)” の例文
旧字:
クリストフの眼をまさせるために、シルヴァン・コーンはまた特殊な芝居へ連れて行こうと言い出した——精練の極致たる芝居へ。
ほんとうに目をましていたわけではなく、友愛塾というところは一風変わった指導をやるところだぐらいにしか考えていなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
彼女はまだあの時の悪夢からめきらないもののように、こまごまとあの瞬間のことを回想しては、プルプルと身顫みぶるいをするのであった。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
翌朝よくあさ眼がめると硝子戸ガラスどに日が射している。たちまち文鳥にをやらなければならないなと思った。けれども起きるのが退儀たいぎであった。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたしが半分目がめて身動きすると、かれはただきつくなった自分のうでの位置いちを変えた。そして自分は動かずにすわっていた。
後に美妙と結婚して蜜月の甘い陶酔がめない中に果敢はかない悲劇の犠牲となった田沢稲舟たざわいなふねもまたこの寄書欄から出身した女秀才であった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
いわく一つの同じ寝室に、太郎と次郎が一所に寝ている。朝、太郎が目をました時、いかにして自分の記憶を、次郎のそれと区別するか。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
心柄こころがらとはいひながらひてみずから世をせばめ人のまじわりを断ち、いえにのみ引籠ひきこもれば気随気儘きずいきままの空想も門外世上の声に妨げまさるる事なければ
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
煽動あふり横顔よこがほはらはれたやうにおもつて、蹌踉よろ/\としたが、おもふに幻覚げんかくからめた疲労ひろうであらう、坊主ばうず故意こいうしたものではいらしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なにかミハイル、アウエリヤヌイチがうたのであるが、すぐみな掻消かききえてしまった。かくてアンドレイ、エヒミチは永刧えいごうめぬねむりにはいた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
今年ことしみたいに、紅白こうはくはながたんといたとしい。一面いちめんめるやうないろだ。どこへつても垣根かきねうへしゆ御血潮おんちしほ煌々ぴかぴかしてゐる。
金茎きんけいの露一杯という心持がした。かくてようように眠りがはっきりとめたので、十分に体の不安と苦痛とを感じて来た。
九月十四日の朝 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
めると、おみよはその乞食こじきがかわいそうでなりませんでした。けれど、まだ彼女かのじょは、人形にんぎょうのことをおもいきることができませんでした。
なくなった人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今まで冬眠に入っていた情熱が一時に呼びまされて来るのを感じた——それに堪えきれない寂しさが、彼を悲痛なもだえに追いこむのであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
どれだけ眠ったか、飛行機の爆音がするので、二人は目がめた。気をつけていると、飛行機は、ゴンドラの周囲をぐるぐる廻っているらしい。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかるに余り侮り過ぎて眠り過ぎた間に亀は遅いものの一心不乱に歩み走ってとうとう目的点へ着いたので兎の眼がめた時はすでに敗けいた。
憂鬱ゆううつな眼付をして、三吉が昼寝からめた時は、あぶにでも刺されたらしい疼痛いたみを覚えた。お俊は髪に塗る油を持って来て、それを叔父に勧めた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
めるや酒の酔もめ、頭の上には里子が心配そうに僕の顔を見てすわって居ました。母はぐ鎌倉に引返したのでした。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
正子は心配で、めるまでミネの枕もとでイビキに聞き入るのだという。そしてそんなとき親子はすごく仲よくなった。
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
なにもそんな不思議ふしぎな効力はないとの結論で、たちまちその研究熱がめてしまって、今日こんにちではだれもその淫羊藿説いんようかくせつを信ずる馬鹿者ばかものはなくなった。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
夢に球と球と相触れて戞々かつ/\と響く音に耳を襲われ、驚きめてかしらあぐれば其響は球の音にあらで外より余が室の戸を急がわしく打叩くにぞありける
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
そのくる日保名やすなは目がめてみると、昨日きのううけたからだきず一晩ひとばんのうちにひどいねつをもって、はれがっていました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
語り明かしたおもてはみな疲れていた。朝餉あさげをすますと人々は少し眠りをとった。そしてふたたびめてからの話である。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
セルギウスはめた。そして夢に見た事を神の啓示けいじだと思つた。そして気分が晴やかになつて、夢の中の教の通りにしようと決心することが出来た。
廿四日、天気てんきし。となりきゃくつとめて声高こわだか物語ものがたりするに打驚うちおどろきてめぬ。何事なにごとかと聞けば、衛生えいせい虎列拉これらとの事なり。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
