがめてからは煙管きせるはなさなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
供に連ては道中が心遣ひなれば貴樣何卒なにとぞ一所に行呉ゆきくれよと餘儀なく頼みけるに長八もいやとも云れぬ親分長兵衞の事なれば始終しじう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
で、私は異郷いきやうに遠く旅出たびでしてながらあんまり出歩くこともせずに、始終しじう机に向つてはその執筆に專心せんしんした。私は眞劍しんけんに、純眞じゆんしんに努めつづけた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
口惜くやしい、畜生ちくしやうめ、けだものめ、ト始終しじうさうおもつて、五ねんも八ねんたなければ、真個ほんとうわかることではない、おぼえられることではないんださうで、おなくんなすつた
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
思慮しりよふか大佐たいさすら小首こくびかたむけたほどで、わたくしむねには、始終しじういてはなれぬ疑問ぎもんであつたので、いま機會きくわい
親分、あつしが、子さらひや強請ゆすりをするかしないか考へて見て下さい。あらゆる惡事の中でも、人の子をさらつて金を奪るほど罪の深いことはないと、親分が始終しじう言ふのを
もし好きなのだつたら、あんなに始終しじう微笑を浮かべて見せなくも、あんなに繁々しげ/\と視線を送らなくも、あんなに態度を氣取つたり、あんなに樣々な愛嬌をつくつたりしなくもいゝのだ。
店臺みせだいへはあつころにはありおそふのをいとうて四つのあしさらどんぶりるゐ穿かせて始終しじうみづたゝへてくことをおこたらないのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あづかりし事又其身も路金ろぎんにとて五十兩の金をもらひしを辭退じたいすれども聞入なければ據ころなく受納めたることまで始終しじうの樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其事そのこと、おまへはゝとは、これ永遠えいゑんわかれとなるかもれませんが、さひはひにおまへ生命いのちたすかつたなら、これからときに、始終しじうその言葉ことばわすれず、誠實まことひととならねばなりませんよ。
相手方あひてかた勿論もちろん仲間内なかまうちおほく、始終しじうかほあはせるのが六だん佐佐木茂索ささきもさく、三だん和木わぎせいらう、三だん池谷いけのやしんらうなどで、ときに六だん菊池寛きくちくわん、五だん廣津和郎ひろつかづを、七だん川崎備寛かはさきびくわん、六だん濱尾はまをらう、四だん古川緑波ふるかはりよくは
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「はあ、北海道ほくかいだうへは始終しじう往復わうふくをするですが、今度こんど樺太からふとまでくですて。」
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)