にぎは)” の例文
夜なかすぎになると、市のにぎはひにみんな疲れて、農夫たちは帰つていき、町人たちは寝こみました。エミリアンもぐつすり眠りました。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
が、いづれにしてもみんなの口は、新任先生の下馬評ににぎはつて、ささやきとなり呟きとなり笑ひとなつて、部屋の空氣がざわめき立つてゐた。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
はるさくらにぎはひよりかけて、なき玉菊たまぎく燈籠とうろうころつゞいて、あき新仁和賀しんにはかには、十分間じつぷんかんくるまぶこと、とほりのみにて七十五輌しちじふごりやう
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その重立おもだつた人々の顔には、言ひ合せた様な失望の色がある。これは富豪をこらすことは出来たが、窮民をにぎはすことが出来ないからである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
一年一度のにぎはひであると云ふ十月さいの用意に、東京の青山練兵場を半分にした程の公園が見世物小屋の普請で一杯に成つて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
はしうへかはうへにぎはひを人達ひとたち仲見世なかみせ映画街えいぐわがいにもおとらぬ混雑こんざつ欄干らんかんにもたれてゐる人達ひとたちたがひかたあはすばかり。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
此處ここらのうまだつてろえ、博勞節ばくらうぶしかどつあきでやつたつくれえまやなか畜生ちきしやう身體からだゆさぶつて大騷おほさわぎだな」かれひとりで酒席しゆせきにぎはした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
此年三のとりまでありて中一日はつぶれしかど前後の上天気に大鳥神社のにぎはひすさまじく、此処をかこつけに検査場の門より乱れ入る若人達の勢ひとては
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
毎日まいにち見物けんぶつ勉強べんきようのために、入場にゆうじようする人々ひと/″\非常ひじようにたくさんあつて、ちようど博覽會はくらんかいつたほどのにぎはひです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
打つやつづみのしらべ、三味の音色ねいろに事かかぬ場処も、祭りは別物、とりいちけては一年一度のにぎはひぞかし、三嶋みしまさま小野照をのてるさま、お隣社となりづから負けまじの競ひ心をかしく
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
五月山さつきやまが一ぽん々々/\かぞへられるやうになると、池田いけだまちながさかしたおろされた。此處ここからはもう多田院ただのゐんへ一開帳かいちやうにぎはひは、この小都會せうとくわいをもざわつかしてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
催せしもあり又男女なんによ打交うちまじりてをどるもありいとにぎはしけれども金兵衞はいそぎの用なればかへつて之を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
店頭のにぎはしさなども一向心を引くことがなく、その騒々しい往来の物音も、どこか遠いはるかな夢の世界のものの様に聞え、いくら眼を見開いても、何も見えず、心がとろ/\とろけて
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
わたくしの心はにぎは
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
初の大漁に にぎははむ
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
氏神うぢがみ祭禮さいれいは、四五月頃しごぐわつごろと、九十月頃くじふぐわつごろと、春秋しゆんじう二度にどづゝあり、小兒こども大喜おほよろこびなり。あきまつりはうにぎはし。祇園囃子ぎをんばやし獅子ししなどづるはみなあきまつりなり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その度にきやつきやと笑ふので小犬等もまた食卓をにぎはす一つに成つて居る。楽天的な滑稽おどけた家庭だ。これが純巴里パリイ人の性格の一種を示して居るのであらう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
イタリヤのる町にお祭があつて、たいへんなにぎはひだといふことを、エミリアンは聞いて、例のバイオリンとしまリスのかごとを持つて、その方へやつて行きました。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
つやつゝみのしらべ、三味さみ音色ねいろことかゝぬ塲處ばしよも、まつりは別物べつものとりいちけては一ねんにぎはひぞかし、三島みしまさま小野照をのてるさま、お隣社となりづからけまじのきそこゝろをかしく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
くばりて所々尋ね廻りしが頃は三月十五日梅若祭うめわかまつりとて貴賤きせん老若のわかちなく向島のにぎはひ大方ならず然るに此日は友次郎腹痛ふくつう故忠八一人向島へゆきて隅田川のつゝみを彼方此方と往來の人に心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ればかりでなく黒ずんだ天井てんじやう壁襖かべふすまかこまれた二階のへやがいやに陰気臭いんきくさくて、燈火とうくわの多い、人の大勢おほぜいあつまつてゐる芝居しばゐにぎはひが、我慢がまん出来できぬほど恋しく思はれてならなかつたのである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
このお祭のにぎはひのために、町一番の金持がたくさんの金を寄附して、公園に大きな舞台をこさへ、面白い芸当の競技会をもよほして、珍しい新しい芸をやつてみせた者に
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
男は三五郎を中に仁和賀のさらひ、北廓ほくくわく全盛見わたせば、軒は提燈ちようちん電気燈、いつもにぎはふ五丁町、と諸声もろごゑをかしくはやし立つるに、記憶おぼえのよければ去年こぞ一昨年おととしとさかのぼりて
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ヘイ水揚ものも御座りましたが夫も大略あらかた結了かたづいて少のひまを得ましたより參りしわけも外ならず時も彌生やよひの好時節上野隅田すみだの花も咲出さきいで何處も彼所もにぎはふゆゑ貧富ひんぷを問ず己が隨意まゝ割籠わりごを造り酒器さゝへ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
着飾きかざつた若い花見の男女をせていきほひよく走る車のあひだをば、おとよせた老車夫はかぢりながらよた/\歩いて橋を渡るやいな桜花あうくわにぎはひをよそに、ぐとなかがうまがつて業平橋なりひらばしへ出ると
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
大門際おほもんぎわ喧嘩けんくわかひと出るもありけり、見よや女子おんな勢力いきほひと言はぬばかり、春秋はるあきしらぬ五丁町のにぎはひ、送りの提燈かんばんいま流行はやらねど、茶屋が廻女まわし雪駄せつたのおとに響き通へる歌舞音曲おんぎよく
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分は星斗せいとにぎはしき空をば遠く仰ぎながら、心のうちには今日よりして四十幾日、長い/\船路ふなぢの果によこたはるおそろしい島嶼しまの事を思浮おもひうかべた。自分はどうしてむざ/\巴里パリーを去ることが出来たのであらう。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
れよと即坐そくざはさみりて女子おなごづれは切拔きりぬきにかゝる、をとこは三五らうなか仁和賀にわかのさらひ、北廓ほくくわく全盛ぜんせいわたせば、のき提燈ちようちん電氣燈でんきとう、いつもにぎはふ五てうまち、と諸聲もろごゑをかしくはやしつるに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今歳ことしきてお客樣きやくさま數多かずおほく、午後ごゞよりとの招待状せうたいじよう一つもむなしうりしはくて、ぐるほどのにぎはひは坐敷ざしきあふれて茶室ちやしつすみのがるゝもあり、二かい手摺てすりに洋服ようふくのお輕女郎かるじよろう
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)