首尾しゅび)” の例文
吸う者とができる。まあよかったよ! これでお千絵様の方さえ首尾しゅびよく運んでくれれば、万事上々吉。申し分のないところだが……
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あのちいさなのどが、よくもうごくものだ。どうもいままであれをきいていなかったのがふしぎだ。あれなら宮中でも、上上じょうじょうのお首尾しゅびじゃろう。」
百姓ひゃくしょうはそうくと小踊こおどりをして、さっそく殿様とのさま御殿ごてんへ行って、首尾しゅびよくたまの中へ絹糸きぬいととおしてお目にかけました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
その後久しく消息を聞かざりしが、またも例の幻術げんじゅつをもて首尾しゅびよく農学博士の令室れいしつとなりすまし、いと安らかに、楽しく清き家庭をととのえおらるるとか。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
亀井戸普門院かめいどふもんいん御腰掛松おこしかけまつ柳島妙見堂やなぎしまみょうけんどうの松、根岸ねぎし御行おぎょうまつ隅田川すみだがわ首尾しゅびまつなぞその他なおいくらもあろう。
いろいろと躊躇ちゅうちょしています。王子はしきりとおせきになります。しかたなくむねのあたりの一まいをめくり起こしてそれを首尾しゅびよく寡婦かふの窓から投げこみました。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
あと神様かみさまからうかがえば、これはそなたの一しん不乱ふらん祈願きがんが、首尾しゅびよくわしむねつうじたものじゃそうで、それとったときわしのうれしさはどんなであったか……。
張った立派な松があった。これが首尾しゅびまつといって有名なもの、此所は今の高等工業学校校内になっている
お参りにおでのたびに一寸ちょっと逢って上げて下さい、此方こっちでも首尾しゅびして待って居りますから、それも出来ずば、月に三度ずつも嬢様に逢って上げてくださるように願います
おせんを首尾しゅびよくにがしてやったあめなかで、桐油とうゆから半分はんぶんかおしたまつろうは、徳太郎とくたろうをからかうようにこういうと、れとわがはなあたまを、二三平手ひらてッこすった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
わたしの首っ玉には、ネクタイの代りに、ジナイーダのリボンが結んであった。そしてわたしは、首尾しゅびよく彼女の胴をつかまえるたびに、歓喜のさけびをあげるのだった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
あんまの師匠ししょうは、そういう弟子でしをとりたがらないのだが、マスノの骨折りで、彼のばあいは首尾しゅびよく住みこめたという。その磯吉に、マスノはまるで弟あつかいの口をきき
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「なアお絃、おめえもつくづく嬉しい気性だなあ。こうやって自分達は、野良犬みてえにのきの下に夜を明かしても、好いた同士の首尾しゅびを計ってやる。これは善根ぜんこんというものだ」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
首尾しゅび彼岸ひがんに達して滞在たいざい数月、帰航のき、翌年うるう五月を以て日本に安着あんちゃくしたり。
湾内へ泳ぎ込んだ鰡群を首尾しゅびよくると、漁師はそのうちから、腹に卵を抱えているものだけを選びだして、沼津へ送るのである。沼津には、技術秀逸なからすみ製造工場がある。
蜻蛉返り (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
ゆうしは浪のうえ御帰おんかえ御館おんやかた首尾しゅび如何いかゞ此方こなたにてはわすれねばこそおもいださずそろかしく
松の操美人の生埋:01 序 (新字新仮名) / 宇田川文海(著)
遠くは水神すいじん、近くは首尾しゅびの松あたりを納涼の場所とし、両国を遊覧の起点とする江戸で、柳橋につないである多くの屋形船やかたぶねは今後どうなるだろうなどと言って見せるのもこの人だ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
馬鹿力ばかぢからさえあれば鬼退治が出来ると思っているのがおかしいよ。おれはそんな力はないからうでっぷしで退治しようとは思わん。まぁこの頭一つで首尾しゅびよくやっつけて来て見せるさ。」
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ロレ まゝ、かへらしめ。(藥瓶を渡し)さらば、たくましう覺悟かくごして、首尾しゅびようこと爲遂しとげさッしゃれ。わしはまたさる法師ほふしに、おこと殿御とのごへの書面しょめんたせ、いそいでマンチュアまでりませう。
強盗の沢山居る中を行かなくちゃあならんから首尾しゅびよく其香それを買出して来たところが、果たしてラサ府まで持帰れるかどうか、その間に強盗のために商人あきんどられる者が多いそうです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ともかくも当時秀才の登竜門とうりゅうもんだった一高の入学が叶って、首尾しゅびよく一高の健児けんじになりすまし、あらゆる文芸運動から遠ざかって、もっぱら向陵こうりょうの健児ということで、野次馬学に精進した。
はるかなる向の坂をいまうねり蜿りのぼり候首尾しゅびまったきを、いかにも蜈蚣むかでと見受候。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一瞬間の後陳彩は、安々やすやす塀を乗り越えると、庭の松の間をくぐりくぐり、首尾しゅびよく二階の真下にある、客間の窓際へ忍び寄った。そこには花も葉も露に濡れた、水々しい夾竹桃きょうちくとうの一むらが、………
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それがし儀明日年来の宿望しゅくもう相達しそろて、妙解院殿みょうげいんでん(松向寺殿)御墓前において首尾しゅびよく切腹いたしそろことと相成り候。しかれば子孫のため事の顛末てんまつ書き残しおきたく、京都なる弟又次郎宅において筆を取り候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「おお帰ってきたな、首尾しゅびはどうだった?」と、いきなりたずねた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
