たすけ)” の例文
その際地誌の類たとえば「風土記」とか近くは『郡村誌』というようなもののたすけを借りれば、案外楽に断定し得る場合が少くない。
上州の古図と山名 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
すると天のたすけでございますか、時雨空しぐれぞらの癖として、今までれていたのがにわかにドットと車軸を流すばかりの雨に成りました。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
余は英語に通ずる駅員のたすけりて、ようやくのことこの大男を無事に京都へ送り届けた事とは思うが、その時の不愉快はいまだに忘れない。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何故って、ここはお前……お前が何時かこむらを返してしずみ懸った時に、おらがその柔かい真白な体を引抱ひんだいてたすけ揚げたとこだ。
片男波 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
道徳は人生を経理するに必要だろうけれど、人生の真味を味わうたすけにはならぬ。芸術と道徳とはついに没交渉である。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
やぶりし者なれば捨置すておかれずとて既に兩人共一命にも關はる處ををつと文右衞門がなさけに依て兩人が命をたすけんと二十兩の金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
むすめはひい/\と泣きながら、「姉様謝罪おわびをして頂戴よう、あいたゝ、姉様よう」と、あはれなる声にてたすけを呼ぶ。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
(手にて拒む如きふりし、暫くを置き、温かに。)僕は幾らか姉さんのたすけになりたいと思うのです。
大声あげてよばらばたすけくれべし、それにつけてもお伊勢さまと善光寺さまをおたのみ申よりほかなしと、しきりに念仏となへ、大神宮をいのり日もくれかゝりしゆゑ
わたくし誠心まごゝろもつ彼等かれらしゆくします、彼等かれらためよろこびます! すゝめ! 同胞どうばう! かみ君等きみらたすけたまはん!
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わたくしは何とおっしゃっても彼奴あいつのいるそばへ出て行く事は出来ません。もしか明日あしたの朝起きて見まして彼奴あいつが消えて無くなっていれば天のたすけというものでございます。
政治的の平等と自由を主張する事は思想の上にデモクラシーを実現するたすけともなることなれば
平民道 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
おつぎははりつやうにつてからはき/\としてにはかにませてたやうにえた。おつぎはもう十六である。辛苦しんくあひだだけ去年きよねんからではほど大人おとなびて勘次かんじたすけるかれない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かわいそうに昨日の昼から何もたべないで、一晩中穴の底でたすけを呼んでいたのですから、もうグッタリつかれてしまって、あの元気なチャメのター公のおもかげは、どこにもありません。
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
合点がてんならねば、是是これこれ御亭主、勘違い致さるゝな、お辰様をいとしいとこそ思いたれ女房に為様しようなぞとは一厘いちりんも思わず、忍びかねて難義をたすけたるばかりの事、旅の者に女房授けられてははなはだ迷惑。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ちかづいてると艇中ていちうには一個いつこ人影ひとかげもなく、海水かいすいていなかばを滿みたしてるが、なにもあれてんたすけうちよろこび、少年せうねんをば浮標ブイたくし、わたくし舷側げんそくいておよぎながら、一心いつしん海水かいすい酌出くみだ
かつ思えらく古昔いにしえの英雄或は勇み或は感謝しつつ世を去れり、余も何ぞひとしく為しあたわざらんやと、ことに宗教のたすけあり、復活ののぞみあり、もし余の愛するものの死する時には余はその枕辺まくらべに立ち
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「ほう、床に転がっているこの丸太ん棒が邪魔じゃまをしているから、檻が床までぴったり下らないのだ。これは天のたすけだ。一彦君、君は小さいから、この檻と床との隙間をくぐって檻から這出はいだしてごらん」
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
亦長凡一里の伏流ふくりう発見はつけんしたり、そのなる一は一行の疲労ひらうするにり、一は大に学術上のたすけあたへたり、つゐに六千呎の高きにいたりて水まつたく尽き、点々一きくの水となれり、此辺の嶮峻けんしゆん其極度にたつ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
もう此所ここで己はつかえる。誰のたすけを借りて先へ進もう。1225
それを知るために、この際Hさんのたすけを借りようとすれば、勢い万事を彼の前に投げ出して見せなければならなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この徒渉は深さ腰に達し、かつ水勢が強いので、長次郎のたすけを借りても尚お困難を感じた。元来徒渉すき場所ではないのであるが止むを得なかったのである。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
老夫らうふいはく、人の心は物にふれてかはるもの也、はじめ熊にあひし時はもはや死地こゝでしす事と覚悟かくごをばきはめ命もをしくなかりしが、熊にたすけられてのちは次第しだいに命がをしくなり
わたくし誠心まごころもっ彼等かれらしゅくします、彼等かれらためよろこびます! すすめ! 同胞どうぼう! かみ君等きみらたすけたまわん!
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
たすけんといふ心底しんていうれしけれども無益むえきの事なり我は其外そのほかにもとがおほければとてものがれぬなるにより尋常じんじやうとがかうむらんと申にぞ喜八は差俯向さしうつむいことばなし大岡殿暫時兩人りやうにんことば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さざなみや滋賀県に佗年月わびとしつきを過すうち、聞く東京に倉瀬とて、弱きを助くる探偵ありと、雲間に高きお姓名なまえの、かり便たよりに聞ゆるにぞ、さらばたすけを乞い申して、下枝等を救わむと
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そういう風にその可哀相な人はわたしに便たよるのだから、わたしはまたその人のたすけになるのを自分の為事にしているのです。それが今お前に言われて見れば、わたしのおっ母さんなのね。
どこかに一時はみがたてたる光の残れるがたすけをなせるなるべし。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
人をおたすけなされたので、神様が先生様をお助なされた。
わが見るは動く世ならず、動く世を動かぬ物のたすけにて、よそながらうかがう世なり。活殺生死かっさつしょうじ乾坤けんこん定裏じょうり拈出ねんしゅつして、五彩の色相を静中に描く世なり。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
燃残もえのこりたるたいまつ一ツをたよりに人も馬もくびたけ水にひたり、みなぎるながれをわたりゆくは馬をたすけんとする也。
當分たうぶん押込おしこめおきなほたすけ候半んと存ぜし中相役の立花左仲と申者竊に主人しゆじんと申合せ絞殺しめころし其儀に付右等の儀は全くあとにてうけたまはりたることゆゑ萬事の儀ども相違さうゐ仕つりて候と申たてけるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たのみます、頼みます、)というさえたすけを呼ぶような調子で、取縋とりすがらぬばかりにした。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昔から偶然の事が軍隊のたすけになったことは往々有る。
不思議ふしぎとおもひながら身をきよめて御はた織果おりはて、その父問屋へ持去もちさり、往着ゆきつきしとおもふ頃娘時ならずにはか紅潮つきやくになりしゆゑ、さては我がなげきしをきゝてかのもの我をたすけしならんと
たのみます、たのみます、)といふさへたすけぶやうな調子てうしで、取縋とりすがらぬばかりにした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
兄がいはく、光る石をひろしは我がくはだてなり、なんぢは我がちからたすけしのみなり、光る石は親のゆづりにあらず、兄が物なり。家財かざいわかつならばおやのゆづりをこそわかつべけれ、あたふまじ/\。
学士も我を忘れてたすけを呼んだのである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人はかじきに雪をこぎつゝ(雪にあゆむを里言にこぐといふ)たがひこゑをかけてたすけあひからうじてたふげこえけるに、商人あきひと農夫のうふにいふやう、今日の晴天に柏崎かしはざきまでは何ともおもはざりしゆゑ弁当べんたうをもたず