“身震(みぶる)” の例文
膝からともすれば襦袢(じゅばん)がハミ出しますが、酣酔(かんすい)が水をブッかけられたように醒(さ)めて、後から後から引っきりなしに身震(みぶる)いが襲います。
彼は両眼(りょうがん)をカッと見開き、この一見意味のない台辞(せりふ)を嘔(は)きちらしていたが軈(やが)てブルブルと身震(みぶる)いをすると、パッと身を飜(ひるがえ)して駈け出した。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
年少(としわか)くて屈竟(くつきやう)な其(そ)の客(きやく)は、身震(みぶる)ひして、すつくと立(た)つて、内中(うちぢう)で止(と)めるのも肯(き)かないで、タン、ド、ドン!と其(そ)の、其處(そこ)の蔀(しとみ)を開(あ)けた。——
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
それをきくと私は、子供の私は、身震(みぶる)いするのを感じた。そこに行くには八幡様(はちまんさま)の森の大樹の下を通らねばならない。
吾輩はこの際限なき談話を中途で聞き棄てて、布団(ふとん)をすべり落ちて椽側から飛び下りた時、八万八千八百八十本の毛髪を一度にたてて身震(みぶる)いをした。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そよ風が暗い木立(こだち)の中でざわざわと身震(みぶる)いして、どこか地平のはるかな彼方(かなた)では、まるで独(ひと)り言(ごと)のように、雷(かみなり)が腹立たしげな鈍(にぶ)い声でぶつぶつ言っていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ちょうど、悪寒(おかん)に襲(おそ)われた患者(かんじゃ)のように、常磐木(ときわぎ)は、その黒(くろ)い姿(すがた)を暗(やみ)の中(なか)で、しきりに身震(みぶる)いしていました。
三月の空の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
神谷はその物音に、ゾッと身震(みぶる)いしたが、見まいとしても見ぬわけにはいかぬ。再び眼をひらくと、すでに檻の扉はひらかれていた。弘子が掛金をはずしたのだ。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
くやしさに鬼(をに)のやうな顏(かほ)がいよいよ鬼(をに)のやうに醜(みにく)く、まつ赤(か)になりました。ぶるぶると身震(みぶる)ひしながら「うむむ、うむむ」と何(なに)か言(い)はうとしても言(い)へないで悶(もだ)えてゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
海岸から一側(ひとかわ)裏の通りだったその青い街燈は、よく見ると、波の音に時折身震(みぶる)いをしていた。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白は思わず身震(みぶる)いをしました。この声は白の心の中へ、あの恐ろしい黒の最後をもう一度はっきり浮ばせたのです。白は目をつぶったまま、元来た方へ逃げ出そうとしました。
白 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして格別(かくべつ)の味(あぢ)だと言(い)はんばかりに喉(のど)を鳴(な)らした。寒(さむ)さも寒(さむ)さだが、自分(じぶん)の眼玉(めだま)がたべられるなんて聞(き)いたので、思(おも)わずブルルッと身震(みぶる)ひしたペンペは、さつそく片方(かたほう)の眼玉(めだま)をたべてみた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
身震(みぶる)ひするやうな恐怖に續いて、激しい哀(かな)しみの戰慄が全身を走つた。そして、一つの願ひが生れた——私は、ヘレンに會(あ)はなければならない。そこで、私は彼女の寢かされてゐる室を訪(たづ)ねた。
變(かは)れば現在(げんざい)、夫(をつと)の見(み)る前(まへ)。婦人(ふじん)は身震(みぶる)ひして飛退(とびの)かうとするのであつたが、輕(かる)く撓柔(しなやか)に背(せ)にかかつた手(て)が、千曳(ちびき)の岩(いは)の如(ごと)く、千筋(ちすぢ)の絲(いと)に似(に)て、袖(そで)も襟(えり)も動(うご)かばこそ。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
ジナイーダのキスの感触(かんしょく)も、顔一面にありありと残っていたので、わたしは興奮に身震(みぶる)いしながら彼女の言葉を一つ一つ思い浮べたり、自分の思いがけない幸福を
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
寒(さむ)い風(かぜ)は、悲(かな)しい歌(うた)をうたって雪(ゆき)の上(うえ)を吹(ふ)いて、木々(きぎ)のこずえは身震(みぶる)いをしました。永久(えいきゅう)に静(しず)かな北(きた)の国(くに)の野原(のはら)には、ただ波(なみ)の音(おと)が遠(とお)く聞(き)こえてくるばかりでありました。
宝石商 (新字新仮名) / 小川未明(著)
何とも云いようのない、——わたしはあの眼を思い出すと、今でも身震(みぶる)いが出ずにはいられません。口さえ一言(いちごん)も利(き)けない夫は、その刹那(せつな)の眼の中に、一切の心を伝えたのです。
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あの猜疑心(さいぎしん)、あの執念、あの残虐、それらが悉く私の執拗(しつよう)なる復讐心から生れたものだと知ったなら、私の読者達は恐らく、そこに籠(こも)る妖気に身震(みぶる)いを禁じ得なかったであろう。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わかった! とする大衆の応(こた)えが、鬨(とき)の声をなして、全山をどっと身震(みぶる)いさせた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにもこれに対(たい)して、いうことができなかったのでした。そして、すぎの木(き)のいうように、今夜(こんや)にも、すさまじい嵐(あらし)が吹(ふ)きはしないかと身震(みぶる)いしながら、空(そら)を仰(あお)いでいました。
