鳥居とりゐ)” の例文
ひげむしやの鳥居とりゐさまがくちから、ふた初手しよてから可愛かわいさがとおそるやうな御詞おことばをうかゞふのも、れい澤木さわぎさまが落人おちうど梅川うめがはあそばして
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
入口いりぐちいし鳥居とりゐひだりに、就中とりわけくらそびえたすぎもとに、かたちはついとほりでありますが、雪難之碑せつなんのひきざんだ、一石碑せきひえました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
肩を叩かれて私が目を見上げますと左手に大きい鳥居とりゐがあるのでした。母は車上で手を合せてはいをして居ました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
とうさんのおうちうらにも、のお百姓ひやくしやう神樣かみさままつつてありました。あか鳥居とりゐおくにあるちひさなやしろがそれです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
行手ゆくてには、こんもりとした森が見えて、銀杏いてふらしい大樹が一際ひときはすぐれて高かつた。赤くつた鳥居とりゐも見えてゐた。二人はそれを目當てに歩いた。お光は十けんあまりもおくれて、沈み勝にしてゐた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
一直線の堀割ほりわりはこゝも同じやうに引汐ひきしほきたな水底みなそこを見せてゐたが、遠くのはたけはうから吹いて来る風はいかにもさわやかで、天神様てんじんさま鳥居とりゐが見えるむかうのつゝみの上にはやなぎ若芽わかめが美しくひらめいてゐるし
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
鳥居とりゐのうへにのつかれば
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
さアん鳥居とりゐやぶなか
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
のこぎりいて、をんな立像りつざうだけいてる、と鳥居とりゐは、片仮名かたかなのヰのつて、ほこらまへに、もり出口でぐちから、田甫たんぼなはてやまのぞいてつであらう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さいは海軍かいぐん鳥居とりゐ知人ちじん素性すぜうるからで利發りはつうまれつきたるをとこあるよし、其方そなた異存いぞんなければれをもらふて丹精たんせいしたらばとおもはるゝ、悉皆しつかい引受ひきうけは鳥居とりゐがして
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
浴衣を着て涼台すゞみだいへ出ますと、もう祭提灯まつりちやうちんで街々が明くなつて居ます。私の町内の提灯は、皆かぶとの絵がかいてあるのでした。隣町は大と云ふ字、そのまた隣町は鳥居とりゐ玉垣たまがきの絵だつたと覚えて居ます。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
岩のうへより鳥居とりゐより
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
村一同むらいちどうことづけをたのまう。はしら一本いつぽんいたゞく……鳥居とりゐのな。……あといくらでも建立こんりふするから、とつてな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……かげくゞつてる、ほこらまへの、たふれかゝつた鳥居とりゐつた、何時いつときのか、注連縄しめなはのこつたのが、ふたツのたくつて、づらりとかゝつたへびえた……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二宮尊徳にのみやそんとくをうまつれる報徳神社はうとくじんじやまうづ。鳥居とりゐ階子はしごして輪飾わかざりをかくるさまなど、いたく神寂かんさびたり。
熱海の春 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みち太郎稻荷たらういなりあり、奉納ほうなふ手拭てぬぐひだうおほふ、ちさ鳥居とりゐ夥多おびたゞし。此處こゝ彼處かしこ露地ろぢあたりに手習草紙てならひざうししたるがいたところゆ、いともしをらし。それより待乳山まつちやま聖天しやうでんまうづ。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いまほこらぬまむかつてくさいこつた背後うしろに、なぞへに道芝みちしば小高こだかつたちひさなもりまへにある。鳥居とりゐ一基いつきそばおほき棕櫚しゆろが、五かぶまで、一れつならんで、蓬々おどろ/\としたかたちる。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それより無言むごんにて半町はんちやうばかり、たら/\とさかのぼる。こゝにひるくら樹立こだちなかに、ソとひと氣勢けはひするを垣間かいまれば、いし鳥居とりゐ階子はしごかけて、輪飾わかざりくるわか一人ひとり落葉おちばおきな二人ふたりあり。
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いづれ美人びじんにはえんなき衆生しゆじやうそれうれしく、外廓そとぐるわみぎに、やがてちひさき鳥居とりゐくゞれば、まる石垣いしがききふたかく、したたちまほりふかく、みづはやゝれたりといへども、枯蘆かれあしかやたぐひ細路ほそみちをかけて、しもよろ
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
道々みち/\は、みねにも、たににも、うしたところ野社のやしろ鳥居とりゐえた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)