このことと俊雄ようやく夢めて父へび入り元のわが家へ立ち帰れば喜びこそすれ気振けぶりにもうらまぬ母の慈愛厚く門際もんぎわに寝ていたまぐれ犬までが尾を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
そんな夜ふけに、私はふと目をまして、自分の傍に父も母もいないことに気がつくと、寝間着のまま、みんなの話し声のしている縁側まで出ていった。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
おふざけでないよ、ているかとおもえばめていて、出しぬけにとこん中からお酒を買えたあ何のこったえ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼が眼をまして、ドキンとしながら、あわててピストルを取り上げようとした手を押えて、かつての日の彼の奸計を責め、近く復讐を遂げるぞと宣言し
血液型殺人事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
今の人が聴けば興のめるような話だが、加賀の白山しらやまの山の神女体こうのりゅうぐうの宮、志賀の辛崎からさき明神と御かたらいあって、懐姙すでにその月に近く
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
わしじつはそなたのこえましたのじゃ。』と良人おっとはじっとわたくし見守みまもながらポツリポツリかたしました。
蓮鉢を越して向ふ側の廂房しやうばうから、眼でもましたのだらう、急に赤ん坊の癇走かんばしつた泣き声が聞えて来た。梧桐は仄暗ほのぐらく、蓮は仄白く、赤ん坊の声だけが鋭い。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
冗談じょうだんしにして、ひとつ若旦那わかだんな縁起直えんぎなおしに、これからめるとこへ、おともをさせておくんなさいまし
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
私は十時ころぐっすり寝込んだんですが、ふと目をますと、唸り声がする、苦しい苦しいという声がする。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
彼の経綸けいりんは、彼の不覊ふきなる傲骨ごうこつと共に、寂寥せきりょうたる蕭寺しょうじの中に葬られたり。滔々とうとうたる天下は、温かなる泰平の新夢に沈睡して、呼べどもむべしと見えざりき。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
一騎討ちなら英国が独逸を負かす筈はないという信念がブルドッグ将軍の話で再び呼びまされたのである。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
庵のなかには、めざす丹下左膳がまだ沈潜ちんせんしているに相違ないがカタリとも物音一つしないのは、寝てかめてか……泰軒と栄三郎期せずして呼吸いきをのんだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
人絹じんけんと間違っているらしいのだ。あまりひどすぎて一座みな興がめ、誰も笑わず、しかめつらになった。
眉山 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そのためかどうか、私はかなり早熟で、四つぐらいの年から性への興味をまされていたように思う。
それにしてももう老いさらぼえた雪道を器用に拾いながら、金魚売りが天秤棒てんびんぼうをになって、無理にも春をよびますような売り声を立てる季節にはなったろう。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「別に変った御様子も見えませんでございますよ。ウトウトねむってばかりおいでなさいましてね、時々床瘡とこずれが痛いと言っちゃ目をおましなさるぐらいで……」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
自然と眠りがめかかってうめいた太い男の声、それから又あの手を真赤にして玩具をいじる様に、人間の内実なかみをいじって居た髭むじゃな医者の顔、あれこれと
栄蔵の死 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ふと眼がめると彼女は、遠くの合歓ねむの花の下で、紅の帯をといて、小川の水で顔や手足を洗っていた。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
姉の容色が急にせてきたように思われて、彼女に対する熱烈な恋は夢のようにめてしまい、さらに妹のガブリエルとの結婚を父の伯爵に申し込んだのである。
うわさによれば、坐忘ざぼう先生は常に坐禅ざぜんを組んだまま眠り続け、五十日に一度目をまされるだけだという。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ありていに云うと国経は、先達せんだってから左大臣の測り知られぬ温情に対して何がな報いる道はないだろうかと、寝てもめてもそのことを気にけていた矢先であった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これで、室全体がびっくりして眼をまし、毛布という毛布は、激しく波形の運動を起こすのである。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
自己の経験をかえりみて百年があいだ胡蝶こちょうとなって花の上にたわむれてのち驚きめたるごとく言った。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
めたやうだが……んなぼんやりしたところた……遠くに電気燈でんきとうでもいてるのか知ら
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
先着の伴牛ともうしはしきりに友を呼んで鳴いている。わが引いている牛もそれに応じて一声高く鳴いた。自分は夢からめた心地ここちになって、覚えず手に持った鼻綱を引詰ひきつめた。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)