雪くる前の高原の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
何(なん)とも云(い)ひやうのない、——わたしはあの眼(め)を思(おも)ひ出(だ)すと、今(いま)でも身震(みぶる)ひが出(で)ずにはゐられません。口(くち)さへ一言(ひとこと)も利(き)けない夫(をつと)は、その刹那(せつな)の眼(め)の中(なか)に、一切(さい)の心(こころ)を傳(つた)へたのです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は眼に見えぬ妖魔(ようま)を払いのけるように、ブルンと一つ身震(みぶる)いして立ち上がった。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そよ風かと思えば、そよ風でもない。さりとて、身震(みぶる)いでもなく、いわばそれは何かの息吹(いぶ)きか、それとも誰かが近づいてくる気配とでも言うか、そんな感じであった。……わたしは視線を落した。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
急(きふ)に何(なん)だか寂(さび)しく成(な)つて、酔(ゑひ)ざめのやうな身震(みぶる)ひが出(で)た。急(いそ)いで、燈火(ともしび)を当(あて)に駆下(かけお)りる、と思(おも)ひがけず、往(ゆき)には覚(おぼ)えもない石壇(いしだん)があつて、其(それ)を下切(おりき)つた処(ところ)が宿(やど)の横(よこ)を流(なが)れる矢(や)を射(ゐ)るやうな谿河(たにがは)だつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
通(とお)りかかる人々(ひとびと)は、姉(あね)の目(め)の色(いろ)が光(ひか)るのを見(み)て、思(おも)わずなんと考(かんが)えてか、近寄(ちかよ)ると急(きゅう)に水(みず)を浴(あ)びたように身震(みぶる)いをしました。姉(あね)の通(とお)るところには冬(ふゆ)のような風(かぜ)が吹(ふ)いたのです。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
階下の輪転機(りんてんき)のまわり出す度にちょうど小蒸汽(こじょうき)の船室のようにがたがた身震(みぶる)いをする二階である。まだ一高(いちこう)の生徒だった僕は寄宿舎の晩飯をすませた後(のち)、度たびこの二階へ遊びに行った。
彼 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
敏感な人々は、たちまち事の真相を悟って身震(みぶる)いを禁じ得なかった。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
聞(き)くうちに、坂上(さかがみ)は、ぶる/\と身震(みぶる)ひした。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
どこを見(み)ても真(ま)っ白(しろ)な雪(ゆき)が積(つ)もっていました。そして、絶(た)えず寒(さむ)い風(かぜ)が吹(ふ)いて、身震(みぶる)いせずにはいられなかったのです。夜(よる)になると、星(ほし)の光(ひかり)がものすごく頭(あたま)の上(うえ)を照(て)らしました。
春がくる前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
保吉は突然身震(みぶる)いをしながら、クッションの上に身を起した。今もまたトンネルを通り抜けた汽車は苦しそうに煙を吹きかけ吹きかけ、雨交(あめまじ)りの風に戦(そよ)ぎ渡った青芒(あおすすき)の山峡(やまかい)を走っている。……
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
引(ひ)き息(いき)で身震(みぶる)ひした。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
木立(こだち)は、それを聞(き)くと、自分(じぶん)も、じつに寒(さむ)くなったように身震(みぶる)いをしました。
美しく生まれたばかりに (新字新仮名) / 小川未明(著)
それからほんの一瞬間、玄関の先に佇(たたず)んでいた。が、身震(みぶる)いを一つすると、ちょうど馬の嘶(いなな)きに似た、気味の悪い声を残しながら、往来を罩(こ)めた黄塵(こうじん)の中へまっしぐらに走って行ってしまった。……
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これを見(み)ると、残忍(ざんにん)な姉(あね)は、あまりのうれしさに身震(みぶる)いがしたのです。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
が、その血塊は身震(みぶる)いをすると、突然人間のように大声を挙げた。
金将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
不意(ふい)に、こう呼(よ)びかけられたので、太郎(たろう)は思(おも)わず身震(みぶる)いしました。
薬売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、あなたほど美(うつく)しいとは思(おも)いませんでした。私(わたし)はどうなることかと身震(みぶる)いをしていますと、『なんだ、こんなつまらないちょうか。』といって、その人間(にんげん)は私(わたし)をふたたび自由(じゆう)にしてくれました。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)
広野(こうや)に眠(ねむ)っている遠近(おちこち)の木立(こだち)は、みんな身震(みぶる)いをしました。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
古(ふる)い大(おお)きなひのきの木(き)は身震(みぶる)いをしました。
あらしの前の木と鳥の会話 (新字新仮名) / 小川未明(著)