首尾しゅびよく大蛇退治おろちたいじができましたので、さるはたいへんよろこびました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
与八と、みどりとは、その晩、首尾しゅびよく神尾の邸を脱け出して
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
子供に対する世話をも首尾しゅびよくしとげることであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「そうさ。首尾しゅびよくいったらおなぐさみ」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
おれはとにかく首尾しゅびよくりた。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
これからちょうど、その無尽むじんり札が始まろうというところ、身共の手に、首尾しゅびよく札が落ちたら、その上で御相談しようではないか
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このおさけをあげますから、酒呑童子しゅてんどうじにすすめていつぶした上、首尾しゅびよくおにくびってください。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
〽しばしたたず上手うわてより梅見返うめみがえりの舟の唄。〽忍ぶなら忍ぶならやみの夜は置かしやんせ、月に雲のさはりなく、辛気しんき待つ宵、十六夜いざよいの、うち首尾しゅびはエーよいとのよいとの。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さえあれば毎日でも首尾しゅびを見て此処こゝにいますから、時々逢って上げて下さいよ、どうも素気そっけないことねえ、表は人が通りますから、裏からいらっしゃいまし、左様なら
一歩一歩いっぽいっぽ首尾しゅびよく難局なんきょくけてきまして、いまではすっかりあかるい境涯きょうがいたっしてります。
おそらく父自身にしても、今ではもう別荘べっそうに残っていたくはなかったろう。ただし、父は、この際になってまた一悶着ひともんちゃくもちあげないように、首尾しゅびよく母を説きつけたらしかった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
モン長 それが首尾しゅびよう自白うちあけさせるやくてばよいが。……おく、さ、まゐらう。
また博士を送り調査の必要ありという思召おぼしめしなれば、私はその往来ゆききの旅費を支弁しその博士をして首尾しゅびよく法王に復命し得らるるようの便宜をきょうしますから、この二つうちその一つを聞いて戴きたい。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
夜目にも黒い首尾しゅびまつの前へ、さしかかろうとしているのです。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
思い出すさえ嬉し恥ずかしい首尾しゅびの松……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「そのかわり、この大役を首尾しゅびよくすましたら、伊那丸いなまるさまにおねがいして、そちも武士ぶしのひとりに取り立ててさすであろう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしておもからだ器用きよう調子ちょうしをとりながら、綱渡つなわたりの一きょく首尾しゅびよくやってのけましたから、見物けんぶつはいよいよ感心かんしんして、小屋こやもわれるほどのかっさいをあびせかけました。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
行手ゆくての岸には墨絵の如くにじんだ首尾しゅびの松。国貞は猪口ちょくを手にしたまま
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
わたくし良人おっと素朴そぼく物語ものがたりたいへんな興味きょうみもってききました。ことわたくし生存中せいぞんちゅうこころばかりの祈願きがんが、首尾しゅびよく幽明ゆうめいさかいえて良人おっと自覚じかくのよすがとなったというのが、にもうれしいことかぎりでした。
首尾しゅびまつ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その混雑の中を通って、天堂一角、おそるおそる船屋形ふなやかたの座所へ伺候しこうした。そして弦之丞をとり逃がしたことを首尾しゅび悪そうに言い訳するのだった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頼政よりまさ首尾しゅびよくばけものを退治たいじしたというので、御殿ごてんは上を下への大騒おおさわぎになりました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
首尾しゅびよく、わしぬすみのはなれわざをやりとげて、飛行天行ひこうてんこうかいをほしいままに、たちまちきたのは家康いえやす采地さいち浜松の城下。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おばあさんはおもいつづらを首尾しゅびよくもらったものの、それでなくってもおもいつづらが、背負せおってあるいて行くうちにどんどん、どんどんおもくなって、さすがに強情ごうじょうなおばあさんも
舌切りすずめ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「手はじめの御奉公、首尾しゅびよくまいって、民蔵めも面目至極めんもくしごくです。殿のご運をおよろこびもうしあげます」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)